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弁護士・元ロースクール教授宮武嶺の社会派リベラルブログです。

数々の差別発言を繰り返し、政府の法務局から「人権侵犯」認定までされてもまだ開き直る杉田水脈議員を次の衆院選で公認するかどうか問われた自民党の茂木幹事長が「しかるべきタイミングで適切に判断」(呆)。

2023年11月07日 | #安倍晋三が諸悪の根源

2021年の衆議院議員総選挙に向けた候補者選びについて、公示直前に安倍晋三元首相の弟であり当時防衛大臣を務めていた岸信夫・自民党山口県連会長名義で、自民党の比例中国ブロックの公認決定に関して、杉田水脈氏の掲載順位の優遇を求めた文書まで出しています。

差別主義者杉田水脈議員をここまで増長させたのは安倍晋三氏なのです。

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 自民党の杉田水脈議員みたいな木っ端議員についていったい何年間、どれだけの数の記事を書いてきたのかわからないくらいで、うちのブログで平議員がこんなに特別扱いを受ける唯一の存在が杉田議員です。

 しかし、女性差別主義者で性的マイノリティ差別主義者で人種差別主義者で民族差別主義者、というコッテコテに差別主義者である杉田氏のような人物を与党が公認して国会議員で居続けられていること、とうとう岸田首相が総務政務官に任命して政府にも入れたこと、更迭後もまだ自分の差別発言について開き直っていること。

 この人の存在こそが、今の自民党政治の人権軽視の象徴であり、政治家を辞めるまで追求し続けざるを得ません。

 例えば、伊藤詩織さんの性被害についての名誉毀損訴訟でも敗訴判決が確定している杉田議員。

 そんな議員を公認し続けていることは、政府与党である自民党と岸田政権の差別体質の象徴でもあるのです。

伊藤詩織さんが東京高裁で杉田水脈氏に逆転勝訴!杉田氏に賠償命令。名誉毀損ツイートへの杉田水脈議員の「いいね」は「限度超えた侮辱行為」。#杉田水脈の議員辞職を求めます

 

 

 今回問題になっている杉田氏の言動は、2016年2月にスイスのジュネーブで開催された国連女性差別撤廃委員会に参加した際に、傍聴に来たアイヌの民族衣装やチマ・チョゴリ姿の女性たちをブログに掲載し、

『日本国の恥晒し』

と題して

「チマ・チョゴリやアイヌの民族衣装のコスプレおばさんまで登場。完全に品格に問題があります」

「同じ空気を吸っているだけでも気分が悪くなる」

と書いた問題です。

 品格に問題があるのはお前やろ!という話ですが、この文章について2023年10月に法務省札幌法務局では主にアイヌ民族に対する差別が、大阪では朝鮮人に対する人種差別が問題になり、いずれでも杉田氏の文章は「人権侵犯」と認定されて、両法務局から杉田氏は「啓発」を受けました。

 政府起案に人権侵犯認定されている杉田水脈という国会議員とこれを公認している自民党の方がまさに「恥晒し」でしょう。

札幌・大阪両法務局から人権侵犯認定され「啓発」された杉田水脈議員が「私は差別をしていない」「人権侵犯の制度が悪い」と開き直り。それでもまだ庇う岸田首相の人権意識が一番の問題だ。

 

 

 その後、杉田議員は2018年8月号の「新潮45」に

「LGBTのために税金を使うことに賛同が得られるものでしょうか。

 彼ら彼女らは子どもを作らない、つまり生産性がないのです」

と書きました。

 この問題は国際的に大々的に報じられ、同誌はこの性的マイノリティに対する差別記事を載せたことで廃刊になったのです。

 しかし、自民党は杉田議員を「指導」しただけで済ませました。

 なぜなら、杉田議員を見出して自民党の候補にして可愛がっていたのが、当時絶大な権力を誇っていた安倍晋三首相だったからです。

「男女平等は反道徳の妄想」「男女差別はない」「女性はいくらでも嘘をつく」「LGBTに生産性はない」と差別意識丸出しの発言を連発してきた杉田水脈議員を政務官にした時点で岸田内閣はアウトなのだ。

 

 

