りとるぱいんわーるど

ミュージカル人形劇団“リトルパイン”の脚本の数々です。

“風になる・・・” ―全8場―

2012年09月01日 20時29分38秒 | 未発表脚本


   8月27日(月)

   この作品は、“ねこの村は大騒ぎ”終了後に、交代で掲載
   予定です・・・とお話した作品ですが、少しだけ予告編的に
   、先行公開致します(^_^)v
   (“ねこの・・・”も間もなく終了するので、続きを何日もお待た
   せすることはありません^_^;)
  
   なぜか・・・と言えば、あまりにも昔作品の割りに、今の私
   作品とマッチする感じが自分自身とても気に入ってしまい、
   少しでも早く綺麗に仕上がった作品として、私が見てみたい
   と思ったからです♪

   すみません、単なる私の気まぐれです・・・(^_^;)


                                 どら。
 

 ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪


    〈 主な登場人物 〉


    スティーブ・タナー  ・・・  大画家の父を持つ若手画家。
                      本編の主人公。

    アイザック・タナー  ・・・  スティーブの父。

    マーク  ・・・  スティーブの下で働く。

    ドンク  ・・・  老画家。

    ボブ  ・・・  ドンクの付き人。

    ジュディ  ・・・  スティーブの母。

    少年

   
    その他



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            幕が上がる。

    ――――― 第 1 場 ―――――

         一時置いて下手より、一人の青年(マーク)、
         数枚の額に入った絵を重そうに抱えて登場。

  マーク「よっこらしょっと・・・(絵を下に置く。)はぁ・・・重かった・・・
      (下手方を見て。)先生!!先生!!この絵、どこに飾り
      ます!?先生!!」

         そこへ下手より、スティーブ・タナー、一つの
         小ぶりな額を抱えて、ゆっくり登場。

  マーク「早く配置を考えて下さいよ。まだ何十枚もあそこに積み
      上げたまま・・・」
  スティーブ「煩いな・・・全く・・・。」
  マーク「煩いったって、言わなきゃ先生、動いてくれないじゃない
      ですか。さっさと準備しないと、今夜の個展前夜祭記念
      パーティーに主役が遅刻しちゃ、お話にならないでしょ?
      大体、作品の配置は全部自分で遣るなんて拘り・・・先生
      みたいな大物に似合わないですよ!こんなのアシスタン
      トに任せて・・・」
  スティーブ「おまえには分からないさ・・・」
  マーク「え?」
  スティーブ「いくら著名人になったところで、何に対しても、少し
         の拘りも持たない人間は、俺に言わせれば芸術家
         として一人前とは言えないな・・・。」
  マーク「もう・・・先生は理屈っぽいんですよ、ただ単に・・・。世の
      中、拘りのない奴なんて、そこら中にゴロゴロ・・・」
  スティーブ「おまえもその一人ってことだ・・・(手に持っていた絵
         を、上手方にあった額の上に乗せる。)」
  マーク「またこの絵・・・。誰なんですか?この絵の女の人・・・。
      いつも先生の個展には、必ず飾っているけど・・・。先生の
      ・・・恋人?まさかね。(笑う。)それにしても、随分この絵
      のタッチは、今の先生のものと違って、地味ですよねー。
      本当に先生が書いたんですか・・・?」
  スティーブ「煩い!さっさとその手にしてるものを、決まった場所
         に持って行け。」
  マーク「決まった場所って・・・」
  スティーブ「(1枚の紙をマークに渡す。)ほら・・・」
  マーク「(紙を受け取って見る。)あ・・・はぁい、了解・・・。」

         スティーブ、スポットに浮かび上がり歌う。
         (後方でマーク、絵を其々飾っている。)

         “遠い昔の思い出は
         忘れられない心の片隅に
         今も微かに蘇る・・・
         優しい風が心を過ぎり
         温かな思いが満たされる
         自分の生きた証がそこにある
         生まれた意味を確信する
         遠い昔の思い出に
         今解き放たれる為・・・
         答えを探し出す為に
         風になりたい・・・”

         舞台、明るくなる。
         (マーク、飾り付けが終わっている。)

  マーク「どうですか、先生!どこか不味いとこありますか?」
  スティーブ「(チラッと見て。)別に・・・」
  マーク「もう、あっさりしてるなぁ・・・」
  スティーブ「ちょっと出て来る。後はよろしく・・・」

