りとるぱいんわーるど

ミュージカル人形劇団“リトルパイン”の脚本の数々です。

“ジェイ・スペンサー” ―全13場― 2

2012年09月06日 16時57分20秒 | 未発表脚本

          ――――― 第 3 場 ―――――

 

         下手よりハリー登場。続いてハリーを

         追い掛けるようにマックス、ダニエル登場。

 

  マックス「編集長!!来週の特集記事の原稿、届いてますか!

       ?」

  ハリー「ああ、今さっきファックスが届いてた。」

  ダニエル「マックスさん、よかったじゃないですか!」

  マックス「全く、あの爺さんときたら、いつも締め切り後だ!!

       締め切り日の意味、知らないんじゃないか!?」

  ハリー「しかしその先生の尻を叩いて、締め切り前にあげさせ

      るのが、担当者であるおまえの役目なんじゃないか?」

  マックス「しかしですよ、編集長!!あの爺さんがノラリクラリや

       って、俺達が困ってるのを見るのを楽しんでるような、

       陰険爺だってことは、編集長だってよく知ってるじゃない

       ですか!!」

 

         3人話しながら舞台上へ。カーテン開く。

         (絵紗前。)騒然としている編集室。

 

  ハリー「まぁ、兎に角だマックス。おまえの手腕の見せどころ・・・

      ってことだ。」

  マックス「そんなぁ・・・」

 

         ハリー、自分のデスクの前へ立って、書類

         の一杯乗った机の上から、探すように一枚

         取って、マックスの方へ差し出す。

 

  ハリー「ほら、おまえのお待ちかねだ。」

  マックス「(紙を受け取って見る。)ねぇ・・・編集長・・・そろそろ、

       この企画も終わりじゃないっすか?今度はこう・・・もっと

       若者受けのする先生にお願いして・・・」

  ハリー「(デスクの上を整理していた手を止めて、マックスを見る。

      )確かに、あの先生のコーナーの人気は下火になってき

      てるんだが。今度、編集会議にかけて、他の奴の意見も

      聞いてみな。」

  マックス「やった!!」

  ダニエル「今度は締め切り日のちゃんと守ってくれる先生がいい

       なぁ。」

  マックス「そうそう!それで出来れば、若くて美人の先生なんか

       にお願いできたら、担当者の俺としたら俄然やる気が

       出るんだよなぁ・・・。」

  ハリー「(溜め息を吐いて。)マックス・・・何時までも無駄口たた

      いてないで仕事しろ・・・。」

  マックス「了解!」

 

         マックス、ダニエル、脇へ避ける。

 

  ハリー「(書類を掲げて呼ぶ。)チャーリー!!」

  チャーリー「何すか?(ハリーのデスクに近寄る。)」

  ハリー「何すか・・・じゃないだろ!!何だこの原稿は!!(持っ

      ていた書類で、チャーリーの頭を叩く。)」

  チャーリー「いてっ!(原稿を受け取って。)何だって言われても

         ・・・」

  ハリー「書き直しだ!!こんなんじゃ来週からおまえのコーナー

      には、どっかの宣伝が入ることになるからな!!」

  チャーリー「そんな・・・!!そりゃないっすよ!!(ブツブツ言い

        ながら、書類を持って自分の机の方へ歩いて行く。)」

 

         ハリー、椅子に腰を下ろして仕事を始める。

         入り口からエイシー、興奮して入って来る。

         デスクで原稿書きをしていたアンナに、足早

         に近寄る。

   

  エイシー「ねぇ、ねぇ!!今度の新入社員、全く驚きよね!!」

  アンナ「(手を止めて、顔を上げる。)ああ、あの・・・キャロルっ

      て子・・・」

  チャーリー「(話しに割り込むように。)そうそう!!ありゃ丸で、

        ジェシーの生まれ変わりだぜ!!」

  ダニー「(可笑しそうに。)でも性格は全くの正反対だぜ。」

  ジョーイ「ジェシーは仕事も出来たし、頭も切れたもんな。」

  エイシー「ジェイは、もう知ってるのかしら?」

  ダニー「さぁ・・・」

 

