――――― 第 8 場 ―――――
紗幕開く。
フェード・インする。と、アナベルの家。
下手よりアヴェリー登場。
アヴェリー「アナベル!アナベル!(首を傾げる。)」
アヴェリー、アナベルを捜しながら上手へ去る。
一時置いて、下手よりアナベル、スティーブの
ジャケットを手に登場。
アナベル「(ジャケットを見て。)よかった。血の跡も綺麗に落ちて
る・・・。(アナベル、思わずジャケットを胸に抱く。)ステ
ィーブ・・・(呟く。)」
上手よりアヴェリー、そっと登場し、その様子を
見ている。
アヴェリー「・・・アナベル・・・」
そこへ下手よりクラウニー登場。
アヴェリー上手へ去る。
クラウニー「ただいま。」
アナベル「(驚いたように、ジャケットを離す。)あ・・・おかえりな
さい。如何でした?村の様子は・・・。」
クラウニー「ああ。スティーブが離れ難くなるのが分かるよ・・・。
とても綺麗な所だね。」
アナベル「座って休んでて下さいね。スティーブの上着を繕った
ら、お茶入れますから・・・。」
クラウニー「・・・銃の跡・・・?」
アナベル「(微笑んで。)聞くなと言われてますから・・・。」
クラウニー「へえ・・・。あいつらしいね、全く・・・。少しでも危険が
あるかも知れないと思ったら、絶対誰もそこへは近付
けない・・・。況してや、それが大切な人なら尚更・・・
か・・・。」
アナベル、椅子に腰を下ろし、ジャケットを
触っている。
アナベル「(何かに気付いたように。)・・・あら・・・?何かしら・・・
ここに・・・」
クラウニー「如何した?」
アナベル「・・・中に何か縫い付けてあるみたい・・・」
クラウニー「何だって!?ちょっと見せてくれないか?(アナベル
から、奪うようにジャケットを取り上げる。)」
アナベル「あの・・・」
クラウニー「(ジャケットを触って、顔色が変わる。)見つけた・・・
!!やったぞ!!畜生!!(声を上げて笑う。)」
アナベル「・・・見つけたって・・・?」
クラウニー「(ジャケットを破く。)これさえあれば!!」
アナベル「何するの!?止めて下さい!!(ジャケットをクラウニ
ーから取り上げる。)スティーブの上着を、勝手に破くな
んて・・・!!」
上手より、ただならぬ気配に気付いて、
アヴェリー登場。
アヴェリー「アナベル・・・?」
クラウニー「何するんだ!!それを此方へ貸せ!!」
アナベル「(ジャケットを胸に抱き締めて、クラウニーを見据える。
)嫌です!!」
クラウニー「(上着の内ポケットから、銃を取り出しアナベルの方
へ向ける。)大人しく渡した方が、身の為だ・・・。」
アヴェリー「(驚いて、腰を抜かしたように座り込む。)ピ・・・ピス
トル・・・?」
アナベル「(強く首を振る。)」
クラウニー「(天井に向けて、銃を一発撃つ。)命が惜しくないの
か!!」
アヴェリー、這うように上手へ去る。
アナベル「これはスティーブのものよ・・・!!」
クラウニー「(アナベルに近寄り、無理矢理ジャケットを奪おうと
する。)貸せって言ってるんだ!!」
アナベル「嫌・・・!!」
2人、ジャケットを奪い合う。一時の取り合い
の後、クラウニー、アナベルを思わず殴り付ける。
アナベル「キャアッ!!(倒れる。)」
クラウニー「(溜め息を吐き、ジャケットを拾う。)大人しく渡せば、
痛い目を見ずに済んだものを・・・!!(ジャケットを
破いて、中から書類を取り出す。)やった・・・!!こ
れさえあれば・・・!!」
クラウニー、ジャケットを放し、書類を持って
下手へ走り去る。
一時置いて、上手よりスティーブ走り登場。
倒れているアナベルを認め、慌てて駆け寄る。
スティーブ「アナベル!!(アナベルを抱き起こす。)アナベル!
