りとるぱいんわーるど

ミュージカル人形劇団“リトルパイン”の脚本の数々です。

“ミーナ” ―全7場― 2

2012年07月14日 14時49分55秒 | 新作(人形劇用)


    ――――― 第 3 場 ―――――

         下手よりミータ、走り登場。

  ミータ「あなたー!!あなた!!」
  
         上手よりネコ吉登場。

  ネコ吉「ミータ、如何した?」
  ミータ「あの後、ミーナがネコの村を飛び出して行ったみたいな
      んです!!」
  ネコ吉「ミーナが・・・!?」
  ミータ「ええ!!一体如何したら・・・」
  ネコ吉「・・・捜しに行って来る・・・」
  ミータ「え・・・?」
  ネコ吉「私がミーナを突き放したんだ・・・。」
  ミータ「私も一緒に行きますわ!!」
  ネコ吉「駄目だ!!」
  ミータ「でも!!」
  ネコ吉「屹度人間になりたい一心で、人間の町へでも出て行っ
      たに違いない・・・。そんな危険な所へ行くのは、私一人
      で十分だ!!」
  ミータ「あなた!!」
  ネコ吉「大丈夫!!必ずミーナを捜して、無事に連れ帰るから
      ・・・。」
  ミータ「・・・あなた・・・(泣く。)」

         その時、上手よりネコ達、走り登場。

  ネコ1「おーい!!」
  ネコ2「ネコ吉!!ミータ!!」
  ネコ吉「皆・・・」
  ネコ3「ミーナがいなくなったんだって!?」
  ネコ1「俺達も一緒に捜しに行くよ!!」
  ミータ「え?」
  ネコ吉「でも、人間の町へ行ったかも知れないんだ!!そんな
      危ない場所に皆を・・・!!」
  ネコ2「何言ってるんだ!!」
  ネコ3「皆、ネコの村の仲間じゃないか!!」
  ネコ1「そうだ、ニャア!!」
  ネコ吉「皆・・・」

         音楽流れ、ネコ達歌う。

         “皆 ネコの村の仲間
         何かあれば皆で手を取り合い
         協力し合う仲間なんだ
         遠慮はするな仲間だから
         力を合わせて立ち向かう
         どんな難題にも皆で向かえば
         解決出来ないことなんてない
         だからネコの村の仲間達
         遠慮するなんて水臭い
         困った時はお互い様だ!!”

  ネコ2「な!!ネコ吉!!」
  ネコ吉「皆・・・ありがとう・・・」
  ミータ「あなた・・・」
  ネコ3「じゃあ、直ぐ町に・・・!!」
  ネコ1「待って!!反対の方向に行ったかも知れない!!森の
      方へも捜しに行こう!!」
  ネコ2「森・・・?人間になりたいって言ってるのに?」
  ネコ1「もし、一番ネコに出会って、良からぬ入れ知恵を授かっ
      てたら、生まれたばかりのミーナなんて、コロッと騙されち
      まうに違いないぜ。」
  ネコ3「そうだな!」
  ネコ2「じゃあ二手に分かれよう!!」
  ネコ1「よし!!」
  ネコ吉「皆・・・ありがとう・・・」
  ネコ1「俺達は・・・」
  ネコ達「仲間だろ!!」
  ミータ「あなた・・・」
  ネコ2「俺達は森へ行く!!ニャア!!」
  
         ネコ2、3、下手方へ走り去る。

  ネコ1「頼んだぞーっ!!」
  ネコ吉「じゃあ、俺達は町へ!!」
  ネコ1「ああ!!ニャア!!」

         ネコ吉、ネコ1、上手へ走り去る。

  ミータ「あなた・・・!!あなた!!気を付けて!!ミーナを・・・
      ミーナを無事に捜して来て下さいね・・・!!」

         ミータ下がる。

    ――――― 第 4 場 ―――――

         紗幕開く。と、森の中。
         音楽流れ、下手よりノラ猫のノラ、ゆっくり
         登場。歌う。

         “ネコの村を追い出され
         一人彷徨うこのオイラ
         薄暗いこの森の
         中でひっそり暮らすのさ
         別に悪いことした訳じゃない
         ただちょっと悪戯過ぎただけ
         なのにあいつは見逃され
         オイラ一人が村の外
         ああ頭にくるぜ本当に
         何か気晴らし見つけるぜ”