         マックス、ダニエル、出て行こうとすると、

         入り口からジェイ入って来る。

         マックス、擦れ違い様に声を掛ける。

         チャーリー達も気付いて。

 

  マックス「よぉ、ジェイ!おまえベンバ共和国に行くんだって?」

  ダニエル「えーっ!!本当っすか?」        

  マックス「(ダニエルに向かって。)おまえは煩いんだよ!」

  ジェイ「ああ。」

  マックス「何だって、また、そんな辺鄙なところへ・・・。今度は何

       撮りに行くんだよ。」

  ジェイ「さぁな・・・」

  アンナ「でも今、ベンバって言ったら、あんまり治安がよくないっ

      て・・・」

  ジョーイ「そうそう・・・」

  ジェイ「そう言うところが、俺には合ってるのさ・・・。」

 

         ジェイ、ハリーの側へ寄って行く。

         マックス、ジェイの背中を見て、溜め息を

         吐いてダニエルと共に出て行く。

         他の者も顔を見合わせて、其々仕事に

         戻る。

 

  ジェイ「編集長!俺、来週発ちますから。」

  ハリー「(ジェイに気付いて。)ジェイ。どうしても行くのか?」

  ジェイ「はい。」

  ハリー「おまえが何をしたいのか、俺にはよく分からんが・・・

      好い加減、以前のおまえらしさを取り戻してもいい頃だ

      ぜ。今回のベンバ行きにしても、あそこは今、もの凄く

      危険なんだ。一旦行けば、生きて帰って来れる保障は

      何もない程な・・・。」

  ジェイ「分かってますよ。」

  ハリー「だが、本当にあそこへ行くことは、今のおまえにとって

      必要なことなのか?」

  ジェイ「勿論です。編集長が言ってる以前の俺と言うのが、今

      の俺と違うんだとすれば・・・俺は辞表を出してもベンバ

      へ行きます。」

  ハリー「(溜め息を吐いて。)まぁ、おまえがそこまで言うんなら、

      俺は何も言わないが・・・そうだ、おまえに紹介したい奴

      がいるんだ。おまえもいつまでも写真と原稿書き、二足

      の草鞋を履く訳にはいかんだろう。」

  ジェイ「編集長・・・」

  ハリー「しかし彼女はまだまだ使い物にはならんだろうが、おま

      えに付いていれば、その内一人前になるんじゃないかと

      思ってな。」

  ジェイ「(顔を逸らして。)編集長、いつも言ってるでしょう・・・。俺

      は一人がいいんだ・・・。パートナーなんてご免だ・・・!!

      」

  ハリー「まぁ、そう言うな。(丁度入って来たロバートに向かって、

      大きな声で。)ロバート!!キャロルを呼んで来てくれ!!

      」

  ロバート「OK!!(戸の外を覗いて。)キャロル!」

  ジェイ「悪いけど・・・(行こうとする。)」

  ハリー「まぁ、待て!(ジェイの肩を掴む。)」

 

         一時置いて、再び後ろにキャロルを連れて、

         ロバート入って来る。

 

