りとるぱいんわーるど

ミュージカル人形劇団“リトルパイン”の脚本の数々です。

“ミーナ” ―全7場― 完結編

2012年07月20日 20時49分42秒 | 新作(人形劇用)



  ノラ「おいおい、そんな安請け合いして大丈夫なのか?森の薬
    屋ってえと・・・」
  一番ネコ「おまえも一緒に行くんだよ!!」
  ノラ「え・・・?」
  一番ネコ「また昔のように、2人一緒なら何だって出来るさ!!」
  ノラ「冗談よしてくれよ・・・。何で俺がおまえなんかと・・・。しかも
    危険な薬屋のところへなんか誰が!!」
  一番ネコ「“ネコ助け”って奴だ!」
  ノラ「・・・ネコ助け!?」
  一番ネコ「今まで散々、悪事を働いて来たんだろ?ここいらで“
        いいこと”ってのをやったって、罰は当たらねぇよ!」

         音楽流れ、一番ネコ歌う。
 
         “俺とおまえ また昔のように
         2人手を組み立ち向かう
         いいことだって
         悪いことだって
         いっつも2人で手を組んで
         楽しかったあの頃のように
         また2人で一緒に行こうぜ
         森へ!!」

  一番ネコ「さあ、行くぞ!!(ノラの腕を掴む。)」
  ノラ「あ・・・おい!!おい、離せ!!離しやがれーっ!!」

         一番ネコ、ノラの腕を引っ張って下手へ
         走り去る。

  ノラの声「離せーっ!!」
         
    ――――― 第 5 場 ―――――

         (紗幕前。)
         音楽流れ、ミータ、ネコ達上がり歌う。

         “何てこと・・・
         皆が大変なことになった・・・
         大切な仲間達・・・
         こんなことになるなんて・・・
         どうすればいい・・・”

  ネコ2「この村には、薬草くらいしかないぜ・・・」
  ネコ3「毒消しの薬なんて・・・」
  ミータ「どうすればいいの・・・?皆が・・・ミーナを捜しに町へ行っ
      たばかりに・・・」
  ネコ2「ミータ・・・。ミーナのせいじゃないさ。皆、他の誰がいなく
      なったって、きっと今回と同じように危険を顧みず、捜し
      に出掛けたさ・・・。」
  ネコ3「そうだよ!!」
  ミータ「皆・・・」
  ネコ2「さ、それより早く、倒れた皆が運び込まれた老ネコの家
      へ急ごう!」
  ミータ「ええ!」

         ネコ達歌う。

         “少しも早く
         倒れた皆の側へ急ごう
         屹度大丈夫
         屹度助かる
         老ネコ様がなんとかしてくれるさ
         だから心配するのはよそう
         信じるんだ”

  ネコ3「行くぞ!!」
  ネコ2「ああ!!」

         ネコ達上手へ走り去る。
         ミータ、付いて行き掛けて立ち止まる。
         ネコ2、そんなミータに気付いて立ち止まる。

  ミータ「ミーナ・・・(呟くように。)」
  ネコ2「大丈夫さ!今、ハトの豆吉も空からミーナを捜してくれて
      るんだ。屹度直ぐに見つかるさ。」
  ミータ「そうね・・・」
  ネコ2「それより早く、ネコ吉達のところへ急ごう!」
  ミータ「ええ。」

         ミータ、ネコ2、上手へ去る。
         
    ――――― 第 6 場 ――――― A

         紗幕開く。と、森の中。
         (後方に小屋が建っている。)
         音楽流れ、下手より一番ネコ、続いて
         回りをキョロキョロ見回しながらノラ、登場。
         一番ネコ歌う。

         “着いたぜここだ
         この小屋だ・・・
         誰もが求める
         薬を売る薬屋・・・
         いつの頃からこの場所で
         こっそり生きる怪しい小屋・・・
         人から人へ噂だけ・・・
         走る真実 見抜けない
         だけど見つけた
         希望の扉・・・”