  ノラ「本当忌々しい奴め・・・。どうしてオイラだけネコの村を追放
    されて、あいつは温々と・・・しかもネコの村の番人なんて言
    う役目をまんまと仰せつかりやがった!!・・・なんて調子の
    いい奴なんだ!!全く・・・!!ああ・・・頭にくる・・・!!何か
    面白いことはないかねぇ・・・。この退屈な毎日・・・ホント飽き
    飽きするぜ・・・。(上手方を見て。)おっ・・・向こうから、いい
    カモになりそうな子猫がやって来るじゃないか・・・。あいつを
    ちょいと誑かせて、楽しませてもらうとするかな・・・。へっへっ
    へ・・・」

         ノラ、後ろの木の陰に身を隠す。
         上手よりミーナ、走り登場。

  ミーナ「(上手方を見て。)1番ネコさーん!!早くー!!早く、こ
      っちよー!!もう遅いなぁ・・・。ネコって、もっと機敏に動
      けるんじゃないのかしら。(溜め息を吐く。)」

         音楽流れ、瞳を輝かせ、彼方に思いを
         馳せるようにミーナ歌う。

         “もう直ぐ叶うわ 私の願い
         ずっと夢見てた人間に
         なれるわきっと
         もう直ぐよ
         生まれる前から憧れた
         長い足と風に靡く綺麗な髪
         こんな風になると望んだ
         私の本当の姿なの”

  ミーナ「(上手方を見て。)もう仕方ないなぁ・・・。まだ、あんなに
      遠くにいるんだから・・・。暫くここで休んで待ってよっと・・・
      。(回りをキョロキョロ見回す。)」

         ノラ、木の陰からゆっくり登場。

  ノラ「こんにちは・・・」
  ミーナ「(振り返り、ノラを認める。)・・・こんにちは・・・。あなたは
      ・・・」
  ノラ「俺様はノラ猫のノラ。この美しい森の中に住んでいる・・・。
    おまえさんは・・・」
  ミーナ「私はミーナ!今の私、猫に見えているかも知れないけど
      ・・・」
  ノラ「ああ、猫にしか見えないけど・・・?」
  ミーナ「私、もう直ぐ人間になるの!」
  ノラ「・・・人間・・・?」
  ミーナ「ええ!!人間よ!!」
  ノラ「(独り言のように。)へぇ・・・こいつは可笑しなことを言う子
    猫だ・・・。(何か思いついたように咳払いをして、ミーナに向
    く。)そうか!人間になるんだったら、是非こいつを持ってな
    くちゃならねえな。」
  ミーナ「何・・・?」
  ノラ「(袋の中から、ガラスの破片を取り出す。)ほら!!(ミーナ
    の方へ差し出す。)」
  ミーナ「(ガラスの破片を見て。)・・・それ・・・何?」
  ノラ「人間の女が皆持ってる“身だしなみ”さ。」
  ミーナ「・・・身だしなみ・・・?」
  ノラ「ああ。ほら、この中を覗いてみな。おまえさんの姿が映って
    いるだろ?人間の女は皆、この中に映る自分の姿を見て、
    美しく身なりを整えるのさ。」
  ミーナ「へぇ・・・。(興味津々に見て。)これ欲しいわ!!私にく
      れる?」
  ノラ「(笑って。)そりゃあ無理だな。こいつは大事な売りもんだ。
    どうだ、買わねぇか?安くしといてやるぜ。」
  ミーナ「でも・・・私、お金なんて・・・」

  一番ネコの声「おいおい、そんなチビネコに何ふっかけようとし
           てんだ?」

  ノラ「ん・・・?誰だ?」

         その時、上手より一番ネコ登場。

  一番ネコ「よお、久しぶりだなぁ。」
  ノラ「・・・おまえは・・・一番ネコ・・・!!」
  一番ネコ「元気そうじゃないか。(笑う。)」
  ノラ「くっそう・・・!!何で俺一人が追放で、おまえは無罪放免
    なんだ!!」
  一番ネコ「何のことかなぁ・・・」
  ノラ「何のこと!?よくもそんな白々しいことを言えたもんだ!!
     」
  ミーナ「あの・・・」

