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弁護士・元ロースクール教授宮武嶺の社会派リベラルブログです。

日本学術会議の会員選考に介入し、原子力規制委員会を急かして60年越え運転を承認させ、専門家委員の反対意見を無視して新型コロナの感染症法5類格下げを押し通す。岸田政権の反知性主義が目に余る。

2023年02月18日 | ダメよダメダメ岸ダメ政権

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 反知性主義と言えばとても地勢は感じられなかった安倍晋三元首相の十八番でした。

 そんな第二次安倍政権の安保法案・共謀罪・特定秘密保護法という違憲3部作の法制度に反対した学者6人が日本学術会議の推薦にもかかわらず、菅政権によって会員にするのを拒否された日本学術会議問題。

 そもそも学術会議が誰を会員にするかはその学問の自由に大きく関わることですから、内閣総理大臣は学術会議の推薦通りに会員を選定する義務があるのであって、それに反するのは日本学術会議法違反です。

 

 

菅総理が日本学術会議の人事に介入。学術会議への入会を推薦されたのに安保法案や共謀罪などに反対した学者の任命を拒否。学問の自由、思想良心の自由の侵害で憲法違反だ。

黒川検事長問題の時の検察庁法と同じ。また菅首相が日本学術会議法の解釈を変更して、学術会議の推薦を拒否しても適法だとしようとしている。#日本学術会議への人事介入に抗議する

 

 

 

 ところが、岸田政権は火事場泥棒よろしく、学術会議の会員候補の選考について第三者の有識者による「選考諮問委員会(仮称)」を新設する法改正案を提出しようとしています。

 これに対して、日本学術会議の歴代会長5人が2023年2月14日、

「根本的に再考することを願う」

などとする声明を連名で発表しました。

 この声明は戦後まもなく作られた日本学術会議の歴史を踏まえ、学術の独立性について

「一国の政府が恣意的に変更して良いものではない」

とし、学術会議の独立性と自主性を尊重し、擁護を求めました。

 また声明では、アカデミーの世界では自律的な会員選考こそが

「普遍的で国際的に相互の信認の根拠となっている」「内閣府案はこれを毀損する」

と厳しく批判しています。

岸田政権が大軍拡を進めるために日本学術会議法を「改正」して人事権に介入し、学術会議の独立性を脅かそうとしている。学問の自由と平和を守るために、日本学術会議法改悪に反対しよう。

 

 

 

 ところで、岸田政権が専門家・学者に対してその識見を軽んじる露骨な態度が他にもたびたび問題になっています。

 その典型が、福島第一原発事故医以来の原発行政を大転換する原発推進、特に老朽化した原発の運転期間が60年を超えてもその間に運転停止期間があればその分、運転延長を認めるという新制度を原子力規制委員会に認めさせた経緯です。

 この原発の60年超の運転は、原発の新規建設とともに、脱炭素を目指すという名目で岸田政権の「GX実現に向けた基本方針」に盛り込まれました。

 岸田首相はは今国会に関連法案の提出を目指しているのですが、原子力規制委にはこれに伴う新しい規制制度が諮られ、2月13日の委員会で、委員の1人が反対のまま異例の多数決で容認が決まったのです。

先制攻撃能力に続いて、岸田政権がまた国是を大転換。福島原発事故もまだ収束していないのに、新型原発を開発・新設・増設、運転期間を60年以上に延長して原発ゼロを永久に不可能に。岸田政権はもう廃絶だ!