         スティーブ、上手へ去る。

  マーク「よろしく・・・って・・・、先生・・・先生!!ちぇっ・・・なぁに
      が拘りだよ。拘るなら最後まで責任持って欲しいよ。拘る
      人間が“後はよろしく”・・・なんて言うかなぁ・・・。それにし
      ても先生って人はよく分からないよ・・・。先生の下に付い
      てもう一年・・・。なのに益々分からなくなる・・・。どこか翳
      りがあるようで・・・。かの有名な偉大な画家、アイザック・
      タナーを父君に持つサラブレット。若い人達からの人気も
      高い!だけど先生はそれがどうも気に入らないみたいな
      んだ・・・。」

         音楽流れ、マーク歌う。

         “よく分からない彼のこと
         全く不思議な人 以前から
         絵が上手い それは彼の才能
         なのに言われると怒るんだ
         自分を否定しているように
         褒められることが苦手なのか
         僕なら飛び上がって喜ぶけれど
         世間に認められ
         手に入れた地位と名誉
         彼には何故かそれが嬉しくないらしい”

         マーク首を傾げ、下手へ去る。
         カーテン閉まる。

    ――――― 第 2 場 ―――――

         カーテン前。
         一時置いて上手より一人の紳士(トング)、
         続いてお付きの青年(ボブ)、話しながら
         登場。

  トング「どうして私が奴の記念パーティに、態々出席してやらな
      きゃいけないんだ!全く馬鹿げてる!!奴はまだデビュ
      ー間もないヒヨッ子なんだぞ!それなのに、ちょっと世間
      に認められただけで、なぁにが前夜祭だ!!」
  ボブ「はぁ・・・」
  トング「そもそもあいつが有名になれたのは父親のお陰なんだ
      !!私が生涯のライバルと認めた、ただ一人の男、アイ
      ザック・タナー・・・。この世の生きた天才と言われた父親
      の笠の下で、ヌクヌクと育ち、何となく手に入れた今の地
      位!!おまえもそう思うだろ、ボブ!!」
  ボブ「まぁ・・・」
  トング「それに大体、ちょっと人気があるからって、彼の遣り方
      は傲慢過ぎるんだ。まだ年端ゆかぬ若造のくせに・・・前
      夜祭なんてハデハデしいパフォーマンス!!まだまだ早
      過ぎる!!世間は一体どんな目をしてるんだ。あんな奴
      の絵が素晴らしいなんて!!私に言わせれば、彼の絵
      はとんだ茶番だね。斬新な色使いに大胆な構図?・・・ふ
      んっ!!あんなのは幼稚園児のお絵描きだ!!熊牧場
      の熊でも描ける。(笑う。)」

         その時上手より、2人の話しを聞いていた
         ように、スティーブ登場。

  ボブ「(スティーブに気付き、小声でトングに。)・・・あ・・・トング
     先生!!トング先生!!・・・スティーブさん!!こんにち
     は!!」
  トング「(ボブの言葉に気付き振り返る。驚いたように。)・・・や
      ・・・やぁ、タナー君・・・明日はいよいよだね!我々も今回
      の君の個展は楽しみにしているんだ。」
  スティーブ「へぇ・・・それはそれは・・・。あなたが僕みたいなヒヨ
         ッ子の個展を楽しみにしてくれているとは、今以て知
         りませんでしたよ・・・。」
  トング「な・・・何を言っているんだね。私は長いこと、この世界に
      いるが、君程の実力を兼ね備えた新人に、今だ嘗てお目
      に掛かったことはないと思っているんだよ、スティーブ・タ
      ナー君!」
  スティーブ「結構ですよ・・・そんなに僕に気を使って貰わなくて
         も・・・。どうせ僕は父の恩恵を受けて、今ここにいる
         ことが出来るんだ。何も態々、あなたに大声で豪語
         して頂かなくても、そんなことは端から分かりきって
         いる・・・。お帰り下さい。(上手方を指し示す。)」
  トング「な・・・なんて奴なんだ!!なんて偉そうな・・・!!誰が
      出てやるもんか!!誰がおまえのような青二才の・・・!
      !一生、父親の陰に隠れたまま、その地位で満足してる
      がいいんだ!!」