         音楽流れ、ノラ歌う。

         “おまえが考えた悪だくみ”

  一番ネコ「知らないなぁ・・・」

         “おまえが俺をそそのかした”

  一番ネコ「よっく言うぜ・・・(笑う。)」  

         “おまえの口車に”

  一番ネコ「おいおい、ネコ聞きの悪いこと言うなよ・・・」

         “まんまと乗せられた初なこの俺様”

  一番ネコ「誰が“初”だって?“初”って言うのは、こいつみたい
        な奴のことを言うんだぜ。」
  ミーナ「初・・・?」
  一番ネコ「ああ・・・。おまえさんのように生まれたて・・・純粋無垢
        な子猫のことさ。」
  ミーナ「ふうん・・・」
  一番ネコ「初な子猫は、この世の中のことをまだ何も分かっちゃ
        いねえ。そんな危なっかしい奴が、ウロウロと親元を
        離れてこんなとこに来てたんじゃあ、こいつみたいな
        悪いノラ猫に騙されたって文句の一つも言えないぜ、
        全く・・・」
  ノラ「誰が悪いノラ猫だ!!おまえだって同じだろ!!元はと言
     ば俺たちゃ手を組み悪事を働いてた悪いネコ同士・・・」
  一番ネコ「ばぁか!そんな昔の話し、知るもんか!俺様は今じゃ
        村にはなくてはならない、迷えるネコ達の指針・・・おま
        えなんかと一緒にされちゃ適わないんだよ。」

         一番ネコ歌う。

         “おまえが勝手に考えた”

  ノラ「何だと・・・!?」

         “誰も仲間になろうだなんて”

  ノラ「よくもそんな抜け抜けと・・・」

         “思っちゃいねえぜ笑わすな”

  ノラ「ふん!!ああそうかい!!もういい!!昔の話しなんざ、
    止めだ止めだ!!それより俺は、今このお客と話してんだ。
    これ以上、余計な邪魔するのはよしてもらおうか。どうだ?
    おチビさん、その首に掛かってるキラキラしたもの・・・そいつ
    と交換で、この大切な“鏡”をおまえさんに譲ってやるぜ?」
  ミーナ「かがみ・・・?」
  ノラ「こいつが欲しいんだろ?人間のレディの身だしなみだ。」
  ミーナ「ほんとに、こんなもので・・・その“かがみ”を私にくれる
      の・・・?」
  ノラ「ああ・・・。この優しいノラ様が一生懸命なおまえさんにだ
    け、特別価格で譲ってやろうってんだ。」
  ミーナ「・・・じゃあ・・・(首輪を外そうとする。)」
  一番ネコ「おい、ミーナ!!そいつはおまえが誰かを証明する
        大切な首輪だ!!外しちゃならねぇぜ!!」
  ミーナ「え・・・?」
  一番ネコ「おまえにはちゃんと“両親”ってもんがある!それは
        その証拠だ。」
  ノラ「チェッ・・・余計な口出ししやがる・・・(横を向く。)」
  ミーナ「りょうしん・・・?」
  一番ネコ「俺やこいつみたいな生まれも育ちも分からねぇノラ猫
        は、そんな首輪は持たねぇんだから・・・。」
  ミーナ「ノラ・・・ネコ・・・」
  一番ネコ「おまえには、おまえのことを心配してくれる父ちゃん
        や母ちゃんがいるんだろ?」
  ノラ「そいつは“人間”になるんだ、オヤジやオフクロなんて必要
    ないだろ。」
  一番ネコ「(ノラのことは無視するように。)屹度今頃おまえのこ
        とを捜し回ってるぞ・・・」
  ミーナ「嘘よ・・・」
  一番ネコ「ちゃんと父ちゃん母ちゃんに、人間になるんだって言
        って出て来たのか?」
  ミーナ「(首を振る。)」
  一番ネコ「ほうらみろ。黙って飛び出して来た子どもを、心配しな
        い親なんてこの世にいるもんか。」
  ノラ「よく言うぜ・・・。その親に生まれて直ぐ、道端に捨てられた
     のは、どこのどいつだ。」
  一番ネコ「それは・・・」
  ノラ「だからおまえも俺も“のら”なんじゃないのか!?」
  一番ネコ「違う!!屹度何か理由が・・・」
  ノラ「何てお幸せな奴なんだ、そんな風に思えるなんて。(笑う。
     )」
  一番ネコ「煩い・・・!!」
  ミーナ「一番ネコさん・・・」
  一番ネコ「おまえこそ、そんな風にいじけた心を持ってるから、
        村を追い出されたりするんだ!!」
  ノラ「なっ・・・何だと・・・こいつ・・・好き放題言いやがって!!(
     一番ネコに殴り掛かる。)」
  一番ネコ「俺様とやろうってのか!!(応戦する。)」