  一番ネコ「(小窓から小屋の中を覗いて。)よく見えねぇなぁ・・・。
        おい、ノラ!!ちょいと肩貸せよ!!」
  ノラ「はいはい・・・全く・・・昔からおまえはネコ使いの荒い・・・(
     一番ネコの側へ。)」
  一番ネコ「(ノラの肩の上へ、足を掛ける。)よっ・・・」
  ノラ「重てぇなぁ・・・。おまえ、昔より太ったんじゃねぇのか?」
  一番ネコ「黙って足を押さえてろよ!!」         
  ノラ「はいよ・・・一番ネコさん。どうだ?薬棚は見つかったか?
    薬屋はいるのか、いねえのか?」
  一番ネコ「煩いなぁ・・・ばあさんは留守みたいだな・・・。丁度い
        い、この間にちょいとこの窓から忍び込んで・・・よっ・・・
        (窓によじ登り、中へ入ろうと足をバタバタさせる。)」
  ノラ「お・・・おい・・・!!そんな風に忍び込んで、ばあさんが戻
    って来たらどうすんだよ!!もっと慎重に・・・!!」

         一番ネコ、窓から中へ滑り込むように入る。

  ノラ「あああ・・・全く、命知らずな奴だぜ、昔っから・・・」

  一番ネコの声「やった!!おーい!!上手い具合に忍び込ん
           だぞ、ノラ!!おまえは暫くそこで見張り番をして
           、誰か来たら直ぐに知らせるんだ!!」

  ノラ「ああ!!分かったよ!!(小声になり。)・・・なぁんて・・・
     ばぁか!こんなとこでノンビリ見張りなんてやってられっか
     よ!!あばよ、一番ネコ!!精々、人間のばあさんが帰っ
     て来ても見つかんなよ。(笑う。)」

         ノラ、下手方へ行きかける。

  ノラ「(何かに気付いたように。)やばいっ!!薬屋のばあさん
    が戻って来やがった!!(小屋の後ろに隠れる。)」

         そこへ下手より薬屋の老婆、籠を抱え
         ゆっくり登場。

  老婆「やれやれ、やっと着いたわ・・・。年寄りにこの森の長道は
     ちと辛いのぉ・・・。お陰で薬草が沢山手に入ったがの・・・。
     (笑う。)これでまた、一杯薬を作って、人間どもに高く売れ
     るぞ。」

         その時、小屋の中から物音がする。(“ガタン”)
         
  老婆「・・・ん?何じゃ、今の物音は・・・?(上を見て。)おや・・・
     窓が・・・。キツネかタヌキでも入り込んだか!!(小屋の中
     へ飛んで入る。)」

  老婆の声「ネ・・・ネコ!?ええい!!私の小屋で餌を漁り回る
        なんざ、100万年早いわ!!(何かを叩くような音。“
        バシッ”)出てけ!!出てけーっ!!」

  一番ネコの声「わあーっ!!人間だーっ!!」

         ノラ、小屋の後ろから飛び出す。

  ノラ「た・・・大変だ!!一番ネコ!!一番ネコ!!早く出て来
    い!!一番ネコーッ!!」

         その時、薬売りの老婆に追われて、
         一番ネコ、命辛々小屋から飛び出して
         来る。

  一番ネコ「わあーっ!!」
  ノラ「早く!!早くーっ!!一番ネコ!!こっちだ!!」
  一番ネコ「ノラ!!」

         ノラ、一番ネコの手を取り、下手方へ
         大慌てで走り去る。
         薬売りの老婆、下手方へ手に持っていた
         銃を一発撃つ。(“パァーン”)

