りとるぱいんわーるど

ミュージカル人形劇団“リトルパイン”の脚本の数々です。

“アンソニー” ―全16場― 5

2012年01月24日 19時37分59秒 | 未発表脚本


    ――――― 第 10 場 ―――――

         絵紗前。村の洋品店。娘達、手に其々ドレス
         を持ち、嬉しそうに歌う。

         “舞踏会!舞踏会!
         村中挙げての盛大で豪華絢爛
         アンソニーに見初められる為に
         どの娘達よりも一番素敵に輝いて
         女王のようにドレスをまとい
         家中の宝石で飾りたて
         舞踏会!舞踏会!”

         娘達、其々ドレス選びに夢中になる。
         奥より登場した用品店店主ピエール、
         その様子を不思議そうに見詰める。
         横のソファーには腰を下ろして、新聞
         に見入るクリス。時々、娘達の様子に
         呆れたような視線を向ける。

  シャロン「あら、その色も素敵ね!ちょっと見せて!(ミレーヌの
        持っていたドレスを、手に掛ける。)」
  ミレーヌ「駄目よ!これは私が先に見つけたのよ!」
  シャロン「先に見つけたって、私の方が屹度似合うわよ!貸して
        !(無理矢理ドレスを取り上げる。)」
  ミレーヌ「酷い!!(脹れて他のドレスを探す。)」
  ピエール「お嬢さんには、こっちのドレスもお似合いですよ。」
  ミレーヌ「(チラッと目を遣って。)そうねぇ・・・」
  ピエール「全く・・・ここ暫くの店の繁盛の様子ときちゃあ・・・何か
        あるんですかい?」
  エリーズ「あるもないも、エドモン様のお屋敷で、今度の日曜日
        にこの村始まって以来と言われる、盛大な舞踏会が
        開かれるのよ!」
  ピエール「へぇ・・・。あ・・・もしかして、シャンドール家のお客人
        の歓迎パーティですかい?」
  エリーズ「そう言うこと!」
  ピエール「あの世にも稀な美男子とか言う・・・」
  シャロン「彼に見初めてもらう為に、お洒落しなくっちゃ!」
  クレナ「(2枚のドレスを持って、クリスの方へ。)お兄様!こっち
      のドレスとこっちのドレス、どちらが私に似合うとお思いに
      なって?」
  クリス「(チラッと目を遣る。)さぁ・・・どっちでもいいんじゃないの
      かい?」
  クレナ「まぁ、お兄様!!頼りにならないのね!!」
  クリス「そんなことより、まだ決まらないのかい?(溜め息を吐い
      て。)一体、何日前までの新聞を読めばいいんだよ・・・。」
  ステラ「(ドレスを手に2人の側へ。)1ヶ月よ!!」
  クリス「1ヶ月!?」
  ステラ「クレナ!!このドレスに私の持っていた髪飾りで合うか    
      しら?」
  クレナ「そうねぇ・・・」

         クレナ、ステラ話しながら、クリスから離れる。

  クリス「(肩を窄めて。)1ヶ月ね・・・(再び新聞を広げる。)だけ
      ど、ここに1ヶ月前の新聞なんてないぜ・・・」    ※
  
         そこへアンソニー、エドワード、ルイ、戸を
         開けて、回りを見回しながら登場。
         (戸を開けると、呼び鈴の音。)

  ピエール「いらっしゃいませ・・・」
  アンソニー「こんにちは。」
 
         娘達、その声に驚いて一斉に戸の方へ。
         アンソニーを認めて駆け寄る。

  娘達口々に「伯爵様!!」
  アンソニー「やぁ・・・(微笑む。)皆さんお揃いで、お買い物です
         か?」
  ミレーヌ「え・・・?あ・・・(ドレスを背後に隠す。)・・・ええ・・・!」