 そんな安倍派の杉田氏を、安倍氏に媚を売るために安倍氏存命中に総務政務官に任命したのが岸田文雄首相です。

 そして、杉田氏の統一教会との癒着問題や数々の差別発言が問題になっても、頑として更迭を拒否し続けたのも岸田首相。

 例えば、2022年12月2日には社民党党首である福島瑞穂議員が参議院予算委員会で、杉田の過去の発言を「ヘイトスピーチ」だとして

「内閣の一員としてふさわしくない。更迭すべきではないか」

と岸田首相に迫ったのですが、岸田首相は

「職責を果たすだけの能力を持った人物と判断した。

 政府の方針に従って職務に専念してもらう」

とまだ言っていました。

 しかし、杉田氏は松元総務相の指示という形で発言の一部について謝罪撤回し、12月27日になって杉田政務官は辞任し事実上の更迭となったのでした。

差別発言連発の杉田水脈総務省政務官がやっと辞任!=事実上の更迭。「差別していない」「そういう発言を聞いて応援してくださっている支援者の方もたくさんいらっしゃいますので」とネトウヨ配慮の最後っ屁(笑)

 

 

 さて2023年に話を戻すと、今回は法務省法務局から人権侵犯認定を受けて議員辞職をするのが当たり前の杉田議員何おですが、杉田氏は自分の当選前の発言を差別的だと批判して議員辞職を求めるのは

「言論弾圧」

だと言い始めました。

 杉田議員は11月2日付けで投稿された産経の月刊誌「正論」のYouTube番組で

「耐えられなくなって辞職する人が出たら、大変だと思う。こういう言論弾圧は許してはいけない」

と述べたんです。

 まず第一に、杉田氏に対する批判者にも表現の自由という基本的人権が保障されているのですから、だれにでも自由に彼女を批判する権利があるのであって、自分が批判された時だけ言論弾圧だというのがご都合主義であり、お門違いです。

 第二に、議員になる前の発言だろうがなってからの発言だろうが、差別発言が批判されるのは当たり前で、そもそも政治家でも議員でもない人でも、差別発言をすれば例えばメンタリストDaigoのように批判されます。

LGBTQ差別の杉田水脈議員、人種差別のDHC吉田嘉明会長、女性差別の森喜朗元首相、生活困窮者差別のDaiGo氏、女性差別の張本勲氏。差別発言をしたら「致命的な」社会的制裁が行なわれる社会に。

 そして、一般市民以上に現職の国会議員となればその差別発言が余計に厳しく批判され、議員としての資質が問題にされるのは当たり前です。

 第三に、「言論弾圧」という言葉は国家権力が市民の表現の自由を侵害するときに使う言葉であって、権力側にいる杉田氏を市民が批判するときに使う言葉ではありません。

 とにかく、杉田議員の憲法や人権に関する知識の不正確さは目を覆わんばかりであり、憲法尊重擁護義務を課されている国会議員は就任の時に憲法遵守の宣誓をして、憲法の授業を受けることを法的義務にすべきでしょう。

これぞまさにセカンドレイプ。

伊藤詩織さん、控訴審でも全面勝訴で山口氏に賠償命令!東京高裁判決「(被告山口氏の主張は)事実経過と明らかに乖離し信用できない」「(伊藤さんが)意識を失っているなかで(山口氏が)同意なく性行為を始めた」

 

 

 さて、そんな杉田水脈氏を次の国政選挙でもまた公認候補にするかについて、自民党の茂木敏充幹事長は11月6日の記者会見で、

「差別は決してあってはならない」

とする一方で

「党の公認は(衆院の)解散後、決定される。

 しかるべきタイミングで適切に判断していきたい」

と述べて、含みを持たせました。

 杉田氏をこれまで国会議員にし続けてきた自民党、政務官にまでしてしまった岸田政権のことですから、驚くには値しないのかもしれませんが、自民党がまだ杉田議員を国政選挙で公認するかもしれないと公言すること自体が、女性・LGBTq・民族・人種差別です。

 自民党が差別と人権侵害政党であることの証明です。

 万一杉田氏が選挙に出てきたときはもちろん落とさないといけないし、いずれにしても自民党は次の選挙で大敗させ、政権から引きずり降ろさないといけません。

中東の衛星放送局アルジャジーラの運営するオンラインニュースメディア「AJ+」も、投稿で「生産」を強調し、動画で杉田氏について、安倍晋三首相と一緒に写った画像を添え「与党の自由民主党の国会議員だ」と紹介した=同社の公式ツイッターより

アベ友の杉田「だったら結婚しなければいい」水脈議員の逃げっぷりが、右翼全体の卑怯さを端的に表している。

 

 