         一番ネコ、ノラ、殴り合いの喧嘩になる。
 
  ミーナ「やめて・・・やめてよ、2人共!!」

         そこへ一羽のハト(豆吉)、上手後方より
         飛んで来る。

  豆吉「(一番ネコを認め。)あ!一番ネコさん!」
  一番ネコ「ん・・・(手を止める。)」
  豆吉「やっと見つけた!」
  一番ネコ「豆吉・・・」
  豆吉「随分捜したよ!」  
  ノラ「おい!!やるのかやらねえのか!!」
  一番ネコ「煩い!!」
  豆吉「あれ・・・?ノラさんじゃないか・・・。久しぶりだね!」
  ノラ「豆吉・・・」
  豆吉「今までどうしてたの?村で見かけないから、心配しちゃっ
     た。(笑う。)」
  ノラ「ふん・・・」
  豆吉「一番ネコさんとノラさん、2人揃ってこんなところで何して
     たの?また昔みたいに2人で・・・」
  一番ネコ「それより豆吉こそ、こんなところまで・・・俺を捜しに来
        たのか?」
  豆吉「あ・・・うん!オイラ、今ネコの村から使いを頼まれて、捜し
     者をしてるんだ。物知り一番ネコさんに聞けば、居所が分
     かるんじゃないかな・・・と思ってさ。」
  一番ネコ「で?捜し物って何だい・・・?」
  豆吉「うん、ミーナって言う子猫を捜しているんだ・・・。」
  一番ネコ「え?」
  ミーナ「ミーナ・・・?」
  豆吉「うん・・・」
  ミーナ「・・・私がミーナよ・・・」
  豆吉「本当に!?」
  ミーナ「ええ・・・」
  豆吉「へぇ・・・よーく見りゃ、ネコ吉さんとミータさんに本当そっく
     りだ。」
  一番ネコ「おい、それで何でこいつを捜してんだよ?」
  豆吉「あ・・・そうだ!さっき、町へミーナを捜しに出たネコ達が、
     農薬入りの餌を食べて瀕死の状態で戻って来たんだ。」
  ミーナ「え・・・」
  一番ネコ「農薬入りの餌だと!?」
  ノラ「そりゃあ皆、助からねぇな。(笑う。)」
  一番ネコ「ノラ!!」
  ミーナ「誰が・・・私を捜しに町へ行ったの・・・?」
  豆吉「ネコ吉達さ!」
  ミーナ「パパが!?パパもその餌を食べたの!?」
  豆吉「さぁ・・・そこまでは分からないなぁ・・・皆、大騒ぎしてたか
     ら。兎に角、早く村へ帰って来て!」

         ミーナ、一番ネコ、ノラ残して紗幕閉まる。
         (紗幕前。)

  ミーナ「どうしよう・・・どうしよう、一番ネコさん!!私のせいよ・・・
      私の!!」
  一番ネコ「おい!!おい、落ち着け!!いいか、おまえは直ぐに
        家へ帰るんだ!!」
  ミーナ「え・・・でも・・・」
  一番ネコ「俺が森の薬屋のところへ行って、毒消しの薬をちょい
        とばかし拝借して来てやる!!」
  ミーナ「一番ネコさん・・・」
  一番ネコ「分かったか!!父ちゃん母ちゃんってのは、自分の
        子の為ならどんな危険を冒したって、守ろうとするもの
        なんだ!!」
  ミーナ「一番ネコさん・・・」
  一番ネコ「早く帰れ!!余所見せずな!!(ミーナの背中を押
        す。)」
  ミーナ「・・・分かった・・・分かったわ!!私、直ぐに帰る!!一
      番ネコさん、毒消しの薬をお願いね!!」