         トング、憤慨したように上手へ去る。
         慌ててボブ、トングの後を追うように
         上手へ去る。(音楽流れ、カーテン開く。)

    ――――― 第 3 場 ―――――
  
         舞台は公園の風景に変わっている。
         (中央に一つのベンチ。)
         スティーブ溜め息を吐き、虚しそうに
         歌う。

         “誰だって
         触れられたくない思いがある・・・
         誰だって
         心に重く圧し掛かる
         拭い去りたい影がある・・・
         何もかも投げ出して
         逃避したい世界がある・・・”

         スティーブ、ベンチに腰を下ろす。
         一時置いて、下手より一人の少年登場し、
         スティーブを見詰めている。

  スティーブ「(少年に気付く。暫く知らん顔するが、少年が何時ま
         でも自分の方を見ていることが気になるように。)な
         んだ・・・俺に何か用か・・・?さっきから何故、俺の方
         ばかり見ている・・・?」
  少年「あなた・・・今、絵を描くことが楽しくないね・・・?」
  スティーブ「え・・・?」
  少年「もう絵なんて描きたくないと思ってる。」
  スティーブ「何故そんなことが分かるんだ・・・。第一、どうして俺
         が絵描きだって・・・」
  少年「僕は楽しいよ。絵を描くことが好きさ。」
  スティーブ「絵を描くことが好き・・・?」
  少年「うん。将来は絵描きになることが僕の夢なんだ!」
  スティーブ「そんなものになったって、食って行くのが大変なだけ
         だぞ。」
  少年「でもあなたはまだ若いのに、売れっ子画家じゃない。それ
     でちゃんと生活してる。」
  スティーブ「それは父親が・・・(ハッとして。)なんでおまえにそん
         なこと言わなきゃならないんだ。」
  少年「父さんが有名でも、父さんと僕とは違う・・・。」
  スティーブ「俺だってそう思ってたさ!だけど・・・追い抜けない
         ・・・いつまでもあの人の背中を見て、俺は歩いて行
         かなきゃならない・・・。これは現実だ・・・。絵が好き
         ・・・おまえのように真っ直ぐ前を向いて、希望に胸、
         ときめかせてた頃もあったさ・・・。(少年を見て怪訝
         そうに。)父さんと僕は違う・・・って・・・おまえの親父
         さんは画家なのか・・・?」
  少年「今日、図工の時間に森へ絵を描きに行ったよ。スケッチブ
     ックと絵の具を持って!僕は絵を描いている時が一番、楽
     しいんだ!!それに母さんは、僕の絵をいつも褒めてくれ
     るんだ!」
  スティーブ「・・・え・・・?」
  
  母の声「スティーブ・・・あなたが描いてくれた母さんの絵・・・私
       は一番好きよ・・・。とても温かな感じがするもの・・・」

  スティーブ「・・・母さん・・・(思わず立ち上がる。何か不思議な面
         持ちをして、少年を見る。)・・・おまえは一体・・・」
  少年「(微笑んでスティーブを見る。)」
  
         スティーブ、呆然と少年を見詰める。
         その時、強い風が吹き抜ける。

  スティーブ「わっ・・・!!(風を避けるように、身を屈める。)」

         少年、嬉しそうに笑いながら下手へ
         走り去る。

  スティーブ「あ・・・!!待ってくれ!!待って・・・!!」

         スティーブ風を避けながら、少年の後を
         追うように下手へ走り去る。
         暗転。

    ――――― 第 4 場 ―――――

         舞台明るくなる。(強制の国。)
         一時置いて下手より、一人の男性
         (ギルバート先生)登場。続いて、俯き
         加減の一人の少年(ランディ)ゆっくり
         登場。

  ギルバート「全く・・・ランディ、君は学校は何をする為に来るとこ
         ろだと考えているんだね!?答えてみたまえ!!」
  ランディ「・・・それは・・・勉強を・・・」
  ギルバート「一体どう言ったつもりで、毎日毎日私の血圧が上が
         るようなことをするんだ!!よくもこう、次から次へと
         私の頭を悩ませる問題を起こせるものだな!!真面
         目に私の言うことを聞き、勉強して努力するのは誰
         の為だ!!私の為に君は学校へ来ているのか!!」

         音楽流れギルバート先生、熱弁を振るう
         ように歌う。
         (途中、スティーブ下手より登場し、その
         様子を見ている。)

         “勉強するのは自分の為
         勉強こそが君の未来を左右する
         今こそ熱心になる時だ
         でなきゃこのまま落ち零れ
         君の思いに任せてりゃ
         君は堕落の一途を辿る
         だから強制 強制
         この国に相応しく
         君の未来に栄光あれ!!”

