これは異例ですが、素晴らしい画期的な判決です!
暴力団組長と交際していたなどと週刊文春に報じられ、2013年の参院選への出馬辞退を余儀な くされたとして、元女優の田島美和さん(51)が文芸春秋に1650万円の賠償などを求めた訴訟の判決で、東京地裁の倉地真寿美裁判長は2015年5月 27日、440万円の賠償と謝罪広告の掲載を命じました。
判決で倉地真寿美裁判長は
「関係者の不自然な供述しかなく、客観的な裏付け資料が存在しない」
「記事の重要部分が真実とは認められず、政治活動に支障が生じた」
と認定するとともに
「名誉毀損(きそん)の程度が甚だしく、政治活動の妨げとなっている」
として、週刊文春の1ページ目と、ホームページに1年間、謝罪広告を掲載するよう命じました。
この判決によると、週刊文春は2013年5~6月、田島さんが「暴力団組長の愛人だった」などと報じたことで、田島さんは自民党の公認を得て参院選比例代表に立候補予定だったのに、報道後に公認を辞退し、立候補できなかっというのです。
この判決の画期的なところはもちろん、謝罪広告を出す場所を週刊誌の1ページ目と指定したことと、HPに一年間謝罪広告を掲載するように命じたところです。もちろん、謝罪広告の文面・内容と大きさ・文字のポイント数などは細かく指定しているはずです。
従来の謝罪広告の例
従来、週刊文春や新潮などの週刊誌の記事が名誉毀損行為と認定され、損害賠償が命じられても、謝罪広告までは認めないことが多かったのです。
また、謝罪広告を命じても、判決ではその掲載場所までは指定しないので、週刊誌は一番後ろの目次の上に掲載するというのが通例でした。
しかし、それでは名誉を毀損する表現に比べて、名誉を回復する効果が著しく乏しく、私も憲法の授業でそういう謝罪広告の例を示しながら、これはおかしいと言い続けていました。
ですから、謝罪広告を掲載する場所を指定するのも、ホームページに一年間も掲載することを命じるのも、現在のマスメディアによる個人の被害の実態に沿ったもので、私は画期的な良い判決だと思います。今後もこういう判決が出ることを期待します。
今回の判決は、事後的とはいえ謝罪広告と慰謝料を命じることで週刊文春の表現の自由を制約するものですし、さらには謝罪広告の出し方まで指定するもので、表現の自由の具体化である週刊文春の編集権をも制約するものです。
ですから、裁判所も相当悩んだでしょうし、週刊文春の記事の内容が相当ひどく、またそれによる「与党の公認を辞退し、立候補を取りやめる」という事態によ る名誉権とはまた別の権利である参政権侵害についての悪影響が、普通の事例とは違うという点も考慮されたでしょうから、この判例が一般化するかどうかにつ いてはまだ判断しかねます。
それでも、この判決は学界でも論議を呼び判例集に載りそうですし、上級審でも維持されるかは微妙ですが、それだけに勇気ある判決と言えるでしょう。
ちなみに、個人的なことですが、倉地真寿美判事は司法研修所で同期同クラスの裁判官。友人として非常に嬉しい判決でした。
確かに週刊文春をはじめとするマスメディアによる個人の人権侵害は目に余るものがあります。また、昔と違って紙媒体だけで表現された内容が伝わるだけでな く、今はネットで情報が拡散し、しかもそれがいつまでも検索すると出てくるという時代で、「忘れられる権利」が議論されている状況です。
ですから、この判決が投じた一石は重く、これから慎重に議論していかなければならないと思います。
倉地さん、やるなあ!
