りとるぱいんわーるど

ミュージカル人形劇団“リトルパイン”の脚本の数々です。

“ジェフリー” ―全11場― 3

2012年04月29日 18時34分13秒 | 未発表脚本


  アイリーン「そんなこと・・・ないわ・・・。確かにショックは受けた
         ・・・。だけど私も心に固く誓って、ここへ来たんです
         もの・・・!!(固い決心を持っているかのように、瞳
         を輝かせて彼方を見詰める。)」
  ジェフリー「(アイリーンを見詰める。)・・・余程・・・固い決心を持
        って来た・・・って訳だ・・・。」
  アイリーン「(ジェフリーを見て、照れたように微笑む。)頭の中じ
         ゃ、もっと上手く踊れる予定だったんだけど・・・。」
  ジェフリー「(思わず、つられるように微笑み返す。)・・・さっきの
        ワルツみたいに・・・?」
  アイリーン「(下を向く。)」
  ジェフリー「・・・社交ダンスでも習ってたか?」
  アイリーン「・・・母が元々踊りの好きな人ですから・・・。私も小さ
         い頃から、その影響で・・・。」
  ジェフリー「・・・コツを掴めば、屹度踊れるようになるだろう・・・。
         」
  アイリーン「・・・え・・・?」
  ジェフリー「あれ程、ワルツでは軽やかに舞うことが出来るんだ
        ・・・。屹度、踊り慣れていないだけで、どんな踊りでも
        こなせる筈だ。」
  アイリーン「・・・本当・・・に?」
  ジェフリー「・・・ああ・・・。」

         ジェフリー、アイリーンを見詰めながら歌う。
         途中、アイリーン、呼応するかのように復唱
         する。(2人のデュエット。)

     ジェフリー“夢見たことが現実に
           夢を夢で終わらせない為に
           誰もが自分の人生を
           無意味なままに済ませぬ為に
           成功と言う名の山頂に
           登り詰めるその時までは
           努力と言う名の階段を
           一段一段踏み締める・・・”

     ジェフリー“夢見た自分があるように”

     アイリーン“夢見た自分があるように”

     ジェフリー“過去に願った些細なことが”

     アイリーン“過去に願った些細なことが”

     ジェフリー“今日と言う日の幸せならば”

     アイリーン“今日と言う日の幸せならば”

     ジェフリー“それは夢の現実と”

     アイリーン“それは夢の現実と”

     2人“人生の舞台の上に登り切った
        夢見た一時を
        スポットライトに包まれたい・・・”

         見詰め合った2人。フェード・アウト。

    ――――― 第 6 場 ―――――

         音楽変わって、下手スポットにダイアナ浮かび
         上がり、今の思いの丈を切なそうに歌う。
         ゆっくり上手方へ。

         “ずっと見ていたあなただけを・・・
         私だけが知っている
         あなたの優しさを・・・
         ずっとあなた以外の誰も・・・
         私の心を動かしは
         しなかったのだから・・・
         スポットライトに包まれた
         昔のあなたは輝いて
         近寄り難い高貴に
         ただ憧れていただけだった・・・
         けど今は・・・
         手を伸ばせば何時も
         そこにいるあなたが
         やっと側にいると
         私を見てくれるなんて・・・
         甘い・・・
         ただ夢を・・・見ていただけなの・・・?
         あなたがとても遠くて・・・”

         フェード・アウト。

    ――――― 第 7 場 ―――――

         カーテン開く。と、稽古場。
         ジェフリー、アイリーンのダンス稽古に
         付き合っている。横にモーリス、座り込んで
         その様子を微笑ましく見ている。
         (アイリーン、初めて踊った時に比べ、見違
         える程、上達し、踊りらしく見えるようになって
         いる。)