  老婆「二度と来るなーっ!!この泥棒ネコどもーっ!!」

         紗幕閉まる。

    ――――― 第 6 場 ――――― B

         紗幕前。
         一時置いて、息を切らせて一番ネコ、ノラ、
         下手より走り登場。

  一番ネコ「(息を切らせて。)危ねぇ・・・。もうちょっとで殺られち
        まうとこだったぜ。(笑う。)おまえのお陰で助かったぜ、
        サンキュ!」
  ノラ「ふんっ・・・(腕を押さえて。)・・・いって・・・ぇ・・・」
  一番ネコ「ん・・・?どうした?(ノラの腕を見て。)おい・・・怪我し
        てるじゃねぇか。さっきのばあさんの銃の弾が当たっ
        たのか?」
  ノラ「こんな掠り傷、2、3日すりゃあ直ぐに治るさ!」
  一番ネコ「でも血が・・・」
  ノラ「それより薬はどうしたんだよ!ちゃんと見つけて来たのか
    ?」
  一番ネコ「あ・・・ああ。(手に持っていた瓶を掲げ。)ほうら、この
        通り!!この一番ネコ様にかかりゃあ、何だって忽ち
        この手に入れてみせらぁ!」
  ノラ「そうか・・・よかったな・・・。」
  一番ネコ「ノラ・・・」
  ノラ「じゃあな!」
  一番ネコ「あ・・・おい・・・ノラ!!そんな怪我したなりで、何処行
        こうってんだよ。」
  ノラ「何処だっていいだろ。俺様はノラ猫のノラだ・・・。何処へ行
    こうが、そんなことを気にする奴はいねぇよ・・・。じゃあな。(
    手を上げて下手方へ。)」
  一番ネコ「おい!!」
  ノラ「(振り返る。)」
  一番ネコ「もう一度、ネコの村へ戻ろうぜ。」
  ノラ「・・・え・・・?」
  一番ネコ「俺と一緒に、この薬を届けに村へ戻ろうぜ。」
  ノラ「け・・・けど・・・」
  一番ネコ「この薬は、おまえがいなけりゃ手に入れることは出来
        なかった。俺が皆にもう一度村へ戻れるように、取り成
        してやるよ。」
  ノラ「一番ネコ・・・」
  一番ネコ「何て顔してんだよ!おまえだって、村に戻りたいだろ
        ?」
  ノラ「戻りたいだなんて・・・」         
  一番ネコ「いきがんなよ。」
  ノラ「うるせぇな!!(涙を拭くように。)」
  一番ネコ「何泣いてんだよ、馬鹿!」
  ノラ「泣いてなんかいるもんか!!ちょっと目にゴミが・・・」
  一番ネコ「(嬉しそうに。)それより急がねぇと、倒れた奴らの体
        中に毒が回っちまう!」
  ノラ「そ・・・そうだな!!行こう!!」
  一番ネコ「ああ!!」

         一番ネコ、ノラを庇うように背中を押して、
         足早に上手へ去る。

    ――――― 第 7 場 ――――― A

         紗幕開く。と、老ネコの家の中。
         ネコ吉、ネコ1、2、中央設えられたベットの
         上に横になっている。横に心配そうに見守る
         ネコ達立っている。

  ミータ「あなた・・・」
  老ネコ「もう後は、神に祈るくらいしかないのぉ・・・」
  ネコ1「老ネコ・・・」

         そこへ上手よりミーナ、走り登場。

  ミーナ「パパ!!」

         中にいたネコ達、一斉に上手を見る。

  ミータ「ミーナ!!」
  ネコ達口々に「ミーナ!!」
  ミーナ「ママ!!」
  ミータ「あなたは今まで一体何処で何をしていたの!!」
  ミーナ「ママ!!パパは!?」

         ネコ達避けると、ベットに横たわるネコ吉
         が、ミーナから見える。

  ミーナ「パパ・・・」
  ミータ「あなたを捜しに町へ行って・・・」
  ミーナ「私のせいね・・・私の・・・!!(泣く。)」
  ネコ1「ミーナ・・・」
  ミーナ「パパごめんなさい・・・私・・・人間になりたいだなんて言っ
      てごめんなさい!!私、間違ってた・・・」
  ミータ「ミーナ・・・」
  ミーナ「私・・・パパとママの子猫でよかったわ・・・」
  ミータ「ミーナ・・・!!(ミーナを抱き締める。)」

         その時、上手方から声が聞こえる。

  声「おーい!!ミーナー!!」

  ミーナ「・・・え・・・?」

  声「おーい!!おーい!!」

         そこへ上手より一番ネコ、走り登場。
         一寸遅れて腕を押さえながら、ノラ登場。
         (ノラ、離れて立つ。)

  一番ネコ「ミーナ!!」
  ミーナ「一番ネコさん!!」
  ネコ達口々に「一番ネコ!!」
  一番ネコ「ほら!!お待ちかねの毒消しの薬だ!!(差し出す。
        )」
  ミーナ「本当!?」
  老ネコ「毒消しの薬じゃと・・・?」
  一番ネコ「ああ!!」
  老ネコ「どうしたんじゃ、そんなもの。」
  一番ネコ「いいじゃねぇか、そんなこと!!それより早くこの薬
        をそいつらに飲ませてやりな。」
  老ネコ「おお・・・(薬を受け取る。)」

         老ネコ、横たわるネコ達に薬を飲ませて
         回る。(他のネコ達、見守る。)
         と、一時置いて、横たわっていたネコ達、
         何事もなかったように大きく伸びをして
         起き上がる。

