「情けは人のためならず」、ということわざは、「情けは人のためにかけるものではないのですよ。人に情けをかけると言うことは、いずれは回り回って自分のためにもなるのですよ」という意味です。
ところが、これを、「情けをかけると人のためにならない」と誤用している場合も結構見受けられますよね。でも、それもむべなるかなというか言い得て妙、だと思います。
アルコール依存症の患者と家族の間に典型的に見られる関係を、下の二つの本にあるように、「共依存」と言い、これはアルコールでなくても片方に問題のある親子や夫婦などに広く見られる現象と言われてます。
共依存の関係にある一方が他方の面倒を見まくってしまう、たとえば、二日酔いで会社に行けないアルコホーリックの代わりに、上司に電話して謝ってやる、などのお節介は、結局、本人が自分の酒の問題と向き合う機会を奪ってしまいます。
また、このような「世話焼き」は、結局、支配の道具になってしまうとも指摘されています。家族にとっても駄目な「アル中」がいることが必要不可欠で、その世話を焼くという役割の固定がお互いに必要になってしまうのです。むしろ相手が立ち直らない方が良い。これが共依存の問題です。
病気のメンバーを抱えた家族が生き延びるために必要な事だったとは言え、いずれは自分たちの現状を客観視して、手をさしのべるのを止めなければいけません。
苦しいけれど、離れられない「共依存・からめとる愛」 朝日新聞出版 信田 さよ子
さて、チンパンジーは仲間から助けを求められると状況を的確に判断して手助けするけれど、「お節介」は焼かないことが、京都大学の研究グループの下の図のような実験で初めて明らかになりました。
京都大学霊長類研究所のグループは、チンパンジー2匹を隣り合わせの小部屋に入れ、片方にはいくつかの道具を与え、もう片方にはある特定の道具を使うことで初めてジュースを飲むことができるような状況を作りました。
壁にジュースを固定し、ストローを使うとジュースが飲めるようなケースでは、双方を隔てる壁が透明で互いの行動が見える場合、ストローを求めているチンパンジーに対し、きちんとストローを選んで渡しました。
一方、相手が見えない場合には、小窓から手を出すチンパンジーにホースやブラシといった関係のない道具を渡してしまい、すぐには最適な道具のストローを渡すことができませんでした。
これは、必要な道具をステッキに変えた場合でも同じ結果になりました。
これらの結果からチンパンジーは、人間と同じように状況を的確に判断して困っている仲間を手助けすることが分かりました。
そして、チンパンジーは助けを求められないと、9割の場合に、あえて手助けするということはなかったのだそうです。
研究グループの山本真也特任助教は「人間は相手が求めなくても『お節介』を焼く場合があるが、チンパンジーは、あくまで助けを求められなければ動かないということも興味深い」と話しているそうです。
人間にとってはごく当たり前の他人のために行動するという行為が、動物の間でどのように進化してきたのかを知る貴重な手がかりになるとして注目されています。
この成果は2012年2月7日、米科学アカデミー紀要の電子版で発表されます。
2012年2月7日付け中日新聞「チンパンジー、困った仲間見て手助け」より
はたして、お節介を焼くようになった人類は、チンパンジーから「進化」したんでしょうか。
以前の子ども未来法律事務所通信の中で、子育てでは「待つ」ことがとても重要だと書きました。
ある「事件」を起こした少年について、「彼、一生懸命書き上げて清書までした反省文を、さらに書き直しているでしょうか。それともこのまま提出することに決めたでしょうか。彼の選択に任せています。無理矢理するものじゃないですものね、反省って。」
と書いたのです。
「待つことですよ。人を育てるというのは、待つこと。たくさんの人たちが僕のことを待ってくれました。」
と。
子どもだちの成長を促すためには、彼ら自身が自分の力で解決する努力が大事ですし、失敗体験も貴重です。
大事なことは、
1 要らぬお節介と必要な援助を見分ける冷静さを持つこと
2 その際、相手のために援助するのであり、自分のためなら要らぬお節介であることを見極めること
3 要らぬお節介を焼かない勇気を持つこと(小さな親切 大きなお世話)。時には求められても断る勇気を。
4 逆に、必要な援助さえ求めることができない相手の場合にはそれを見抜いてあげる。常に関心を持つこと。
5 そして、必要な援助を求めてきたときには即座に援助する行動力を持つこと
だと思います。
普通の状態でも、過ぎたるは及ばざるがごとし、ですから、自分が過ぎるタイプか及ばないタイプかを見極め、普段から気をつけておくことが大事ですね。
そして、稀には、家族も自分も病気になっている場合もあります。
自分がなにか囚われている気がしたら、自分たちだけで考えずに、早めに心を開いて専門家や自助グループの援助を求めることが一番大切です。
心の病気も身体の病気と同じなんです。自分でなんでも治そうと思ったらこじらせてしまいます。
人に助けを求めることも大切です。バランスが大事。 よろしかったら上下ともクリックして頂けると大変嬉しいです!
