好事家の世迷言。

調べたがり屋の生存報告。シティーハンターとADV全般の話題が主。※只今、家族の介護問題が発生中です。あしからず。

事件227『毒と幻のデザイン』(第74・75巻)考察。

2014-06-15 | 『名探偵コナン』原作考察
前の事件からそのまま続き。
コナンと平次は、いまさら取って付けたように世良を警戒。
これ以上は扱いきれないからか。このキャラを。作者が。

この度の主要な事件は、あくまでプロバビリティ(蓋然性)に委ねられている。
「ジャストロー錯視」や「ゲシュタルト崩壊」などの
変わった単語を使うという目的ありきで話を創った印象だ。

序盤で描かれた「消えた死体」も、実のところは運任せ。
もし和葉たちが現場に不法侵入してなかったら虚しすぎるぞ犯人。

なお、純粋にミステリとして考えると、
第1話で描かれるべき伏線が第5話でいきなり明かされるのが、
やはりアンフェアに感じる。
連載初期の頃だったら、人々がトイレに立ってる描写、
さり気なく入れてるだろうと思うんだな。

そしてやっぱり、人死にの真っ最中に突如として乱入する恋愛ネタ。
相変わらず不実なわがままを振りかざしてる蘭がまず悪いが。
そんな蘭に引きずられて告白する和葉も和葉、
そんな和葉を無視してコナンを嗤う平次も平次。
どっちもどっちの似た者同士は、ある種お似合い。

「いい加減にしてください! 人が一人亡くなってるんですよ!?」(by米原桜子)
という常識論が貴重に輝く、何とも異様な世界である。

それでは。また次回。

事件226『コナンVS平次 東西探偵推理勝負』(第74巻)考察。

2014-06-02 | 『名探偵コナン』原作考察
「一人称が二人称を兼ねる」などの、日本語の特徴を犯人当てに用いている点は興味深い。
が、それ以外の点は、読んでいて、良い感情を持てない。

どうしてコナンと平次は、今更この期に及んで、ああも見苦しく対立するのだろう。
二言目には、にやにやと意地悪な笑みを浮かべ、相手を見下す姿が本当に苦痛だ。

犯人当ての下りも、本来なら主人公の探偵自身が、
「関西出身ながら標準語でも自然に話せる」という設定でもなければ失礼千万。
江戸川コナン、ひいては青山剛昌氏は、全世界の関西出身者を敵に回したと私は思う。

そんな二人以外のメインキャラは、何もしてない。
他人様が料理店で亡くなったその直後に、飯を食う客も客、飯を出す店も店。
事件に真摯に向き合おうとする人が一人もいない。

結論を言えば今回は、世良をFBI勢を会わせるためだけに作られた話だ。
その世良のキャラ造詣も、私には不自然に感じられて仕方ない。
聞かれてもいないのに何度も何度もバストの話題ばかり持ち出すのは品が無い。
世良が男的性格なら興味を示す話題ではないだろうし、
女的性格ならそもそも男装自体しないだろう。

ともあれ、この事件は、もう二度と読み返したくない。

それでは。また次回。

事件225『博士の動画サイト』(第74巻)考察。

2014-05-18 | 『名探偵コナン』原作考察
誘拐・盗難事件を描くためのお膳立てが杜撰。
結果、登場人物全員の言動が、ことごとく矛盾だらけ
特に目立つ人たちを挙げていく。

元太:
食いしん坊でありながら、腹が減ったからと屋内でサッカーボールを蹴り続ける。
本来なら、気力が尽きて動けなくなるのでは?
それに、これでは『元太の必殺シュート』の時よりも迷惑行為が
エスカレートしてしまっている。成長しようよ。

歩美:
煮立ったカレーの飛沫を、顔(!)にあれほど浴びていながら、ただ驚いて泣いてるだけ。
他の事件で、人命救助がどうこうと散々言っているのに、これでは説得力ゼロだ。
と言いますか、暫くカレー作りが怖くなりました私。

灰原:
ヒステリックに怒り狂う理由が、「カレーの作り直し」の件のみ。
歩美に命の危険があった事には誰一人触れない。
この作品って、少年誌だよね?

コナン:
投稿動画を削除したから平気、という謎の発言。
一旦ネットに流出したデータは、半永久的に残るわけで。
現に世良も画像をキャプチャーしているようだし。
パソ通時代と勘違いしてませんか……作者さん?