  ハリー「(側へ来たキャロルの背を押し、ジェイの前へ。)ジェイ、

      今日からお前のパートナー、キャロル・タナーだ。」

  ジェイ「(背を向けたまま。)俺は!!」

  ロバート「ジェイ・・・」

  キャロル「こう言うお仕事は初めてで・・・。上手く遣っていけるか

       どうか分かりませんけど、頑張りますわ!」

  ジェイ「だったら帰るんだな・・・(顔を上げてキャロルを見、驚い

      て呆然とする。)・・・ジェシー・・・」

  ロバート「そっくりだろ?俺も初めて見た時は驚いたよ。」

  ジェイ「(ロバートを見据えて。)どう言うことだ、ロバート・・・。こ

      んな奴を連れて来て・・・俺にこいつをジェシーだと思えと

      言うのか!!」

  ロバート「そんなつもりは・・・」

  ハリー「ジェイ、兎に角これは命令だ。(机の上の原稿などをか

      き集める。)キャロル・タナー、後はジェイに付いて(ジェイ

      の肩に手を置いて。)一日も早く、仕事に慣れるんだ。」

  ジョーイ「編集長!!会議が始まりますよ!!」

  ハリー「分かった!!直ぐ行く!!」

  キャロル「(敬礼して。)キャロル・タナー、了解致しました!!」

  ハリー「(一時呆然として笑う。)OK、頑張れよ。(出て行く。)」

  ロバート「ジェイ・・・俺は早く以前のおまえに戻って欲しいんだ

       ・・・。分かってくれ・・・。」

  ジェイ「・・・俺のジェシーは死んだんだ・・・。こいつはジェシーじゃ

      ない・・・」

  ロバート「ジェイ・・・」

  キャロル「本当にジェシーのこと、愛していたのね。いいわ、私の

       こと、ジェシーだと思って!でも、出来ないことはあるけ

       ど。(笑う。)」

  ロバート「(微笑んで。)キャロル・・・君は明るいな・・・」

  キャロル「それが私ですから!」

  ジェイ「兎に角・・・来週から俺はベンバだ。そこへおまえを一緒

      に連れて行くことは、どの道出来ない相談だ。暫くロバー

      トにでも面倒見てもらうんだな。だが・・・これだけはキッパ

      リ言っておく。俺はパートナーなどいらない!!(出て行く

      。)」

  キャロル「あ、ジェイ!!(ジェイを追おうとする。)」

  ロバート「キャロルの肩を掴んで止める。)放っておけ・・・。その

       うち、目が覚めるだろ・・・。」

  キャロル「でも・・・」

  ロバート「だが君には何だか悪いことをしたね・・・」

  キャロル「(微笑んで。)私なら平気ですわ。何て言われたって。

       」

  ロバート「そうだな。暫く俺が面倒見るよ・・・。」

 

         いつの間にか他の社員、集まって来る。

 

  ジョーイ「皆いるさ。」

  ロバート「ジョーイ・・・(周りを見回して、他の社員が集まってい

       ることに気付く。)皆・・・」

  アンナ「でもジェイがどんな反応示すか、私ドキドキしちゃった。

      」

  エイシー「私も!」

 

         社員達の笑い声で、暗転。

 

      ――――― 第 4 場 ―――――

 

         太鼓のリズムが鳴り響き、カーテン開く。

         (ライト・イン。)

         ベンバのある村。村人達、手に其々籠などを

         持ち、愉快に歌い踊っている。

         掛け声で決めのポーズ。

         其々楽しそうに散らばり、仕事などを始める。

         下手よりジェイ、シモン登場。

 

  シモン「でもジェイさんは、何だってこんな辺鄙なとこに、写真な

      んか撮りに来たんだい?

  ジェイ「おまえだって、ずっとここで歌って来てるんだろ?」

  シモン「俺はここが好きだし・・・」

  ジェイ「俺も同じさ・・・」

  シモン「けど、今この辺はすっごくヤバいんだぜ。」

  ジェイ「俺はこう言うところに来て、初めて本当の俺に戻れるん

      だ・・・。」

  シモン「え?変なこと言うんだな。(笑う。)ほら、見えて来たよ。」

  

         テア、シモンを認め、嬉しそうに駆け寄る。

 

  テア「シモン!!どうしたの?あなたの方から来るなんて珍しい

     !!」

  シモン「やぁ、テア!今日はホテルのお客の案内で来たんだ。」

  テア「(シモンの後ろのジェイに気付いて。)ふうん・・・」

  ルチア「(テアに近寄り、ジェイを見詰めながら。)あの人、誰?」

  テア「ルチア・・・ホテルのお客だって。」

  シモン「(振り返って。)ジェイさん!紹介するよ。」

 

         ジェイ、シモン達の方へ近寄る。

 

  シモン「(テア達の方へ向いて。)こちら雑誌カメラマンのジェイ・

      スペンサーさん。(ジェイの方へ向いて。)こっちはこの村

      の村長の娘でテア、それとルチア。」

  ジェイ「(微笑んで。)よろしく。(手を差し出す。)」

  テア「はじめまして。(ジェイと握手する。)」

  ルチア「こんにちは。」

  テア「そのカメラマンさんが、どうしてこの村に?」

  ジェイ「都会の柵から解き放たれた、大自然の写真が撮りたく

      なってね。彼に案内して来てもらったんだ。」

 