 

 

 一人反対した石渡委員は

「運転を停止した期間は60年にプラスするという案は、我々が安全のため審査を厳格に行い、長引けば長引くほど運転期間は延びていく。これは非常に問題だ」

と、この運転期間延長制度の根本的な欠陥を指摘する非常にもっともな意見を述べています。

【野党でもめてる場合じゃございません!】岸田政権が福島原発事故以来の原発政策を大転換、原発推進の方針を閣議決定。原発の新規建設、60年超運転も。軍拡と原発推進の岸田内閣を総辞職に追い込もう。

 

 

 問題は賛成した複数の委員も

「外から定められた締めきりを守らねばならないという感じでせかされて議論してきた」

「重要な指摘が後回しになったのは違和感がある」

と岸田政権が法案提出に間に合うように、規制委に容認を決めるようにスケジュールを押し付けたことを明らかにしていることです。 

 記者会見で審議の進め方を問われた山中伸介委員長は、

「法案提出というデッドラインは、決められた締めきりで、やむを得ない」

と驚嘆すべき言い訳をしています。

 これでは原子力の規制委員会ではなく原発推進委員会でしょう。

岸田首相が原発の運転期間60年超方針を「新たな技術的知見の存在を踏まえではなく、エネルギー需給の逼迫への対応」と開き直り。立民前代表枝野幸男氏がすかさず「安全より経済を優先している」と猛攻撃。

 

 

 さらに、岸田政権の反知性主義は新型コロナ対策にも表れています。

 岸田首相は5月19日からの地元広島でのG7サミット会議に間に合わせるため、5月8日から新型コロナを感染症法2類相当から5類に格下げしようとしています。

 しかし、2月16日に公開された1月27日の政府の専門家分科会議事録によると、最終的に5類への引き下げを了承するという形になったものの、医療や感染症の専門家は口々に

「新型コロナは非常に感染性が高い。今後も深刻な影響を及ぼし続ける」

などと主張しており、5類格下げという結論だけが政府によって宣伝されたことがわかります。

コロナ、5類相当念頭に見直し 政府分科会有志が提起へ - 日本経済新聞

新型コロナ国内初確認から3年、ウィズコロナはまだ早い。コロナ第8波で最多のコロナ死者数を出している中、室内でのマスク解禁や感染症法5類への格下げはさらに市民の警戒心を緩め、被害を拡大するだけだ。

 

 

 例えば、三重病院長の谷口清州氏は

「高齢者や基礎疾患のある人への生命にはまだ重大な影響がある。誤解が生じる」

と指摘し、東北大教授の押谷仁氏は

「切り取られて解釈されることを非常に懸念する」

と訴え、日本医療法人協会副会長の太田圭洋氏は

「医療機関での感染対策を大きく変更することは難しい」

と心配し、脇田隆字国立感染症研究所長も

「流行が終わったというメッセージは逆に流行の拡大を助長してしまう」

と懸念を表明しています。

 このコロナ対策の会議でも、岸田政権が5類にするという結論とサミット前にそれを断行するというスケジュールが専門家に押し付けられ、そもそもコロナの専門家に集まっていただいている意味がなくなってしまっています。

 

岸田首相の地元広島でのG7サミット(5月19日~)の前の5月8日に屋内ノーマスク解禁と新型コロナの感染症法5類への格下げをする!市民の命と安全より「見栄え」を気にする岸田政権の本末転倒。

 

 

 実は、政府が集めた専門家も感染症法5類格下げや、ましてノーマスクについては警鐘を鳴らしているのに、それが市民にはちっとも伝わってきません。

 今後は新型コロナは「コロナ2019」と呼ばれて過去の問題扱いにされ、しかも感染者数も全数把握ではなく定点観測になりその結果は1週間ごとにあとから発表されるようになります。

 つまり、次にコロナ第9波が来ても、もうコロナがどれだけまん延しているかわからないまま、私たちは死んでいくことになるかもしれないのです。

 岸田政権の反知性主義、非科学主義に殺されるんです。

新型コロナ1月死者1万人ペースの中、施政方針演説をノーマスクでやるパフォーマンスの岸田首相(呆)。中身はスカスカで防衛増税・原発推進隠し。愚かで不正直な岸田首相は内閣総辞職せよ。

 

新型コロナ死者数が1月だけで初の1万人を突破。岸田政権になってから死者5万人で安倍・菅政権時代の3倍!なのに全くコメントしない岸田首相と追及しない野党と報道しようとしないNHKなどマスメディア。

 

 