末尾の毎日新聞の大特集を見てほしいのですが、杉田議員の「LGBTには生産性がない発言」がナチスと同じ優性思想だということで、どれだけ国際社会で報じられたことか。

国という言葉を使うとナショナリズムに通じるので使いたくないのですが、杉田氏が言った

『日本国の恥晒し』

という言葉はまさに杉田水脈議員自身と、これを推してきた安倍晋三氏、岸田文雄首相にこそふさわしいのです。

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ユーチューブへの投稿動画で「差別を利用して日本をおとしめる人たちがいる」と語る杉田水脈衆院議員とコメント欄(画像の一部を加工しています)
ユーチューブへの投稿動画で「差別を利用して日本をおとしめる人たちがいる」と語る杉田水脈衆院議員とコメント欄(画像の一部を加工しています)

杉田氏主張は「差別扇動」 新投稿動画で持論展開 識者ら非難「二次加害だ」

 
2023年11月7日 5:00有料 沖縄タイムス 

 アイヌ民族や在日コリアンに関する差別投稿が問題となった自民党の杉田水脈衆院議員が、新たに投稿したユーチューブ動画で差別の意図を否定しつつ「差別がなくなっては困る人と闘ってきた」と持論を展開しており、専門家は「差別の扇動」「二次加害だ」と非難を強める。

 杉田氏は「チマ・チョゴリやアイヌの民族衣装のコスプレおばさん」などとした過去の投稿が札幌、大阪両法務局から人権侵犯と認定され「啓発」を受けた。その後、10月27日付で投稿した動画では「アイヌや在日(コリアン)の方々に対する差別はあってはならない」とした上で「逆差別、えせ、それに伴う利権。差別を利用して日本をおとしめる人たちがいる」と語った。11月1日にはX(旧ツイッター)で人権侵犯認定制度に疑義を呈した 杉田氏の動画での主張に、情報社会の偏見や差別に詳しい東洋大の高史明准教授(社会心理学)は「典型的な現代的レイシズムだ」と指摘する。

 現代的レイシズムは主に米国の黒人への偏見で研究されてきた。「劣った人種だ」といった露骨な差別表現が社会的に許されなくなった状況で、ネガティブな感情を正当化するため「差別はないのに騒ぎ立て、不当な要求で特権を得ている」と主張することなどを指す。

 月並みな偏見

 高准教授はこうした偏見が特定の人種だけでなく、女性や性的少数者にも向けられてきたとして「差別によるマイナスをゼロに近づけるための施策は優遇ではない。杉田氏の発言はマイノリティーのアイデンティティーを否定し、差別を扇動している」と断じた。

 動画は4日時点で5万回以上再生され、コメント欄には「真実を教えていただいた」「応援しています」などと称賛する意見があふれているが、高准教授は「杉田氏の振る舞いは特別ではなく、世界中で観察されてきた月並みなレイシズムだと知ることが、幻想を捨て距離を置くことにつながるのでは」と語る。

 「言葉の暴力」

 「開き直って二次加害を繰り返している」と一連の言動を非難するのは認定NPO法人「Dialogue for People」副代表のフォトジャーナリスト安田菜津紀さん。父親は在日コリアンだ。「ルーツを否定され、自分が社会に存在してはいけないと思わされるような言葉の暴力」にさらされ、差別をなくすための行動を起こすと「被害者ビジネス」とやゆされたという。

 杉田氏の動画での発言にも同様の意図が見えるとして「本来は不平等を是正するために社会が考えるべき課題を、被害者に責任を押し付けて黙らせようとしている。差別を温存、放置するものだ」と強調した。

 岸田文雄首相が杉田氏の動画に関し「一つ一つ申し上げるのは控える」と論評を避けた10月31日の発言も疑問視する。「一つ一つが重大な暴力性を持っており、厳正な処分が必要だ。杉田氏の重用を続けることは、自民党が人権問題を考慮していないと受け取られても仕方がない」と述べた。

(写図説明)ユーチューブへの投稿動画で「差別を利用して日本をおとしめる人たちがいる」と語る杉田水脈衆院議員とコメント欄(画像の一部を加工しています)

 

 

差別批判、辞職要求は「言論弾圧」と主張 杉田水脈氏、当選前発言で

自民党の杉田水脈氏

 自民党の杉田水脈衆院議員は、当選前の発言を差別的だと批判して議員辞職を求めるのは「言論弾圧」だと訴え、反発した。2日付で投稿された月刊誌のユーチューブ番組で「耐えられなくなって辞職する人が出たら、大変だと思う。こういう言論弾圧は許してはいけない」と述べた。