!確りしろ!!」
アナベル気付く。
スティーブ「アナベル・・・?」
アナベル「・・・スティーブ・・・(涙が溢れるように。)・・・ごめんな
さい・・・。あなたの大切な・・・」
スティーブ「いいんだ・・・!!いいんだ・・・君が無事でよかった
・・・。(アナベルを力強く抱き締める。)」
アナベル「スティーブ・・・!!」
音楽で紗幕閉まる。
――――― 第 9 場 ―――――
紗幕前。
下手よりクラウニー、後ろを気にしながら、
息を切らせながら走り登場。
クラウニー「(書類を見て、安堵したように溜め息を吐く。ゆっくり
上手方へ。)」
その時、上手よりスティーブ、クラウニーを
見据えながらゆっくり登場。
クラウニー、立ち止まる。
スティーブ「(ゆっくり、クラウニーに近寄りながら。)・・・まさか・・・
おまえが裏切り者だったとはな・・・。」
クラウニー「・・・そうさ・・・。がっかりしたか・・・?」
スティーブ「(クラウニーを思い切り殴る。)馬鹿野郎!!」
クラウニー、倒れる。
スティーブ「何故おまえは!!(クラウニーの胸元を掴む。)」
クラウニー「何故・・・?愚問だな・・・。出世したいからさ!!お
まえのように、エリート街道に乗りたかったのさ!!」
スティーブ「・・・出世したい・・・?こんなことをして、バレたら出世
どころじゃなくなるんだぞ!!何故、実力で上がろう
としない!!」
クラウニー「・・・笑わせるな・・・!!昔から何をやらせても一番
のおまえは、進学校に進み、超エリート大学を出て、
サークル活動や討論会で雄弁を奮い・・・超大物政治
家の目に留まり、贔屓を受けて30にしてもう議員様
だ!!将来は何か?大統領か?ふん!!そんなお
まえに、俺の気持ちなんて分かるものか!!何が実
力で上がってこいだ!!良く出来るおまえと一緒に
されちゃ、堪らないんだよ!!」
スティーブ「(クラウニーの胸元を離す。)心底・・・捻くれた野郎に
成り下がったんだな・・・。」
クラウニー「・・・何とでも言え・・・。(立ち上がって、服を払う。)
あの夜・・・おまえをやり損なったのは、この俺だ・・・
!!」
スティーブ「(クラウニーを睨み付ける。)・・・如何やら俺の方が
馬鹿だったようだな・・・。人の善悪を見抜く力もなく
て、何が議員だ・・・。笑わせるな・・・!!」
クラウニー「・・・馬鹿野郎同士が、友達ごっこをしてたって訳だ
・・・。」
スティーブ「・・・ごっこか・・・。あの夜・・・やろうと思えば本当に
やれた筈だ・・・。何も態々、腕なんて狙わずに(胸
を押さえて。)ここへ、おまえなら一発命中の筈だ・・・
。」
クラウニー「・・・何・・・?」
スティーブ「本当の悪にもなり切れない・・・中途半端な奴め・・・。
」
クラウニー「何だと!!(スティーブに思わず殴り掛かる。)」
スティーブ「(さっと避けて。)俺に敵うものか!!」
クラウニー「くそう!!」
クラウニー、スティーブに殴り掛かるが、
スティーブ、さっと避けながら反対にクラウニー
を殴り倒す。
クラウニー「(倒れたまま、悔し涙を堪えるように、握り拳で地面
を叩く。)畜生・・・!!畜生!!」
スティーブ「・・・やったことの償いをしてこい・・・。出てきたらまた、
何時でも相手になってやるよ・・・。」
クラウニー「・・・畜生・・・」
スティーブ「・・・そうだ・・・俺式の出世の仕方を、教えといてやろ
う・・・。ひたすら自分を押し殺し、頭を下げることだ・・
・。」
クラウニー「(顔を上げ、スティーブを見る。)・・・頭を下げる・・・?
」
スティーブ「・・・おまえは結果ばかりを見て、羨ましがる前に、も
っと途中経過を知るべきだな・・・。誰でも努力はして
るのさ・・・。」
その時、パトカーのサイレンが響く。
クラウニー、ゆっくり立ち上がる。クラウニー、
上手の一点を見詰め、諦めたように目を伏せる。
アイザックの声「残念だ、クラウニー・・・。」
フェード・アウト。
パトカーのサイレン、段々遠くへ。
――――― 第 10 場 ―――――
紗幕開く。(フェード・インする。)と、村の風景。
静かな音楽流れる。
中央、佇むアナベルとアヴェリー。
アヴェリー「・・・分かっていたよ・・・。こうなることは・・・。」
アナベル「・・・ごめんなさい・・・。」
アヴェリー「・・・謝るのは・・・僕の方だよ・・・。君のことを守るだ
なんて言っておきながら・・・。ピストルを目の前にし
て僕は・・・情けないよ・・・。」
アナベル「・・・(微笑んで。)いい人ね・・・。黙ってたら、あの時、
あなたがあそこに居たなんて知らなかったわ・・・。そし
たら何も・・・別れはあったかも知れないけど・・・。」
アヴェリー「嘘は吐きたくないんだ・・・。特に、一番大切な人に、
嘘を吐いたなんて一生苦しむことになるじゃないか
・・・。それなら本当のことを正直に言って、今恥をか
く方が僕は余程気が楽だな・・・。」
アナベル「ありがとう・・・。」
アヴェリー「如何するの・・・?あいつ帰っちゃうんだろ・・・?」
アナベル「・・・いいの・・・。短い間だったけど、思い出は沢山ここ
に(胸を押さえる。)あるから・・・。一人でも大丈夫・・・。
」
アヴェリー「付いて行っちゃえよ・・・。」