         近くを通りかかった村長マルティンと、その妻

         エルバ、テア達に気付き近寄る。

 

  マルティン「どうかしたか、テア?」

  テア「父さん、母さん。」

  シモン「村長さん、こんにちは。」

  マルティン「(ジェイに気付き。)そちらは?」

  テア「シモンのホテルのお客さんで、雑誌カメラマンのジェイ・ス

    ペンサーさん。大自然の写真を撮りに来たんだって。」

  マルティン「ほう・・・珍しい人もいるものだ。こんな場所へ来ると

        は・・・。まぁ、この村には滅多に来ないお客人だ。ゆ

        っくりして行きたまえ。」

  ジェイ「ありがとうございます。」

  エルバ「テア、村の中を案内してあげたら?」

  ルチア「私が!」

  エルバ「え?」

  ルチア「あの・・・よかったら私がご案内致しますわ。テアは、シ

      モンと話しがあるでしょうし。」

  テア「そうね!ルチア、お願い!行こう、シモン!(楽しそうに、

     シモンの腕を取って、何処かへ行く。)」

  エルバ「じゃあルチア、頼みますね。あなた・・・」

 

         マルティン、エルバ、ジェイ達から離れる。

 

  ジェイ「この村の人は親切だな。(微笑む。)君を含めて・・・。」

  ルチア「そんなこと・・・(恥ずかしそうに。)さぁ、何処をご案内

      しましょうか。」

  ジェイ「何処でも。君がこの村で一番素晴らしいと思うところへ。」

  ルチア「分かったわ!(嬉しそうにジェイの手を取り、駆けて行こ

      うとする。)」

 

         そこへルチアの兄ジョテファ、ルチアに想いを

         寄せている青年リンゴー登場。ルチア達に

         気付き、近寄る。

 

  ジョテファ「おい、ルチア。その野郎はなんだ。」

 

 

 

 

 

 

 

   ――――― “ジェイ・スペンサー”3へつづく ―――――

 

 

 









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“風になる・・・” ―全8場― 2

2012年09月06日 16時04分41秒 | 未発表脚本


  スティーブ「強制して人々を従わせ、平和な世の中だと言ったと
         ころで、それは所詮、偽りの平和だ・・・。」
  ギルバート「何だって・・・?」
  スティーブ「(ギルバートを見詰め、フッと笑う。)・・・でも・・・本当
         に俺が学生時代によく怒られた先生に似ているな・・・
         。ギルバート先生でしょ?名前まで同じだなんて・・・。
         (ランディを見て。)それに君の名前はランディ・・・同
         じ名前の友達もいたんだ・・・。」
  ギルバート「それより偽りの平和がどうしたのだ!!」
  スティーブ「それは・・・あ、そうだ、それより教えて欲しいんです
         けど・・・ここは・・・どこですか・・・?」
  ギルバート「ここをどこだか知らない?」
  スティーブ「ええ・・・こんな場所は見たこともない・・・。それに、
         さっきから“強制”“強制”って・・・丸で昔々の軍隊じ
         ゃあるまいし・・・」
  ギルバート「この国は強制の国だ!強制することが当たり前の
         ことではないか!!」
  スティーブ「・・・強制の国・・・?そんな国、聞いたこともない。(
         笑う。)全く、どうしてこんなとこに自分がいるんだか
         ・・・俺は確か公園で気になる少年を見かけて追い
         掛けるうち・・・(溜め息を吐いて。)分からない・・・」
  ギルバート「何をブツブツ言っているのだ!?偽りの平和の話し
         はどうなったのだね!?」
  スティーブ「あ・・・ああ、このことは後でゆっくり考えるとしよう。
         (ギルバートに向いて。)そうでしたね。」
  ギルバート「ところでランディ、君はどう思う?私の言うことが正
         しいと思うだろ?」
  ランディ「僕は・・・」
  スティーブ「そんな風に決め付けて言われると、自分で考えるこ
         との出来ない人間になりますよ・・・。」
  ギルバート「それのどこが駄目なのかね?」
  スティーブ「僕もよく学生時代、あなたと同じようにガミガミ怒鳴
         る先生に押さえ込まれて、自分の意見をちゃんと言
         うことが出来なかった。何が正しいのか正しくないの
         か・・・その判断もまだしっかりと出来ないような子ど
         もに、自分の間違っているかも知れない意見を強制
         するのは、正しいことだとは思わない・・・。」
  ギルバート「間違っていると、何故分かるんだ!?」
  スティーブ「間違っているとは言っていない・・・。間違っているか
         も知れないと言ったんだ。」
  ギルバート「同じことじゃないか。」
  スティーブ「全然違いますよ。誰だって正しい、間違っているの
         判断を誤らずに歩いて行ける人間なんていやしない
         ・・・。一見好い加減な言い方かも知れないが、間違
         っているかも知れないと認めることは、勇気のいる
         ことでしょう?最初から間違っていると分かり切って
         いることならまだしも・・・誰も自分の言うことは信じた
         いものですからね・・・。自分を正当化したい・・・。」
                          ※
         音楽流れ、ギルバート歌う。