         ミーナ、上手へ走り去る。

  一番ネコ「ああ!!任せな!!」









      ――――― “ミーナ”3へつづく ―――――









 ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ 


   (どら余談^^;)

   このページの更新、長らくお待たせしてしまいました(>_<)
   中々、頭が新作を書きたいモードに入らなくて、暫く中断状態
   になっていました(-"-)
   ・・・が、漸く子どもも退院し、不自由ながらも生活リズムが
   整ってくると、何かを書きたいスイッチが入って来て、来年春
   公演新作辺りを書き始めようか・・・と思っていたところ、書き
   掛けのこのお話しがあったことを思い出し、春公演の新作に
   取り掛かる前に、こちらを書き上げてしまおうかな・・・と思い、
   書き始めた次第です^_^;
   と、言いつつ、新作と並行して書いて行くことになるので、また
   たまにお休みが入るかも知れませんがお許し下さいm(__)m

   しばらく中断していた・・・と言うことは、全く登場人物の性格
   設定など忘れてしまっていて・・・はてさて・・・上手くつながり
   ますかどうか・・・(~_~;)あまり深く読み下げないで頂けると
   嬉しいです^^;   


   7月6日(金)

   やっと書き上がりました~^^;
   よって、今日より“全7場”となっています(^^)v

   みんないい人・・・ネコ?に仕上げました♥
   

 
   7月7日(土)

   日にち、間違っていました(>_<)
   すみません~訂正致しました^^;





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“マリア” ―全14場― 4

2012年07月14日 14時14分57秒 | 未発表脚本


  ニック「(ジェシーに近寄って。)さっきの約束って?」
  ジェシー「なんでもない・・・。(カウンターの方へ行く。)」
  ニック「なんだ冷たいなぁ。教えてくれてもいいじゃないか。俺た
      ち仲間だろ?(ニヤリと笑う。)」
  シャロン「(ニックのジェシーに対する様子に、何かを感じたよう
       に。)野暮な奴ね!!2人だけの秘密を聞きたがるなん
       て!!さあ、ジェシー!!ここは遅れて来たニックに任
       せて、私たちは休みましょう!!じゃあ、お願いねニック
       !!」
  
         シャロン、奥へ入る。

  シャロンの声「ジェシー!!」
  ジェシー「・・・今行く。」
  ニック「ゆっくり休んで来ていいぜ・・・!(何か意味あり気に。)」

         ジェシー、ニックの方をチラッと見て、
         奥へ入る。
         ニック、ジェシーが奥へ入るのを見計
         らって前方へ。ラリー、マイク、ニックに
         続くように前方へ。カーテン閉まる。

    ――――― 第 10 場 ――――― B

  ニック「駄目だな・・・」
  マイク「え・・・?」  
  ニック「見たか?あいつの目・・・」
  マイク「・・・見たけど・・・それが何だよ・・・。」
  ニック「それで分からなかったのか?今まで瞳の奥でギラギラ
      渦巻いてたものが、すっかり消え失せてたことに・・・」
  マイク「だけど相変わらず俺には、こーんな(自分の目を手で吊
      り上げるように。)目つきに見えたけど・・・。」
  ラリー「それは外見だろ?」
  ニック「そろそろ使い切り時だな・・・」
  ラリー「え・・・?」  ※
  ニック「あいつはもう、悪事に加担するのは拒否するってことだ
      よ。」
  マイク「じゃあ今度の“女王の涙”は如何するんだよ!!あいつ
      なしで成功する筈ないじゃないか!!」
  ニック「馬鹿!!その辺のことはちゃんと考えてるさ!!そして
      その後始末があいつにとっちゃ、最後の大仕事になるだ
      ろうよ。(ニヤリと笑う。)」
  ラリー「最後のって・・・?」
  ニック「改心した奴に相応しく、今までの罪も被って、永遠にそ
      の罪を償わせてやるのさ・・・。」
  ラリー「成る程ね・・・。」
  マイク「だけどもし、俺たちのことをあいつがばらしちまったら?」
  ニック「え・・・?」
  マイク「あいつに罪を擦り付けて、警察に引き渡すんだろ?」
  ニック「相変わらず鈍いね、おまえ・・・。何も態々捕まるようにす
      ることはないだろ?人生、何があるか分からないんだぜ
      ?その辺を普通に歩いてるだけでも、向こうから車が突っ
      込んで来たりする時代なんだ・・・。(マイクをチラッと見て
      。)分かったか・・・?」
  マイク「・・・(真剣な眼差しになって、思わず生唾を飲み込む。)
      ・・・うん・・・」