アナベル「(首を振る。)・・・彼には彼の生活が待ってるのに、私
なんかが付いて行ける筈ないじゃない・・・。」
アヴェリー「アナベル・・・。僕でよかったら、何時でも力になるよ
・・・。僕はずっとこの村にいるから・・・。あ・・・、別に
またチャンスを狙っている訳じゃなくって・・・。そりゃ、
多少そう言う気持ちもあるにはあるけど・・・。いや・・・
だから・・・」
アナベル「・・・分かってる、アヴェリー・・・。あなたは幼い頃から
いつも私の側にいてくれたもの・・・。」
アヴェリー「じゃあ僕は行くよ・・・。諦めはついてるけど、矢張り
君とあいつが2人仲良くしているのを見るのは辛いか
ら・・・。女々しいよな・・・。」
アナベル「ううん・・・。」
アヴェリー「じゃあ、また・・・。」
アヴェリー、下手へ去る。
一時置いて、キティ上手より登場。
アナベルの側へ。
キティ「お姉さん!スティーブがそろそろ行くって・・・。」
アナベル「そう・・・。」
そこへ上手よりスティーブ登場。ゆっくり
アナベルの側へ。キティ一寸離れる。
スティーブ「・・・やぁ・・・」
アナベル「・・・もう・・・行くのね・・・。」
スティーブ「ああ・・・。裁判が始まるからね・・・。」
アナベル「そう・・・。」
スティーブ「・・・短い間だったけど、君達姉妹には本当に感謝し
ているよ・・・。」
アナベル「(俯いて首を振る。)いいえ・・・。」
スティーブ「・・・そう・・・君は・・・これから・・・結婚して・・・」
アナベル「(微笑んで。)・・・何も変わりはなしよ・・・。今まで通り
キティと2人で、薬草を売って暮らして行くわ・・・。」
スティーブ「・・・結婚するって・・・」
アナベル「止めたの・・・。」
スティーブ「・・・え・・・?」
アナベル「だって・・・本当に好きな人とでなきゃ、結婚なんて意
味がないもの・・・。」
スティーブ「・・・アナベル・・・本当に・・・?」
アナベル「ええ・・・。」
スティーブ「よかった!」
アナベル「え・・・?」
スティーブ「これで心置きなく、暫く会えなくなる前に、自分の気
持ちを君に伝えておける・・・。」
アナベル「スティーブ・・・」
スティーブ「これから僕は戻って、裁判の証言台に立ってくるよ
・・・。それで、ジェラルド・マクレーニに罪の償いをさ
せる・・・。そうして僕はもう一度・・・本当に自分のや
りたいことを・・・幸せを探そうと思う・・・。君が言って
た・・・やりたいことを見つけるんだ。ここへ戻ってくる
よ・・・。それまで・・・待っていてくれないか・・・?」
アナベル「・・・嘘・・・」
スティーブ「本当さ・・・。何もかも一からやり直す・・・。君に側に
いてもらいたいんだ・・・。愛している・・・アナベル・・・
。」
アナベル「スティーブ・・・(涙が溢れる。)」
スティーブ「この歳になって、柄にもなく一目惚れするなんて・・・
。我ながら可笑しくなるよ・・・。今まで恋愛なんて、ゲ
ームだと思っていたのに・・・。まさか、こんなに誰か
を愛しいと思うなんて・・・。」
アナベル「私も・・・愛しているわ・・・。傷を負ったあなたを一目
見た時から・・・。例え叶わない恋でも、この思いを一生
秘めていくつもりでいた・・・。」
スティーブ「アナベル・・・!(アナベルを力強く胸に抱き締める。)
」
キティ、嬉しそうに2人に駆け寄る。
キティ「上手くいったのね!?」
アナベル「キティ・・・」
スティーブ「そうだよ。」
キティ「全く、最近の大人ときたら世話が焼けるんだから!(嬉し
そうに笑う。)おめでとう!!」
スティーブ、アナベル顔を見合わせて、
微笑み合う。
スティーブ「2人で・・・幸せを見つけよう・・・。」
スティーブ、アナベルの手を取り、優しく歌う。
キティ、そっと上手へ去る。
“今・・・新たに始まりの時・・・
昨日までとは全く違う
幸せへと続く永遠の道へ
一歩を踏み出す時・・・
優しさと・・・安らぎと・・・
愛しさと・・・恋しい思い・・・
温かな温もりを肌で感じ・・・
共にいたいと願う
君だけがいればいい・・・
君だけが側にいればいい・・・
例え全てが満ち足りていても
君がいなければそれは全く
無意味なもの・・・
共にいよう何時までも・・・
君が同じように願うなら
僕はここにいる何時も君の側に・・・
新たな出発へ2人一緒に
踏み出そう・・・”
2人、寄り添い合いながら、彼方を見遣る。
――――― 幕 ―――――
では、ここで次回掲載作品の紹介をしておきたいと思い
ます(^^)
次回はとってもラブストーリーな作品で、ダンサー達を
主人公に書いたお話しで、“ジェフリー”をご覧頂こうかと
思っています(^^)vお楽しみに♥
どら。
― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪
(おまけフォト^^;)
昨日の“おまけフォト”のぷっちくんの頭が、こうなり
ました(^^)v
http://milky.geocities.jp/little_pine2012/performance.html
http://ritorupain.blogspot.com/
http://blogs.yahoo.co.jp/dorapontaaponta