2017年2月9日、少年法の適用年齢を現行の20歳未満から18歳未満へ引き下げることについて、金田勝年法相が法制審議会に諮問しました。
これは18歳から選挙権を与え、選挙で投票できるようにした改正公選法が、2016年6月に施行されたのにあわせたものです。
つまり、同法の付則に民法や少年法の適用年齢などを検討することが明記されたのを受け、政府は成人年齢を20歳から18歳へ引き下げるために民法の改正案を検討しています。
そこで、少年法の見直し議論も、こうした「他の法律との整合性」から進められているのです。
しかし、法律によってその制度趣旨は異なりますから、少年法を公職選挙法や民法に合わせる必然性は全くありません。選挙権があるから犯罪を犯したときも少年法を適用しない方がいいという理屈は成り立ちません。
むしろ、少年法は少年の保護と更生という少年法の趣旨に沿って適用年齢を考えるべきです。
現行少年法では20歳未満で事件を起こすと全て家庭裁判所に送致され、事件の内容や犯行時年齢に応じて処分を検討します。少年院に送致された場合、生活知識の習得や就労支援など更生に向けた指導が行われます。
同法の適用年齢が18歳未満まで引き下げられると、18、19歳がそうした保護処分から外れ、現在の成人と同様の刑事手続きで扱われることになります。
つまり、17歳までしか少年法の適用を受けないように法改正されれば、事件を起こした18、19歳は保護観察や少年院送致など更生のための施策が受けられなくなるのです。保護対象から18、19歳を外すと、保護される人数は約4割減るといわれます。
18歳・19歳の少年に成人と同様の刑罰を科せば、成人とともに刑務所へ収容し、刑務作業をさせるだけになると、罪を反省させるなど少年院が取り組む教育的側面が抜け落ち、更生を図るのは難しくなります。
また、逆に少年法なら保護観察などの保護処分が撮られる事案でも、普通の刑事事件として扱われると、最初は起訴猶予や執行猶予になってしまって、かえって反省の機会を失います。
専門家の間では
「立ち直りのための教育の機会が奪われてしまう」
と懸念する声が圧倒的です。
つまり、再犯少年が増え、社会の危険も増すことになるのです。これでは犯罪被害者を増やすばかりで、少年のためのみならず社会のためにもなりません。
少年事件は減り続けており、凶悪事件も減っていることにも留意すべきです。重大犯罪を犯した16歳以上の少年は原則検察に逆送され、成人と同じように処遇される仕組みも整っています。
少年が絡む凶悪事件が起きるたびに法改正を求める声が高まりますが、刑法犯として摘発される少年は2004年以降減少を続け、15年は前年比19%減の4万8680人でした。
少年法の運用はうまくいっているのですから、少年法の適用対象を減らすなど言語道断。むしろ、21~22歳くらいまでは事情によって少年法の適用を考えた方がいいくらいなのです。
なんでも厳罰化したらうまくいくというものではありません。
少年のためのみならず将来の被害者を減らすためにも、非行少年に対して少年法による手厚い保護をすべきなのです。
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少年法適用「18歳未満」 法相、法制審に諮問
2017年02月10日 11時11分 佐賀新聞
■「教育の機会奪う」懸念も
金田勝年法相は9日、少年法の適用年齢を20歳未満から18歳未満へ引き下げることについて法制審議会(法相の諮問機関)に諮問した。18歳から投票できるようにした改正公選法に少年法見直しの検討が明記され、自民党も引き下げを提言していた。ただ法改正されれば、18、19歳は保護観察や少年院送致など更生のための施策が受けられなくなり、起訴猶予や罰金刑で済むケースが増えるとみられる。専門家から「教育の機会を奪う」と懸念する声が出ており、法制審で議論の焦点になりそうだ。
受刑者らの処遇を充実させるための刑事法の在り方も諮問。刑務作業を義務付ける「懲役刑」と義務のない「禁錮刑」を一本化する新たな刑罰の創設も議論のテーマとなる。答申まで1年以上かけて議論される見通し。
現行少年法では、20歳未満で事件を起こした場合、全件が家庭裁判所に送致され、少年院送致などの是非が検討される。適用年齢を引き下げれば、成人と同様に扱われることになり、弁護士らは「立ち直りのための支援を受ける機会が減り、再犯が増える恐れがある」と指摘。一方、犯罪被害者などは「犯罪抑止につながる」と賛成している。
2016年6月に選挙権年齢を18歳以上にする改正公選法が施行され、付則で民法や少年法について検討することが明記された。自民党の特命委員会は15年9月、いずれも引き下げるよう提言していた。
法務省は15年11月に少年法の勉強会を設置。福祉関係者や犯罪被害者らからヒアリングし、賛否両方の意見が出た。成人年齢を引き下げる民法改正案は今国会に提出されない見通し。
