好事家の世迷言。

調べたがり屋の生存報告。シティーハンターとADV全般の話題が主。※只今、家族の介護問題が発生中です。あしからず。

科学者の繰り出すホラ話、の話。

2024-12-10 | 物語全般
『白鹿亭奇譚』(byアーサー・C・クラーク)、読了。

全15話収録の連作短編集。
書籍の初出は1957年。

「積ん読」を消化してから最初に図書館で借りた。
短編集ならスムーズに読めるだろうと考えて。

とあるパブに集まった人たちが語る不思議な話、という裏表紙の紹介は、半分正解で半分間違い。
というのは、その不思議な話を紹介する人物は、ハリー・パーヴィスただ一人。

そも、パーヴィス氏は何者か。
彼の話題は、工学生物化学物理と異様なほぼ幅広い。
あらゆる音を消し去る機械、あらゆる動物を操る機械、あらゆる感覚を再現する機械、あらゆる計算をこなす機械などなど、飛び抜けて奇妙なアイテムの発明とその顛末について述べられている。

このパーヴィス氏がとにかくひたすら喋り倒している。
聞き手の掛け合いどころか、相づちさえ、ほぼ入らない。
「~したんだ」「~なんだよ」の語尾の一本調子に、読んでて正直眠くなった。
中には(何故か)ト書きの入った三人称になってる編も幾らかあるが。

個人的に印象深かったのは、『隣の人は何する人ぞ』。
シロアリの人為的進化については、『2001年宇宙の旅』や『幼年期の終わり』などを連想した。

それでは。また次回。

「積ん読」を消化しました。

2024-11-04 | 物語全般
書き溜めしていた本の感想を全てアップロードし終えた。

書き溜めを消化している間、自室の書棚で長らく「積ん読」になっていた文庫本を読み尽くした。

『アイの物語』(by山本弘)
『あなたをつくります』(byフィリップ・K・ディック)
『火星に住むつもりかい?』(by伊坂幸太郎)
『偶然世界』(byフィリップ・K・ディック) 
『クリムゾンの迷宮』(by貴志祐介)
『世界から猫が消えたなら』(by川村元気)
『ダレカガナカニイル……』(by井上夢人)
『斜め屋敷の犯罪』(by島田荘司)
『七匹の大蛇』(旧訳版)(byスティーブ・ジャクソン)
『バック・トゥ・ザ・フューチャー』(byジョージ・ガイブ)(同名映画の小説版)

この他、学術書やビジネス書の類にも、ちょこちょこ手を出した。
雑学の本も、先日1冊読了した。

正直なところ、驚愕している。
集中力が随分落ちたと思っていたのに。
「感想を書かなければならない」という強迫観念を捨てて読めば、こんなに速度が戻るのかと。

実を言えば、目に見える「積ん読」を消した事のほか、「いつか読もうと思ってる本リスト」メモのデータを消してしまった事も、読書速度の上がった原因かもしれない。

世間で話題だから、レビューで褒められてるから、文学史に勉強として読むべきだから……などの理由は、本当の読みたい理由ではない。
ただの義務、苦行になってしまっていた。
全部いったん忘れて、それでも尚、読みたいと思い出す物が、今の自分が本当に求めてる作品なんだろう。

今回挙げた本たちの感想も、一旦は横に置く。
書くかもしれないし書かないかもしれない。
さて、次の本を探そう。
感想を書くためでなく。
まず読んで、後から感想を書きたくなったら、そこで初めて書く、そんな気持ちで。

それでは。また次回。

「何でもあり」の極限を目指す。

2024-10-29 | 物語全般
『夢の木坂分岐点』(by筒井康隆)、読了。

1987年初出。
「何でもあり」の筒井作品の頂点かもしれない。
メタフィクションの極み、という言葉では生易しい奇妙な話。

本作の主人公は、とにかく設定がぴょこぴょこ変わっていく。
職業どころか名前や家族構成さえも。
まるで、全ては泡沫、夢、妄想、即ち虚構の世界のように。
あるいはカウンセリングにおける心理劇(サイコドラマ)の中のように。
何せ、台詞のかぎかっこが終わらないまま、異なる設定の話へ進んで動いてしまう。

『脱走と追跡のサンバ』(1971)、
『虚人たち』(1981)、
『虚航船団』(1984)などを経た当時の作者が至った、(生身の人間でないメタ的な)主人公の成長物語、とでも言えばいいだろうか。
だがしかし、この先でも作者は、
『朝のガスパール』(1992)、
『邪眼鳥』(1997)、
『残像に口紅を』(1989)、
と、ますます複雑怪奇な、けれど興味深い話を弾き出すのだから、底が知れない。