         娘達、其々ドレスを隠すように。

  エリーズ「伯爵様は何をお求めに来られましたの?」
  アンソニー「洋服をね・・・(ピエールに向かって。)ご主人!少し
         ドレスを見せて頂きたいのですが・・・。」
  ピエール「はいはい、どうぞこちらへ。(ドレスの掛かっているハ
        ンガーを差し示す。)この辺りに・・・。」
  
         アンソニー、その方へ。エドワード、ルイ、
         ソファーに腰を下ろす。
         娘達、アンソニーに付いて行く。

  アンソニー「(ドレスを見る。)・・・もっとこう・・・違うものはありま
         せんか?いや・・・、ここに掛かっているものも素晴ら
         しいのですが・・・」
  ピエール「いえいえ、伯爵様はお目が肥えていらっしゃる。さぁ
        ご覧下さいまし。お気の済むまで!(横のカーテンを
        開く。)」

         カーテンの中に、豪華絢爛なドレスがずらっと
         掛かっている。
         娘達、そのドレスを認め、声を上げる。  

  アンソニー「そう、こう言うドレスを探していたのです。(その中
         の一枚を選び、取り出す。エドワード達の方へ向っ
         て。)おい、エドワード!ルイ!(ドレスを見せて。)ど
         うだ!?」
  ルイ「(笑って。)よく似合うぜ!」
  アンソニー「馬鹿野郎!!エドワード?」
  エドワード「(チラッと目を遣って。)いいんじゃないか・・・」
  アンソニー「何だ、気のない返事だな。(ドレスを見て。)よし、こ
         れを貰うとしよう。(ピエールの方へドレスを差し出す
         。)」
  ピエール「ありがとうございます。」
  アンソニー「他に、これに合うアクセサリーと靴を・・・。飛びっきり
         の品を!」
  ピエール「(嬉しそうに。)はいはい、只今!!」
  シャロン「伯爵様・・・そのドレス、如何なさるお積りですの?」
  アンソニー「(微笑んで。)・・・ある人に・・・」

         “まぁ!!””キャーッ!!”など、口々に
         驚きの声を上げる娘達を残して、紗幕閉まる。

  ステラ「ある人にですって!!」
  シャロン「一体誰に差し上げるのかしら!?」
  クレナ「屹度、パートナーに選ばれた女性に贈られるのよ!!」
  ミレーヌ「もうお心に決めたお方がいらっしゃるのかしら!?」
  エリーズ「お心に決めた!?」
  皆「一体誰!?(お互いの顔を見回す。)」