犯罪白書によると、犯行時20歳未満の刑法犯での検挙人数は約18万4千人だった1998年以降、減少傾向にある。15年は約4万8千人だった。
懲役・禁錮の一本化は、家具作りなどの刑務作業が中心となっている受刑者の処遇を見直し、個人の特性にあった教育や就労支援を充実させるのが狙い。実現すれば、明治以降100年以上続く刑罰の概念が大きく変わる。
法制審では、裁判官が有罪と認めた上で判決や刑の宣告を留保し、社会内で一定期間過ごさせて更生したかどうかを見極める「宣告猶予」制度の導入も議論される。【共同】
少年法18歳諮問 更生の仕組みが必要だ
毎日新聞2017年2月11日 東京朝刊
少年法が罪を犯した少年の立ち直りに果たしてきた役割を踏まえ、丁寧に議論していく必要がある。
少年法の適用年齢を20歳未満から18歳未満に引き下げるかについて、法相が法制審議会に諮問した。
選挙権年齢が18歳に引き下げられ、民法の成人年齢も引き下げの議論が進む。少年法も連動させ、大人の年齢をそろえるのが合理的だとの意見がある。一方、18、19歳について、更生のための教育が不十分になってしまうとの懸念は依然、根強い。
少年法を巡っては現在、厳罰化が迫られるような事情があるわけではない。2015年に罪を犯して検挙された少年は6万5950人で、20年前の3分の1に減っている。重大犯罪を犯した16歳以上の少年は原則検察に逆送され、成人と同じように処遇される仕組みも整っている。
引き下げありきではなく、少年犯罪の現状を押さえて、制度のあり方を考えていくべきだろう。
少年法が規定する保護処分の過程では、家庭裁判所や保護観察所が成育歴をたどって非行の背景を調査する。また、少年院では生活指導や学習、職業訓練が中心で、教官が付きっ切りで少年に反省を求める。
こうして丁寧に処遇することで、退院後に再び少年院に入る割合は、成人が刑務所へ再入所する割合より大幅に低くなっている。
比較的軽い非行の場合でも、現状では家裁の調査の対象になり、少年院に入るケースもある。だが、18、19歳が少年法の適用から外れれば、起訴猶予や罰金刑になるとみられる。教育的な措置を受ける機会が失われ、再犯のリスクが高まるとの指摘が出ている。
近年では貧困や虐待など社会的な要因が非行に結びついていることが少なくない。少年院で矯正教育を受けて社会に出ることの効果を十分に検証すべきだ。少年が更生し再び罪を犯さなくなれば、社会の安全や安心にもつながるだろう。
仮に少年法の適用年齢を引き下げても20歳前後の若年層に対しては、更生や教育を主体とした特別な刑事手続きを考えるべきだとの意見が専門家からは出ている。その場合、20代前半まで広げて、現行制度の利点を生かすことを検討すべきだろう。
今回は、刑務作業が義務となっている懲役刑の代わりとして、再犯防止の教育などに力点を置いた新たな刑の創設についても諮られた。受刑者の特性によって処遇を柔軟にしていこうとの狙いで、少年法の適用年齢の引き下げの議論の延長線上で出てきた。
社会に戻って再び罪を犯すことなくどう安定した生活をおくるか。更生のあり方が問われる時代だ。
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厳罰化するのであれば教育勅語などという唾棄すべきものを未来ある子供達への教育材料としている学校関係者全てに厳罰を持って望むべきだと思いますが。笑
厳罰の前にどうすれば子供達が非行に走らずに済むかを考えなければならない筈なのにおかしな話です。
本気でこの国の未来を憂うなら、今すぐにでも教員の数も、予算も最低でも倍にすべきだし、国立大学の学費も昔に戻すべきです。
安倍首相の「僕のことを褒めちぎって中国の悪口を言った人にお金をあげる💖」といった外交ごっこ遊びでドブに捨てた金があればいくらでも開花出来た才能、救われた子供達がいた筈です。
しかし、残念ながら政治というものを「鬱憤ばらしの場」としか考えられないこの国の大多数の国民にはこういった扇動的な政策の方が受けるのでしょうね。
私は宮武先生のご意見に大いに賛同します。反面、今の日本はこういったまともな意見が受け入れられない後進国に成り下がっているとも考えます。今までは景気が良かったので負の側面を誤魔化せていただけなのかもしれませんが‥
残念ながらこの国の未来には絶望しか感じません。
彼らは「犯罪者の更正に重点を置く」ノルウェーの再犯率が20%、一方の「厳罰化して懲らしめろ推進」の日本の再犯率が48%という現実を知った上で議論しているのでしょうか。
いつか出所する入所者に再犯させないために、犯罪加害者が自棄にならないような実用的支援及び再教育に力を入れることこそが、「未来の被害者」を減らすための社会的課題の一つだというのに。