         ニック、ラリーをチラッと見て下手へ出て行く。
         ラリー続く。
         一寸遅れてマイク、何かに躊躇うような素振り
         をしながら、早足で2人に続いて出る。
         一時置いて、上手よりシャロン出る。続いて
         ズボンのポケットに両手を突っ込み、下向き
         加減のジェシー出る。

  ジェシー「ごめん・・・」
  シャロン「いやだなぁ。謝らないでよ、そんな風に!!こんなこと
       ならもっと早くに告白しとくんだった!!昔から何時でも
       私はそう!!つい欲しくても我慢して我慢して・・・我慢
       してるうちに他の誰かに持ってかれちゃうの。損な性格
       よね。」
  ジェシー「・・・俺は昔から人を避けて生きて来た・・・。思い遣る
       とか、人の為に何かをするとか・・・況してや愛するとか
       愛されるとか・・・考えたこともなかったんだ・・・。」
  シャロン「分かってる!!でもそんなあなたが、よく彼女と知り合
       えたわね?さっきあなたが彼女を見てる目を見て、一目
       で分かったわよ!!“あ・・・やられた”ってね。私のこと
       は、あんな優しい目で見てくれたことないでしょ?確か
       に目は口程に物を言ってるわよねぇ・・・あなたの場合・・
       ・。」
  ジェシー「・・・あいつとは偶然出会った・・・。ただそれだけだった
       ・・・。けど・・・!何か・・・違ったんだ・・・今までの俺の荒
       んだ心に、ほんの少しの潤いを与えてくれた・・・。そんな
       気がした・・・今まで味わったことのないような・・・。今ま
       で知らなかったような感情が湧き上がってくるのが分か
       ったんだ・・・!!」
  シャロン「(微笑んでジェシーの言葉を遮るように。)いいわよ、も
       う!!あなたがどれ程彼女を愛しているのかが、よく分
       かったから!!」
  ジェシー「シャロン・・・」
  シャロン「私のことなら気にしないで!さぁ、お店に戻った戻った
       !!(ジェシーの背中を押す。)私は昔から恋多き女な
       のよ!!好きな男はあなただけじゃないし、一人や二人
       に振られたからって、そんなことでメソメソクヨクヨするよ
       うな、そこいらの娘たちとは違うのよ!!さぁ、早く行って
       !!でないとまたニックに嫌味言われたって知らないか
       ら!!」
  ジェシー「・・・分かったよ・・・。(微笑む。)・・・ありがとう・・・。」
  シャロン「(微笑んで頷く。)」

         ジェシー、上手へ去る。

  シャロン「(ジェシーの出て行った方を見詰めたまま、呟くように。
       )・・・私はいいの・・・あなたが幸せそうに微笑むことが
       できるなら・・・。」

         シャロン、スポットに浮かび上がる。
         今の切ない思いを歌う。

         “何時だったかしら・・・
         あなたと初めて出会ったのは・・・
         今でもよく覚えてる・・・
         あなたの濡れた髪を・・・
         何時からかしら・・・
         あなたの遠くを見詰める
         その瞳に惹かれていったのは・・・

         忘れない・・・ほんの少しの・・・
         忘れない・・・私の心に・・・
         忘れない・・・灯してくれた・・・
         この迸る思いの
         幸せだった気持ちを・・・
         忘れない・・・忘れない・・・
         たとえあなたが私を忘れ去っても・・・
         私は・・・あなたを忘れない・・・”

         暗転。

    ――――― 第 11 場 ―――――

         カーテン開く。と、“劇団フラップ”稽古場。
         数人の団員、其々自主稽古をしている。
         下手より稽古着姿のマリアとメアリ、首に
         掛けたタオルで汗を拭き、話しながら出る。
         2人話している途中で、団員たち2人に
         挨拶して其々出て行く。