         音楽で暗転。

    ――――― 第 11 場 ―――――

         下手方スポットに、ジェラール、ミハエル、
         ルドルフ浮かび上がる。

  ミハエル「先生、次の村にはあいつらはいるんでしょうかね?」
  ルドルフ「足取りが分からなくなって、もう3週間・・・。あんなに
        深い傷を負っていた筈なのに、こんな遠くまで本当に
        逃げて来てるのかなぁ・・・」
  ジェラール「羽ばたきの遠ざかった方向から、こちらの方へ逃げ
         て来たのは間違いない筈・・・」
  ミハエル「羽ばたき・・・って、先生、変なこと言うんですね。(笑う
        。)」
  ジェラール「早く見つけなければ・・・。そしてこの手で決着をつけ
         なければ・・・。」
  ルドルフ「決着って・・・?」
  ジェラール「私が生きているうちに・・・」
  ミハエル「先生・・・」
  ジェラール「(2人をゆっくり交互に見ながら。)おまえ達は知って
         いるか・・・?トランシルバニアに伝わる、昔からの奇
         話を・・・」
  ミハエル「奇話って・・・?」
  ジェラール「今から数百年昔・・・その地方に絶世の美女と謳わ
         れた舞姫がいた・・・。その舞姫を巡って、幾多の男
         性達が、何度無意味な争いを繰り返そうとも、誰一
         人として、舞姫の心を射止めることはできなかった
         ・・・。そんなある時・・・一人の世にも稀な美男子と
         囁かれる伯爵が現れ、2人は忽ちそのお互いの美し
         さに惹かれ、恋に落ちた・・・。今までどんなに手を尽
         くしても決して心を開くことのなかった舞姫を、たった
         一目で我が者にしてしまった伯爵は、人々の反感を
         一手に引き受けることになり、数日後、誰とも分から
         ない者の手によって・・・その命を殺められてしまった
         んだ・・・。それを知った舞姫の悲しみは尋常ではなく
         、誰がどんな慰めの言葉を掛けようとも、彼女は決し
         て泣き縋ったその体から離れようとせず、とうとう明
         日は埋葬と言う前の日の晩、遅く・・・その伯爵の体
         の上で、自らの命を短剣で胸深く突き刺し、絶ってし
         まったのだ・・・。あくる朝、その惨状を見た人々の驚
         きようは、言葉では言い表せない程だったそうだ・・・。
         何故なら、その場には、前の日まで静かに眠ってい
         た伯爵の遺体はなく、自害した舞姫の亡骸だけが、
         静かに横たわっていたから・・・。そして、その舞姫の
         様子は、悲しみに暮れてはいても、昨日までの美しく
         輝いていた姿とは打って変って、体中の血液と言う
         血液が流れ出たでもなく、全て吸い尽くされでもした
         ように、丸で・・・干物のようになっていたと言うことだ
         ・・・。」
  ルドルフ「(顔を強張らせて。)・・・それで・・・その伯爵は・・・?」
  ジェラール「未だ嘗て分からない・・・」
  ミハエル「・・・けど・・・今の話しと・・・先生が奴らを追い続けてい
        ることと、何の関係が・・・?」
  ジェラール「何れ、おまえ達にも分かる時が来る・・・。何れ・・・」

         ジェラール、ミハエル、ルドルフ、フェード・アウト。
         入れ代るように、上手、アンソニー、エドワード、
         ルイ、フェード・イン。

  エドワード「(溜め息を吐いて。)アンソニー・・・余計な好奇心は
         出すなと言ってあっただろう・・・。こんなことは言いた
         くはないが、おまえ・・・あの娘に入れ込み過ぎじゃな
         いのか・・・?あんなドレスまで・・・。」
  ルイ「そうそう、あの後の村の娘達の騒ぎようったらなかったぜ
     。“あのドレスをどう為さるおつもりかしら!!”って。(笑う。
     )」
  エドワード「ルイ!!」
  アンソニー「彼女は俺のことを、天使のようだと言ったんだ・・・。」
  ルイ「(笑って。)天使?堕天使の間違いだろ?」

         アンソニー、ルイを一瞬見据える。

  ルイ「(ハッとして。)・・・ごめん・・・」
  エドワード「兎に角だ・・・。もう直ぐこの村へやって来て一月・・・
         奴らが追い付いて来ても、可笑しくない頃だ・・・。」
  アンソニー「分かっている・・・。長の滞在は命取りになることを
         ・・・。だが、俺は彼女を一人にすることが出来ない
         !!」
  ルイ「じゃあ、いっそのこと、仲間にしてしまえば?」
  エドワード「ルイ・・・軽々しくそう言うことを言うな・・・。幾等、仲
         間に入れたくても・・・彼女がそう望んだとしても・・・
         彼女の体が拒絶すれば、彼女はこの世の塵となり、
         消滅するんだ・・・。」
  ルイ「・・・ごめん・・・。確率は五分五分・・・か・・・。じゃあ、俺達
     は運が良かったんだな。(笑う。)」
  エドワード「・・・そう言うことだ・・・。」
  アンソニー「・・・一人がどう言うことか・・・。一人でずっといなけ
         ればならないことが、どんなに苦しいことか・・・俺に
         は・・・よく分かるんだ・・・。」
  エドワード「・・・アンソニー・・・」