  ギルバート「分かったかね?ランディ君!」
  ランディ「・・・はい・・・なんとなく・・・ギルバート先生・・・」
  ギルバート「なんとなく・・・?なんとなくだと?そんな生温いこと
         で君はこれからのこの世の中、渡り歩いて行けると
         思っているのかね!?これは君の為に諭して言って
         いるのではない。分かるかね!?強制しているのだ
         !!この国は全てが強制!!教師が言うこと、決め
         たことは、必ず守らなければならない!!そして実
         行する!!今までの私の遣り方は甘かった!!危う
         く私もこの国の規則に、違反してしまうところだった。
         強制こそが最大の支配!!強制こそが国民を正し
         い道に導く道標!!」
  スティーブ「・・・そうかな・・・」
  ギルバート「(スティーブを認め。)誰だね?君は・・・」
      





     


     ――――― “風になる・・・”2へつづく ―――――









 ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪


   (どら余談^^;)

   いつもは昔の作品はその当時書いたまま載せています(^^)
   ・・・が、今回は、何時になく作品を気に入ってしまったので、
   結構、ちょこちょこと手直しを入れています(^^)v
   その為、より一層、最近の私作品に近付いています(^.^)

   その内、舞台にすると面白いかも・・・と、密かに思ったり
   しているのです^^;   






  http://milky.geocities.jp/little_pine2012/index.html

         http://ritorupain.blogspot.com/

     http://blogs.yahoo.co.jp/dorapontaaponta



















“レナード” ―全13場― 4

2012年09月01日 19時16分19秒 | 未発表脚本

           ――――― 第 8 場 ―――――

 

          カーテン開く。舞台は“nothing”

          店の中は大勢の客で賑わっている。

          歌手スザンヌ、客席を回りながら歌っている。

          そこへニックとジム、入口から入って来て、

          楽しそうにテーブルに着く。

          ウエイトレスの格好をしたフランシス、2人に

          近寄る。

 

  フランシス「いらっしゃいませ。何になさいますか?」

  ニック「えっと・・・(フランシスを見上げて。)あれ?見かけない

      顔だね。新入り?」

  フランシス「はい!」

  ニック「俺はニック。(ジムを指して。)こいつはジム。この店の

      常連なんだ。レナードさんの弟分ってとこかな・・・っても

      俺らが勝手にそう思い込んでるだけなんだけど。(笑う。

      )」

  ジム「よろしく!」

  フランシス「よろしくお願いします。(頭を下げる。)」

  ジム「何か君、他の店員と感じが違うね。」

  フランシス「そうですか?」

  ニック「えっとね・・・俺、今日はビール!」

  フランシス「はい。ジムさんは?」

  ニック「(笑って。)こいつに“さん”付けで呼んだのは、君が

      初めてだ。」

  ジム「何か可笑しな感じだな。(笑う。)俺もビール。」

  フランシス「はい、少々お待ち下さい。」

 

          フランシス、2人から離れてカウンターの

          B・Jに注文を伝えて、一寸脇へ寄る。

          入口よりジャネットとイザベラ入って来、

          カウンターの方へ。

 