         “其々が別々の意見を口にして
         バラバラのことを始めたら
         それこそこの国は分裂だ
         だから強制と言う支配を持って
         一つに纏め上げる!”

         スティーブ歌う。

         “確かにバラバラのものを
         一つに纏め上げるのは
         至難の業かも知れない
         だが皆意見が違って当たり前
         歩み寄るのが大切!”

  スティーブ「其々が持つ意見を出し合い、話し合って本当の正し
         い道を皆で見つける・・・それこそが民主主義と言う
         ものではないでしょうか・・・」
  ギルバート「民主主義・・・?なんだね、それは・・・」
  スティーブ「人民の人民による人民の為の政治・・・かの有名な
         リンカーンの残した言葉をご存知ないのですか?」
  ギルバート「そんな言葉は知らんね。」
  スティーブ「この国は人民の為を装った、人民を無視した押さえ
         込みの国・・・。違いますか?頭ごなしに子ども達を
         従わせても、中身まで纏まった国になるとは思わな
         い。ランディ・・・自分の考えを口にすると言うことは、
         とても大切なことなんだ。やりたいと思うことをやりた
         いとも言えず・・・人任せの人生を歩んでいると、そ
         の内、心がなくなってロボットのような人間になって
         しまうんだぞ。君はそれでもいいのかい?」
  ランディ「・・・(小声で)嫌だ・・・」
  ギルバート「・・・ん?」

         ランディ歌う。

         “僕はロボットなんて真っ平だ・・・
         押し付けられた学校生活
         ちっとも楽しくない・・・
         僕は悪戯が好きだ!
         先生に叱られたって
         立たされたって・・・”

  ギルバート「君は学校に一体何しに・・・!?」
  ランディ「学校は勉強する為に行くんだ!!分かってるよ・・・そ
       んなこと・・・。僕は勉強が嫌いなんじゃないんだ・・・。
       ただ勉強もするけど、楽しいこともしたい・・・。それじゃ
       駄目なの、先生・・・!?僕、もっと色んなことがしたいよ
       ・・・。最初からゴールの決まっているゲームは面白くな
       いもの・・・!!」

         スティーブ、ランディ歌う。

     スティーブ“そうだランディ
            自分の意見を言うんだ今こそ
            自分が正しいと思うなら
            主張してみよう!!”

     ランディ“歩くんだ今
          自分の足で見つけた道を
          たとえ間違った道でも
          自分で決めたこと!!”

     2人“だから少しも
        後悔はないんだこの時
        真っ直ぐでなくても
        自分の選んだ道だから!!”

