上下ともクリックしてくださると大変うれしいです。
日本被団協がノーベル平和賞を受賞したということで、その直後からその核兵器廃絶への運動と歩みがあらためて注目されて報道されるようになって、本当に、本当によかったと思いますね。
普段「日本すげえ!」が合言葉のネトウヨが、日本被団協すげえ!と言いながらアメリカの核の傘にいることは維持しないといけなくて困っている姿が憫笑を誘います。
【ノーモアヒバクシャ!】日本被団協(日本原水爆被害者団体協議会)にノーベル平和賞授与!「核兵器のない世界の実現に向けた努力」「核兵器の使用がもたらす人道的惨事に対する認識を高めるために尽力してきた」
さて、笑っていてはいけないのが日本政府と石破茂首相の態度。
日本政府は2024年10月21日に、31年連続!で、「核兵器廃絶に向けた決議案」を国連総会第1委員会(軍縮)に提出したと発表しました。
今年の決議案では、石破政権は日本原水爆被害者団体協議会(日本被団協)のノーベル平和賞受賞決定にも言及したというのですが、日本政府は日米安保条約締結以来、ずっとアメリカ合衆国の核の傘で保護してもらうという核抑止論に立っていて、実は核兵器廃絶運動の足を引っ張り続けてきました。
この31回連続で出したという決議案もいつも大多数の賛成で可決されるのですが、核兵器の廃絶は「究極的な目標」と言って事実上棚上げして実際には実現する気がない内容なので、アメリカをはじめとして核保有国も賛成することさえあった代物。
今回の日本提出の決議案も自らが参加していない核兵器禁止条約には触れてもおらず、だからこそ11月上旬に同委を通過して、12月上旬に総会本会議で正式に採択される見通しだと既にスケジュールが決定しています。
祝!日本被団協のノーベル平和賞受賞!!日本が核兵器廃絶を目指して核兵器禁止条約に参加するのを良しとするなら、衆院選では自国維公(地獄逝こう)に投票するのは厳禁。まともな野党4党に投票するしかない。
もちろん、日本被団協に結集するもう平均年齢85歳を超えた10万人余りの被爆者の方々の思いは全世界から核兵器がなくす核廃絶。
だからこそ、核兵器に関わる一切の行為、実験・製造・保有・運搬そして使用などを一切禁止する核兵器禁止条約に、日本と核保有国を含む全世界の国が加盟して核廃絶への道を世界が歩みだすことこそが被爆者の夢です。
その日本被団協のノーベル平和賞受賞の栄誉をちゃっかり利用して、実は核兵器禁止条約の足を引っ張り加盟国が増えないようにする第2の道こそが「現実的」であるかのように毎年決議案を出す日本政府には本当に腹が立ちます。
78回目の広島原爆の日。核兵器禁止条約に背を向ける岸田文雄首相に「核のない世界」を言う資格はない。G7広島サミットの「広島ビジョン」も核兵器の存在を前提にする核抑止力論に立っていることを忘れるな。
腹が立つと言えば、ノーベル平和賞の受賞発表から一夜明けた10月12日に日本被団協が東京都内で記者会見を開き、私も何度も海外にお供した代表委員の田中熙巳(てるみ)さんが、石破茂首相が自民党総裁選でもギロンすべきだと言及したジロンの「核共有」構想に対して、
「論外。政治のトップが必要だと言っていること自体が怒り心頭」
と厳しく批判なさいました。
なお、田中さんの人生については去年タイミングよく東京新聞が大連載をしていて、連載<核なき世求めて 田中熙巳の歩み>に詳しいです。
ぜひお読みください。
どうやったらこの日本は良くなるか。見返りを求めず与える人たち、袴田巖さんのお姉さんひで子さんや日本被団協の被爆者の方々に学ぶ。
さて、核共有については石破氏が最も早く言い出した一人ですが、亡くなった安倍晋三元首相も特にロシアのウクライナ侵略開始後に何度も言及していました。
また、日本維新の会の松井一郎前代表もそれに便乗してぶち上げ、今回の衆院選挙の公約維新八策2024にもはっきりと
「緊迫する安全保障環境に鑑み、アジア太平洋地域の平和と安定の基軸となる日米関係を更に強固なものとするため、例えば原子力潜水艦の共有など、米国の核拡大抑止における日本側の意思決定への関与や共同訓練の実施を求める等、日米同盟の一層の深化を図ります。」
