りとるぱいんわーるど

ミュージカル人形劇団“リトルパイン”の脚本の数々です。

“スティーブ・ドガー” ―全10場― 3

2012年04月01日 21時44分34秒 | 未発表脚本


  アナベル「・・・スティーブ・・・」
  スティーブ「(少し慌てたように手を離す。)君達のことを良く知り
         もしないで偉そうだな・・・全く・・・。(髪を掻き揚げる。
         )」
  アナベル「(首を振る。)・・・ありがとう・・・。」
  スティーブ「ここへ来て、君達に出会って・・・今まで本当の幸せ
         の意味を、自分自身、履き違えてたような気がした
         んだ・・・。本当は・・・自分に言いたかったのかな・・・
         ?其々が外側を向いた幸せなんか、本当の幸せじゃ
         ない・・・。」
  アナベル「・・・でも頑張ってきたことに違いはないわ・・・。たとえ
        ・・・意味が違っても・・・。」
  スティーブ「・・・そうだな・・・。君のやりたいことって何だい?聞い
         てもいいかな?」
  アナベル「やりたいことを見つけること・・・」
  スティーブ「(思わず吹き出す。)・・・変わってるな・・・。でも・・・
         そこが君の魅力なんだね・・・屹度・・・。(微笑む。)」
  アナベル「(恥ずかしそうに。)そんなこと・・・。ね・・・!お仕事は
        何・・・?(スティーブをマジマジ見て。)・・・会社員・・・
        ?教師・・・?お医者様・・・な訳ないわよね・・・。(笑う。
        )」
  
         そこへ下手より、クラウニー登場。

  クラウニー「(口を挟むように。)政治家だ・・・。」

         スティーブ、アナベル振り返り、クラウニーを
         認める。

  スティーブ「クラウニー・・・」
  クラウニー「よぉ!元気そうだな。」
  アナベル「(呟くように。)・・・政治家の先生・・・」

         そこへ下手よりシャロン、走り登場。

  シャロン「スティーブ!!(スティーブに駆け寄り、抱き付く。)捜し
       たのよ!!淋しかったわ!!」
  スティーブ「シャロン・・・?如何して君が・・・」
  シャロン「いいじゃない!!」
  クラウニー「すまない・・・。上手く撒くことが出来なくてね・・・。」
  スティーブ「(シャロンの腕を離して。)おい・・・離れろよ・・・。」
  シャロン「だって久ぶりで嬉しくって!!」
  クラウニー「(アナベルを見て。)彼女が命の恩人?」
  スティーブ「ああ。アナベルだ。(アナベルに向かって。)アナベ
         ル、こいつは刑事で親友のクラウニー。」
  クラウニー「初めまして。(アナベルをマジマジ見て。)へえ・・・。
         美人の恩人でよかったじゃないか。礼のし甲斐があ
         る。(笑う。)」
  アナベル「(下を向いて。)・・・初めまして・・・。」
  スティーブ「品のない奴だな!アナベル、こいつの言うことは気
         にしなくてもいいから。それでこっちはクラウニーとよ
         く行く店の女主人でシャロン・・・。」
  シャロン「(スティーブの腕にしがみついて、アナベルを見据える
        ように。)・・・よろしく・・・。」
  アナベル「・・・こんにちは・・・。」
  クラウニー「(回りを見回して。)それにしてもエライ田舎に逃げ
         込んだものだな。(笑う。)」
  スティーブ「(シャロンを離して。)田舎だからって馬鹿にしたもの
         じゃないぜ。・・・本当にここはいい所なんだから・・・。
         (アナベルを見る。)」
  クラウニー「おいおい、長閑な風景に囲まれて、心まで闘争心消
         え失せたのんびり気分に、浸ってんじゃないだろうな
         ?」
  スティーブ「いけないか?」
  クラウニー「まあ、元の生活に戻れば、おまえはまた、休みも取
         れない仕事漬け人生に引き戻されるんだ。精々、今
         の内だけでものんびり羽根を伸ばすがいいさ。事務
         所の奴らは、てんてこ舞いしてたがね。」
  スティーブ「だろうな・・・。(思い出したように笑う。)」
  アナベル「あの・・・」

