彼の頬

夕食の準備をした後、整骨院に行った。

「疲れてる？」
「うん・・・早く春休み終わらんかな・・・」
「・・・まだ始まったばっかりやろうもん」

そんな話をしながら、着ていたシャツをめくり消毒をする。

「汗かいているね」
「・・・そんなとこ見なくていいって」

あぁ、今年初めてだね、「背中に汗をかいている」って言われたの。
もし、新しい女性の鍼灸師さんになったら、先生からは「汗かいているね」って言われなくなるかもね。

「今日、旦那さんは？」
「家にいるよ。半休取って、昼から帰ってきたみたいやけど？」
「異動はなかったん？」
「うん」

そんな話をしながら、腰と背中に鍼を打たれる。
なんとなく心地いいような、不思議な感じ。

ふと顔を上げた。

先生は立っているので、コッチを見下ろしている。

目が合った。

今までだって、別に目が合ってもなんとも思わなかったのだが・・・。

今日、言葉には出さなかったが「え？？」と・・・。

先生、痩せたね。
「身体を締める」って以前から言っていたけど。
頬が少しこけたような、顎から首にかけてそぎ落とされたような、そんな印象。

そんなに「痩せなきゃヤバイ」ような体型じゃなかったと思うんだけど？
（白衣姿しか知らんが）

先生・・・・痩せたら・・・・なんか・・・・老けて見える・・・




ここ「王様の耳はロバの耳」じゃないけど、もし、先生本人が読んでたら、どう思うんだろ？

ごめんなさい・・・。

自分の場所

今日は、朝から機関会議。
今年度から、立場が変わったので、座る位置が違う。
新年度体制が発表され、新しい担当も決まる。
私とペアを組んでいた副委員長は、この会議から委員長だ。
私が書いた報告書を読み上げる。
私の担当事務局と、新委員長、つまり私の在籍している地区の担当が同じ事務局。
二人でよかったねーーと言い合う。

しかし、立場が変わると、ちょっと楽だね。
今までは、自分がその後の会議を仕切らなくてならなかったので、審議事項と報告事項と作成していく議案書のために四苦八苦していたのだが、その作業が無くなったので、精神的な負担は軽くなった。
もっとも、あくまでも「今のところ」なのだが・・・。


夜、風呂に入っているとき、ふと昼間のことを思い出した。

今まで私がいた場所に、新委員長が座っていて、ずっと担当をしてもらった事務局と今年担当の事務局が、彼女の横でサポートしている。
昼休み、３人が談笑しているのを見て、なんともいえない気持ちになった。

もちろん、誤解がないように書いておくが、私はこの３人が大好きだ。
だからこそなのだろう、自分がその場所にいないことがとても寂しかった。
やりきった仕事が大きかっただけ、手放したときの寂しさを、今日、改めて味わってしまった。
彼女たちと別れるわけではないのだが、もう自分が戻れないことを、よくやく自覚した。

任期を終えた満足感と、きちんと送りだしたみんなに対して、一人で泣いたこともあったが、寂しくて泣いたのには自分でも驚いてしまった。


私も「今の自分の場所」を、大切にしながら、この役割をきちんと担っていこう。
それが、今までお世話になったみんなへの恩返しになれば・・・と思っている。