と核共有が入っています。
自分が一番昭和(戦前)である維新。
【#維新は日本一の悪党】日本維新の会の松井一郎代表があの長崎で「核抑止力を持たなければならない」「自民党にタブーなき我が国の防衛を議論させる」。かつては橋下氏が広島で「核廃絶は無理」。
長崎原爆の日に唾を吐きかける吉村洋文日本維新の会副代表。核は廃絶すべきと言いながら「核共有の議論を始めることは必要」。「倍返し」できるよう、アメリカが日本に配備した核兵器を使用することを禁止せず。
しかし、核保有国であるロシアのクルスク州にウクライナ軍が攻め込んで一部を占領してからもう3か月。
ロシアが他国の軍隊に領土を占領されるのはナチスドイツの侵攻を許した第二次大戦以来80数年ぶりの屈辱なのですが、核保有国のロシアが核非保有国のウクライナの軍隊にまんまと越境攻撃を許してしまっているわけです。
つまり、この使うのに非常に高い障壁がある核兵器という武器に依存する抑止力とは一体何なのかが問われる事態になっています。
逆にロシアに侵略されているゼレンスキー大統領でも、先週開かれたEU首脳会議での
「ウクライナは自衛のための核兵器を保有するか、何らかの同盟を結ぶ必要がある」
という発言について、1994年の核兵器放棄のことについて触れたのだと弁明し
「われわれは核兵器を放棄したが、NATOは得られなかった」
「もたらされたのは全面戦争と多数の犠牲者だけだ。今のわれわれに残された道は一つだけだ」
として核兵器の供与を求めているのではなくNATOに入りたいという趣旨だと改めて説明に追われています。
まして「唯一の被爆国」という呼称を利用してきた日本が、今から核兵器を新たに保有するだの共有するだのなんてことは不可能なんです。
ウクライナ軍がロシアのクルスク州に越境攻撃。軍司令部も設置。ロシアに侵略されているウクライナが反撃するのは国際法で認められた自衛権の行使であり、侵略と戦争犯罪を続けるプーチン政権に批判する権利はない。
さてまず、日本が核共有を目指すのは全く「現実的」ではありません。
アメリカ軍に日本列島への核兵器持ち込みを公然と認めることは日本の国是である非核三原則に真正面から反しますから、そんなことをしようとする政府は転覆必至です。
また中国など周辺諸国との緊張は最大に高まり、かえって戦争の危機を招くのは必定です。
そもそもアメリカと日本が核を「共有」すること自体が核拡散防止条約(NPT条約)や原子力協定など多数の国際法に違反するし、「原子力の平和利用」をその存在目的としているIAEAの査察を受ける羽目に陥ります。
もちろん原子力基本法などの国内法にも違反しますし、そもそも最高法規である日本国憲法の第9条にも違反しています。
石破氏も安倍氏や松井氏並みの無能力・非常識政治家だということ。
安倍元首相と橋下徹氏の「核共有」構想は非核三原則違反であるばかりか、憲法にもNPT条約にも原子力基本法にも反する違法行為。ところが松井一郎代表が「非核三原則は昭和の価値観」と言い出した(笑)。
ことあるごとに立憲野党の安全保障政策を「非現実的」だと批判する自公政権ですが、コッテコテに違法でかつ実現不可能な核共有などと言い出す軍事オタクの石破自民党と日本維新の会こそが「現実」とかけ離れているのです。
もちろん、これも石破首相が持ち出したジロンであるアジア版NATOなんて、中国やロシアから反発を受ける以上に、当のアメリカや韓国など当事者と目される相手国からも「非現実的」だと言われている始末で、絶対実現不可能です。
他方、うちではまともな野党とまだ呼んでいる立憲野党の中で、立憲民主党だけが「現実的であれ」という呪縛にとらわれて、日米同盟をさらに強化することを衆院選での公約にしているのですが、経済的にも軍事的にも日本を圧倒する中国に、アメリカなどと連携していれば未来永劫に対抗しつづけられるんだという発想こそが非現実的です。
むしろ、北風びゅうびゅう吹かせるアジア版NATOとは逆の発想で、憲法9条を活かした平和外交によってアジア地域の緊張緩和を図る太陽政策こそが「現実的」なのだと立憲民主党も自信をもって主張すべきです。