         3人、アナベルの方を見る。

  アナベル「お友達の方と、こんな所で立ち話もなんでしょう?ど
        うぞ家へいらして下さいな。」
  スティーブ「ありがとう。じゃあ、折角だから・・・。」

         スティーブ、クラウニー話しながら上手方へ
         歩き掛ける。一寸離れて2人に続くアナベル
         の側へ、意地悪そうな顔付でシャロン近寄り、
         そっと耳打ちする。

  シャロン「スティーブは恥ずかしがって言わなかったけど、私、彼
       の婚約者なの!秋には結婚するのよ!」
  アナベル「(一瞬驚く。無理に微笑んで。)・・・それは・・・おめで
        とうございます・・・。私、知らなくて・・・。あの・・・ごめん
        なさい・・・。(動揺しながら。)スティーブ!」  

         スティーブ、クラウニー振り返る。

  アナベル「私、少し用を思い出したの!家にキティがいると思う
        から、あの子にお茶の用意をさせて下さいね・・・!じゃ
        あ・・・!」

         アナベル、下手へ走り去る。

  スティーブ「アナベル?」

         3人残して、紗幕閉まる。

    ――――― 第 6 場 ――――― B

  クラウニー「またシャロンの悪い病気が出た・・・。」
  スティーブ「・・・彼女に何か言ったのか・・・?」
  シャロン「さあ・・・。(白々しく。)」
  スティーブ「彼女に何を言ったんだ!!(思わずシャロンの腕を
         掴む。)」
  シャロン「如何したの・・・!?何時もなら、私があなたに言い寄
       ってくる女を追い払ったって、全然無関心だったじゃない
       !?」
  スティーブ「(手を離して横を向く。)」
  クラウニー「・・・おまえ・・・ひょっとして・・・惚れたか・・・?」
  シャロン「冗談でしょ!?まだ出会って数日じゃない!!それに
       彼女だって、あなたのこと好きだって言ったの!?」
  クラウニー「言わなくたって、今の態度を見りゃ分かるよ、誰だっ
         て・・・。またどうせ“私、スティーブの恋人なの”とか
         何とか言ったんだろ?」
  シャロン「秋に結婚するって言ったのよ!!」
  クラウニー「おいおい・・・。」
  
         スティーブ、下手へアナベルを追い掛けよう
         とする。

  クラウニー「スティーブ!!」

         スティーブ、振り返らずに立ち止まる。
 
  クラウニー「追い掛けてって如何するつもりなんだ?“君が好き
         だ!!”とでも言うつもりか?今のおまえの立場を
         よく考えてみろよ・・・。どんな汚い手でも使う、あの
         ジェラルド・マクレーニ氏に命を狙われてるんだろ?
         それに、こんなのんびりした田舎で暮らす彼女を、都
         会の雑踏の中へ放り込むなんて、俺には出来ないね
         ・・・。おまえのパートナーになる女性は、将来ファー
         スト・レディになるかもしれないんだぜ。」
  シャロン「私が?」
  クラウニー「(溜め息を吐いて。)残念だが、君も無理だよ、シャ
         ロン・・・。」
  シャロン「如何してよ!!」
  クラウニー「・・・それより・・・持って逃げた機密書類は、何処に
         あるんだ・・・?」

         スティーブ、ゆっくり振り返り、クラウニーを
         見る。音楽でフェード・アウト。

    ――――― 第 7 場 ――――― A

         紗幕開く。
         フェード・インする。と、1場の森の風景。
         中央アナベル、淋しそうに佇み歌う。

         “何故こんなに心が悲しいの・・・?
         今までと変わりはない
         朝陽が今日も昇り
         ただ何時もの一日が過ぎて行く・・・
         なのに何故こんなに締め付けられる
         思いが溢れ返るよう・・・
         儚い世の常と同じ
         ただ当たり前の日々の流れに
         一光の夢に似た
         憧れが降り注いだ・・・
         それに思いの丈を込めた
         今は通り過ぎた日々・・・
         なのに何故・・・
         こんなにも心が・・・
         囚われたままなの・・・?”

