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好事家の世迷言。(初代)

※はてなブログ『好事家の世迷言。(続)』へ移転計画中。

調べたがり屋の生存報告です。

事件217『ロンドンの黙示録』(第71・72巻)考察。

2014-01-23 | 『名探偵コナン』原作考察
一続きの事件で10週に渡る最長の事件であると共に、
『名探偵コナン』の基本構造が完全崩壊した事件である。

「ミステリとして」壊れている事件は多かった。
「少年漫画として」壊れている事件も増えていた。
だがそれでも、江戸川コナンという人間の骨子は残されていた。

「自分の姿というアイデンティティを失った悲哀を背負っている」
「工藤新一に戻る際には激しい苦痛を伴い、死ぬ危険性もある」
「毛利蘭とは10年来の付き合いであり、現在は衣食住を共にしている」
「少しでも生きている痕跡を残せば、組織に身内もろとも皆殺しにされる」

これらの設定が、今回の事件に限って、まるきり影も形も無くしてしまっている。
『見えない悪魔に負けず嫌い』の展開を、
ロンドンで焼き直しするという目的ただ一つのために。

この事件を経た後では、『命がけの復活』の学園祭すらも、
馬鹿馬鹿しい茶番になってしまいかねない。
この作品からはもう、シリアス要素は失せてしまった。

そして終盤、恋愛を主題にしている作品としては、あまりにも中途半端な告白劇。
かくて、新一と蘭は、小五郎と英理と同じような関係になってしまった。
彼らの仲は、連載が終わるまで、何一つ変化しないだろう。
進みもせず破れもせずに、「カップル」という記号だけの関係が、半永久的に続くのだ。

それでは。また次回。
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事件216『初恋のビデオレター』(第71巻)考察。

2014-01-12 | 『名探偵コナン』原作考察
「実は幼なじみにずっと恋していました病」に千葉も感染した。
阿笠&フサエ、白鳥&小林、大和&上原、
『初恋の傷跡』のゲストキャラ達に続いて5例目である。

因みに千葉の場合は、初恋からのスパンは13年。出会いはやっぱり小学生時代。
『イチョウ色の初恋』での阿笠の40年に比べれば短いからまだマシか、
と考える私は多分思考が麻痺してる。

話の構造は『イチョウ~』と酷似。なので、ツッコミ所もまた同じ。

どうして何だって何故に、この作品世界の男女は、
面と向かって正直に率直に自分の気持ちを伝えようとしないんだろう。
好かれているのか確かめもしないないまま、フラれたと公言してる男性って何なんだろう。
まともに顔も見せずに、自分の事を忘れてると思いこむ女性って何なんだろう。

と考えてしまう私は、もう、この作品自体と肌が合わなくなってきているのかもしれない。

最後に、千葉が言っていた名台詞を。
「一度、自分を甘やかしてルールを破ると癖になっちゃうんだぞ!!」

この言葉は、痛く突き刺さる。
『コナン』の、特に次の事件に。

それでは。また次回。

事件215『犬伏城 炎の魔犬』(第70巻)考察。

2014-01-05 | 『名探偵コナン』原作考察
『被害者はクドウシンイチ』の続き。

平次といえば、因習にとらわれた地方の事件がお約束。
『鳥取蜘蛛屋敷の怪』『そして人魚はいなくなった』などなど。

が、今まではあくまでも伝説がほのめかされる程度で留まっていたのが、
今回は「炎の魔犬」が実際に、客観的に描写される。
現代科学の駆使された、魔犬の迫力はまさに必見である。

ただ、そういったトリックに重きを置く代わりに、
ゲストキャラの扱いは薄い。

8人の養子が次々と殺されるという怖ろしげな展開のはずなのに、
物語の開始時点で、既に3人が死亡。
4人目も最初から死体で登場してしまうので、実際に出てくるのは半分の4人。

なので、彼らの名前の秘密が明かされても、
ああそうなんですかと、あっさり流してしまいそうになる。

養子の中に偽者が混じっているという情報も、
結局は犯人のミスリーディングでしかなかったという肩すかし。

個人的には、もう何週かの掘り下げ描写が欲しかったのが惜しいところだ。

それでは。また次回。

事件214『被害者はクドウシンイチ』(第70巻)考察。

2013-12-19 | 『名探偵コナン』原作考察
この事件ではまたしても、ミステリのタイトル含めたネタバレがされてしまっている。
『炎の中に赤い馬』『黒の組織の影』に続き、これで三度目である。