  ギルバート「・・・自我の芽生えた者は、この国ではやっていけな
         いだろうな・・・。この国は強制の国・・・君の言うこと
         が正しいのかどうかさえ、この国で生まれ育って来
         た私には、判断出来かねるのだ。」
  スティーブ「そうでしょうね・・・」
  ギルバート「ただ、そうやって主張する、君の真っ直ぐな瞳を見
         ていると・・・正しいかどうかは別として・・・それも一
         つの道であると言うことは、少なくとも分かる・・・。」
  スティーブ「ええ・・・。」
  ギルバート「ランディ・・・どうする君は、これから・・・。この国にい
         る限り、この国の仕来たりに従うのは国民としての
         義務だ・・・。」
  スティーブ「・・・一緒に・・・探すかい?君の暮らせる国を・・・。こ
         の国にはこの国の遣り方がある以上、それを変えよ
         うとすることは、並大抵のことではないだろう・・・。」
  ランディ「・・・僕・・・僕、この国に残るよ・・・。この国に残って、強
       制の国なんて名前、変えてみせる・・・。強制で支配する
       んじゃなくって、思い遣りで歩み寄るんだ。そうでしょ?」
  スティーブ「ランディ・・・そうだな・・・その通りだ。」
  ランディ「何年かかっても、僕はこの国を素晴らしい国に変えて
       みせる・・・!!」
  スティーブ「・・・君ならできるよ・・・必ず・・・。」
  ランディ「うん・・・!!」
  スティーブ「頑張れよ。」
  
         スティーブ、上手方へ。そこにいたギルバート
         と握手し、話している。と、下手より、少年登場。
         ランディの側へ。ランディ、少年、楽しそうに
         話している。2人の笑い声でスティーブ振り返り、
         少年を認める。

  少年「じゃあ!!」

         少年、下手へ走り去る。

  スティーブ「(慌てて。)あ・・・!!あの少年・・・!!(ランディの
         側へ。)ランディ!!今のは!?」
  ランディ「僕の友達だよ。」
  スティーブ「友達・・・名前は・・・!?」
  ランディ「スティーブ。」
  スティーブ「・・・スティーブ・・・?・・・まさか・・・あ、おい待って・・・
         待ってくれ!!」

         スティーブ、驚いた面持ちで、少年を追う
         ように下手へ走り去る。
         音楽盛り上がって、暗転。

    ――――― 第 5 場 ―――――

         一時置いて、下手スポット、息を切らせ走り
         ながらスティーブ登場。

  スティーブ「(息も荒く。)一体・・・どこに行ったんだ、あの子ども
         ・・・(座り込む。)それにしても全く・・・なんて足の速
         い餓鬼だ・・・。俺も昔は・・・俊足ランナーと言われた、
         陸上界のエース・・・くっそう・・・(ゴロンと寝転がる。)
         」
         
         (スティーブ、そのまま寝入るように。)
         音楽流れ、一時置いて上手より一人の
         少女(アリス)登場。スティーブを認め、
         ゆっくり近付きながら歌う。

         “・・・あなたは誰?
         何故か気になるその面差し
         ・・・どこかで出会うの
         私達・・・
         それは今なのかしら
         あなたが目覚めて
         その瞳に映る私を見た時
         それが出会う瞬間
         でも・・・
         あなたは誰・・・?”

         アリス、スティーブに見入る。

  スティーブ「う・・・ん・・・(ハッとして起き上がる。)仕舞った!!
         こんなところで寝てる場合じゃないだろ・・・。」
  アリス「・・・あなた誰・・・?」
  スティーブ「え・・・?」
  アリス「どこから来たの・・・?」
  スティーブ「(アリスを認め。)・・・あ?ああ、なんだ子どもがいた
         のか・・・」
  アリス「子どもじゃないわ!レディよ!」
  スティーブ「ミニレディだな。(笑う。)」
  アリス「失礼ね!レディ・アリスと呼んで!」
  スティーブ「OK・・・で?ミニ・レディ・アリス、ここは何処か教え
         てくれないか・・・。」
  アリス「ミニ・・・もう!・・・まぁいいわ。ここは“期待の国”よ。」
  スティーブ「期待の国・・・?また変わった名前の国だな・・・。期
         待・・・って・・・ここにいれば、何かいいことでもあるの
         かい?」
  アリス「そうねぇ・・・私にもよく分からないけれど、ここはガミガミ
      先生のいる強制の国や、古い大木の支配者が踏ん反り
      返る権力の国とは違って、とても平和よ。それにいつも何
      かに胸がときめくような感じがするわ。今だって、あなた
      がここにいることが、とても不思議で、何か起こりそうな期
      待にドキドキするもの。」
  スティーブ「残念・・・俺は魔法使いでも何でもないんだ。何も起
         こらないよ。」
  アリス「そうなの?でもあなたの格好、変わってるわ!見たこと
      のない服・・・それに靴・・・その胸にささっている物は何
      ・・・?(スティーブの胸ポケットを指す。)」
  スティーブ「(胸ポケットを見て。)・・・万年筆のことかい?(取り
         出し、アリスの方へ差し出す。)」
  アリス「(珍しそうに見て。)・・・万年筆・・・?何するもの・・・?」
  スティーブ「何って・・・(手帳を取り出し、書いて見せる。)ほら・・・
         こうやって・・・」
  アリス「まぁ!!模様が書けるのね!?凄いわ!!私にも見せ
      て!!」
  スティーブ「ああ・・・どうぞ・・・(アリスに万年筆を渡す。)」
  アリス「(そっと受け取る。)・・・凄いわね・・・それに、とっても綺
      麗だわ・・・!(翳す。)」