 言論弾圧は通常、国家などの権力機構が検閲によって報道や表現の自由を規制することを意味する。インターネットで自らの主張を自由に発信する一方、メディアや有権者らからの批判を「言論弾圧」と呼ぶ杉田氏の姿勢は、国会議員の在り方に照らして議論を呼びそうだ。

 杉田氏は、落選中だった2016年当時の差別的言動が、今年になって札幌と大阪の法務局から人権侵犯と認定された。(共同)

 

 

【政界地獄耳】杉田発言を許す自民党自体が差別的

★「LGBTには生産性がない」「(性暴力被害について)女性はいくらでもうそをつけますから」など、さまざまな差別発言・女性蔑視をまき散らしてきた元総務大臣政務官・杉田水脈。この政務官に抜てきしたのは首相・岸田文雄だった。昨年12月2日、社民党党首・福島瑞穂は参議院予算委員会で、杉田の過去の発言を「ヘイトスピーチ」と断じ、「内閣の一員としてふさわしくない。更迭すべきではないか」と問うたが、首相は「職責を果たすだけの能力を持った人物と判断した。政府の方針に従って職務に専念してもらう」と退けたものの同日、総務相・松本剛明の指示で発言の一部について謝罪、撤回した。同27日、杉田は政務官を辞任した。

★思えば2018年8月号の「新潮45」に「LGBTのために税金を使うことに賛同が得られるものでしょうか。彼ら彼女らは子どもを作らない、つまり生産性がないのです」と書き、騒ぎになった時に同誌は廃刊になったが、自民党は杉田を「指導」しただけだった。党内外からも多くの批判があったが、当時の首相・安倍晋三の強い庇護(ひご)の中にいた。16年2月にスイスのジュネーブで開催された国連女性差別撤廃委員会に参加した杉田は、傍聴に来たアイヌの民族衣装やチマ・チョゴリ姿の女性たちをブログに掲載し、『日本国の恥晒し』と題して「チマ・チョゴリやアイヌの民族衣装のコスプレおばさんまで登場。完全に品格に問題があります」「同じ空気を吸っているだけでも気分が悪くなる」と書いた。これが先月、大阪と札幌の法務局から人権侵犯と認定された。

★先月29日、杉田は一連の発言を巡り「差別がなくなっては困る人たちと戦ってきた。私は差別をしていない」とし、1日にはX(旧ツイッター)に「人権の定義に法的根拠はない」と書き込み、人権侵犯に認定する制度に疑義があると疑問を投げた。この発言をゆるし公認を出し続けている自民党自体が差別的であることに気づいていないのならば、既にそれは同罪と言わざるを得ない。(K)※敬称略

 

 

「生産性ない」はナチの優生思想 識者ら批判 海外メディアも報道

アルジャジーラの運営するオンラインニュースメディア「AJ+」は投稿で「生産」を強調し、動画で杉田氏について、安倍晋三首相と一緒に写った画像を添え「与党の自由民主党の国会議員だ」と紹介している=同社の公式ツイッターより

 人の価値を「生産性」で語ることが、はたして許されるのか。自民党の杉田水脈(すぎた・みお)衆院議員(比例中国ブロック)が、月刊誌への寄稿で、性的少数者(LGBTなど)を「子どもを作らない、つまり生産性がない」とおとしめた問題。国会議員が性的少数者への差別意識をむき出しにしたことが波紋を広げ、自民党本部前で市民らが杉田氏の議員辞職を求め抗議する事態に発展した。海外メディアも競ってこの問題を報じ、その中で複数のメディアが「生産性がない」の部分を強調している。「生産性」の観点から人を選別するのは、優生思想ではないのか。杉田氏の「生産性がない」という表現を、識者たちとともに掘り下げて考えてみたい。

海外メディアが引用符で強調

 杉田氏の寄稿は「『LGBT』支援の度が過ぎる」(「新潮45」8月号)。その中で「なぜ男と女、二つの性だけではいけないのか」「多様性を受けいれて、様々な性的指向も認めよということになると、同性婚の容認だけにとどまらず、例えば兄弟婚を認めろ、親子婚を認めろ、それどころかペット婚や、機械と結婚させろという声も出てくるかもしれない」などと独自の見解を展開した。全体として性的少数者蔑視に貫かれている。<picture>安倍晋三首相とともに24日の自民党役員会に臨む二階俊博幹事長(前列左)。この日、杉田氏を問題視しない姿勢を示し、批判を浴びた=党本部で2018年7月24日午前9時31分、川田雅浩撮影</picture>拡大