「同性婚制度を認めたら社会が変わってしまう」という岸田首相の国会答弁も、諸外国の実情を全く踏まえない単なる感想でしかなく、よくまあそんな非科学的な態度で性的マイノリティーの基本的人権を蹂躙するようなことができるもんだと思いますよ。

また、安倍・菅・岸田自公政権の反知性主義・非科学主義って、専門家のお墨付きを自分たちの政策に都合よく利用するご都合主義でもあるんですよね。

時の政権に都合の悪いことでも正しいことを言ってくれるから学者の価値があるのに、私利私欲の政治家にはそれが邪魔なだけだなんて、本当に頭に来ます。

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記者会見する日本学術会議で会長を務めた大西隆氏(22-23期)=14日、東京都千代田区の日本記者クラブで

記者会見する日本学術会議で会長を務めた大西隆氏(22-23期)=14日、東京都千代田区の日本記者クラブで

 日本学術会議の会員選考を巡り、「選考諮問委員会」の新設などを含めた法改正を今国会で目指す政府に対し、学術会議の歴代会長5人が14日、「会員選考の自律性がなくなり、アカデミーとしての国際的な信用を毀損きそんする」などとする声明を発表、政府に方針の再考を求めた。

◆「軍事研究が進む弊害がある」

 声明は1997年から2020年に会長を務めた吉川弘之、黒川清、広渡清吾、大西隆、山極寿一の5氏の連名。岸田文雄首相に学術会議の独立性と自主性を尊重するよう訴えている。
記者会見する日本学術会議で会長を務めた広渡清吾氏(21期)=14日、東京都千代田区の日本記者クラブで

記者会見する日本学術会議で会長を務めた広渡清吾氏(21期)=14日、東京都千代田区の日本記者クラブで

 日本記者クラブ(東京都千代田区)での同日の会見には黒川、広渡、大西の3氏が出席した。広渡氏は「法改正の目玉となる『選考諮問委員会』が科学者でない人で構成される可能性がある。首相が任命拒否をしなくても委員会であらかじめチェックできる」と指摘。さらに「軍事研究が進む弊害がある。法改正は学術会議が積み上げてきた地位を毀損する、と岸田首相に伝えたい」と訴えた。
リモートで記者会見する日本学術会議元会長の山極寿一氏(24期)=14日、東京都千代田区の日本記者クラブで

リモートで記者会見する日本学術会議元会長の山極寿一氏(24期)=14日、東京都千代田区の日本記者クラブで

 菅義偉前首相が会員候補6人の任命を拒否した際に会長だった山極氏は、オンラインで参加。「任命拒否について、政府は『終わったこと』として理由も言わない。権力を持つものが理由なく権限を行使してはいけない」と主張した。
 体調不良で会見を欠席した吉川氏は文書を寄せ、法改正について「わが国の将来にとって、極めて大きな社会的障害をもたらす恐れがある」と危ぐした。(望月衣塑子)
記者会見する日本学術会議で会長を務めた黒川清氏(19-20)=14日、東京都千代田区の日本記者クラブで

記者会見する日本学術会議で会長を務めた黒川清氏(19-20)=14日、東京都千代田区の日本記者クラブで

 

 

 

 原発の60年超運転に向けた新たな規制制度を多数決で決定した13日の原子力規制委員会臨時会。約1時間半に及んだ会議は、制度変更に反対の石渡明委員と、ほかの4人の主張が平行線のまま終わった。主なやりとりは次の通り。