         フェード・アウト。

    ――――― 第 12 場 ―――――

         豪華な音楽が流れてくる中、紗幕開く。
         と、舞台はエドモン邸。
         美しく着飾った男女、音楽に乗ってワルツを
         踊る。

  エリーズ「結局、伯爵様があのドレスをどう為さったか、分から
        ず仕舞いね。」
  ミレーヌ「本当!けれど見たところ、村の娘にプレゼントしたん
       じゃないってことは事実のようね。だって誰も、あの豪華
       な絹のドレスを身に纏っている者はいないんだもの。」
  シャロン「がっかりだわ・・・。」
  エリーズ「でも、この中の誰かがそのドレスを着て、伯爵様とワ
        ルツを踊っているのを見るよりはいいわ!」
  シャロン「そうね!もしそんな光景を見なくちゃならないのなら、
        私、屹度ショックで倒れてしまうわ!!」
  オードリー「(3人の側へ。)皆さん、何のお話し?」
  エリーズ「(オードリーに気付いて。)あら、オードリー。」
  ミレーヌ「いえね・・・伯爵様がお求めになったドレスの行き先は、
       何処なのかって・・・。」
  オードリー「そうねぇ・・・まさか・・・」
  ミレーヌ「え?」
  オードリー「まさかシャンドール家の誰かに・・・!?」
  シャロン「ああ、それなら大丈夫。さっき3人には会ったけれど、
        誰もあの豪華絢爛な衣装を身に着けた者はいなかっ
        たわ。」
  オードリー「(ホッとして。)そう・・・。で、当の伯爵様は?」
  エリーズ「それがまだお見えになってらっしゃらないみたい。」

         そこへ奥よりエリザベート登場。
         オードリー、逸早くエリザベートを認め、
         ドレスをたくしあげ駆け寄る。

  オードリー「エリザベート!!伯爵様は!?」
  エリザベート「あら、オードリー。それがここへ来る前、私が部屋
          へお迎えに上がった時には、もういらっしゃらなくて
          ・・・」
  オードリー「いらっしゃらない?そんな筈ないでしょ!?今日は
         伯爵様の歓迎パーティなのよ!?主役がいなくちゃ
         話しにならないじゃない・・・。」
  マルガリーテ「(オードリーの側に来て。)まぁまぁ・・・もっと落ち
           着きなさい、オードリー。」
  オードリー「(振り返ってマルガリーテを認める。)お母様・・・」
  エリザベート「今日の舞踏会を忘れる筈はないし・・・」

         その時、入口に正装したアンソニー、リーザを
         エスコートして現われる。2人の後ろに、
         エドワードとルイ立つ。リーザはアンソニーが
         洋品店で求めた豪華なドレスに身を包み、
         頬は興奮の為に少し紅潮している。嬉しそうに
         見回すリーザに、優しく微笑みかけるアンソニー。
         中にいた者、踊っていた者は止めて、アンソニー
         達を認め、一様に驚きの声を上げ、釘付けに
         なる。
         その人々の騒めきに気付いたエリザベート、
         オードリー達もその方を見、アンソニー達を
         認めただ驚く。

  オードリー「・・・伯爵様・・・」
  エリザベート「・・・リーザ・・・」
  オードリー「(エリザベートの体を揺する。)な・・・何よ・・・誰・・・?
         あの女・・・。」
  マルガリーテ「・・・確か・・・シャンドール家の亡くなった奥様の
           一人娘だった・・・」
  オードリー「え!?」

         クレナ、ステラ、エリザベートに駆け寄る。

  クレナ、ステラ「お姉様!!」

         エリザベート、凄い形相でその方を見据え、
         足早に立ち去る。
         クレナ、ステラ、慌てて後を追う。

  クレナ、ステラ「お姉様、待って!!」

         オードリー、アンソニー達の方を気にしながら、
         エリザベートを追うように去る。
         エドモン、ヴィクトリア、アンソニー達に近寄る。













       ――――― “アンソニー”6へつづく ―――――












    ※ 今の私なら、「100年前」と書いていたでしょうね^^;
      それで、アンソニー達の過去と、リンクさせる物語にして
      いると思います(^^)





 ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪


    (おまけフォト^^;)

   

   明日公演の舞台を、組み立てて来ました(^^)v
   今回は、図書室をお借りして“人形劇”教室なるものを開催
   するのですが・・・子ども達には公演以外では、お人形の
   動かし方などを見てもらおうと思っています(^.^)
   
   あまり分からないかもしれないですが、毎回舞台の大きさが
   実は違うのです^_^;パイプの長さが違うのに、どこの個所
   ででも使用可能な為なのですが、今回は“図書室”と言うこと
   もあって、比較的小ぶりな仕上がりになっています(^^)v
  
   皆さん、ご存じの通り、明日は“エリオット”くん作品を公演し
   ます(^.^)前回、春公演時には、エリオットくん作品の後に、
   キャシー作品が付いていたので、キャシーの終わりが、気持
   ち明るく終わっているので、エリオットくんが地味目に終わっ
   ても、「ま、いっか・・・^^;」と、考えていたのですが、今回は
   エリオットくん作品オンリーになる為、明るく終わりたいと思い、
   ラストの場面は作り変えました(^^)v
   明るいエリオットくんの歌で終わる最終場、またご紹介致しま
   すね♥
   
  

   【1月21日】

   ボランティア公演、無事終了致しました(^^)v
   “公演日記”のページ公開前に、まず、グーグル版“ワールド”
   に、今日撮りたてのビデオより、ラストの変更部分を載せて
   みましたので、またご覧ください♥



                           全身筋肉痛のどら。











http://milky.geocities.jp/little_pine2012/performance.html

          http://ritorupain.blogspot.com/

      http://blogs.yahoo.co.jp/dorapontaaponta
 






“アンソニー” ―全16場― 4

2012年01月19日 20時51分59秒 | 未発表脚本


         アンソニー、歌いながらリーザの側へ。そっと
         リーザの手を取る。リーザ、アンソニーに導か
         れるように立ち上がり、嬉しそうにアンソニーを
         見詰める。アンソニー、リーザの手を引いて、
         前方へ。紗幕閉まる。

         “空がどんなに青いのか・・・
         海がどんなに広いのか・・・
         風はどんな風に戦ぐとか・・・
         陽はどんな風に降り注ぎ・・・
         小鳥達は何を囀り合うのか・・・
         ただ当たり前のことを
         ただ何時も見聞きしていることを
         僕の肌で感じ
         僕の心で見・・・
         感動し・・・心動かされ・・・
         生きていることが素晴らしいと
         この思いを君にも・・・

         朝陽が昇り・・・朝露が弾け・・・
         木漏れ日が暖かく・・・
         人々の騒めき・・・喜び・・・
         笑い声・・・
         月が昇り・・・星が降り注ぎ
         辺りが闇に包まれても・・・
         僕の肌で感じ・・・
         心動かされ・・・
         生きていることが素晴らしいと
         この思いを君にも・・・”

         見詰め合うアンソニーとリーザ。暗転。

    ――――― 第 8 場 ―――――

         音楽で、紗幕開く。と、舞台は村の風景。
         村人達、楽し気に歌い踊る。
         決めのポーズで其々、散り散りになり、話し
         込んでいたり、仕事をしていたり。
         下手より、ゆっくりアンソニー、エリザベート
         並んで登場。
         一寸遅れてルイ、続いて深く帽子を被った
         エドワード登場。