  メアリ「今日も来るの?ジェシー。」
  マリア「ええ。仕事が済んだらね。」
  メアリ「毎日毎日よく顔見せるのねぇ。」
  マリア「ジェシーが来てくれると私が落ち着くの・・・。何故だろう
      ・・・。変よね。偶然知り合っただけの人なのに・・・。屹度
      同じような境遇で育って来たから、血が呼び合うのかも
      ・・・。(笑う。)」
  メアリ「ふうん・・・。そう言えば最近、あまり“聖母マリアの肖像”
      に会いに行かなくなったものね。」
  マリア「今までマリアに相談してきたことも、ジェシーが聞いてく
      れるし・・・。でもマリアには、ちゃんと会いに行ってるわよ
      !!ジェシーと2人でね。」
  メアリ「はいはい!けど・・・(微笑んでマリアを見詰める。)幸せ
      そうね・・・。最近のあなたの笑顔見てると、何処の誰か分
      からない男ではあるけど、満更彼と出会ったのも、マイナ
      スじゃなかったかもね。」
  マリア「マイナスだなんて!!」
  メアリ「冗談よ。さぁ、私はそろそろ帰ろう!!ジェシーに宜しく
      ね!(行きかけて振り返る。)あ・・・そうそう・・・スザンヌ、
      暫く顔見せなかったじゃない?辞めちゃったらしいわ。」
  マリア「・・・え・・・?」
  メアリ「ああ、何もあなたがヒロインに選ばれて、自棄になって
      辞めたんじゃないわよ。なんでも“劇団レゾン・デートル”
      に引き抜かれたらしいわ。」
  マリア「“レゾン・デートル”?」
  メアリ「そう!名前の通り、彼女はその劇団に存在する価値が
      欲しかったのね。じゃあ!明日の初日はお互い頑張りま
      しょう!!」
  マリア「おやすみ・・・。」

         メアリ、手を上げて上手奥へ出て行く。
         マリア、メアリが出て行くまでその方を
         見詰めている。
         出て行くのを見計らって呟くように歌う。

         “月日の経つのは早いもの
         あっと言う間に一カ月・・・
         遣るだけのことは遣った筈
         誰が見ても完璧に
         少しの自信を心に植えて
         後は幕が上がるだけ・・・

         なのに・・・時間が・・・迫る度・・・
         自信と逆に・・・不安が・・・過る・・・
         何も心配・・・することは・・・ないと・・・
         口にはしても・・・
         ただ足が地に付かない・・・”

         途中、ジェシー下手より登場。マリアを見詰める。
         音楽静かに。
         マリア、ジェシーに気付き、幾分興奮した口調で
         ジェシーに駆け寄り、訴えるように。

  マリア「ジェシー!!明日いよいよ初日の幕が上がるわ!!如
      何しよう・・・。もし失敗したら私!!」
  ジェシー「(優しく微笑む。)・・・おまえ、今までこの日の為に頑
       張ってきたんだろう?」
  マリア「(ジェシーを見詰め頷く。)」
  ジェシー「人一倍練習してきたんだ、成功するに決まってるさ・・・
        。」
  マリア「・・・見に来てくれる・・・?」
  ジェシー「・・・ああ・・・。」
  マリア「絶対来てくれるわね?」
  ジェシー「ああ、必ず行くとも・・・!舞台からは見えなくても、客
        席の何処からか・・・必ずおまえを見守っててやるよ・・・
        。」
  マリア「(安心したように微笑む。)私・・・一生懸命頑張るわ・・・
      !!あなたの・・・為に・・・。」
  ジェシー「馬鹿・・・自分の為にだろ?」
  マリア「私とあなたの・・・為に・・・」
  ジェシー「(照れたように髪を掻き揚げ、下を向く。だが嬉しそう
       に。)ああ・・・。」

         マリア、ジェシーの手を取り歌う。
         カーテン閉まる。
         (2人、スポットに浮かび上がる。)

         “そんな時・・・一筋の・・・
         光が彼方から・・・
         暖かく・・・思わず・・・
         ただ手を差し伸べたかった・・・
         掴んだその光は
         私に希望を与え・・・
         力強い勇気を・・・
         分けてくれた!!
         その光の向こうに
         微笑むあなたがいたから!!”