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名誉毀損―表現の自由をめぐる攻防 (岩波新書) 山田隆司 岩波書店
名誉権と表現の自由は時として衝突する。そのせめぎあいをどう調整したらよいのか。インターネット上の誹謗中傷や、損害賠償の高額化といった新たな問題をどのように考えるのか。七つの事件をたどりながら、名誉毀損をめぐる法的な枠組みを分かりやすく解説。表現の自由が危機にあるという問題意識から、今後の裁判のあり方を考察する。
表現の自由と名誉毀損 松井茂記 有斐閣
近年の名誉毀損訴訟に一石を投じる憲法学者による最新刊。
著者は一貫して,民主政において表現の自由を保護することの重要性を訴えてきた。本書は,アメリカの憲法的名誉毀損法の展開を踏まえつつ,従来の日本の名誉毀損法を憲法的に再検討する必要性を論証したものであり,著者の主張の集大成である。
近年増加しつつある名誉毀損訴訟に関わる法律実務家に理論的基礎を提供するほか、後半の第12章ではインターネット上の名誉毀損、第13章ではSLAPPを取り上げて現代の課題に応える。
この裁判で、東京地方裁判所の倉地真寿美裁判長は「記事の重要な部分は真実とは認められず、名誉毀損に当たる」と判断しました。
その うえで、政治活動の妨げになっていることなどを重くみて、名誉を回復する措置として、謝罪広告を週刊文春のほかの広告などを除いた1ページ目に1回載せる ことに加え、ホームページにもトップページの1番上に1年間掲載するよう文藝春秋に命じる異例の判決を言い渡しました。
また、損害賠償として440万円の支払いも命じました。
判決について、田島さんは「身の潔白のために正々堂々と闘ってきたので、非常にうれしく、感謝しています」と話しています。
一方、文藝春秋は「不当判決であり、即日控訴した」というコメントを出しました。
元女優の名誉毀損、文芸春秋に賠償と謝罪命令
週刊文春の記事で名誉を傷付けられ、参院選に立候補できなくなったとして、元女優・田島みわ氏(51)が発行元の文芸春秋に1650万円の損害賠償などを求めた訴訟で、東京地裁は27日、440万円の支払いと謝罪広告の掲載を命じる判決を言い渡した。
倉地真寿美裁判長は「名誉毀損きそんの程度は著しく、継続中の政治活動を妨げている」と述べ、謝罪広告は同誌の広告やグラビアを除く最初のページのほか、1年間は同誌サイトのトップページに掲載するよう指定した。
同誌は2013年5~6月の計3回、田島氏が暴力団関係者と交際していたなどとする記事を掲載。この影響で田島氏は同年7月の参院選での自民党公認を辞退し、出馬しなかった。
判決は、記事の根拠となった田島氏の知人の証言について「不自然で信用できない」と指摘し、「真実と信じる相当の理由もなかった」と認定した。
文芸春秋は「不当判決」とし、即日控訴した。
文春1ページ目に謝罪広告命令=自民元候補の名誉毀損—東京地裁
「元組長と交際していた」とする週刊文春の記事で名誉を毀損(きそん)され、参院選の自民党 の公認候補を辞退せざるを得なかったとして、元女優の田島みわ氏(51)が発行元の文芸春秋に1650万円の損害賠償などを求めた訴訟の判決が27日、東 京地裁であった。倉地真寿美裁判長は、同社に440万円の支払いと同誌1ページ目への謝罪広告掲載を命じた。
倉地裁判長は記事の主要部分について、「根拠となった関係者の証言は変遷していて信用できず、真実とは認められない」と指摘。「田島氏の政治活動の妨げとなっている」などとして、謝罪広告を同誌の誌面に加え、ウェブサイトのトップページに1年間掲載するよう命じた。
判決によると、問題の記事は、同誌の2013年5月16日号から同年6月20日号まで、3回にわたって掲載された。
田島氏は同年7月の参院選で自民党の比例代表候補に公認されていたが、報道などを受けて立候補を取りやめた。
文芸春秋の話 不当判決であり、即日控訴した。
[時事通信社]
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今まで何度裁判官に絶望させられたことかw堀越事件の東京地裁一審判決なんて酷かったなぁ。判決文読む裁判長の声がボソボソと、しかも段々小さくなって消え入りそうな音量でね。マイクあんのにwなんか後ろめたいことでもあるんかと思いましたね。