ノーベル平和賞受賞の日に石破茂首相からの電話を受けた田中代表委員。
立憲民主党は被爆者に学んで、何とかまともな野党と呼べる状態を維持せよ。
8月15日は敗戦記念日。日本が侵略したアジア太平洋戦争とロシアが侵略しているウクライナ戦争の教訓は、戦争を避けることが政治の最高の目的だということ。その方法は軍拡ではなく憲法9条を生かした平和外交。
参考記事 村野瀬玲奈の秘書課広報室さんより
自民党の公約は信用できない理由。自民党の公約を報じることに意味のない理由。
戦時体制になれば国民各層いろいろな形で動員される。自民党を支持していれば「守ってくれる」わけでは絶対にないです。
維新の政治は結果責任ではなくて言い訳ばかり。 #維新は利権と汚職と税金泥棒 #維新は第2自民党 #維新は最悪の選択肢 #維新に投票してはいけない
編集後記
ウクライナ戦争から日本が得るべき教訓が、戦争をしないことではなく、核シェルターもっと持っておくべきことだというアホな軍事オタクの自称現実主義者がこの人です。
時事通信が今回の衆院選の争点の一つ、安全保障について
「安保厳しさ、与野党共有 防衛増税が対立軸に―各党公約・防衛力整備【24衆院選】」
という記事を安直に出し、その冒頭のリード文が
「東・南シナ海で軍事活動を強める中国。ウクライナ侵略を続け、核の脅しを繰り返すロシア。ウクライナへの大規模派兵が伝えられる北朝鮮―。27日投開票の衆院選で、与野党は安全保障環境の厳しさに関する認識をおおむね共有し、抑止力向上への主張を展開している。一方、政府方針の防衛増税に野党は軒並み反対する。選挙結果は今後の防衛政策や財源論に影響を与える可能性がある。」
となっているのですが、ロシア軍がウクライナを侵略し、北朝鮮がウクライナに大規模派兵していたらそれだけ北東アジアは手薄になっているわけで、日本列島を取り巻く安全保障の環境はかえって状態が良くなっている、と考えるのが真のリアリストですよ。
そういう理屈がわからないウクライナ戦争即時停戦派の自称リアリスト野口和彦群馬女子大教授は、全然現実を見ていなくて自分の持論である台湾有事の話に持っていこうとするからダメなんです。
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◆「今、核兵器をなくすことを真剣に考えなくてはいけない」
◆核共有「日本が戦争加害国になるかもしれない」
日本被団協の田中代表委員、石破首相の核共有が「心配で心配でしょうがない」 ノーベル平和賞お祝い電話でくぎ刺すも、かわされ「(首相が)切りたがっていたと感じた」
10/12(土) 20:23配信
中国新聞デジタル
石破首相からの電話を受ける田中さん
ノーベル平和賞の受賞が決まった日本被団協の田中熙巳(てるみ)代表委員(92)は12日、石破茂首相から祝意を伝える電話を受けた。田中さんによると、首相は「直接会って話をしたい」と提案した。田中さんは快諾しつつ、米国の「核の傘」への依存など現政権の安全保障への危惧も伝えた。
【画像】石破首相の核共有を危惧する田中代表委員
午後0時15分過ぎに、田中さんのスマートフォンに着信があった。首相は「おめでとうございます」と切り出した。田中氏によると、首相は小学生のころに被爆の悲惨な映像を見て以降、核兵器をなくすべきだと思っていると話したという。田中さんは「総理がそういう考えなら鬼に金棒」と応じた。
一方で田中さんは、核共有や非核三原則の見直しなど首相の安全保障の考え方に触れ「心配で心配でしょうがない」と投げかけた。首相は「現実的な取り組みが必要」などとして議論を避け、「話す機会を持ちたい」と提案したという。
田中さんは7分余りの通話後、「被爆について知っていると言うのに、なぜ今のような考えになるのか」と首をかしげた。事前の連絡では通話時間に制限はなかったが、「(首相が)切りたがっていたと感じた」と述べた。
中国新聞社