  ジェフリー「違う、違う!!何度言ったら分かるんだ!!そこは
        こうだろ!!」

         ジェフリー、踊って見せる。

  モーリス「だけど、最初の頃に比べたら、随分上手くなったじゃ
       ないか。元々、踊れるものを持ってたんだな。」
  ジェフリー「甘いな。まだこんな踊りじゃ、入団テストすら突破で
        きるか分からないんだぞ。」
  モーリス「いくら、将来有望で、振り付け主任のおまえがOK出し
       ても、今踊れなければお偉方に認めてもらえないって訳
       か・・・。」
  ジェフリー「そう言うことだ・・・。」
  アイリーン「私、頑張りますわ!!入団テストまで後3日・・・。何
        が何でも合格したいんです!!」
  ジェフリー「(アイリーンを見て。)・・・分かってる・・・。力を貸して
        やると約束したんだ・・・。」
  モーリス「おいおい、一体何時、そんな約束を交わしたんだ?ほ
       んの一週間程前までは、あんなに下手糞だの何なの・・
       ・。ま、けど良かったな、アイリーン。こいつに任せとけば
       もう俺達の仲間になったも同然だ。(笑う。)」
  ジェフリー「好い加減な奴だな・・・。」
  モーリス「生まれつきでね。そうだ、アイリーン・・・。一度聞きた
        かったんだけど・・・如何してこの劇団を選んだんだい
        ?同じニューヨークには、ここより数倍規模のでかい、
        S・Y・Kだってあるし・・・。同等ならいくらだって・・・。」
  アイリーン「(微笑んで。)それは・・・」

         その時、上手よりハドソン、走り登場。

  ハドソン「大変だー!!ダイアナさんが!!」
  モーリス「ダイアナが!?」
  ジェフリー「如何したんだ!?」

         そこへ上手より、ジョナサンに抱き抱えられた
         ダイアナ、心持ちぐったりしたように登場。
         ジェフリー、モーリス駆け寄る。ジョナサン、
         ゆっくりダイアナを下へ下ろす。ダイアナ、
         苦痛に顔を歪める。

  モーリス「如何したんだ、一体!?」
  ジョナサン「それが、舞台練習の最中にリフトを失敗して、足首
         を捻ったみたいなんです!!」
  ジェフリー「(膝を付いて、ダイアナの足首を手で触ってみる。)
        見せてみろ・・・。」
  ダイアナ「痛いっ!!痛いわ!!痛い・・・(泣く。)」
  ジェフリー「骨に異常はなさそうだ・・・。多分、筋を違えただけだ
        ろうから、一週間もすりゃ、直ぐに良くなるだろう。だが、
        当分の間は・・・」
  ダイアナ「明日のオーディションは如何なるの・・・!?ねぇ・・・、
        皆、黙ってないで何とか言ってよ!!(泣き叫ぶ。)私
        は明日の為に、頑張ってきたのよ!!“ダンサー”を
        やる為にずっと努力してきたって言うのに!!如何し
        てこんな日に・・・!!」
  モーリス「・・・ダイアナ・・・」
  ジェフリー「ダイアナ・・・明日は諦めるんだ・・・。おまえが今日ま
        で、明日の為に頑張ってきたのはよく知ってる・・・。だ
        がここで無理をして、一生俺のようになりたいか?」
  ダイアナ「・・・ジェフリー・・・」
  ジェフリー「ちゃんと治せば、またチャンスは必ず巡ってくる・・・。
        今は悔しいだろうが、それがおまえの為だ・・・。」
  ダイアナ「ジェフリー・・・ジェフ!!(ジェフリーに抱き縋り、泣く。
        )」