慰安婦問題で訴訟提起している植村さんにも同等の配慮がされることを切に願ってますよ。
それにしても、メディアによる表現の自由にかこつけた悪質な名誉毀損行為に対するペナルティーが弱すぎますよ。利益>ペナルティーなら何の抑止力も働かない、ヤり得なんですよ。「悪質なもの」については、判例で厳格な要件を創設した上で(ここで表現の自由との調整を図る)、今回の謝罪広告か、それ以上のペナルティーを課すようにするべきです。
ヘイトスピーチって表現の自由で保障されるんですか?「ヘイトスピーチ」の内容については、彼らがプラカードなんかに掲げているものを想定してもらえればいいのですが。
よく、ヘイトスピーチ規制は表現の自由への規制だから慎重にすべき、という主張を耳にするのですが、これって、ヘイトスピーチが表現の自由で保障されてるから表現の自由への制約になり、従って慎重にすべき、ということなのか、ヘイトスピーチは表現の自由の保障範囲外にあるので、それを法律で規制しても表現の自由への制約にはならないが、それにかこつけて表現の自由で保障される表現活動が規制されるおそれがあるから(もしくはヘイトとそれ以外の部分との区別を明確化するのは困難なため、ヘイトスピーカー自身の、ヘイト部分以外の表現活動を萎縮させるおそれがあるから)慎重にすべきなのか、ということです。
殺せとか、ゴキブリとか、こういう言葉の暴力が表現の自由で保障されてるなんて考えられない(表現の自由の保障根拠からしても保護に値しない。裁判所が、ヘイトが表現の自由の保障範囲内などということはおよそ考えられない)ですから、私は後者だと理解しているのですが。おそらく、ヘイトスピーカーって(安倍も同じく)、前者と理解してるんじゃないですか。
文春や新潮なんかマルコポーロみたいに廃刊すべきなんですよ、何度も賠償命令受けてるし。存在出来るのが不思議で仕方がない
カバさん
国際人権B規約は第2条で、「締約国は本規約が実効力あるものとなるよう国内法を整備することを約束する」、第5条で「他人の権利自由を侵す権利自由は何人にもどの国や団体にもない」、そして第20条で「戦争宣伝とヘイトスピーチは法律で禁止する」と定めています。
ヘイトスピーチを行なう権利自由などありません。
その日本国憲法も、第98条でこう定めていることに、御留意頂きたいと思います。
「日本国が締結した条約及び確立された国際法規は、これを誠実に遵守することを必要とする。」
第2項です。
憲法と、締結された条約は同格です。これは一般論ではありません。
因みに同格なんて論理的にありえないでしょう。バッティングしたらどうするんですかw
憲法のほうが上位という方が優勢だし、条約は列記の中には含まないものの「最高法規」なんだから原則としては正しそうだ。
しかし、実態としては安保条約をはじめ、あれは地位協定の方が偉いようだが、憲法より条約が上位として振る舞い、裁判所も統治行為論を捻り出して安保条約への違憲審査を避け続けている。
まあ、都合の悪い人権や労働関係の条約は、制裁がないから従わないという態度もまた闡明しているわけだが。
矛盾を避けるためか、批准された条約はアプリオリに合憲とみなすという話も聞いたことがある。
また、憲法が講和条約などの前に作られたことを考えると、(講和)条約よりも憲法の方が上位であるという建て付けを避けた気がする。講和条約は違憲・無効と最高裁が決定したら大事である。
ここは大学で教えているレイさんに、記事で縷々説明していただけるとありがたいし、何年にもわたって検索上位の記事になるのではと。
「忘れない権利はどうなんだ?」とふと思ったりする。
まあ、少なくともベッキーとゲスの件は忘れないと思うけどw
> ちなみに、個人的なことですが、倉地真寿美判事は司法研修所で同期同クラスの裁判官。友人として非常に嬉しい判決でした。
裁判官が友人の場合、もしrayさんが何かで起訴された場合、甘い裁定になったりしないものだろうか。
感情的な判決を下す裁判官もチラホラ聞きますし、ちょっと気になりますね。