12日正午すぎ、ことしのノーベル平和賞を受賞することになった、日本被団協=日本原水爆被害者団体協議会の田中煕巳代表委員のもとに、石破総理大臣から電話があり、お祝いのことばが伝えられました。
田中代表委員によりますと、石破総理大臣はお祝いのことばを述べたあと、核兵器は究極的には廃絶すべきだという思いがある一方で、安全を守るためには現実的な対応をしなければならず核抑止が必要だとする考えを示したということです。
これに対し、田中代表委員は電話口で、「軍備で安全を保とうとすると行き着く先は核兵器になり、抑止力として核を考えると、抑止が効かずに使われることを私たちは考えてしまう。大変難しい国際情勢の中でも、話し合いで解決することを日本が先頭に立って進めてほしい」と訴えていました。
ことしのノーベル平和賞を受賞することになった日本被団協が22日、日本外国特派員協会で記者会見し、「生きているかぎり被爆の実態を伝えていかないといけない」と今後の活動への決意を改めて示しました。
東京 千代田区の日本外国特派員協会が開いた会見には、日本被団協=日本原水爆被害者団体協議会の田中熙巳代表委員が招かれました。
田中さんは、13歳の時に長崎市の自宅で被爆し、その後、多くの遺体が放置された爆心地の光景を目の当たりにしたことを証言したうえで、「こんなひどい殺し方をしてはならないと強く感じ、それが今日までの信念となっている」と述べました。
また、日本被団協が果たした役割について、記者から問われた田中さんは「被爆者たちはことばや絵、歌など、さまざまな形で証言活動を行ってきたが、日本政府が核による抑止政策を否定しないのは、国民が被爆の実相を十分理解していないからだと思うので、それが最大の悩みだ。被爆者としては、私が最後の世代であり、生きているかぎり被爆の実態を伝えていかないといけない」と決意を示しました。
そして、これからの活動について「被爆2世も明らかに原爆の被害者であり、その2世が中心となって、若い人たちが核兵器をなくすための活動をやっていってもらいたい」と述べました。
「不適切な比較」 被団協委員のガザ発言批判―駐日イスラエル大使
市川とみ子軍縮大使は記者会見で「受賞決定は極めて意義深いとの日本政府の見解を示した」と説明した。決議案は11月上旬に同委を通過し、12月上旬に総会本会議で正式に採択される見通し。
◇「3正面」にらみ
中国は過去30年間で国防費を30倍超に増やし、不透明な軍拡にまい進。ロシアは日本周辺で中国軍との共同活動を活発化させ、北朝鮮は核・ミサイル開発などで朝鮮半島の緊張を高める。これらの「3正面」をにらみ、岸田前政権は2022年末に安全保障関連3文書を策定。防衛費を5年間で総額43兆円と大幅に増やし、反撃能力(敵基地攻撃能力)を保有する方針を決めた。同志国との連携のため、殺傷能力を持つ装備品輸出の要件も緩和した。
一方、恒久財源確保のための防衛増税は先送りされたままだ。石破茂首相(自民党総裁)は「年内決着」を掲げており、年末策定の税制改正大綱が焦点となる。サイバー分野では、平時から通信を監視して攻撃を防ぐ「能動的サイバー防御」の法整備も宙に浮いている。
自衛官不足も深刻で、昨年度の採用は予定の51%と低迷。首相は近く関係閣僚会議を開き、自衛官の処遇改善に取り組む意向だ。立憲民主党や日本維新の会も対策強化を掲げる。
◇地位協定改定、野党積極
主要6党のうち、共産党を除く5党は一定程度の防衛力整備が必要との立場だ。3文書に基づく防衛力強化を訴える自民、公明両党だけでなく、立民も「新領域を統合した防衛能力の強化、継戦能力の向上」を提唱する。
ただ、43兆円の防衛費について、立民は「乱暴過ぎる」(小川淳也幹事長)と批判し、内容を精査すると主張。維新は防衛費の水準は認めつつ「安易な増税は反対」との立場。国民民主党も増税に頼らない財源確保を求める。
首相が自民党総裁選で訴えた日米地位協定改定、アジア版北大西洋条約機構(NATO)は、党内議論を経ていないとして自民公約に盛り込まれなかった。地位協定見直しは、立維共国4党が公約に明記したが、議論は深まっていない。