  アンソニー「外へ出るのは、怪我して以来、今日が初めてだが、
         この村は本当に綺麗な所ですね・・・。こうして歩いて
         いるだけで、心が洗われるようです・・・。」
  エリザベート「傷にも屹度、いいと思いますわ。」
  アンソニー「そうですね。もし、世の中に自分はこの直ぐ側にい
         るにもかかわらず、この美しい風景を知らずに生き
         ていかなければならない人がいるとすれば、それは
         本当に不幸なことです・・・。」
  エリザベート「え・・・?(一瞬、驚いた面持ちをする。)」
  アンソニー「(そのエリザベートの様子に気付きながら、知らん
         顔で振り向く。)エドワード、おまえも外に出るのは久
         しぶりだろ?気持ちいいと思わないか?」
  エドワード「・・・俺は太陽は、どうも苦手だ・・・。」
  アンソニー「(笑って。)変わった奴だな。こんな気持ちのいい陽
         射しが、苦手だなんて・・・。」
  ルイ「(笑って。)どっちが・・・」
  エドワード「おまえ達は健康的だからな・・・。」

         戯れていた娘達、アンソニー達に気付いて
         素早く近寄る。

  エリーズ「こんにちは、エリザベート!!」
  エリザベート「こんにちは、みなさん。」

         みんな、エリザベートと挨拶を交わしながら、
         目はアンソニーをチラチラ盗み見している。

  ミレーヌ「そちらが、お噂の・・・」
  エリザベート「ええ。ご紹介します。こちら我が家の大切なお客
          様で、アンソニー・ヴェルヌ伯爵。お隣はお友達の
          エドワード様、ルイ様・・・。」
  アンソニー「(微笑んで。)初めまして。(手を差し出す。)」
  
         娘達、順番に嬉しそうに手を出して、握手を
         しながら、挨拶を交わす。

  シャロン「お散歩ですか?」
  アンソニー「ええ。こんないい天気の日に、家にばかり籠もって
         いるのは余りに勿体なく、エリザベートに村を案内し
         てもらっていたのです。(傍らに咲いている花々に目
         を遣って。)ほら・・・外へ出れば、こんなに綺麗な花
         々が咲き乱れている・・・。」

         娘達、その方へチラッと目を遣るが、直ぐに
         アンソニーの回りに戯れる。

  エリーズ「伯爵様はどちらからお越しになられましたの?」
  ミレーヌ「お年は?」
  シャロン「どう言ったご旅行で、この村へ?」
  リチャード「(娘達の背後から。)いつまでご滞在なさいますの?
         」

         娘達、リチャードに気付いて振り返る。

  ミレーヌ「リチャード!!(怒ったように。)」

         リチャード、肩を窄めてその場から離れる。

  エリザベート「(慌てたように。)ちょっと、みなさん!!そんなに
          一度に質問して、アンソニーを困らせないで下さい
          な!!」
  アンソニー「(取って付けたように笑う。)ハハハ・・・困ったな・・・
         。」
  エリザベート「ほら、ご覧なさい!!」
  アンソニー「(微笑んで。)さて・・・何から答えればよかったかな
         ?」
  ルイ「(笑ってアンソニーの耳元で。)年だよ。」
  アンソニー「(一瞬、瞳を輝かせて。)そう・・・年は・・・424歳・・・
         。」
  エドワード「アンソニー!!」

         娘達、一瞬呆然とアンソニーを見詰めるが、
         直ぐにお互い顔を見合わせて笑う。

  シャロン「いやだわ、伯爵様!」
  エリーズ「ご冗談ばっかり!」
  ミレーヌ「424・・・24歳ね?そうでしょ?」
  アンソニー「(笑って。)当たりです。次は・・・」
  シャロン「どこからお越しになったの?」
  アンソニー「ヨーロッパの外れ・・・トランシルヴァ二アからです。
         この旅行は、(エドワードの肩に手を置いて。)こい
         つの傷心旅行なんですよ。愛しい人に振られた・・・。
         」
  エドワード「(驚いて。)アンソニー!!おまえ・・・」
  ルイ「(大声で笑う。)」
  ミレーヌ「まぁ、そうですの・・・」
  エリーズ「お可哀相に・・・。けれどエドワード様も、伯爵様とは
        何れ劣らぬ美男子でいらっしゃるから、また直ぐに、
        いい人が現れますわ。」
  ミレーヌ「そうそう。それに、もう少し愛想よく為さると、もっと宜し
       いんじゃないかしら。」
  ルイ「(再び声を上げて笑う。)」
  エドワード「(少し照れたように。)・・・それは、ご忠告をどうも・・・
         。」
  アンソニー「(笑って。)良かったな、自分の欠点を知ることがで
         きて。」
  エドワード「(アンソニーをチラッと睨む。)」