ところでこの本、小説初心者はモチロン、筒井作品初心者が読んだら混乱するんじゃないかな。
せめて前述した本を読了してないと、私は無理だったかも。

それでは。また次回。

神=造物主=作者からのメッセージ。

2024-10-03 | 物語全般
『モナドの領域』(by筒井康隆)、読了。

筒井氏いわく、最後の長編にして、最高傑作。
確かコレ、世に出た直後はミステリとして紹介されてた記憶。
だが実態は寧ろ、説話集、法話集と呼んだ方がいいように思った。

ストーリーは、良く言えばシンプル、悪く言えばやや平坦。
不気味なバラバラ殺人事件が描かれそうで描かれない、もどかしい状況がしばらく続く。
静かな町のパン屋さんでの、ややセンセーショナルな出来事を境に、話は動き出す。
大学教授に憑依したナニカ、自ら名乗るは「GOD」が語り始めてからが本番。
公園で話して、裁判に出て、テレビに出て、そうしたらもうラストシーン。イベント少ない。

結局この話は何なんだろうと読み返して、ふと悟った。
これは、アバターを通した作者による、今まで産んだキャラ達への感謝状であり、ラブレターだと。
虚構の虚構による虚構のための、虚構だけで創られた虚構論、それの体現。
筒井氏の他作品をあらかた読んでから手に取って良かった。
これから読む人は、せめて『文学部唯野教授』を読んでからの方がいいかもしれない。
実際問題、「GOD」の思想論は、文字のみではかなり難解。
作中キャラは、悟性で理解させてもらえていて羨ましい限りだ。

それでは。また次回。

良き物語は古びない。

2024-09-25 | 物語全般
『東海道戦争』(by筒井康隆)、読了。

全9話収録の短編集。
因みに中公文庫。出版は1978年。

中公文庫の裏表紙には、筒井氏の処女作品集とある。
そのじつ最初期の作品群であり、読んで、ある意味、全盛期の氏の作品を浴びる事となった。
既読作も幾らかあるが、今まで作品集などで見かけた、どれも尖った作品たちだ。

本命は表題。1965年初出。
何の理由も根拠もなく、突如として勃発した、東京と大阪の戦争。
オリンピックの盛り上がりをもう一度という軽薄なノリで始まるも、実際の戦闘は当然ながら酸鼻の極み。

後もう一つ強烈だったのが『堕地獄仏法』。
とある宗教に統率された日本。
物質面では極めて満たされた一方、言論の自由がまるで無い世界。

どちらも、実は今の時代こそ読んでみた方がいい作品かもしれない。
意義のある時間を持てました。

それでは。また次回。

高齢化社会版、バトル・ロワイアル。

2024-09-10 | 物語全般
『銀齢の果て』(by筒井康隆)、読了。

この本の世界では、高齢者問題に対してトンデモナイ形の対処がされている。
政府によって決められた地区における、70歳以上の人々による、1ヶ月にわたるコロシアイ。
1999年に小説、2000年に映画として世に出た『バトル・ロワイアル』が明らかに元ネタ。

因みに初出は平成17年。即ち2005年。
因みに因みに、筒井氏は1934年生まれ。
つまり、この本を書いた時点で、作者が実際に70歳に至っているのだ。
ハッキリ言って、この時代のこの作者以外が書いたら総スカン食らって発表できずに終わりそう。

今まで読むのを敬遠してたが、その予見は我ながら正しかった。
ある程度、筒井作品に慣れてないと、登場人物や場面転換の多さ、そして暴力描写に面くらってしまうだろう。

逆に、筒井作品の雰囲気に親しんでいる人なら、ひとまずフィクションと割りきって楽しめる。
文字通り命がけのやり取りは、どのキャラの場合も印象深い。

ラストは、やや予定調和ぎみ。
初期作品だったらもっともっと凄絶なスプラッタが展開されたかもしれない。
主人公の九一郎の台詞は、実は筒井氏の率直な言葉だったりするかもしれない。

それでは。また次回。

銚子電鉄宣伝小説。

2024-09-01 | 物語全般
『電車を止めるな!』(by寺井広樹)、読了。

映画『カメラを止めるな!』とタイトルが似てるのは意図的な物。
とにかく世に広める事がこの本の目的だから。

知ってる人は知っている、銚子電鉄は現在、濡れ煎餅などの飲食物で主たる運営をつないでいる。
それと共に、路線上で数々のイベントをこなしている。
この本を元にした映画版も公開されている。
そんな事情が予備知識。

以下ストーリー。
銚子電鉄は、廃線危機を越えるべく、現地の心霊現象を扱ったツアーを企画。
オカルト関係の有識者(?)を集め、動画サイトで生配信を試みる。
すると確かに起こった心霊現象。
降りられなくなった列車内で、人々はピンチに陥る。

こう紹介すると恐ろしげだか、実際の雰囲気は寧ろ軽い。
子供の霊の下りはやや気が沈むが、それも後には人情噺として胸に残る。

ただこの本、小説というより、映画版の脚本のような印象を受けた。
まず小見出しが非常に多い。場面転換の行空けも然り。ネットコメントも一言ずつ行替え。
普段読書しない人でも読みやすいというのは、長所になるかな?