共産は「大軍拡」に反対し「包摂的な平和枠組みづくり」など外交強化を訴えている。
市民連合
自民・石破新総裁、「核持ち込みなし」の核共有を!と定義上も過去の発言からも無理な主張(2024.10)
9月27日に自民党新総裁に選ばれた石破茂氏は、9月16日のネット討論会で、次のように「核持ち込みなし」の核共有についての検討を提唱して話題を呼んだ。
「核共有っていうのは意思決定の過程を共有しましょうってことですから、非核三原則に触れるものでも基本的にはないということで。この話はもう少し真面目にしなきゃいかんですよ。核攻撃を受けた国であるだけに。」
「核共有」というのは、ヨーロッパの北大西洋条約機構(NATO)諸国に米国が配備している核兵器に関して使われる概念であり、石破氏自身、過去には、日本に米国の核兵器を「持ち込む」ことを前提に日本も「核共有」を検討すべきだと主張していたことから言って、今回の主張には相当の無理がある。以下、核共有の定義と、過去の発言という二つの点から、氏の主張について吟味してみよう。
核共有の定義
現在、ベルギー、ドイツ、イタリア、オランダのNATO4カ国に米国が配備しているそれぞれ15発ずつの核爆弾、計60発が「核共有」状態にある。4カ国のパイロットたちが定期的に模擬投下訓練を受けていて、核戦争の際には実弾を投下する仕組みだ。核兵器の非核兵器国への移譲は、核不拡散条約(NPT)第1条で禁じられているが、普段は米国管理下に置いておいており、核戦争が始まったら、条約はご破算になるからこのシステムに問題はないというのが米国(及びNATO諸国)の主張だ。NPT交渉において旧ソ連は、以前からNATO諸国に配備されていた米国の核兵器に関する米国の主張を受け入れたという背景がある。この仕組みによって「西ドイツ」などの独自核武装を防ぎたいという点で米ソ双方の利害が一致したのだ。
NATO加盟国は全て(フランスを除き)「核計画グループ」に参加していて、NATOの核抑止の状況・活用に関する協議・決定に関わっている。たただし、核投下の最終決定を下すのは米国大統領だ。(ヨーロッパの5カ国に合計約100発の米軍の核兵器が配備されているが、イタリアのアビアノ基地配備の20発は米軍機用であり、トルコ配備の20発には投下用に割り当てられたトルコ機はなく、米軍自身の投下用航空機も常駐とはなっていないことに注意。)
核共有は、単なる「持ち込み」を超えた体制だ。日本は、NPT2条で、核兵器を「直接または間接に受領しない」ことを約束している。米科学者連合(FAS)の核問題専門家ハンス・クリステンセン氏は筆者へのメール(2018年4月4日)で次のように述べている。「NPTが発効する前から存在していたNATOの核共有体制と異なり、日本との核共有は新たな取り決めとなる。米国の核兵器を受けとる明確な意図をもって、日本の航空機を装備し、日本人パイロットの訓練をすることは、たとえ、NPTの文言に違反しないとしても、その精神に反するものであることは明らかだ。日本のNPT加盟国としての地位と両立し得ないと考える。」
以下、時系列的に石破氏の発言を見ていこう。
2017年 石破氏、核兵器の持ち込みを前提に核共有の検討を提唱
石破氏は、2017年9月4日、自身の議員グループ「水月会」で、同日に行われた北朝鮮の6回目の核実験に触れ、米国の核兵器を持ち込まないことを含む非核三原則を見直すべきだと主張した。このことがきっかけとなって招待された9月6日のテレビ朝日の番組で、同氏は、米国の核の傘で守ってもらいながら「持たず、つくらず、持ち込ませず、議論もせず」でいいのかと問いかけ、「ニュークリア・シェアリング」(核共有)も含めて議論をすべきとの考えを示した。そして、9月8日には、自身のブログで、核共有などの「核戦略については随分と以前から公の場でも論じて」きていると説明した。
この後、石破氏は中央公論11月号に「『持ち込み』から共同保有まであらゆる議論が必要だ」と題された論考を発表した。そこでは次のように述べている。