         ジェフリー、一時ダイアナが泣き治まるまで
         そっと抱き寄せている。

  ジェフリー「ジョナサン、バーンズ先生の所へ連れて行ってやっ
        てくれ・・・。」
  ジョナサン「分かりました。」
  モーリス「俺も行こう!」

         ジョナサン、ダイアナを抱き抱えて下手へ
         去る。モーリス続く。

  ハドソン「こんなことになるなんて・・・。でも・・・もし明日のオー
       ディションを受けた所で、合格する見込みがなかったん
       なら・・・これでよかったのかな・・・。」
  ジェフリー「(溜め息を吐いて。)幾等、向こうが決めたことでも・・・
        あいつなら実力で主役を奪い取ることが可能だったさ
        ・・・。」
  ハドソン「じゃあ・・・」
  ジェフリー「最初は無理だと思っていた・・・。けど、今のダイアナ
        は、絶対に何とかしたいと思う執念で、100%の実力
        ・・・いや、それ以上の力を漲らせていたからな・・・。」
  ハドソン「・・・そうなんですか・・・。」
  ジェフリー「残念だよ・・・。」
  アイリーン「あの・・・、さっき・・・俺のようになりたいか・・・って・・・
         。」
  ジェフリー「(アイリーンを見て。)・・・馬鹿な話しさ・・・。3年前・・・
        丁度、公演の幕が開いて間もない頃・・・膝の異常に気
        が付いた・・・。だが、俺は一ヶ月間、痛めた膝で、その
        公演を遣り抜いたんだ・・・。俺にとっては、ダイアナが
        憧れ続けた“ダンサー”のような舞台だった・・・。俺には
        途中で降板する勇気がなかったんだ・・・。」
  アイリーン「・・・3年前・・・?その時の作品・・・って・・・」
  ジェフリー「・・・フォーエバー・・・」
  アイリーン「フォーエバー・・・」

         アイリーンの戸惑った表情、スポットに浮かび
         上がる。

  アイリーンの声「(彼方を見遣りながら。)彼に初めて出会って
            ・・・あの日から私は彼のようになりたいと・・・ず
            っと心に思ってきた・・・。なのに・・・その作品が
            彼の運命を変えただなんて・・・!!」

         フェード・アウト。

    ――――― 第 8 場 ―――――

         上手スポットにモーリス浮かび上がり、
         切なそうに歌う。

         “手の届きそうな直ぐ目の前に
         今まで願い夢見たことが
         腕を広げて待つのが見える・・・
         手を差し出し思い切り
         力強く握り締めた
         そう思った瞬間に
         指の間を擦り抜ける
         一滴の甘い思い・・・
         そんな思いが胸に
         一杯広がって今は
         苦い憂いが唯空しい・・・
         そんな・・・
         おまえの心を思って胸が痛む・・・”

         彼方を見遣るモーリス。
         フェード・アウト。

    ――――― 第 9 場 ――――― A

         カーテン開く。と、稽古場。
         中央ジョナサン、ハドソン、肩を寄せ合って
         座り、一枚の新聞に見入っている。

  ハドソン「・・・“ダンサー”の主役に見事・・・劇団S・Y・Kのレイ
       チェル・グランド決まる・・・か・・・。やっぱり・・・。」
  ジョナサン「畜生・・・、ダイアナさえ出てたら・・・。」

         そこへ下手よりダイアナ、杖を突いて
         足を引き摺るように登場。

  ダイアナ「おはよう・・・。(ゆっくり2人の側へ。)」

         ジョナサン、ハドソン、ダイアナに気付いて
         慌てて新聞を丸めて隠し、立ち上がる。

  ジョナサン「・・・お・・・おはよう・・・!」
  ハドソン「おはようございます!!」
  ダイアナ「・・・いいのよ、隠さなくたって・・・。もう知ってるわ。今
        朝のニュースで大きく報じてたもの・・・。」
  ハドソン「なんだ・・・」
  ジョナサン「大丈夫・・・?」
  ダイアナ「(大きく頷いて。)ええ・・・。何とかね・・・。ジェフリーに
        言われた一言は効いたから・・・。」
  ジョナサン「・・・俺のようになりたいか・・・って言う、あれ?」
  ダイアナ「ええ・・・。だってあの時のジェフリーの落ち込みようを
        知ってたら・・・。尋常じゃなかったものね・・・。」
  ハドソン「もう二度と踊れないなら、死んだ方がいい!!とまで、
       言ってたっけ・・・。」
  ジョナサン「本当に死に兼ねなかったぜ・・・。」
  ダイアナ「それを、彼は持ち前の努力で、あそこまでしたんだわ
        ・・・。そりゃ、二度と舞台には立てなくなったけど・・・。
        本当なら、立つことすらできなくなってたって、可笑しく
        なかったのに・・・。」
  ジョナサン「そうだな・・・。アイリーンが、ジェフリーさんをここの
         スターと間違えた程だもんな・・・。」