         アナベル、溜め息を吐いて、中央にあった岩の
         上へ腰を下ろす。

         “何故訳もなく涙が溢れるの・・・
         やっと巡り会えた愛しい人・・・
         叶うことのないこの思い・・・
         ただ戸惑いだけが心に広がるの・・・”

         そこへ下手より、そんなアナベルの様子を見て
         いたように、アヴェリー登場。
  
  アヴェリー「アナベル・・・」

         アナベル、振り返ってアヴェリーを認め、
         立ち上がる。

  アナベル「・・・アヴェリー・・・(横を向いて、涙を拭う仕種をする。
        無理に微笑んで。)何か用?ローズ小母さんの薬草
        なら、後で私が届け・・・」
  アヴェリー「(アナベルの言葉を遮るように。)アナベル!!あい
         つのことで・・・あいつのことでそんな悲しそうな顔を
         してるんだろ・・・!?」
  アナベル「・・・え・・・?」
  アヴェリー「・・・君は、ここにはいない都会の匂いのしたあいつ
         が、珍しかったんだ・・・。」
  アナベル「・・・珍しいなんて・・・」
  アヴェリー「・・・あいつのこと・・・好きになったんだろ・・・?」
  アナベル「(思わず顔を逸らす。)」
  アヴェリー「あいつが、この村へ来たせいで・・・君が涙を流さな
         けりゃならないなんて許せないよ!!」
  アナベル「・・・違うわ・・・。」
  アヴェリー「違うものか!!あんな奴、好きになったところで、所
         詮、都会に自分の暮らしがあって、そこへ帰ってしま
         うんだ・・・!!思うだけ無駄だよ!!・・・僕なら・・・
         僕なら君にそんな悲しい顔は絶対にさせない!!約
         束するよ!!君を必ず守っていく!!だから・・・」
  アナベル「・・・アヴェリー・・・」
  アヴェリー「・・・結婚しよう・・・!!何があっても、僕は君に涙だ
         けは流させない・・・!!だから、あんな奴のこと、忘
         れてしまえよ!!」
  アナベル「・・・。(暫く考えるように下を向く。)」
  アヴェリー「アナベル・・・僕なら君を置いて何処へも行かないよ
         ・・・。」
  アナベル「・・・。(一時置いて、アヴェリーを見詰め、ゆっくり頷く
        。)」
  アヴェリー「・・・(呆然とする。)・・・それは・・・イエス・・・ってこと
         ・・・?」
  アナベル「(心持ち淋しそうに微笑んで、頷く。)」
  アヴェリー「(アナベルの手を取る。)OKしてくれるんだね・・・?」
  アナベル「・・・ええ・・・。」
  アヴェリー「やっ・・・やったぁ!!(飛び上がる。)本当に!?本
         当に結婚してくれるんだね!?」
  アナベル「・・・私なんかでよければ・・・。」
  アヴェリー「当たり前じゃないか!!君でなけりゃ駄目なんだ!
         !君を愛しているんだから!!(思わずアナベルを
         抱き締めるが、ハッとして手を離す。)・・・ごめん!!
         だけど、今日は何て最高の日なんだ!!アナベル!
         !早速、皆に報告に行こう!!」

         アヴェリー、アナベルの手を引っ張って、
         上手へ去る。
         音楽流れる。
         下手よりスティーブ、ゆっくり歌いながら
         登場。

         “何故こんなに心が痛むのか・・・
         久しく忘れていた自責の念・・・
         戻れば今までと何ら変わりのない
         ただ毎日が忙しく過ぎ去って行く・・・
         なのに何故こんなに締め付けられる
         思いが溢れかえるよう・・・
         人々の往来に自分自身も身を任せ・・・
         ただそれが当たり前の毎日と
         だけど触れた初めての
         温かな安らぎに・・・
         今は通り過ぎた日々・・・
         なのに何故
         こんなにも心が
         囚われたままなんだ・・・?”