「3原則のうち『持ち込ませず』について、もう少し可能性を広げて検討し、議論してみるべきです。それは日本の米軍基地に核ミサイルを持ち込み、配備することになるのか。または、共同保有、『ニュークリア・シェアリング』という道筋になるのか。結論まで、緻密な検討が必要になるでしょう。」
2022年 注目された安倍晋三元首相の核共有検討の主張と石破氏の反応
2022年2月27日、フジテレビの番組で安倍晋三元首相が、核共有の議論をすべきだと述べて注目されたことは、まだ記憶に新しいだろう。ロシアによるウクライナ侵攻を背景になされた元首相の発言は以下の通りだ。
「国内核の問題は、NATOでも例えば、ドイツ、ベルギー、オランダ、イタリアは核シェアリング(核共有)をしているんですね。自国に米国の核を置いていて、それを(航空機で)落としに行くのはそれぞれの国がやるというデューアル・キー・システムですね。こういうことをやっているということは、恐らく多くの日本の国民の皆さんも御存じないだろうと思います。日本はもちろんNPTの締約国で、非核三原則がありますが、世界はどのように安全が守られているか、という現実について議論していくことをタブー視してはならないと私は思います。」
これに呼応して、石破氏は翌3月7日、ABEMA Primeに出演し、やはりロシアのウクライナ侵攻に危機感を示しながら、次のように述べている。
「私は核共有の話を、何年も前からしてきた。“そんなことをやっても意味がない”、“最終的にはアメリカが使う権限を持っている。戦闘機に積むタイプのものだから、実際に使うことになっても、ものすごく時間がかかる”など、否定論はいっぱいある。しかし、なぜドイツやベルギーなどの国々がこの政策を採っているのかを突き詰めて理解しないまま“そんなものはダメだ”と言うのは思考停止だ。」
岸田文雄首相は、2月27日の安倍発言の翌日、参院予算委員会で「非核三原則を堅持する我が国の立場から考えて認められない」と核共有導入の可能性を否定した。
一方、自民党は、安全保障調査会(会長・小野寺五典元防衛相)が3月16日に核共有問題について勉強会を開いた。高市早苗政調会長(当時)の求めに応じたものだ。報道によると、岩間陽子政策研究大学院大教授と神保謙慶応大教授の講演で、配備された核が最初の攻撃対象となるなどの説明を受け、調査会として、「核共有は日本にはなじまない」との結論に達したという。
この後、安倍元首相は、5月6日、BSフジの番組で、日本に対する核攻撃があった場合の報復の手順を日米で決めるべきと主張している。「必ずアメリカが報復すると相手が思わなければ抑止力にならない。核の傘をより現実的にしていくため、どのような手順で報復をするのか等を日米で協議し決めていく必要がある。日本も核シェアリングをしろというのではなく、核についての議論を深めていくべき」という。上述のNATOの核計画グループの機能を意識してのことだろう。
なお、安倍発言に関連して、2023年9月13日、米国訪問中の立憲民主党の泉健太代表(当時)が、前日にモイ国務次官補代理(東アジア・太平洋担当)から「日本と韓国における米国の核共有は非現実であり、米国は望んでいない」と伝えられたことを明らかにした。
2023年 石破氏、国会で「核配備抜き」の核共有を主張
石破氏は、2023年12月15日衆院予算委員会で、次のように述べて新しい核共有の定義を披露している。
「故安倍総理が何を考えておられたか知る由もございませんが、核共有というのは、核兵器を共有することでもない。管理権を共有することでもない。そして、使用の決定を共有するものでもない。共有するものは何か。核抑止によるリスク、効果、それを共有するのであり、意思決定に至るプロセスを共有する。それがニュークリア・シェアリングの本質だと私は思っているし、非核三原則に抵触しない形でもそれは可能なものだと思っています。」
石破氏は、ここで、核共有の本質は「意思決定に至るプロセスを共有する」ことだとして、核共有の「再定義」を試みている、これは、氏の「個人的理解・感想」であり、これを基に日本も核共有を検討すべきと主張するのは、国際的にもいらぬ誤解を招く。「核配備抜き」が本心であれば、核抑止・核使用について日米双方の理解を深める仕組みを作りたいと言えばいいだけの話だ。