         ジェシー、呼応するかのように歌う。

         “光が見えたと思うのは
         おまえが輝きだしたから・・・
         誰の力でもなく
         自分自身がオーラを放ち
         回りを包む・・・
         そんなおまえの
         笑顔がただ愛おしい・・・
         こんな思い・・・夢のように・・・
         時は流れゆく・・・
         何時までも変わることなく
         永遠に・・・”

  ジェシー「マリア・・・(幸せそうに力強くマリアをその胸に抱き締
       める。)」

         音楽盛り上がって暗転。

    ――――― 第 12 場 ―――――

         音楽変わり、フェード・イン。(カーテン開く。)
         と、夜の町の公園。
         昼間のギラギラした感じはなく、遠くに見える
         夜景が、澄んだ空気にやけに鋭く煌めくのが
         目に付く感じ・・・。
         中央にニック、ズボンのポケットに両手を
         突っ込み佇んで歌う。

         “誰が何と言おうと・・・
         裏切り者の待つ道は
         途中で途切れた茨道・・・
         誰に批判をされようと・・・
         あいつを生かしておくものか
         たとえ一緒に戦った・・・
         たとえ今まで仲間だと・・・
         だけどあいつは裏切った
         あいつは俺らを裏切った・・・”

         辺りは人々は寝静まった時刻らしく、ひっそり
         としている。
         ニック、後ろにあったベンチへ腰を下ろし、
         溜め息を吐きポケットから煙草を出して火を
         点ける。
         そこへ一時置いて下手よりジェシー、目つきも
         鋭くニックを見据え登場。
         ゆっくりとニックの側へ。

  ニック「(ジェシーに気付き、煙草を捨て、足で踏み消し立ち上
      がる。)よぉ、遅かったじゃないか。如何したんだ?やけに
      反抗的な目つきをしてるけど。」
  ジェシー「・・・話しって・・・何だ・・・」
  ニック「そんな尖るなよ。(笑う。)えっと・・・ほら・・・以前、雨の日
      に内の店に来た彼女・・・何てったっけ・・・そうそう“マリア
      ”だったよなぁ・・・。彼女如何してる?元気か?」
  ジェシー「・・・何故そんなことを聞く・・・」
  ニック「(ニヤリとして。)舞台女優志願なんだって?ありゃあ美
      人だし、将来有望だな!明日は初主演の初日だそうじゃ
      ないか。是非俺からも祝福を送らせてくれよ。」
  ジェシー「何が言いたい・・・!!」
  ニック「落ち着けよ・・・。何も彼女を取って食おうってんじゃない
      んだから。なにね・・・おまえは知ってるかどうか・・・来週
      フランスから“王女の涙”が万国博覧会会場に来ることに
      なったんだ。」
  ジェシー「・・・“王女の涙”・・・?」
  ニック「ああ。宝石に詳しいおまえなら知ってるだろ?」
  ジェシー「・・・それが如何したんだ・・・」
  ニック「恍けるなよ。俺達はお手々つないでお歌を歌う、仲良し
      グループじゃないんだぜ。」
  ジェシー「・・・悪いが俺は下りる・・・」
  ニック「・・・へぇ・・・」

         ジェシー、上手方へ行きかける。

  ニック「待てよ!!」








       ――――― “マリア”5へつづく ―――――









   ※ 最近気付いたのですが、私この“え・・・”と言う台詞、
     どうも好きみたいです^^;
     この頃に限らず、今でも多用ぎみですから・・・(^_^;)




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       (おまけフォト^^;)

       

    これは明日、録音作品の登場人物達のマスコットです♥
   
   いつものように、其々役メンバーにプレゼントする為、手元
   には残らない消え物です^^;

   写真から・・・
   海のお話しであることはお分かりでしょうか・・・?(^.^)




   7月11日(水)

   昨日は新しいエンジニアさんで挑んだ、初めての録音日・・・
   とっても楽しくて、これもそのエンジニアさんの持つ雰囲気
   の成せる技・・・とでも言いましょうか、台詞メンバー一同、
   その後の“お疲れ様メール”で新エンジニアさん大絶賛^^;
   あまりにもメンバー達の反響が大きくて、私自身驚いている
   次第です^^;








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