私は目覚めた時、多くの人々に囲まれていました。
一人が進み出て王だと名乗り、私に命じました。
創られた魔物として、これから訪れる兵士たちの糧になってくれと。
よく見ればここは、誰も来られるはずもない洞窟の奥。
だけれど、去った人々と入れ替わりに、兵士の一団は現れました。
金色銀色に彩られた若者たちは、誰も同じように美しく見えました。
少なくとも私のような、鈍色の重い体とはまるで違います。
彼らは私に、自分たちを痛めつけろと訴えました。
何度も何度も煽られて、私は力をふるいました。
兵士たちに炎を浴びせ、爪で斬り裂き、牙で捕らえてみせました。
彼らは火傷に鮮血だらけ、なのに平然としています。
それも然り、彼らの傷は、幾らでも治っていってしまうから。
それに、そもそも私には、彼らを殺せる力を持たされていないから。
さて、これで理由が出来ました。
彼らが私を殺す『正義』が成り立ちます。
私は身体を灰にされ、彼らの鍛錬の役に立つのです。
「はい、お疲れ様でしたと」
「まだ物足りないね」
「もっと戦いたかったな、がっかりだよ」
去って行く兵士たちを遠くから眺めながら――私は思い出しました。
私が魔術師である事を。
王に心身を貸し与えるという契約が、今しがた終わり、こうして夢から醒めたのです。
それでは、帰り支度と致しましょう。
この大理石の城から、住み慣れた故郷の村へと。