         スティーブ、いない相手を思って、その胸に
         抱くように踊る。

         “何故訳もなくただ恋しい・・・
         やっと巡り会えた愛しい人・・・
         叶うことのないこの思い・・・
         ただ空しさだけが心に溢れる・・・”

         そこへ上手より、息を切らせたキティ、走り
         ながら登場。スティーブを認め、駆け寄る。

  キティ「いた!!スティーブ!!(息を整えるように。)」
  スティーブ「(振り返ってキティを認める。)・・・如何したんだい・・・
         ?そんなに慌てて・・・。」
  キティ「大変よ!!姉さんが、アヴェリーのプロポーズを受けた
      って!!」
  スティーブ「・・・え・・・?(平静を装いながら、動揺は隠せないよ
         うに。)」
  キティ「たった今、アヴェリーが舞い上がって村中、報告して回っ
      ていたのよ!!如何するの!?」
  スティーブ「・・・如何するって・・・」
  キティ「(興奮して。)姉さんも姉さんよ!!如何して今まで断わ
      り続けてたプロポーズを、今になって受けるだなんて!!
      ね!!アナベルのこと、好きなんでしょ!?」
  スティーブ「・・・キティ・・・」
  キティ「私にだって分かるわよ!!2人の様子見てたら、まだ知
      り合って少ししか経ってないけど、お互いが惹かれ合って
      るってことくらい!!」
  スティーブ「・・・確かに彼女は魅力的で・・・素敵な女性だと思っ
         ている・・・。」
  キティ「はっきりしないのね!!愛してるんでしょ!?だったら、
      如何してプロポーズしないの!?知り合った日数なんて
      関係ないじゃない!!姉さん、アヴェリーと結婚しちゃう
      かも知れないのよ!!それでもいいの!?」
  スティーブ「・・・君のように、好きな気持ちだけで行動に移せた
         ら・・・と・・・そう思うよ・・・。」
  キティ「・・・如何言う意味・・・?」
  スティーブ「・・・今はまだ駄目なんだ・・・。今は・・・まだ・・・」
  キティ「如何して駄目なの!?そんなこと言ってたら、手遅れに
      なるのよ!!ねぇ、スティーブ!!」
  スティーブ「・・・彼女を危険に巻き込むことになるんだ・・・。」
  キティ「危険に巻き込む・・・?如何言うこと・・・?」
  スティーブ「・・・こんなことなら・・・こんな風に苦しむなら、この村
         へ来るんじゃなかった・・・。いっそ出会わなかった方
         が・・・!!」
  キティ「・・・男らしくない・・・男らしくないわ!!あなたが現れて、
      焦って姉さんに我武者羅にアタックして、OKを勝ち得た
      アヴェリーの方が、余程男らしいわ!!」

         キティ、上手へ走り去る。

 スティーブ「キティ!!・・・男らしくない・・・か・・・。確かに自分でも
        そう思うよ・・・。」

         スティーブ、空しそうにポケットに両手を
         突っ込み、一寸前へ。
         紗幕閉まる。

    ――――― 第 7 場 ――――― B

         紗幕前。
         スティーブ、俯き加減で下手方へ行きかけると、
         電話のベルが鳴る。スティーブ、ズボンのポケット
         から携帯電話を取り出し話す。

  スティーブ「・・・はい・・・」

  アイザックの声「スティーブか?」

  スティーブ「・・・警部?」

  アイザックの声「ああ、そうだ。如何した、エラク落ち込んでるよ
            うな声だな?」

  スティーブ「・・・ちょっとね・・・。」

  アイザックの声「綺麗な村で、命の洗濯をしてるんじゃなかった
            のか?」

  スティーブ「それより電話は禁物じゃなかったのか・・・?」

  アイザックの声「・・・内通者が分かったんだ・・・。」
  
  スティーブ「え?」

  アイザックの声「・・・残念だが・・・」

  スティーブ「・・・まさか・・・?」

         驚きの表情のスティーブで、フェード・アウト。











    ――――― “スティーブ・ドガー”4へつづく ―――――













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   (おまけフォト^^;)

   

    春公演作品の登場人物(?)達の、生首状態です^_^;

   そろそろ、本格的に春公演の準備を進めないと、4月に入って
   しまいました・・・と言うことで、病院で作り貯めた“犬達”のお顔
   に、今日は昼から家に帰って来たので、綿を詰めてボンドを乾
   かしているところです(^^)v
   明日からは、このお顔に体を付けていきます♥

   因みに、中央の濃い黄色のお顔は、主人公ジュリーちゃんの
   愛犬“プッチくん”です(^^)
   














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