◆規制委の運転期間への関わりをめぐり石渡委員が口火を切る

 13日午後6時半 臨時会を開始。事務局の法案説明の後、5人の委員の議論が始まった。「運転期間をどれくらい認めるかは、利用政策側(推進側)の判断で、規制委は意見を言わない」とする2020年の見解について、石渡明委員が疑問を投げかける。
 石渡委員 特にこの「規制委が関わるべき事柄ではない」ということについて、当時によく議論をしてこれを決めたかというと、私はそうではなかったのではないかと思う。規制委全体の意思として確固として決定されたというものではないと考える。
 山中伸介委員長 さまざまな場での意見交換も含めて議論されたことをまとめた見解だ。
 田中知委員 十分に議論したかというと、少なかったかもしれないが、方向性としてはこれでいいのではないか。
 杉山智之委員 単純な数字で何年までと決めるのが規制委のやり方にフィットしない。
 伴信彦委員 科学的、技術的に何年が妥当とは一律に決められないという結論であり、趣旨は妥当。
 石渡委員 これを根拠に40年ルールをなくしていいという根拠にはならない。
 山中委員長 根本的に食い違ってきた。

◆問題点を次々に指摘する石渡委員

13日に開かれた原子力規制委員会臨時会=東京都港区で

13日に開かれた原子力規制委員会臨時会=東京都港区で

 午後7時10分 議論はかみ合わないまま、話題は60年超の原発の審査手法が白紙であることに移る。
 杉山委員 60年のときにやることは慎重にじっくり議論するべきだ。
 山中委員長 現時点で、60年までは十分に評価できている。その次の期間も、ある程度は担保できる。
 石渡委員 電力業界団体は、60年もたつと部品が調達できなくなると資料に記載している。実際にそういう障害が起きることは避けられない。同じような審査手法でいいのか。
 杉山委員 古い設計のものをふるい落とす仕組みを設ける必要がある。
 石渡委員 (首をかしげる)
 午後7時半 政府方針の審査による停止期間を運転年数から除外する仕組みが話題に。委員間の規制に対する見解の相違が大きくなっていく。
 杉山委員 審査で時間がかかる分、あとで取り返せると読める。しかし、何もしなくても劣化は進み、事業者が時間稼ぎをするメリットはない。
 石渡委員 不備があって審査を中断した場合も運転期間が延びる。事業者の責任でそういうことになっても、延ばしていいよというのは非常におかしい。そういう制度になるならば、審査をしている側として耐えられない。
 杉山委員 審査する側が、利用政策側がどういった期間をカウントするのかしないのかを考慮する必要はない。
 山中委員長 規制制度と審査は別に考えないといけない。審査のタイミングは政策側の判断というのはこれまで通りの見解で、切り分けないといけない。
 石渡委員 切り分けてという話だけど、審査を中断した期間も延長に加わる。原子力の安全にかかわる。時間がたてば劣化が進むのだから、切り分けるというのは…。
 山中委員長 (石渡委員の発言に割って入る)そこに誤解がある。われわれがするのは運転期間の制限をかけるのではなく、ある期日が来たときに規制基準を満たしているかという安全規制をするのが任務。運転期間をどうのこうのというのをわれわれが科学技術的に判断するというのは、これまでの議論と違う。どうも、石渡委員と根本的に食い違っている。
 石渡委員 経産省の案に書いてある通りを読んで、私自身はそうとしか理解できない。

◆「根本的に食い違っている」と繰り返した山中委員長

関西電力高浜原発(2021年2月撮影)

関西電力高浜原発(2021年2月撮影)

 山中委員長 運転期間についての考え方は、委員会で決めた見解は納得できないというのが石渡委員のお考えか。
 石渡委員 原則40年、最長60年の枠組みは変えないのが経産省の案。われわれが積極的に炉規法(原子炉等規制法)を変えにいく必要はない。
 山中委員長 根本から意見が食い違っている。
 杉山委員 経産省の案は事実上、(40年と)プラス20年ではないのが明らか。炉規法の規定をそのまま残すことは不可能だ。
 石渡委員 私の考えはだいぶ述べたので、付け加えることはない。
 午後7時40分 埋まらない溝が明確になり、山中委員長はまとめに入る。
 山中委員長 石渡委員、炉規法は改正しないといけない。納得できないという意見でよろしいか。
 石渡委員 炉規法は規制委が守るべき法律だ。科学的、技術的な理由、より安全側に変える理由ならば変えることにやぶさかではないが、今回はそのどちらでもない。
 山中委員長 運転期間について、安全規制で考えるべきだというのが石渡先生のお考えで、根本的に食い違っている。その理解でいいか。
 石渡委員 そうかもしれません。