作者がこうも簡単に、他人様の作品の核心を明かしまくる理由が
私にはサッパリ分からない。
第二の藤原宰太郎でも目指しているのか青山は。
少なくとも私としては、あのような言動を取るコナンを、
ホームズ好きとは認めたくない、です。
(因みにこの場面を境にサンデー買うのを止めた私)

純粋にミステリとして、特筆すべき点はほぼ無い。
次の事件へつなげるための布石に過ぎない。
被害者の名前が、新一と(字違いの)同姓同名である理由も持ち越しとなる。

というのは、コナンと平次が現場に着いた時点で、
既に被害者は物言えぬ死体であり、
同時に犯人(にあたる人物)も特定、捕縛されてしまうためだ。
人間関係のドラマは一切描かれない。

密室殺人のトリックも、探偵たちの得々とした語りを除いた本質は、
単に彼ら自身が現場の死角を見落としただけ。
ただ、見落としたその原因が、
被害者の命を救おうとしたからだという事は、擁護しておきたい。

それでは。また次回。

事件213『コナンキッドの龍馬お宝攻防戦』(第70巻)考察。

2013-12-08 | 『名探偵コナン』原作考察
だから『まじっく(略)

「怪盗キッド・中森警部・宝石・鈴木次郎吉・マスコミ」のルーティンワーク。

サンデー連載当時、
大河ドラマの「龍馬伝」が流行っていたからという安易な発端。

キッドはまたも何の利も無く現場に現れ、
悪徳業者を告発して悠然と去って行く。
キッドの母親も泥棒だったという、
トンデモナイ後付け設定が加わったというオマケ付きで。

警察がやるのは、形ばかりの警備だけ。
逃して悔しがる素振りもない。
キッドが展示室を水浸しにした所業にも誰も触れない。
(二度と本来の目的には使えないだろうあの部屋は)

コナンに至っては、「龍馬に免じて許す」
などと意味不明の供述をする始末。
(『連続二大殺人事件』での有希子のエピソードに
触れられたのは、この話の貴重な長所)

泥棒の泥棒による泥棒のための探偵漫画に、
存在価値は果たしてあるのか。

それでは。また次回。

事件212『日記が奏でる秘密』(第69・70巻)考察。

2013-12-01 | 『名探偵コナン』原作考察
純粋にミステリとして、久方ぶりのスマッシュヒット。
時系列シャッフルにより、冒頭の興奮度は最高潮である。

事の発端は例の通り、少年探偵団の外出時でのビートル故障。(8回目)
以後の流れは、『青の古城探索事件』を思い出させる。
ただし、コナンをはじめ、誰も大きなピンチに陥らないため、緊張感は若干下がる。
「自分自身が行方不明になった事に怯える」というネタからは、
どことなく落語を連想した。

事件のキーは、コナンが見つけた手帳である。
「ページの入れ替え」というトリックは、
文章では説明しづらく、こうした漫画でこそ相応しい。
事件を知った当初、死体を見せまいと子供を離れさせた、コナンと灰原も素晴らしい。

最終的に命が救われ、ゲストキャラ全員が幸せになった事には、
素直に拍手を送りたい。
終盤、コナンのボールで、
壁は壊れずドアは壊れるというのはご都合主義だが、
これくらいなら、ご愛敬で流すべきだろう。

それでは。また次回。

事件211『裏切りのホワイトデー』(第69巻)考察。

2013-11-24 | 『名探偵コナン』原作考察
『バレンタインの真実』の続編にあたる。

バレンタインデーの時は、新一&蘭、京極&園子の二組でとどまっていた恋愛事情。
この度のホワイトデーでは、新一&蘭、京極&園子、
小五郎&英理、高木&佐藤、白鳥&小林、目暮&みどりの六組に拡大。
誰も彼も中学生レベルの恋愛病に侵されている。

特に、みどりの株は大幅に下落した。
お菓子をもらえないからと家で一人で飲んだくれるのは、警官の妻の態度ではないだろう。
終盤、蘭がわざわざコナンの目の前で露骨に涙を見せたのも、個人的には幼稚に感じた。
連載初期の頃は、泣き顔ももっと凛としていたと思うんだが。

純粋にミステリとして考えた場合、その論理はますます作為的かつ不自然さを増している。

「とても酸っぱいチョコレートの売れ行きが良い」
という設定にも驚くが、
「精神的な理由で酸っぱい物を一切食べられない菓子職人」
という被害者がまず現実的に考えにくい。