安倍晋三首相とともに24日の自民党役員会に臨む二階俊博幹事長(前列左)。この日、杉田氏を問題視しない姿勢を示し、批判を浴びた=党本部で2018年7月24日午前9時31分、川田雅浩撮影

 この寄稿がネット上で批判を浴びる中、自民党の二階俊博幹事長は7月24日の記者会見で、杉田氏の「生産性がない」という主張について「右から左まで各方面の人が集まって自民党は成り立っている。別に大きな驚きを持っているわけではない」と述べ、問題視しない姿勢を示した。これがさらに批判を呼び、27日に党本部前であった抗議集会に主催者発表で4000人が集まった。

 海外メディアも関心を寄せている。カタールの衛星テレビ局アルジャジーラの運営するオンラインニュースメディア「AJ+」は24日、英語版の公式ツイッターに杉田氏の写真をあしらい、

と投稿した。<……not“producing”children>と「生産」の部分を強調。過去に問題視された杉田氏の発言を紹介する動画も添え、4600件以上もリツイート(拡散)されている。<picture>「非生産的」に当たる単語が引用符で強調されている=英インディペンデントのニュースサイトより</picture>拡大

「非生産的」に当たる単語が引用符で強調されている=英インディペンデントのニュースサイトより

 一方、英国のインディペンデントは26日、ニュースサイト上で<日本の政治家がLGBTの人々を「非生産的」と呼んで批判を浴びている。同性愛の関係を容認する社会は潜在的な崩壊の危険性がある、と杉田氏は主張している>と報じた。やはり、引用符で‘unproductive’(非生産的)を強調している。このほか、米CNNテレビなども報じている。

 杉田氏は安倍晋三首相の出身派閥である細田派に所属し、国会でも右派的な発言を繰り返してきた。海外メディアでその発言が問題視されるのは、今回が初めてではない。6月に英国公共放送BBCのドキュメンタリー番組でインタビューを受けた杉田氏は、性暴力被害を訴えたフリージャーナリストの伊藤詩織さんについて「女として落ち度があった」と述べ、批判を浴びている。

大学構内にも抗議の貼り紙

 日本でも、杉田氏の「生産性がない」に対する批判が噴出している。

 京都大学では最近、名物だった学生の立て看板が撤去されニュースになったが、大学キャンパスの石垣に

 <杉田水脈議員の優生思想的発言に抗議する。人は「生産性」のために生きているのではない>

と大書した抗議の貼り紙が登場した。その写真がツイッターに投稿され、3000件以上も拡散している。

 ネット上では、

 <「生産性」のあるなしで人間の価値を判断し、差別するのは、人の能力に優劣をつける「優生思想」に基づいてユダヤ人や障害者、同性愛者などを大量に虐殺したり収容所に送ったりしたナチスの蛮行と「地続き」です>

など、杉田氏の主張とナチスドイツの優生思想との類似性を指摘する批判が目立つ。杉田氏の問題を巡る毎日新聞25日朝刊社説の一部を引いた<特定の少数者や弱者の人権を侵害するヘイトスピーチの類いであり、ナチスの優生思想にもつながりかねない>という指摘も、多数拡散されている。

 一方、7月26日で相模原市の障害者施設「津久井やまゆり園」での殺傷事件から丸2年が経過したことを踏まえ、「障害者は生産性がない」などと語ったとされる植松聖被告と杉田氏を比較するツイッターの投稿も少なくない。

 <植松(聖被告)の優生思想と(杉田水脈氏の)「生産性がない」は地続きである>

 <(杉田氏の「生産性がない」は)「役に立たない非国民は排除する」という意味の発言だよ。それは相模原事件の被告の考えと同じだよ>

                   杉田氏の議員辞職を求め自民党本部前で抗議する人たち=東京都千代田区で2018年7月27日午後7時51分、宮間俊樹撮影

杉田氏の議員辞職を求め自民党本部前で抗議する人たち=東京都千代田区で2018年7月27日午後7時51分、宮間俊樹撮影

 改めて問いたい。人の価値を「生産性」で語ることが許されるのか。歴史学者や障害者福祉の専門家ら4人に意見を聞いた。

「生産性ない」はナチと全く同じ

 歴史学者で成城大名誉教授の木畑和子さんの話

 LGBTの人たちについて「生産性がない」と断じた杉田水脈氏の主張には、驚かされた。彼らを問題視する姿勢が、ナチと全く同じだからだ。

 ナチ時代のドイツでは「健全な民族共同体」をつくるために出産奨励策が実践された。そして、子を「生産」しない男子同性愛者はこの政策に反するとして約10万人が逮捕され、その約半数が刑務所や強制収容所に収監された。こうしたナチの政策の背景には、ドイツの世界支配のために強健な兵士の大量育成が不可欠だったという理由があった。