付言すると、1999年に、核共有に詳しいドイツの「ベルリン大西洋安全保障情報センター(BITS)」のオットフリート・ナサウアーから、「核配備抜き核共有」の可能性、利点について聞かされたことがある。ただし、これは、ヨーロッパにすでに配備されている米国の核兵器を撤去した上で、既存の核計画グループの協議機能を残そうという話だ。米国の一方的な核使用決定を牽制するという意図に基づくもので、石破氏の「再定義」とは全く異なる。
岸田首相は、石破氏の提案に対し、「米国の拡大抑止は、我が国の安全保障にとって不可欠」とした上で、核共有については、「非核三原則や原子力基本法を始めとする法体系との関係からは認められず、政府として議論することは考えていない」と応じた。
2024年9月末 石破氏、アジア版NATO提唱 核持ち込み・核共有の検討を!と
石破氏は、9月27日に米ハドソン研究所が公表した自民総裁選候補者らの論考の中で、「アジア版NATOにおいても米国の核シェアや核の持ち込みも具体的に検討せねばならない」と述べている、と各紙が報じた。石破氏には、この主張と、2023年の岸田首相への問いかけや、総裁選の中で披露した「核配備抜き核共有」論との矛盾について、明確な説明をする責任がある。
核共有についての情報共有の必要性
2022年の安倍発言の際に、結論が出たかの印象を与えたが、核共有論は登場し続けている。とりわけ、今回は自民党総裁・首相の主張となることを考えると、早急に国民や政治家の間で核共有についての正確な情報が「共有」されるようにすることが重要だ。
なお、高市早苗候補は、2022年4月19日、にっぽん放送のインタビューで、「いまの日米同盟のなかで、そのような仕組み[核共有]がつくれるかどうかと言うと、かなりハードルが高いのではないでしょうか。ただ、議論すること自体は封じられるべきではないと思います」と述べている。だが、有事の際には国民の命を守るために、「核の持ち込み」は例外として認めるべきとの主張だ。総裁選に合わせて出版された編著『国力研究 日本列島を、強く豊かに。』でも、高市氏は「持ち込み」について同様の主張を展開している。
(2024.10)
プロフィール
田窪 雅文(たくぼ・まさふみ)
ウエブサイト「核情報」http://kakujoho.net/ 主宰。「核分裂性物質に関する国際パネル(IPFM)」メンバー。主要著書に「プルトニウム:原子力の夢の燃料が悪夢に」(フランク・フォン・ヒッペル、カン・ジョンミンと共著、緑風出版、2021年)。
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維持や更新費用ですが、5大国と印パ、イスラエル北朝鮮の9ヵ国で2020年で8兆円かけてるようです
しかしヤフコメじゃ「核さえ持ってりゃウクライナもあんな目に遭わずにすんだ」みたいなのばっかですから、アホネトウヨの脳みそがこの8兆円を「高い」と捉える筈もありません
むしろこの9ヵ国には国家財政を圧迫するほどこれらにコストをかけてもらって、石破や松井一郎には「レンタルしてほしけりゃ闇金なみの高利になるぜ」と脅かしてやってほしい(笑)
ポロニウムといえば、リトビネンコ暗殺事件が真っ先に頭に浮かびます。
兵器としてだけでなく、「核」は本当に危険です。
医療向け等限定的な利用以外は本当にすべきではないですね。
核のコスト…
以前、物理学者の佐藤文隆さんが、もし原子爆弾が、濃縮技術が難しく高価な「ウラン」型だけで、安価な「プルトニウム」型が開発されていなかったら、戦後の核兵器の濫造はされなかったのでは、と言うことを書かれていました。
(青土社『現代思想』2024年7月号)
リトビネンコの訴えが正しければ、プーチンという男は99年のモスクワ高層ビル連続爆破だけでなく2002年の劇場占拠事件にも関与が疑われます
この20年、あの男の本質は1ミリも変わってなさそうですね