◆賛成委員も「じっくり議論して進めるべき」「違和感」

廃炉作業が進む東京電力福島第一原発=2023年2月

廃炉作業が進む東京電力福島第一原発=2023年2月

 午後7時44分 山中委員長が意を決したように多数決を宣言する。
 山中委員長 石渡委員の心情は変わらない。あらためて賛否をうかがいたい。
 田中委員 これでいいかと思う。
 山中委員長 私も賛成したい。
 杉山委員 この範囲では了承したい。ただ、説明が圧倒的に足りない。今からでも説明の資料は公表してほしい。われわれは外から定められた締め切りを守らなければいけないと、せかされて議論してきた。われわれは独立した機関なので、じっくり議論して進めるべき話だった。外のペースに巻き込まれずに議論するべきだった。
 伴委員 合理的な変化であるという点で了承する。ただ、制度論ばかりが先行してしまって、60年超えの基準をどうするのか後回しになってふわっとしたまま、こういう形で決めないといけないことには違和感を覚える。
 石渡委員 この改変は科学的、技術的な新知見に基づくものではない。安全側への改変とも言えない。審査を厳格にすればするほど、将来より高経年化(老朽化)した炉を運転することになる。こういったことにより、私はこの案には反対する。
 午後7時48分 議論が最終盤を迎える。
 山中委員長 残念ながら石渡委員のご賛同を得ることはできなかった。本日の賛否の結果をもって、委員会の決定としたい。その上で、反対の石渡委員にも今後の高経年化の規制の議論には参加してもらいたい。
 石渡委員 もちろん委員ですので、参加させていただく。
 杉山委員 ここで決を取って進んでしまっていいのかは疑問を感じる。ただ、石渡委員が今、納得できない事に対して、懸念がなくなるような基準の策定について議論していく。石渡委員のご意見をうかがい続ける。
 山中委員長 石渡委員、今後ともよろしくお願いします。本日の委員会はこれで終了。
 午後7時52分閉会

 

 

 

 
原子力規制委員会で原子炉等規制法の改正に反対を表明する石渡明委員=2023年2月13日、規制委の公開動画から

 「この法律の変更は科学的、技術的な新知見に基づくものではない。安全側への改変ともいえない。審査を厳格に行うほど高経年化した炉を運転することになる。私はこの案に反対だ」

 原発の運転期間を原則40年、最長60年とする「40年ルール」を改め、60年超の運転を可能にする新規制制度を盛り込んだ原子炉等規制法(炉規法)の改正案について、原子力規制委員会は2月13日、賛成4、反対1の多数決で了承した。冒頭は異例の反対を表明した地質学者の石渡明委員の発言だ。会議では一体どんなやり取りがあったのか。

 原発の運転期間の上限は現在、炉規法で原則40年、最長60年と定められている。原発回帰を打ち出した岸田政権は、この規定を炉規法から外し、経済産業省が所管する電気事業法(電事法)で新たに上限を定める方針だ。

 電事法の新規定では最長60年の枠組みは維持するものの、規制委の安全審査などによって長期停止した期間を運転期間から除外することで、実質的に60年超の運転が可能になるというものだ。石渡委員が反対した理由は、この運転期間の延長に伴う原発の老朽化にある。

 運転期間の「40年ルール」は東京電力福島第1原発の事故後、老朽原発から廃炉にし、脱原発を目指すという歴代政権の基本方針のはずだった。

「審査するほど運転期間延びる」

 規制委は山中伸介委員長はじめ専門家5人の委員で構成する。反対を表明した石渡委員は日本地質学会会長などを歴任し、規制委では地震や津波などの審査を担当する。山中委員長、田中知委員、杉山智之委員の3人は原子力工学、伴信彦委員は放射線影響・防御の専門家だ。規制委が重要事項の決定で意見が一致しないのは異例だ。