 出産奨励に際しては、20世紀初めに欧米で成立した優生学のもとで遺伝的に「劣等」とされた障害者たちの出生を防止する断種法が作られ、出産抑制政策も同時に実行された。その犠牲者数は約40万人に上る。

 優生学自体は各国で社会改良の重要な手段と考えられ、自由主義者から保守主義者まできわめて幅広い人びとに支持されていた。しかし、実際に断種法が成立したのは、ナチ・ドイツ以外では、アメリカ合衆国の多くの州と北欧などいくつかの国だけであり、また断種手術をこれほどの規模でおこなったのはナチだけであった。

 また、杉田氏のLGBTに対する税負担を巡る議論は、ナチ体制が成立するきっかけとなった大恐慌の時代から、障害者を対象とする福祉政策の経済的負担を軽減する目的で断種政策が模索されていたことを想起させる。

 ナチ時代になると、きわめて安易な診断基準のもとで精神障害者とされた人びとに、強制的断種不妊手術が行われていった。その際、「不幸な子ども」が生まれないように、と人びとの同情心や不安を利用したキャンペーンも積極的に展開された。

 ナチ時代に人の「生産性」の有無という考え方は、療養施設などに収容されていた障害者たちを「労働可能」な患者かどうかで選別する政策にも表れた。労働ができず「生産性がない」とされた患者たちは、開戦後秘密裏に始まった「安楽死」政策の犠牲となった。その犠牲者数はドイツ占領地区も含めるとおよそ30万人となる。

 今日では優生思想と「安楽死」やホロコーストを直接的に結びつける研究者は少ない。とはいえ、ナチの優生思想は人権を全く無視したものであり、「安楽死」への道を開いたといえよう。

 ドイツは戦後、ナチによる戦争犯罪を厳しく追及してきたが、医師たちが深く関わった断種手術や「安楽死」の問題は長くタブーとされてきた。医師たちの一部やジャーナリストによってそれに光が当てられたのは、80年代前半からであり、そんなに昔のことではない。しかしその後、このナチ犯罪の過酷さに対する関心が非常に高まり、「過去」との取り組みが積極的におこなわれるようになった。

 そのようなドイツでも最近、反移民を旗印に差別発言を繰りかえす極右政党「ドイツのための選択肢」(AfD)が国会で野党第1党になった。世界的に自国第一主義や排外主義が強まる中、日本も例外ではなく、「生産性がない」といった差別的発言にはいっそう敏感になる必要がある。【聞き手・井上英介】

■きばた・かずこ 70歳。成城大文芸学部ヨーロッパ文化学科教授を4年前に退職し、現職。専攻はドイツ現代史で、ナチズムと医学を巡る論文多数。著書に「ユダヤ人児童の亡命と東ドイツへの帰還:キンダートランスポートの群像」(ミネルヴァ書房)など。ウォルター・ラカー「ホロコースト大事典」(柏書房)の翻訳に従事した。

他者を「不要」と決めつける暴力

 政治学者で東京工業大教授の中島岳志さんの話

 性的少数者に対する杉田水脈氏の「生産性がない」「不幸」という言葉は、勝手な価値判断で他者を「不要なもの」と決めつける暴力的な発想が透けて見える。私はこれに接して石原慎太郎氏が東京都知事だった2001年に暴言を吐き、批判を浴びたケースを想起した。

 石原氏は女性誌のインタビューで「女性が生殖能力を失っても生きているというのは無駄で罪」「男は80、90歳でも生殖能力があるが、女は閉経してしまったら子供を産む能力はない。そんな人間が生きているのは地球にとってあしき弊害」などと述べた。

 石原氏は後年、インタビューで脳梗塞(こうそく)の後遺症による悩みを打ち明け、自身に迫る肉体的な衰えにおびえ、繰り返し「怖い」と語った。「不要なもの」とみなしてきた存在に自らがなろうとし、自身の思想に自らが殺されているように見えた。人は誰もが少数者や弱者になり得る。誰かを「不要」と断じることは、未来の自分を殺すことでもあるのだ。

