企画展の舞台裏

2022-04-10 09:51:39 | イベント
現在、企画展「甲斐国領主と善光寺」を開催中。
全国の博物館などでも、年間で何度か特別展、企画展を開催していますが、
学芸員の皆さんは、テーマや資料の選定に知恵を絞られていると思います。
テーマが先か、資料が先か、あるいは予算はあるかなど、
決める上での様々な条件があると思うのですが、
今回は、先に資料が決まってから後付でテーマを設定しました。

当館の場合、どうしても信玄ミュージアムの名のもとに、関連するテーマが限られて
しまうため、展示の幅自体に大きな制約が出てしまいます。
そうした中、今回の展示は、いろいろな意味で幅のある内容になる予定です。
これまでと違う点は2つ。
ひとつ目は、時代幅。武田氏以外にも甲斐を治めた領主に関わる資料が多数。
ふたつ目は、寺院がテーマ。善光寺というお寺さんが企画展の中心であること。


※写真は、御開帳前の信濃善光寺

企画展開催までの舞台裏を明かすと、
昨年、令和5年4月12日に信玄公が亡くなられて450年の節目となることから、
1年前の企画展をどうしようか悩んでいました。
そんな折、昨年長野市立博物館で開催されました、
「THE EXPO 善光寺2021 甲信越戦国物語」で、善光寺大本願様が所蔵する
栗田家文書を目にする機会がありました。

それは、善光寺が信玄公によって甲斐へ移転した後、徳川の世が訪れるまで
甲斐国を治めた領主たち、武田・徳川・羽柴・加藤・浅野の5大名家が
善光寺を支配した栗田氏に出した書状群でした。
その中で武田家の書状は、山県昌景が奉じた信玄公の朱印状と
勝頼公の花押のある判物の2点がありました。
一堂に並べられた姿は圧巻でした。

折しも令和4年4月から御開帳も開催予定でしたので、
この古文書群を借用させていただき、当館でも企画展ができないかと考えました。
残念ながら、当館では貴重資料を多数並べるスペースや設備もないため、
分割でも展示できればと、思い切って大本願様にご相談しました。
すると、快く内諾をいただくことができまして、今回の企画展の目途が立ちました。

展示の核となる資料が決まったところで、次に内容の検討です。
借用させていただく期間と、一度に展示できるボリュームを考慮し、
全体を3つの時代構成に分割することにしました。
さらに、古文書だけでは見た目に難しい展示になってしまうため、
テーマに合った絵画資料などを数点添える形で
今回の企画展を構成することにしました。

そして、栗田家文書は、長野市の善光寺大本願様が所蔵されている資料とはいえ、
内容は、甲斐善光寺様関連でしたので、その協力をいただくことでした。
せっかくの機会なので、なぜ甲府にも善光寺があるのか、
その歴史をもっと知っていただきたい、という思いと、
信玄ミュージアム経由で信濃善光寺、そして、甲斐善光寺と
御開帳の参拝に行っていただければ、という思いもありました。
そんな思いで甲府の甲斐善光寺様にもご協力いただけないかご相談し、
この展示に合わせて貴重な資料を快く借用させていただくことになりました。
こうして、企画展開催にこぎつけた、というところです。

今回のような企画展は、文化財所有者の方のご理解とご協力があってこそ
開催ができますので、この場を借りて、心より感謝を申し上げます。
こんなことを考えながら開催していますので、ぜひ一度ご来館の上、
展示をご覧いただき、そして、各地の善光寺様へ参拝し、7年に1度拝すことができる
阿弥陀如来様と回向柱を通じてご縁を結んでくださいませ。
写真は、甲斐善光寺御開帳中

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