![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/76/22/59c55ff5b6aa552bb117a506e417b350.jpg)
少し前になるが・・・
三連休で幕を閉じた、川崎市平和館のミニ企画展
「国策紙芝居展〜戦争へいざなう言葉と物語〜 」で
国策紙芝居の複製12作品193枚を見てきた。
展示に出かけた、きっかけは、
加藤シゲアキ『なれのはて』(講談社)。
(書影は「講談社BOOKクラブ」からお借りしました)
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/33/d0/e67507c716d4df1fa2146482ada8bd52.jpg)
第170回直木賞候補、
「一枚の不思議な『絵』から始まる運命のミステリ」だ。
アイドル作家と侮るなかれ。
太平洋戦争下、日本最後の空襲と言われる、
秋田「土崎空襲」を背景に、現代の新聞社と秋田の油田開発会社が
交錯する、ハラハラドキドキのエンタメ小説だ。
作者は、相当、資料を読み込んだだろうことがうかがえた。
そのなかで、物語の重要な人物が、
戦時下、戦意高揚ポスターを描いている。
彼が書いた志願兵を募集するポスターは、上官の意に添わず、
理不尽な暴力を受け続ける
その一方で、彼のポスターに発奮し、
志願兵となり、命を落とす若者も・・・
そんなくだりを読んでいたので、戦意高揚ポスターを見たくなっていた。
・・・そうしたところへ、このミニ展示。
なんとタイムリー!
ポスターだけでなく、紙芝居も観ることができた。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/7a/8a/5176ab53a367bb11168a796c3fb64978.jpg)
前置きが長くなったが、本題「国策紙芝居とポスター」。
昭和12(1937)年、日中戦争が始まると、
国民の協力を得るための、戦意高揚がはかられた。
戦争は、戦争指導者だけでは絶対にできない。
国民に戦争協力の気持ちがなければ、ムリなのだ。
それゆえ、戦争指導者は、言葉巧みに、国民の心に入り込み、
誘導していく・・・
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/6e/f7/732912625b33f2c33ae5a1dea0e56af9.jpg)
太平洋戦争下では、紙芝居が、その大きな役割を果たしたという。
現代では、紙芝居というと、子どものモノのイメージだが、
当時は、大人も楽しむ娯楽だった。
たとえば、(↑)「隣組の組長さん」が、町内会の面々を集め、
和やかに楽しげに、身近な話題を題材にした紙芝居を演じてくれたり・・・
時には、英雄の勇ましい紙芝居を題材にし、
感動させたり・・・
とにかく、あの手この手で、紙芝居を楽しませ、
国民の心に入り込もうとする。
こういった紙芝居を、今の眼差しで見てはならない。
庶民の家庭には、ラジオくらいしか、娯楽も、情報収集の手段としても
無かった時代なのだから・・・
それがわかっていないと、大人が紙芝居に夢中になることが
そもそも理解できないだろう。
とにかく、あの手この手の紙芝居。
あの人気者フクちゃんも登場している。
フクちゃんと言えば、
1936(昭和11)年から戦後まで愛された、
横山隆一の、ほのぼのしたマンガだ。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/0c/77/804f1e78d437c598008915c76554824d.jpg)
「フクチャンとチョキン」は、案・絵画共に横山隆一の名である。
フクチャンは、おじいさんから「支那事変」で軍艦や飛行機を造る
莫大なお金が必要と聞く。
さっそく、竹筒で貯金箱を作り、せっせと貯金に励む。
おもちゃが欲しいけれど、ガマン、ガマン・・・
それを知ったおじいさんも、竹筒貯金に協力してくれて・・・
フクチャンは、めでたくお金を貯め、「支那事変国債」を買う、
というお話。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/64/53/bbd651bef668117a2eb8133add6e783f.jpg)
フクチャンのキャラにほのぼのしてしまうけれど、
「支那事変国債」を買うのだから・・・
多くの子どもが真似をしたのではないだろうか・・・
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/20/6f/565bfcb3f2d03dc87dfc9e6bd998af5a.jpg)
(↑)「風呂屋の大ちゃん 補助貨回収画劇」も同じく、
子どもが補助貨(硬貨)を集め、協力する話だ。
集めた硬貨を兵器の原料にするのだから、呆れる。
子どもも進んで戦争に協力させる、まさに「国家総動員」。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/6a/3a/9c19082cec8bbfe86218cc18c6ad0789.jpg)
その他、防空壕は空襲時の対処なども、紙芝居で指南している。
そんな教えは全く役に立たないのに、
実行して、逃げ遅れた人がどれだけいたことか!