  イザベラ「B・J!!ちょっと小耳に挟んだんだけど!!」

  B・J「いらっしゃい。どうしたんですか?偉く興奮してるみたい

     だけど。」

  イザベラ「違うわよ!!レナードが女を拾ったって!?」

  B・J「えーっ!?」

  ジャネット「うちに来てるお客の中に、ここの常連さんもいてね。

        その人達が言うには、“nothing”に入った、新しい

        女の子にレナードが入れ込んでるらしいって。」

  B・J「(笑って。)新入りは入ったけど、入れ込んでるってのは

     どうかなぁ。ちょっと違うような気がするけど・・・。確かに

     親身になってるみたいだけどさ。」

  イザベラ「何処!?その新入り!!何処にいるの!?」

  ジャネット「まあまあ、そんなに興奮しないで、イザベラ。」

  イザベラ「ママ!!私は今日までずーっとレナード一筋だった

       のよ!!それなのに、ついさっき知り合ったばかりの

       小娘に、レナードを持ってかれちゃ堪ったもんじゃない

       わ!!」

  B・J「いい子ですよ。(チラッとフランシスの方を向いて、目が

     合ったフランシスに奥へ入るように合図を送る。)」

  フランシス「(B・Jの合図が分からず、微笑みながら近寄る。)

        B・Jさん、ビールはまだでしょうか?」

  B・J「あ・・・ああ・・・OK・・・(仕舞ったと言う風な顔付きで。)」

  イザベラ「(チラッとフランシスを見て。)・・・あなたね・・・?」

  フランシス「はい?」

  イザベラ「この間入ったって言う新入りは・・・」

  フランシス「はい、私新入りです。よろしくお願いします。常連

        さんですか?」

  イザベラ「レナードとはどう言う関係!?」

  フランシス「・・・関係・・・?」

  イザベラ「恍けないでよ!!彼と付き合ってるの!?彼があな

       たにぞっこんだって聞いたけど!?」

  フランシス「・・・ぞっこん・・・ですか・・・?」

  B・J「あ・・・フランシス!!ビール持って行ってくれ!!(ビール

     を2本、フランシスに渡す。)」

  フランシス「はい!」

 

          フランシス、ビールを持ってニック達の

          方へ。B・J、フランシスに付いて行こうと

          したイザベラの腕を掴む。

 

  B・J「イザベラさん!!」

  イザベラ「何よ、B・J!!」

  B・J「彼女・・・そっとしといてやってくれませんか?」

  イザベラ「何、それ!?」

  B・J「彼女、ここに来るまで何か色々辛いことがあったらしく

     って・・・レナードさんは詳しいことは話してくれないけど。

     本当に悪い娘じゃないんですよ!働き者だし・・・。ちょ

     っと変わってるけど・・・。」

  ジャネット「変わってる・・・?」

  B・J「うん・・・何かお上品そうって言うか・・・」

  ジャネット「へぇ・・・」

  イザベラ「(溜め息を吐いて。)・・・癪にさわるけど・・・B・Jに

       免じて今日は大人しくしててあげるわ。けど、私は許し

       た訳じゃないんですからね!!」

  B・J「(ホッとして。)よかった・・・。ありがとうイザベラさん。」

  ジャネット「(嬉しそうにB・Jを見て。)惚れちゃったかな?」

  B・J「(慌てて。)惚れ・・・いやだな、ジャネットさん!!冗談キ

     ツイよ!!」

  イザベラ「それより今日レナードは?」

  B・J「ああ、ちょっとチャールズさんの所へ行ったんですよ。

     直ぐ戻ると思いますよ。」

  イザベル「一言くらい文句言ってやらなきゃね!!」

 

          フランシス、ニック達にビールを渡して

          少し離れた所に立ち、楽しそうに皆の様子

          を見回している。

          音楽大きくなり、再びスザンヌ、リズムに

          乗って軽快に歌う。ニック、ジム、客の手

          を取り踊りだす。他の客もつられるように

          飛び出し踊る。残った客、手拍子する。

          フランシスも皆を見て手拍子する。

          そこへレナード、チャールズ登場。その様子

          に楽しそうに顔を見合わせて店の中へ。

          レナード、嬉しそうに手拍子しているフランシス

          を認め近寄り、手を取って踊りに誘う。

          チャールズ、カウンターへ。

          始めは躊躇っていたフランシス、レナードに

          誘われて嬉しそうに踊りに加わる。何時の

          間にか踊っていた他の者達、手拍子に回り

          レナードとフランシスの踊りになる。

          盛り上がってポーズ。皆、歓声を上げて

          拍手し、其々の場所へ戻る。

 

  フランシス「(息を弾ませて。)こんなに踊ったの、初めて!」

  レナード「(微笑んで。)本当に?」

  フランシス「(靴を見て。)あ・・・踵が・・・」

  レナード「大分、ボロだったからな。新しいの買ってやるよ。」

  フランシス「え・・・?」

 