 しかし、石原氏のような存在に「ざまあみろ」という言葉を投げては、暴力的な発想を加速させるだろう。僕らの社会は、彼らも救いながら、自己責任論の悪循環を避けていかなければならない。

 杉田氏が政権与党の国会議員だという点も看過できない。杉田氏は、家父長的な家族観に強いこだわりを持つ右派団体「日本会議」に近い人物だ。今回の発言は杉田氏個人の発想というより、日本会議の発想に連なるものだろう。この日本会議のイデオロギーに近い安倍晋三首相が、杉田氏を選んで立候補させたということを忘れてはならない。安倍首相も潜在的に杉田氏と同じ発想を持っている可能性がある。

 前近代の社会は個人の性的指向におおらかだった。一方、労働力の確保と管理を重視する近代国家が誕生すると、「産まない性」は指導・矯正の対象とされ、同性愛は「特殊な存在」として排除された。「夫婦の健全な性のあり方」が規定され、それ以外の性がタブー視されるようになったのは近代国家の人口政策が要因だ。杉田氏の「生産性がない」という発言を極右勢力に限った極端な考え方だと片付けてしまえば、本質を見失うだろう。【聞き手・宇多川はるか】

■なかじま・たけし 43歳。北海道大准教授を経て東京工業大教授。専門は近代日本政治思想など。気鋭の論客として知られる。「中村屋のボース」で大佛次郎論壇賞受賞。他にも「秋葉原事件」「『リベラル保守』宣言」など多数。<picture>杉田水脈氏</picture>拡大

杉田水脈氏

相模原殺傷事件の被告と重なる

 障害者通所施設の運営に長年関わってきた日浦美智江さんの話

 杉田水脈氏の「生産性がない」という言葉が引っかかっていた。性的少数者はもちろんのこと、障害がある人やその家族が大勢傷ついたに違いない。何ということを言うのかと思う。だが、杉田氏の主張を肯定する人も一定数いるのだろう。自分たちの考える枠や基準でしか人を認めようとしない感覚が社会を覆っていると感じる。

 杉田氏の言葉に、やまゆり園事件の植松聖被告を想起した。2人の言葉に同じものを感じる。植松被告は知的障害者を「心失者」と呼び、殺害を肯定していると報じられた。人の心を勝手な基準で「ない」と決めつけた。杉田氏の主張もまた、自分の狭い枠に当てはまらない相手を、否定しているのではないだろうか。

 私は重症の心身障害を持つ大人や子供と関わる中で「命ある限り人には心はある」と確信している。植松被告が「心失」と言うからには、「心」は「失う」前にもともとあったのだろう。心を失わせた、奪ったのは誰なのか--と私は問いたい。

 重症の心身障害を持つ人たちは、生活の全てを他人に委ねざるを得ない。それでも、地域の中で喜怒哀楽を表しながら近隣の住人たちと交流を重ね、人と人とを結んでくれた。経済的な生産活動だけではない「働き」をたくさんしてくれた。

 私自身、そんな人たちとの人間関係の中で、自分の未熟さや想像力の乏しさを自覚することができた。言葉が話せなくても、私が笑うとケラケラッと笑う女性は、一緒に暮らす中で、障害を持つ人も同じ世界に生きているということを私に気付かせてくれた。その時、彼女にいとおしさを感じた。

 自分と考えが異なっている人、想像を超えた生き方をする人と出会い、交わることは、生きる楽しみを与えてくれるのではないか。そういう関係の積み重ねが人の世界を豊かにするのだと思う。

 自分の狭い枠に当てはまらない相手を否定し、他者を心の中で殺すような社会では、豊かに生きていけない。異なる価値観を持って異なる生き方をする他者と交わり、生を実り多きものにするような社会を願っている。【聞き手・宇多川はるか】

■ひうら・みちえ 80歳。1986年、重度心身障害児・者の通所施設「朋」を全国に先駆けて横浜市に開き、最重度とされる障害があっても地域活動に参加しながら社会生活を送る取り組みが注目された。これを題材に2002年にドキュメンタリー映画が作られ、04年には障害者福祉に尽力した人に贈られる「糸賀一雄記念賞」を受賞した。

「優生保護の犯罪」と表裏の関係

 「優生手術に対する謝罪を求める会」世話人で、立命館大生存学研究センター客員研究員の利光恵子さんの話

 杉田水脈氏は寄稿で、子どもを産む可能性がないとして、性的少数者のカップルへの行政支援に反対し、子を産まないことを否定するところまで踏み込んでいる。こんな発言をする国会議員が存在していることに、大きな驚きと憤りを禁じ得ない。