         アリス、嬉しそうに万年筆を持って、軽やかに
         舞うよう。暫くその様子を見ていたスティーブ、
         何か思い出したように手帳を広げ、ポケットから
         コンテを取り出し、アリスの様子を書き始める。

  アリス「(スティーブに気付き、駆け寄り覗き込む。)何を書いて
      いるの?・・・私?」
  スティーブ「ああ・・・」
  アリス「まぁ、素敵!!とても美人・・・!!私、本当にこんなに
      綺麗!?」
  スティーブ「・・・さあ・・・」
  アリス「さあって・・・でもこれ私でしょ?」
  スティーブ「これは未来のミニ・レディ・アリス予想図さ。こんな風
         に美人になればいいなって・・・」
  アリス「意地悪ね!」

         2人、笑い合う。
         その時、上手より一人の少女(バネッサ)
         登場。
  
  バネッサ「アリス!」
  アリス「バネッサ・・・」
  バネッサ「(スティーブをチラチラ見ながら。)何してるの?」
  アリス「見て、これ!(バネッサに駆け寄り、手に持っていた万
      年筆を見せる。)今、この人に見せてもらってたの!」
  バネッサ「・・・何これ・・・」
  アリス「色んな模様が書ける、魔法の棒よ!」
  バネッサ「嘘・・・」
  アリス「本当よ!」
  バネッサ「それ、もらったの?」
  アリス「違うわ、見せてもらってるの。」
  バネッサ「そう・・・(何か思い立ったように、スティーブに近寄り。
        )ねぇあなた、私にアリスの持ってる棒、下さらない?
        」
  スティーブ「え・・・?」
  アリス「何言ってるのよ、バネッサ!!」
  バネッサ「その代わり、あなたの知りたいこと、教えてあげるわ
        。」
  スティーブ「・・・知りたいことを・・・?」
  バネッサ「ええ・・・。私知ってるのよ、あなたが何故、今ここにい
        るのか・・・」
  スティーブ「スティーブって言う少年のこと、知っているのかい?
         」
  バネッサ「・・・まぁ・・・ね・・・。その棒、私に下さる?」
  アリス「駄目よ!バネッサの言うことなんか聞いちゃ駄目!!」
  バネッサ「黙ってて、アリスは!!どう?」
  スティーブ「いいよ・・・君にあげよう。」
  バネッサ「やった!」

         バネッサ、アリスから万年筆を奪い取る
         ように。

  アリス「あ・・・」
  バネッサ「わぁ・・・綺麗ね・・・!!」
  スティーブ「それで?どこに行けばスティーブに会えるんだい?」
  バネッサ「そうね・・・この期待の国にいないことは確かよ。」
  アリス「そんなこと、分かり切ってるじゃない!彼は“やすらぎの
      国”の住人よ!」
  スティーブ「やすらぎの国・・・?」
  バネッサ「そう!そこへ行けば会えるんじゃない?」
  スティーブ「やすらぎの国って・・・」
  バネッサ「そんなこと、私が知る訳ないでしょ!じゃあね!」

         バネッサ、嬉しそうに下手へ走り去る。  

  アリス「バネッサ!!」









     ――――― “風になる・・・”3へつづく ―――――











   ※ この場面・・・全体に意味が難しくて、当初の台詞から
     何度も手直しして書き変えました^_^;
     少しは読み易くなったかな・・・と思うのですが、如何
     でしょうか・・・(~_~;)




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