  ネコ吉「ふわあぁ・・・」
  ミータ「あなた!!」
  ミーナ「パパ!!」
  ネコ吉「ミーナ!!どうして・・・(回りを見回す。)ここは・・・老ネ
      コの家・・・」
  ミータ「あなた達、町へミーナを捜しに行ったネコ達が、農薬入り
      の餌を食べて、瀕死の状態でここまで戻って来て、今に
      も命が危なかったのよ。それを一番ネコが、毒消しの薬
      を持って来てくれたの・・・」
  ネコ吉「本当に・・・?」
  一番ネコ「ああ。(照れたように、鼻の下を擦る。)でも、そいつを
        手に入れたのは、俺だけの力じゃないぜ。そこにいる
        ノラがいたからさ。(ノラの方を指差す。)」

         ネコ達一斉に、一番ネコの指差した方を見る。

  老ネコ「ノラ・・・」
  ネコ吉「ノラ・・・」
  一番ネコ「ノラがいなけりゃ、その薬は手に入らなかった・・・いや
        ぁ・・・手に入ったとしても、ここまで無事に辿りつけなか
        ったさ。」
  ミータ「そうなのね・・・」
  ネコ吉「ノラ・・・ありがとう・・・」
  ミータ「ありがとう・・・」
  ネコ1「ノラ・・・」
  ノラ「・・・そんな・・・照れるじゃないか・・・」
  老ネコ「ノラ!よくやったな!追放は取り消しじゃ、この村に戻っ
      て来るがよい。のお、皆!」
  ネコ達口々に「ああ!!」
  ネコ吉「ああ、勿論!!」
  ミータ「おかえり、ノラ!!」
  ネコ1「ノラ!!」
  ノラ「皆・・・ただいま・・・」

         ミーナ、一番ネコ、顔を見合わせ、その様子を
         嬉しそうに見る。

    ――――― 第 7 場 ――――― B

         ミーナ、一番ネコ残して、ネコ達下がる。
         (背景変わる。)音楽流れる。

  ミーナ「一番ネコさん・・・危険を冒してまで、毒消しの薬を取りに
      行ってくれて、本当にありがとう・・・」
  一番ネコ「なぁに・・・おまえさんが、何にでも一生懸命な様子を
        見てると、ちょいとばかし力になってみたくなったのさ
        ・・・。」
  ミーナ「一番ネコさん・・・」
  一番ネコ「もう人間になりたいなんて言って、父ちゃん、母ちゃん
        を悲しませるなよ。」
  ミーナ「・・・うん・・・!!」
  一番ネコ「(ミーナの頭に手を置く。)」

         ミーナ、一番ネコ歌う。

     ミーナ“ネコだっていいじゃない
         ネコだって何て素敵”

     一番ネコ“ネコの何が悪い
           ネコはなんて素晴らしい”

     2人“仲間の為に力を合わせ
        仲間の為に走り回る
        それは誰でも同じこと
        ただ憧れだけで
        目の前の素敵なものに
        気付かない
        そんな勿体ないことはない
        ネコだって何て素敵な私達
        ネコだって何て素敵な生きる者!!”

         ミーナ、一番ネコ、顔を見合わせ微笑む。





          ――――― 幕 ―――――






   
   次回作の後、この一番ネコ達の名前が、再び皆さんの前に
   登場することになる予定です(^.^)
   若かりし頃の一番ネコ達のお話し、こちらもお楽しみに♥




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    (どら余談^^;)

    ボチボチ、次回掲載作品のご紹介をし始めるかな・・・と、
    思うのですが、ミーナちゃんの後は、今日1幕ものの、少し
    短めのお話しを・・・ほぼ書き終えたので、そちらをご紹介
    したいと思います(^.^)

    来年春公演作品が、この短編のお話しと少しタイプが似て
    いる・・・といいますか、今私の中で、誰にも見えなくても、
    自分だけの心許せる友達がいる・・・みたいなテーマを持っ
    たお話しが、コソッとマイブームであります^^;

    ご紹介は、ミーナちゃんの掲載終了後からになりますが、
    次回「うららかな思い」、お楽しみに♥

    ・・・はい、今回珍しくタイトルを付けてみました^_^;







   http://milky.geocities.jp/little_pine2012/index.html

         http://ritorupain.blogspot.com/

     http://blogs.yahoo.co.jp/dorapontaaponta