         ダイアナ、心なしか“アイリーン”の名前を
         聞くと、顔が強張る。そこへ上手より、稽古着
         姿のアイリーン登場。続いてリン登場。

  ハドソン「(アイリーンに気付いて。)やぁ、おはようアイリーン。」
  アイリーン「おはようございます、皆さん。」
  ジョナサン「こんな早くから朝練かい?」
  アイリーン「(恥ずかしそうに下を向いて。)もう直ぐ、入団テスト
         だと言うのに、まだまだ踊れなくて・・・。」
  ジョナサン「ジェフリーがついているんだから、大丈夫さ。な!(
         ハドソンに同意を求めるように。)」
  ハドソン「そうそう。」

         アイリーン、心配そうにダイアナの側へ。
         ダイアナ、一点を見詰め、その顔は怒りで
         紅潮している。

  アイリーン「ダイアナさん、大丈夫ですか?怪我の方は・・・」
  ダイアナ「・・・あなたに心配してもらわなくても結構よ・・・。(静
        かに、だが口調は厳しく。)」
  アイリーン「・・・え・・・?」
  ジョナサン「ダイアナ・・・?」
  ダイアナ「・・・私が何故、こんな怪我を負ったと思ってるの・・・
        !?」
  ジョナサン「如何したんだよ、ダイアナ・・・。何言って・・・」
  ハドソン「ダイアナさん・・・」
  ダイアナ「だってそうでしょ・・・?あなたが来てから、ジェフリー
        はあなたに付きっきりだった・・・。それまでは、何時も
        私の稽古に付き合ってくれていたのよ!!それなの
        に・・・!!だから私は仕方なしに他の団員と練習する
        しかなかったんだわ!!その為に私は足を・・・!!
        如何責任を取ってくれるつもりなの!!」
  アイリーン「・・・私・・・」
  
         リン、心配そうにアイリーンの側へ。
         ハドソン、オロオロと。

  ジョナサン「ダイアナ・・・それは言い過ぎだよ・・・。何もアイリー
         ンはダイアナに怪我をさそうと思って、ジェフリーに
         ダンスのレッスンを受けてた訳じゃないさ・・・。」
  ダイアナ「あなたなんか来なけりゃよかったのよ・・・!!あなた
        なんか今直ぐ辞めればいいのよ!!」
  アイリーン「・・・私・・・(下を向く。)」
  ダイアナ「あなたが辞めないのなら、私が辞めるわ!!」

         ダイアナ言い捨てて、上手へ足を引き摺り
         ながらも早足で去る。













       ――――― “ジェフリー”4へつづく ―――――










 ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪


     (おまけフォト^^;)

     


     


    クリフくん作品にも、ジュリーちゃん作品にも登場する
   “森に住む魔法使い”・・・(^.^)
   始め、エリィちゃん作品に登場した、顔のない魔法使い
   を使用するつもりだったのですが、団員から“鷲鼻の
   魔法使い”のリクエストがあり、急きょ作ってみました^^;

   分かり難いですが、お鼻の上にちゃんと“イボ”も付けて
   みました(^^)v
   ついでに・・・歯も抜けています^^;

   今日は病院で、松葉杖に立てかけて乾かして、帰って
   来ました~^_^;




   
   
   (どら私的余談^^;)

   今日は、外泊許可をもらって、子どもが帰宅しています(^^)
   
   朝迎えに行って、看護師さん達に退院かのようなお見送りを
   して頂き、ワクワクして帰って来た・・・のは、他でもないこの
   私なのでした~^^;



   あまり色々な工夫も出来ず・・・ただ少しの更新しか出来ない
   日もあり・・・それでも会いに来て下さる皆さん・・・ホントに・・・

   「ありがとうございます<(_ _)>私も出来る限り頑張ります♥」

   










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