だが、事件解決時、被害者の事情が描かれると途端、印象が違ってくる。
犯人の告発を聞く限り、被害者には非はなかった。
被害者は、友人の体調を慮ったものの死なれてしまい、ずっと罪悪感に苦しめられていたのだ。
なのに殺されてしまった理不尽さが、ひどく哀れだ。

それでは。また次回。

事件210『湯煙密室のシナリオ』(第69巻)考察。

2013-11-17 | 『名探偵コナン』原作考察
温泉を舞台とした殺人事件。
事件を追うのは横溝重悟と、それから少年探偵団。

この事件は、目を通すだけでも苦痛を伴う。
そもそもこの事件、漫画の中でも子供の裸を描くなという例の法案への、
アンチテーゼとして描かれたのだろう。
が、この作品世界の子供たちが全員、大人のような欲情を持ってしまっているため、
逆に猛烈に淫らに感じて仕方ない。

そして、読んで不快になる点がもう一つ。
特に少年誌におけるミステリでは、幾つか禁忌(タブー)があると私は思う。

例えばそれは、犯罪者を礼賛する事、命を軽んじる事、暴力的な復讐を肯定する事

エピローグで灰原がコナンにした行為は、そういった復讐行為以外の何物でもない。
まして彼女は、人体を知り抜いている、薬学の専門家のはずだ。
わざわざ男子更衣室に潜って、下着の内側に細工するなんて。
やり口が陰湿すぎる。

コナンに傷つけられたと言うのなら、きちんと言葉でやり取りしてほしかった。
せめて、(唐辛子でなく)インクなど、害のない物を使ってほしかった。

この事件で、私の中の灰原は、完全にトドメを差された。死んだ。
実際、灰原もまた、この「バーボン編」では完全に蚊帳の外に出されてしまうのだ。

それでは。また次回。

事件209『河童が見た夢』(第69巻)考察。

2013-11-10 | 『名探偵コナン』原作考察
共に事件を追うのは、何故か警部に昇進してる山村。
すっかり小五郎にこき使われる部下ポジションに収まっている。
大丈夫なのかこの世界の群馬県警。

純粋にミステリとして、手ごたえは悪くない。
「1リットル弱の水を隠して持ち運ぶ方法」という命題は興味深い。

ただ、少々気になるところとしては、小学生が用いる絵具は水彩用のはず。
あのような用途にはあらゆる意味で向いてない。
身体にも毒だと思うがどうか。

そして、事件とは直接関係ないが、個人的に強く抱いた違和感。
蘭が携帯電話を川辺に放り捨てたシーン。
いくら、人が落ちたから慌てたと言っても、
電子機器の類を投げ捨てるというのは常識的に考えにくい。
まして、あの電話機は新一からの大切なプレゼントだったはずだ。
(『よみがえる死の伝言』参照)

「蘭が落し物をする→怪事件を目撃する」というシークエンスへの方便のは分かるが、
やはり不自然に見えて仕方ない。
せめて例えば、「ストラップを落とす」……は、『鳥取蜘蛛屋敷の怪』で使用済みだから、
「思わずその場に置いてしまった」など、別の展開にしてほしかったと思う。

それでは。また次回。

事件208『猿と熊手のトリ物帖』(第68巻)考察。

2013-11-05 | 『名探偵コナン』原作考察
私がサンデー購読を止めようと、本気で考え始めた事件がコレだった。
とうとうこの作品はトリックのネタが尽きたんだ、と実感してしまったのだ。

この事件でもフーダニットは容易だ。
誰が犯人かは、登場としたと同時に分かってしまう。

そして、そのフーダニットの発端となるメッセージの出し方が尋常じゃない。
被害者が文学部だから、という理由付けはまだ許そう。
生きるか死ぬか、もうろうとした意識で、指9本を立てて見せるなんて器用すぎ。

「酉の市」ごとの、引ったくり犯の入れ替わりの理屈は興味深いが、
そんな長所が遠く吹っ飛ぶ不自然さだ。


そんな事件の一方で、蘭の言動も気にかかる。
新一に嫌われたくないからとおみくじを気にして
カツアゲに手を挙げないのはともかく、引ったくり犯をも見逃すのは如何なものか。

それでいて終盤、何故か悠長におみくじを読み上げる真犯人
(しかもこの時ナイフ逸らしてる)に対し、電柱にめり込むほど蹴りを入れる蘭が本当に怖い。

前にも述べたが、ギャグ要素の強い初期の頃ならまだしも、今の世界観では、やり過ぎだ。
武道家が他人を傷つけたら傷害罪になるという事を、作者は思い出した方がいいだろう。

それでは。また次回。