求められれば助けるが…チンパンジー世話焼かず
チンパンジーは仲間が困っていると、必要な道具を手渡して助ける。ただ、人間のように自発的に手を差し伸べる「おせっかい」はしないことを、京都大霊長類研究所(愛知県犬山市)の山本真也・特定助教らが実験で確認した。 米科学アカデミー紀要(電子版)で発表する。 実験では、部屋の外にジュースの容器を置き、隙間から道具を差し出してたぐり寄せるなどしないと飲めないようにした。ステッキやストローなどの必要な道具はこの部屋にはなく、透明な板で隔てた隣室に置いた。 各部屋に1頭ずつ入れて行動を観察。母子など3組の計6頭を対象に、各組につき1日に2~4回、計24回ずつ実験したところ、板に開けた穴を通して必要な道具を渡す行動が約6割で確認された。 ただ、道具を渡した行動中、9割は相手が穴から手を伸ばして助けを求めた場合に行われ、相手の行動を観察して自発的に渡すことはほとんどなかった。 (2012年2月7日08時04分 読売新聞)
チンパンジー、困った仲間見て手助け2012年2月7日 09時16分 チンパンジーが仲間の求めに応じて、状況に合った道具を選んで手助けすることを、京都大・霊長類研究所(愛知県犬山市)の山本真也助教らのチームが実験で確認した。 自分が採ってきたえさを分け合うなど、チンパンジーが自分の利益につながらない「利他行動」を取ることは分かっていたが、相手の狙いや状況に合わせ、柔軟 に内容を変えることが分かったのは初めて。山本助教は「人間に備わっている相手を助ける思いやりや協力の起源を考えるきっかけになる」という。米科学アカ デミー紀要の電子版で近く発表する。 チームは、透明な板で分けた2つの部屋にチンパンジーを1匹ずつ入れ、片方にはステッキで引き寄せら れる場所かストローの届く場所にジュースを置き、もう片方の部屋にホース、ほうき、ステッキ、ストローなど7つの道具を置いた。透明な板に開けた小窓から 道具をねだる相手に、どの道具を真っ先に渡すかを観察した。 3組のチンパンジーの母子で実験した結果、平均して6割以上で適切な道具を選んだ。透明な板をパネルで覆い、相手が見えない場合は適した道具を選ぶ傾向がなかったことから、相手の狙いや状況をある程度理解した上で、柔軟に手助けすることが分かった。 また、状況が見えていても、相手から要求されるまでは手助けしなかったという。困っている相手に自発的に利他行動を起こすことがある人間との違いも分かった。 (中日新聞)
相手の置かれた状況を理解し、ニーズに合わせて手助けする能力がチンパンジーに備わっていることを京都大霊長類研究所の山本真也助教(比較認知科 学)らが明らかにした。ただ、求められないのに自発的に手助けすることはなく、進化の過程で「利他の心」がどのように発達したかを知る手掛かりになるとい う。7日の米国科学アカデミー紀要電子版に掲載される。 食べ物を分け与えるなどの利他的行動は多くの動物で観察されている。しかし、他者の気持ちを推し量り、その要求に応える心の働きは人間特有と考えられていた。 グループは透明板で仕切った小部屋A、Bを用意し、道具の受け渡しができる穴を開けた。Aには、ストローで吸うかステッキでたぐり寄せるか、どち らかの方法だけでジュースを飲めるようコップを置き、Bには、ストローやステッキのほか、はけやロープなど不要な物も含め七つの道具を置いた。 Aのチンパンジーが穴から隣に手を差し入れてBのチンパンジーに助けを求めると、Bは隣室の様子を見て何が必要かを考え、ストローかステッキを手 渡した。3組の母子で観察を繰り返すと、約7割で正しい道具を選択した。隣室が見えない不透明な仕切り板にすると、正しく選択できなかった。 一方、隣室のチンパンジーが手助けを求めなかった場合、道具の受け渡しはなく、“おせっかい”は焼かなかった。 山本助教は「チンパンジーも相手が困っている状況を察して助ける高度な能力がある。しかし、自発的に手助けするのは人間だけ。その違いが何に由来するか、さらに比較研究を進めたい」と話している。【榊原雅晴】 毎日新聞 2012年2月7日 東京朝刊
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