 戦時中の「産めよ増やせよ」のごとく、子を産まない人は国家の役に立たないという思想の持ち主なのか。杉田氏の発言は性的少数者を差別し、傷つけるにとどまらない。子を産めない人をおとしめ、子をもうけない性行為や子を産まないという生き方の選択を排除するものだ。

 世界では「性と生殖に関する健康・権利」(リプロダクティブ・ヘルス/ライツ)という考え方が登場している。1995年に日本政府も参加して北京で開かれた国連世界女性会議の「北京宣言」に盛り込まれた。内閣府も現在、推進している。

 「性と生殖の権利」について言えば、差別や強制、暴力を受けることなく出産するかしないかを自由に決められる権利を指す。人口政策と結びつけ避妊や中絶の権利を制約することに反対している。

 子を産み育てる権利だけでなく、産まない選択も尊重する。生殖だけでなく、あらゆる「性」を認める。そこには「性的な指向」も含まれている。杉田氏はこの権利を理解せず、人に「生殖」の義務だけを負わそうとしている。

 私は、日本で戦後も続いてきた旧優生保護法下の強制不妊手術問題について取り組んでいる。今年に入って被害者から訴訟が提起され、実態が明らかになってきた。

 この問題は、差別意識に基づいて障害者から産む選択を暴力的に奪った国家の犯罪で、子を産まない性的少数者を攻撃する杉田氏の主張とは一見かみ合わないように見える。だが、性と生殖に関する個人の自己決定権を侵害している点で共通し、コインの裏表の関係にある。

 敗戦後の食糧難や人口増を背景に、国は旧優生保護法で障害者を減らして人口の「質」を高めようとし、「どんな子を誰がどんな形で産むか」を管理しようとした。いま、その人権侵害の歴史を掘り起こし、罪と向き合うことを通じて、障害者を含むすべての人の性と生殖の権利を守るために考え、行動すべき時だ。それに逆行する今回の杉田氏の発言は許し難いものだと感じている。【聞き手・日下部元美】

■としみつ・けいこ 64歳。薬剤師として働くかたわら1990年ごろから旧優生保護法下の強制不妊手術問題に取り組み、「優生思想を問うネットワーク」などのグループで活動。2016年に「戦後日本における女性障害者への強制的な不妊手術」を出版。「グループ生殖医療と差別」会員。月刊誌「新潮45」8月号に掲載された自民党・杉田水脈議員の寄稿=2018年7月21日撮影

月刊誌「新潮45」8月号に掲載された自民党・杉田水脈議員の寄稿=2018年7月21日撮影


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3 コメント

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ヘイト自民党は即刻下野させるべき (the hang man)
2023-11-07 18:34:31
杉田水脈が異様な差別主義者なのは承知の通り。
またそれを推し続ける異様なヘイトメディアのサンケイ。
で、その連中がいまだに心酔しているのが安倍晋三。

杉田のことが超お気に入りだったという安倍。
つくづく安倍が異様な人物だったことを物語りますね。

それらを容認し続けるヘイト体質の自民党と安倍傀儡の岸田。

迷走泉が言った5年後?でなんて冗談じゃない。
こんな連中は次の選挙で一発で下野させるべきですよ。
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情けないのは (時々拝見)
2023-11-07 18:43:04
比例代表制で杉田氏より下の扱いを受けてる自民党議員でござい。
スギタヨリ、なお及ばざるがごとし。自民党も顔写真順番に貼りましょうよ。
最近リベラル嫌いの全体主義者も増えてるようですし、自民党は英語で、エゴイスティック・ピープルズ・パーティですっ、キリッてついでによろしく。


主観ですが、伊藤氏の写真、前より良くなりましたね。
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エクストリーム・モグラたたき? (津木野宇佐儀)
2023-11-08 02:39:12
党が厳正な処分をしないなら、有権者が断固と選挙で……
………………………………………………
……なんか、今回もかつてもアレもコレも、自称「保守」(=時代錯誤の反動、復古)の不祥事は、全部の穴から、否、穴だけでなしに上下左右前後から一斉にモグラが出てくる「エクストリーム・モグラたたき」みたいでキリがないですね…
…でも呆れてる場合じゃなくて、あきらめずに公人の差別・不正等はきちっと叩き続けないといけないですね
返信する

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