それでは。また次回。

クトゥルフ神話を学ぶ一環として。

2024-08-25 | 物語全般
『アーカム計画』(byロバート・ブロック)、読了。

1979年作。
いわゆる「クトゥルフ神話」の集大成という触れ込みで知った。

全体で3話構成。
或る男性が、或る絵画をきっかけに謎に巻き込まれる。
その男性の妻が、謎の真相を求める。
その後、また別の男性が、結果的に世界の終末を引き起こす。

読むと、なるほど確かに、クトゥルフ大系からのモチーフが大量に出てくる。
その連携ぶりの魅力を理解できないのは、私の方の問題だ。

全体的なストーリーも、クトゥルフ大系に明るくない私には、辛かった。
タイトルにある「アーカム計画」により、世界中の有識者たちが総攻撃を仕掛けるのは興奮したが、それくらいで人間が勝てる相手じゃないからね分かってたけどね。

私には、巻末にあった解説文が救いで癒しだった。
ホラーを純粋に楽しんでた作者陣が微笑ましかったな。

それでは。また次回。

中国仙人ラブロマンス。

2024-08-11 | 物語全般
『僕僕先生』(by仁木英之)、読了。

タイトルだけで読んでみた。
「僕僕」って何だ?と引っ掛かった時点で、作者の思惑に嵌まっていたと、読んで知った。

時は古代、所は中国の唐。
財産など環境に恵まれ、のんびりぼんやり生きている青年・王弁は、山の庵に住む仙人に気に入られ、遠大な冒険の旅へ出る。

先に断るが、私は「歴史もの」が非常に苦手である。
前後する時系列、見分けのつかない多数の登場人物、求められる前提知識など、読んでて疲れる要素が多いというのが私の理由。
あと、大抵、戦乱などの残虐な描写が付いて回るのも追加で。

翻って本作は、文章は基本的に読みやすく、頭に入りやすかった。
昔よりは自分、中国の歴史や伝承について覚えてる事も増えたし、作中の解説も丁寧だったし。

ただ、状況を思い浮かべるのに苦労させられたのは残念。
どうも挿絵に引きずられて、王弁も僕僕ももっと幼い外見に感じてしまった。
特に僕僕は、本来は「妙齢の少女」なのだろうが、私には小学校高学年くらいの「子供」のイメージが強く、それと王弁が本気で恋愛(とその先を)しようとドキドキする流れに、ちょっと付いていけなかった。
もっとフラットなスタンスで読めば、また違った感想になるかもしれない。

それでは。また次回。

続々・殺戮の道化に祝杯を!

2024-07-25 | 物語全般
映画『デッドプール&ウルヴァリン』を劇場へ見に行く。

水曜が上映初日という、かなりの変則。
オフの日が丁度重なった幸運から、早起きして初回を狙った。
(因みに字幕版)

有り体に言えば本作は、『X-MEN』シリーズとMCUとの、壮大なコラボだ。
『X-MEN』世界(バース)全部を、MCUに見事つないだデップーは、比喩抜きで両世界を救ってみせた。
心から拍手を送り敬礼する。

私はドラマシリーズ押さえてないので、組織TVAについては把握しきれてないが、要するに全時空管理者って認識で合ってるだろうか。

ただ、個人的には寧ろ、本作のヴィラン達はマーベル世界を俯瞰する上位世界のメタ存在、ひいては制作側の一部の声のように感じた。
彼の言い分は、私にはこんな言葉に聞こえてくる。
「MCUへ引き抜くのはデッドプールだけでいい。他のキャラは要らない」
「今までの『X-MEN』シリーズは即刻ボツ。無かった事にする」
「新シリーズでは全て新キャラでリブートしよう」
「興行が成功するならMCUが壊れても構わない」
このような要求をはね除けて、デップーは本作を創ってみせた、なんて空想。

早い内に、今度は吹替版を見たい。
拾いきれてない小ネタ、探したいなぁ。

それでは。また次回。