 石渡委員は「運転を停止した期間は60年にプラスするという案は、我々が安全のため審査を厳格に行い、長引けば長引くほど運転期間は延びていく。これは非常に問題だ」と主張した。<picture><source srcset="https://cdn.mainichi.jp/vol1/2023/02/16/20230216biz00m020004000p/8.webp?1" type="image/webp" />原発の運転期間を最長60年と定めた法律の改正を了承後、記者会見する原子力規制委員会の山中伸介委員長=2023年2月13日、規制委の公開動画から</picture>

原発の運転期間を最長60年と定めた法律の改正を了承後、記者会見する原子力規制委員会の山中伸介委員長=2023年2月13日、規制委の公開動画から

 山中委員長は「原発の運転期間が長くなれば劣化は進むが、我々が責任を持たなければならないのは期間ではない。高経年化した原子炉について、安全に対する基準が満たされているか技術的に判断することに尽きる」と反論。炉規法の改正に伴い、運転開始から30年を超える原発について、最大10年ごとに安全性などを審査する新規制制度案を示した。

 運転から60年超の原発については、原子炉が長期間、中性子を浴びると硬くなってもろくなる「中性子脆化(ぜいか)」のほか、コンクリートや電気ケーブルの劣化のリスクが指摘されている。山中委員長は「(60年以上を予測した)実データが手に入っている。実際に60年以上運転しても、これくらいの健全性は評価できるという科学的な根拠がある」と指摘した。

経産省主導に苦言も

 石渡委員は「運転30年から10年ごとに検査するとなると、40年目、50年目と経年数に応じて審査を変えていく必要はないのか」と質問。山中委員長は「これまで通り厳格な審査を行っていくことで問題はないと思う。審査期間によって運転期間が延長された場合は高経年化の審査を行い、基準を満たさなければ運転できなくなる」と答えた。

 さらに石渡委員は「経産省が40年、60年の基本的な枠組みを変えないのであれば、我々が積極的に炉規法を変える必要はない」と、「40年ルール」を原則とする炉規法の堅持を主張。「炉規法は規制委が守るべき法律と思っている。科学的・技術的な理由か、より安全側に変える理由があれば、変えることにやぶさかでないが、今回はどちらでもない」とも述べた

<picture>山中伸介委員長(右から2人目)と石渡明委員(左端)ら原子力規制委員会の会議の様子=2023年2月13日、規制委の公開動画から</picture>

山中伸介委員長(右から2人目)と石渡明委員(左端)ら原子力規制委員会の会議の様子=2023年2月13日、規制委の公開動画から

 山中委員長は「我々は運転期間に制限をかけるのではなく、ある期日がきた時に基準を満たしているかどうかという安全規制をするのが任務だ。(運転期間を制限しようとする)石渡委員と根本的に食い違っていると思う」と述べ、他の委員に意見を求めた。

 杉山委員は「私は石渡委員と食い違っているとは思わない。これは言ってよいのかわからないが、我々は外から定められた締め切りを守らなければいけないという感じで、せかされて議論してきた。他省庁との関係もあるだろうが、我々は外のペースに巻き込まれずに議論すべきだった」と、経産省主導で法改正の議論が進んだことに苦言を呈した。

 伴委員は「制度論ばかりが先行し、本来の我々のサブスタンス(議論する中身)である基準というか、60年超えをどうするかという議論が後回しになったまま、こういう形で決めなければならなくなったことには、私も違和感を覚えている」と述べた。

<picture><source srcset="https://cdn.mainichi.jp/vol1/2023/02/16/20230216biz00m020007000p/8.webp?1" type="image/webp" />原子力規制委員会で発言する杉山智之委員(右)と伴信彦委員=2023年2月13日、規制委の公開動画から</picture>

原子力規制委員会で発言する杉山智之委員(右)と伴信彦委員=2023年2月13日、規制委の公開動画から

60年超の審査、詳細な議論はこれから

 岸田政権の原子力政策の見直しを受け、規制委は昨秋から炉規法改正の議論を進めたが、60年超の審査を具体的にどうするかという議論は先送りとなるなど、性急さは否めなかった。独立した規制機関としての存在意義が問われた。