それでは。また次回。

事件224『探偵事務所籠城事件』(第73・74巻)考察。

2014-04-27 | 『名探偵コナン』原作考察
探偵事務所で事実上、立てこもり犯の人質となった蘭・小五郎・世良の三人。
彼らの前に突きつけられた事件のカギとなるのは、ネットツールであるツイッターだ。
こうして、次々とアイディアを得ていく作者の貪欲さには、純粋に頭が下がる。

蘭と世良との関係についても興味深い。
彼女らは二人とも、「自分が生き延びる」事は容易だ。
しかし、その先の考えが、それぞれ違う。

「犯人を殺し、他の全員を確実に救う」と考える世良と、
「犯人をも生かし、他の全員を危険に晒しながらも足掻く」と考える蘭。

この二つの考えは、どちらが正しいとも言えない。
「正義とは何か」という哲学的な問いと言える。
因みに私個人は、基本的には世良の考えに近いが、少年漫画的には蘭の考えを尊重したい。

ただ、出来れば蘭には、『網にかかった謎』の時のように、
貫く「正義」を自分の言葉で語ってほしかった。
あの言い方だと、新一への責任転嫁になりかねないように思える。

そしてやっぱりこの事件でも、コナンの言動に危機感がない。
少年探偵団の前で無防備に声変えて、世良たちと会話してる様は、
シリアスに徹するかギャグで流すかどっちかにしろと言いたくなる。主に作者に。

また、記憶力に優れているはずのコナン曰く、
「知り合いの誰かに似てて」「どっかで会った気がする」
というご都合主義にも閉口せざるを得ない。
かつてキールが昏睡した時のように、物語は無限に続けられる状態に陥っているのだ。

それでは。また次回。

事件223『幽霊ホテルの推理対決』(第73巻)考察。

2014-04-13 | 『名探偵コナン』原作考察
物語を構成するにおいて、最小限必要な人数というのがある。
例えばミステリなら、メインキャラは多くて5人。
主人公の探偵役と、その仲間。
対立する警官などと、その仲間。
そして事件の関係者。
大抵の有名な作品は、こういった形に収まるはずだ。

『コナン』も本来ならば、コナン・蘭・小五郎・目暮、それから園子辺りがいれば充分だ。
アニメオリジナルだと、このパターンは少なくない。

しかし、原作の方はどうか。
あらすじを説明するための最低限の人数が、5人どころか数十人。
メインキャラ全員を描ききるのが不可能になっている事は、
『命がけの復活』の時点で証明済みだ。

にも関わらず、この期に及んで、まだメインキャラが増える。
それも、敵とも味方とも分からない、
読者としてはどう扱ったらいいのかさえ分からない人物が。

しかも、そんな謎の人物を前に、コナンが何と無防備に工藤新一の名前を使う事か。
彼にはもう、本来もつべき危機感がまるで無い。
昔のコナンなら、この事件のコナンを蹴り飛ばしているんじゃないか?

……という、古参の読者(=私)の鬱積とは裏腹に。
これからは、世良真純の世良真純による世良真純のための物語が始まる。
私の知る『名探偵コナン』は、既に終わったのだ。

それでは。また次回。

事件222『死ぬほど美味いラーメン』(第73巻)考察。

2014-03-30 | 『名探偵コナン』原作考察
コナンと小五郎の二人だけで進む事件というのは新鮮。
彼らがラーメンを仲良く食べてる様は微笑ましい。
この事件の長所といったら、コレくらいしかない。

作り手側の倫理感麻痺は、また一段と進んでしまった。
飲食店の看板に「死ぬ」は無いだろう。

もっと理解不能なのが、犯人の殺人動機である。
採算度外視しているラーメン屋の味を守りたくて
地上げ屋を殺すというだけなら、まだ筋は通る。
しかし犯人、その採算度外視している態度が気に入らないとも
言っているから、何が何だか分からない。
作中で言われている通り、普通に相談し、普通に引っ越してもらえば済むのに。

「ここのラーメンは一杯あたりの儲けが少なすぎる」
「あなたには経済観念がなさすぎるんですよ」
と店長を散々に腐しておきながら、
その同じ人が次のページで、
「私はここのラーメンが大好きだった」
「採算を度外視して味と値段を守り抜く、店長の心意気も含めてね」
と店長を大いに褒めたたえている。
たった2ページで内容が矛盾してしまっているのだ。

最後のオチも、不謹慎の極み。
同情の余地ない被害者だからと言って、冗談に落として良いはずがない。
少なくとも、私は行きたいとは思わないな。こんな店には。

それでは。また次回。

事件221『時の番人の刃』(第72・73巻)考察。

2014-03-16 | 『名探偵コナン』原作考察
ある種、贅沢な話である。
殺人事件の要は、作者得意のワイヤートリックであり、純粋に興味深い。
だがそれよりも強く感じられるのは、話のテンポが速すぎる事。