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/7e/4b/65125f23acdcf00018faba02a2a99072.jpg)
一方のポスター。
『なれのはて』の人物と同じく、兵士を募集するポスターは
勇ましい。
ここでは「予科練」のポスターを見て、
「予科練の歌」とともに多くの少年が「荒鷲」に
憧れたことだろう。
『なれのはて』のエピソードのように、志願した少年も
多かったはずだ。
10代の少年が特攻兵として命を落とすことになったことは
よく知られている。
戦後も、「予科練あがり」は、苦労したとも聞く。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/26/b5/54c092448015dfab0aa1b617dfba9337.jpg)
他にも、軍需造船工場で働く人員募集もある。
三食がつき、宿代も無料というのは、当時は魅力だったはずだ。
となりの「ウサギ」を飼い、毛皮や毛を航空服や航空機の資材として
使おうという、完全に国民、それも子どもレベル任せである。
こちら(↓)の右二点も同じこと。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/71/60/efabeca58498db76c39dfecfe5f928ec.jpg)
「ヒマ(ひまし油)を作ろう」だの「松根油を緊急増産」だの
そんなせせこましいことで戦争遂行を考えていたとは・・・
いやはや。
もちろん、これらが行われていたことは
知識としては知っていた。
どうしてそんなアホらしいことに
国民がのせられたのかは、これをみればわかる。
これに乗せられた人の声が大きければ、
疑問を感じていた人が、「非常時」にと罵られてまで、
反対することは、なかなかできまい。
だから、こういうことがあったのだと、
歴史を知ることは大事。
歴史に限らず「おかしい」と思える知識も必要だろう。
この程度なら、小中学校の教育内容で十分なはず。
とはいえ・・・昨今は巧妙に仕掛けられてくるだろう。
だから、メディアリテラシーの力を身につけることが
求められる。
今の子ども達は、メディアリテラシーを学校で学んでいる。
でも、大人は?
個人に委ねられているのが現状・・・
そこが恐ろしい。
むしろ、大人の方がたやすくのせられてしまいそうだ。
最後に、会場で見た「戦争プロパガンダ10の原則」を挙げる。
過去も今も、戦争指導者の言動にぴったりではないか!
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/6a/39/3464a9eb5474266a59181baf6451ec75.jpg)
・・・おかしいよね、と言える国であってほしい。
その前に、自分がおかしいと感じなければならないか・・・
大丈夫か、わたし?
しっかりせねば!
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おつきあいいただき、どうもありがとうございます。
展示での解説を元に、記事にまとめましたが、
間違いや勘違いもあることと存じます。
素人のことと、どうぞお許し下さいませ。
加藤シゲアキさん、わたしも怪しんでいましたw
でも『なれのはて』でびっくり!
ご自身のルーツが土崎にあるそうなので、その想いもおありなのでしょうが、
資料をよく読み込んで、上手に生かしていらっしゃると思いました。
もちろん優秀な編集さんもついていらっしゃるのでしょう。
このまま書き続けて行かれれば、直木賞受賞もありますね~♫
フクチャンも利用するんですよね~
今だったらワンピースとかが防空壕の解説をしちゃうのかしらw
わたしも日本を囲むご近所さんを見る度に、
戦前の日本みたいだなぁと、苦笑しておりました。
この平和をずっと守っていきたいものです!
いえいえ、このブログは、自分の整理のためにまとめており、
おつきあいいただくのが申し訳ないようです。
私も勉強中です。
最近、近代史ばかり取り上げていますが、歴史は全般に好きなので、
そちらも含め、楽しみながら学んでいきたいと思っています。
どうぞ、またよろしくおつきあいくださいませ。
今日も読み応えありました!
加藤シゲアキさん、私は最初はアイドル作家と思い込んでいたのですが、本当に優れた作家だと分かりました。天は一人の人間に沢山の才能を与えるのだと思ってしまいます。
フクちゃん、懐かしです。子供の頃よく読みました。それにしても、日本もこんな時代があったのだと、改めて感慨深いです。どこかの国を笑えないと思ったりして、本当に興味深く拝読しました。ぴあ野さんのこのブログ、本当にいつもも読み応えあり、ブログの範疇を越えていると思います。私は自分の底の浅い知識が恥ずかしくなりますが、学ぶのに遅すぎはないと思い、拝読しています。なおとも