 閉会後、山中委員長は記者会見で「電事法と炉規法の法案提出の期限があったのは事実だが、仕組みづくりには4カ月かけた。私は短い期間だったとは思わない」としながらも、「時間的な余裕から、60年以降の詳細な議論をしなかったのは事実だ」と認めた。

 これを受け、規制委は15日、60年超の運転を可能にする新制度について審査や規定などを検討するチームを設けることを決めた。10年ごとの審査の詳細を固めることを目指すほか、審査内容が決まっていない運転開始から60年以降についても議論する。

 規制委が石渡委員の反対を押し切って改正案を了承した問題は15日、衆院予算委員会のほか、参院の「資源エネルギー・持続可能社会に関する調査会」でも議論になった。同調査会では「放射性物質を高温で燃やす原子炉が本当に60年、70年もつのか」という疑問の声が野党議員から出た。

 原子力政策に詳しい龍谷大学の大島堅一教授(環境経済学)は参考人として「原発は想定寿命が30年ないし40年と考えられている。国会で当時野党だった自民党も含め、原子力規制の観点から運転期間を40年と定めたのは高く評価できた。今回の改正は原発の利用が先、規制が後となり、石渡委員が心配するように安全性を高める方向には働かない。政府の原子力政策の転換は大きな禍根を残すと思う」と答えた。

 岸田政権は脱炭素社会への移行を進めるグリーントランスフォーメーション(GX)に向けた基本方針を閣議決定し、原発の60年超の運転を認める方針を決めた。この政策変更を盛り込んだ炉規法を含む関連改正法案を開会中の通常国会に提出する予定で、今後は世論の反応と国会論議の行方が注目される。

 

 

コロナ専門家、5類移行に最後まで抵抗 分科会議事録公表、厳しい条件次々

 新型コロナウイルスの感染症法上の位置付けを「5類」に引き下げることを了承した政府の専門家分科会の議事録が16日、公表された。会合では5月8日に5類へ移行する政府案を容認したものの、医療関係の委員らは「まだ侮れない病気だ」と指摘。政府にさまざまな条件を突き付け、危険性がなくなったかのようなメッセージにならないよう厳しく注文を付けていた。

 会合は1月27日に新型コロナ対策分科会と基本的対処方針分科会が合同で開催。感染対策を季節性インフルエンザ並みに緩和するに当たり、専門家の同意を取り付けるために政府が開いた。

 最も指摘が相次いだのは5類への変更理由だった。政府は「私権制限に見合った、国民の生命および健康に重大な影響を与える恐れがある状態とは考えられない」と説明。経済界の委員から歓迎する意見が上がった一方で、医療の専門家からは異論が続出した。

 三重病院長の谷口清州氏は「高齢者や基礎疾患のある人への生命にはまだ重大な影響がある。誤解が生じる」と指摘し、東北大教授の押谷仁氏は「切り取られて解釈されることを非常に懸念する」と訴えた。

 専門家たちはあくまで、5類への移行は「法的な整理」と捉え、「(新型コロナは)非常に感染性が高い。今後も深刻な影響を及ぼし続ける」と主張。日本医療法人協会副会長の太田圭洋氏は「医療機関での感染対策を大きく変更することは難しい」、脇田隆字国立感染症研究所長も「流行が終わったというメッセージは逆に流行の拡大を助長してしまう」と強い警告を発して表現の再考を求めた。

 政府の情報発信に関しては、高齢者施設や医療機関における集団感染と死亡率の高さ、変異株出現の可能性など「懸念される材料」を丁寧に説明するよう要望。マスク着用は「効果的な場面を具体的に分かりやすく伝えることが必要だ」と提案した。

 政府側は「5類への移行は手放しでいいと言ってもらったわけではない。留意事項をよく考え、具体案を示したい」(厚生労働省健康局長)と理解を求めていた。 (河合仁志)

 

 

 

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