          レナード、フランシスの背中を軽く押して

          カウンターの方へ行こうとすると、イザベラ

          2人に駆け寄る。

 

  イザベラ「レナード!!(思わずレナードに抱き付く。)」

  レナード「やあ、イザベラ。いらっしゃい。」

  イザベラ「(離れて。)よくも抜け抜けと、“いらっしゃい”だなん

       て!!」

  レナード「どうしたんだよ。」

 

          レナード、イザベラ、カウンターの方へ。

          フランシス一寸離れて2人に続く。

 

  イザベラ「ママも何とか言ってやってよ!(カウンターの椅子に

       座る。)」

  ジャネット「残念だけど今の2人の息の合った踊りを見せられ

        ちゃ、私は何も口出しできないなぁ。」

  イザベラ「ママ!!」

  ジャネット「レナード、新しい彼女紹介してよ。」

  レナード「彼女って・・・そんな・・・(心持ち照れたように。)」

  チャールズ「(レナードの肩に手を置いて。)こいつはモテる奴

         だから、今まで自分の方から言い寄ったことなんて

         ないんだ。」

  レナード「チャールズ!」

  チャールズ「(笑って。)それで口説き方が分からないんだよな

         ?」

  レナード「おまえな!!」

  ジャネット「まあ、結構初な所もあるのねぇ。(笑う。)」

  レナード「勝手に言ってろよ!フランシス!店の手伝いなんか

       いいから座ってろよ!」

 

          レナード、少し皆から離れて他の客と

          話しをする。

 

  イザベラ「面白くない!B・J、ウォッカ頂戴!!」

  B・J「えー、強いですよ。」

  イザベラ「いいの!!今日は酔っ払いたい気分なんだから。」

  チャールズ「(笑って。)荒れてるなぁ。」

  イザベラ「放っといてよ!!」

  ジャネット「(呆れたように立ち上がって。)全く・・・さぁ、イザベラ

        戻りましょう。」

  イザベラ「イヤよ!(カウンターに伏せる。)」

  ジャネット「あっそう・・・。でも今日は確か、レストランオーナー

        のダン・マグダモットの来る日じゃなかったかしら。」

  イザベラ「(顔を上げて。)そうよ!!今日はダンが来る日だわ

       !!(立ち上がって。)何してるのよママ!!早く帰ら

       なきゃ!!」

 

          イザベラ、慌てて入口から出て行く。

 

  ジャネット「(溜め息を吐いて。)お騒がせ様!」

 

          ジャネット出て行く。

 

  B・J「(笑って。)イザベラさんは何時も大騒ぎして帰って行く

     な。」

  チャールズ「あいつはあれが趣味みたいな奴だからな。」

  B・J「そうなんですか?(楽しそうに見ていたフランシスの方を

     向いて。)フランシス!何か飲むかい?」

  フランシス「はい。」

  B・J「OK。」

  チャールズ「君、大変なお嬢様だったんだ。」

  フランシス「お嬢様だなんて・・・」

  チャールズ「あ・・・別にからかった訳じゃないんだぜ。レナード

         から色々聞いてさ。微力ながら俺も手伝いをさせ

         て貰おうと思ってね。」

  フランシス「ご迷惑かけてすみません。(頭を下げる。)」

  チャールズ「いや・・・俺は仕事のついでだから・・・。けど、レナ

         ードは違うぜ。あいつは本気で君の力になりたい

         と思ってる。あいつなりの少々荒っぽい遣り方だけ

         ど・・・。また俺の心配の種が増えるって訳だ。」

  フランシス「ごめんなさい・・・」

  チャールズ「(微笑んで。)何も君のせいじゃないさ。あいつが

         自分から言いだしたんだ。俺にはそれが如何して

         だか分かるな・・・」

  B・J「(フランシスにコップを渡す。)はい。」

  フランシス「ありがとう。」

  チャールズ「オレンジジュース?」

  B・J「ええ。彼女用なんですよ。(笑う。)レナードさんがカクテル

     用じゃないのも買っておけって。」

  チャールズ「へぇ・・・(嬉しそうに。)」

 

 

 

 

 

       ――――― “レナード”5へつづく ―――――

 

 

 

 

 

 

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