『盗賊団謎の洋館事件』辺りを思い出させる時計屋敷。
そこに住む富豪への殺人予告。
一族の因縁の絡まる中、強行されるパーティ。
こういった、本来ならば壮大だろう物語は、たった3週で終わってしまう。

コナン・蘭・小五郎が関係者たちと会うや否や、
殺人が発生し、容疑者が絞られ、あれよあれよと言う間に犯人が見つかってしまう。

なので、中盤では、「他人様の血だらけの体のまま事情聴取を受け、
あまつさえ帰宅しようとさえする人々」
という
異常な代物が登場してしまっている。

この場で何度も言っている事だが、
ただ人を殺した犯人を当てるのがミステリではない。
その事件に至るまでの、人間関係の描写こそが本題なのだ。

例えば10年前の『コナン』なら、関係者たちとの交流を前半に据え、
倍以上のページ数でじっくりと描いてくれたのではなかろうか。
残念でならない。

それでは。また次回。

事件220『カルタ取り危機一髪』(第72巻)考察。

2014-03-02 | 『名探偵コナン』原作考察
この事件は、読めば読むほど、虚しくなる。
昔の事件に、何と魅力があった事かと思い出す。

かつて少年探偵団は、小学生トリオが主軸だった。
彼らがやりたがる事は、客観的には無謀であっても、
子供らしい情熱が走っていた。
コナン、そして灰原は、そんな子供たちの保護者として、
ブレーキとして機能していた。

それがこの事件では、彼らの信頼関係は、完全に霧散してしまっている。
特に灰原が、コナンの忠告を一切無視して暴走。
具体的な対策を先延ばしにして、戦う術もないのに悦に入って、
最後にコナンに助けてもらっているのに感謝もせずに睨みつける。

「諏訪湖の毛ガニのタオル」「る・こ・に・て」の暗号については、
子供が咄嗟に考えたにしてはレベルが高いが、非常に古典的なネタである。

そして、事件をややこしくした元凶は、間違いなくその子供自身である。
彼が迷惑な嘘を日頃からばら撒いていたから、
誰にも信じてもらえず、自分と母親と、
ひいては赤の他人である少年探偵団の命を危険にさらしたのだ。

正直に申し上げて、この事件のタイトルには、
危機一髪でなく、「自業自得」の四字が相応しいと私は思う。

それでは。また次回。
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事件219『絶叫手術室』(第72巻)考察。

2014-02-15 | 『名探偵コナン』原作考察
『ロンドンの黙示録』以降、印象に残らない事件が増えていく。

殺人事件のトリックは、人体切断マジックのバリエーションとして
興味深いが、それ以上の感慨はあまり無い。

ゲストキャラは、初対面のコナン達に、友人が死んだやら自殺したやら、
何ともあからさまな説明台詞の連発。
最低限の説明すら出来ないほどページ数が足らないのが
露骨に露見している。

対するメインキャラ達も、もはや扱いきれてないのが困ったもので。

小五郎は最初から最後まで棒立ちで講演をしてるだけ。

蘭は新一の告白(というにはお粗末な物だが)に、
「わたしも(返事を)言わなきゃダメかなぁ!」などと
無責任極まり無い発言を。

そしてコナンは話の最後、友人の死を思う犯人の独白に、平然と水を差す。
今まで身内に毒舌を浴びせても、
こういったゲストキャラには優しさを見せていたはずだったのに。
興冷め探偵、カッコ悪いよ。

それでは。また次回。

事件218『緊急事態252』(第72巻)考察。

2014-01-26 | 『名探偵コナン』原作考察
まだ知る人の多くなかった、緊急地震速報から事件が始まる。
(サンデー掲載は東日本大震災より前)

この事件では、作中世界での連絡ツールの進化に、
隔世の感をおぼえずにいられない。

連載初期では、公衆電話のボックスだった。
ファクシミリが現役だった。
イヤリング型携帯電話は画期的な最新機器だった。

それがこの事件の頃になれば、小学生なら携帯電話は必須アイテム。
光彦や歩美はまだしも、元太までもが
ごく普通に持ち歩いている事に驚かされる。
コナンと灰原が無力化されているピンチの中、
全員の携帯電話は最後まで大活躍を魅せる。

それにしても、事件の発端となった人、危険に対して無防備すぎ。
同居人が命を狙われてるという事忘れてないか。
そして沖矢。彼は本当に全面的に信用して良い人なのか。
いつまでも宙ぶらりんになってる謎は、少しずつ錆びていくように思える。

それでは。また次回。