愛媛県に惹かれ、何度か旅をしている。
伊予松山城、内子や大洲の街並み、宇和島城に今治の海城・・・
そして正岡子規、秋山好古・真之兄弟、
ゆかりの地を訪ね歩けば、興味は尽きない。
これからも、また旅したい土地のひとつだ。
先日、松山出身の作家・
天童荒太の新刊『青嵐の旅人 上下』(毎日新聞社)を読んだ。
著者初めての時代小説にして新聞小説で、
2023年1月から2024年5月まで
「毎日新聞」朝刊に連載されたという。
舞台は、幕末の伊予松山藩。
天童は松山、道後温泉の近くの出身というだけあって、
主人公は、道後で名高い遍路宿「さぎのや」の
ヒスイと救吉の若い姉弟である。
二人が出会うのは、
坂本龍馬、原田左之助ら新選組、長州の桂小五郎に高杉晋作ら
幕末の有名人ばかり!
幕末の有名人ばかり!
できすぎな気がしないでもないのだがw
説得力のある展開なので、妙に納得してしまうw
当然、おもしろくないはずがない。
一気読み請け合いである。
わたしが始めて読んだ天童の小説「永遠の仔」は、
児童虐待を描く衝撃作だった。
そのクライマックスに登場するのが石鎚山。
この小説で、わたしは石鎚山が愛媛県にあり、
山岳信仰の山であると知った。
天童は、自らの小説に故郷・愛媛の山を登場させたのである。
今回、天童が描くのは「伊予松山藩」だ。
わたしは幕末・近代史に惹かれ、佐幕派びいきなので、
ついつい、旅先では、その土地がかつて、佐幕派か、倒幕派か
知りたがるくせがある。
では、松山藩は?
「松山藩は親藩のため、幕末に活躍することはできませんでした」
(『松山城の秘密』109頁)
・・・ということで、幕末史に松山藩の名は、あまり聞かない。
よく知られているのは、坂本龍馬暗殺事件。
暗殺者が松山方言である「こなくそ」と言った、
というエピソードだろうか。
現場には松山出身の新撰組隊士・原田左之助の刀の鞘が
残っていたとも・・・
今日では、「こなくそ」も刀の鞘も、
新撰組の犯行に見せかけるための工作だとされている。
・・・ということで、これは伊予松山藩とは関係あるまい。
実は、伊予松山藩は、親藩であるがゆえに、
難しい立場に追い込まれていくという。
その顛末をヒスイ救吉の姉弟を通し、描くのが、この小説だ。
とにかく、そんな史実があったのかと、驚かされた。
もちろん、そのことは、きちんと歴史書には書かれているので
わたしが読み取れなかっただけにすぎない話。
天童は、後書きで書いている。
ーー新聞小説は日々のニュースと共に掲載される。
ちょうど連載時には、ロシアのウクライナ侵攻、
ガザの問題も生まれた。
「この物語を通して、
戦や争いをなんとか避けよう、傷つく人々を懸命に救おうとする
若者達の姿にふれ、わずかでも希望を感じて日々を送ってもらえたら」
と、筆を進めたそうだ。
実際、私も、ウクライナやガザのことを考えながら読んでいた。
ああ、松山(愛媛県)へ行きたい。
読み終わって、いっそう強く思っている。
せめて、ヒスイと救吉の足跡をたどり、
わたしの旅と重ね、ここにまとめたいのだが・・・
はたして??
なお、天童には、遍路宿「さぎのや」を舞台にした
現代小説『巡礼の家』(文藝春秋)も、あるそうだ。
さっそく、図書館に予約したのは言うまでもないw
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参考:土井中照『松山城の秘密 新改訂版
ー城と藩主と城下の基礎知識ー』アトラス出版
おつきあいいただき、どうもありがとうございます。
個人の感想と言うことで、もろもろの不備はお許しを。