         そこへ下手より、エドモン、ヴィクトリア、
         従者ハンスを従えて登場。

  フィリップ「(エドモン達に気付いて。)エドモン様。」
  エドモン「やぁ・・・よい天気だね。」

         他の者達も、エドモン達に気付く。

  シャロン「エドモン様、奥様、こんにちは!」
  ヴィクトリア「みなさん、こんにちは。」

         みんな其々エドモン、ヴィクトリアと挨拶の
         言葉を交わす。

  エリザベート「(エドモンの前へ進み出て。)こんにちは、エドモン
          様。ご紹介致しますわ。(振り向いて、アンソニー達
          の方を指示して。)こちら、我が家のお客様で、アン
          ソニー・ヴェルヌ伯爵とご友人のエドワード様とルイ
          様です。(アンソニーの方を向いて。)伯爵様、こち
          らは弁護士のエドモン様と、その奥様・・・。」
  エドモン「おお。ではこちらがこの間話していた・・・」
  アンソニー「初めまして。」
  ヴィクトリア「お噂はかねがねお聞きしていましたわ。ぜひ、お目
         にかかりたいと、主人とも申しておりましたの。」
  アンソニー「(微笑んで。)それは大変光栄です、奥様・・・。(ヴィ
         クトリアの手を取って、口付ける。)」
  エドモン「それで、この村には何時まで?」
  アンソニー「はい。傷の方はシャンドール家の方々の手厚い看
         護によって、もう殆ど完治していますので、立てと言
         われたなら、今直ぐにでも出発できるまでになって
         います。」
  エリザベート「(慌てて。)まだ駄目ですわ!!今、無理を為さっ
          て、折角治り掛けている傷が、また悪化するとも限
          りません!!」
  アンソニー「(微笑んで。)ただ、僕はこの村がとても気に入りま
         してね。シャンドール家の迷惑でなければ、もう暫く
         置いてもらおうかと考えている所なんです。」
  エリザベート「ええ!!もう全然・・・迷惑だなんてとんでもない
          !!何時までもゆっくりしていらして結構ですのよ
          !!」
  エドモン「それならば、ぜひ歓迎の舞踏会でも盛大に開かなけ
        ればいけないな。」
  ヴィクトリア「そうですわね。」
  エドモン「では、仕事が一段落する次の日曜日にでも、我が家
        で久々の舞踏会を催すとしよう。如何かね?アンソニ
        ーくん。」
  アンソニー「そう言うことなら、勿論喜んでお伺いしますよ。」
  ヴィクトリア「まぁ、良かったこと。日曜日が楽しみですわね。」

         娘達、歓喜の声を上げる。
         暗転。
         
    ――――― 第 9 場 ―――――

         フェード・インする。と、絵紗前。リーザの部屋。
         窓から遠くを見遣るように立ち、呟くように歌う
         リーザ。

         “森が呼んでる・・・風を戦がせて・・・
         小鳥が囁く・・・早くおいでと・・・
         花は何故咲くの・・・?
         何時かは散りゆくのに・・・
         その見事なまでの輝きを
         あなたに見せる為・・・
         あなたに微笑んでもらう為に・・・
         ほんの一瞬の時を大切に生きたい・・・”

         奥より、ガウンを持ってクララ登場。

  クララ「(驚いて。)お嬢様!ベットから起き上がられたりしたら、
      お体によくありません。さ、早くお戻りになって下さい!」
  リーザ「(微笑んで。)大丈夫よ、クララ。心配しなくても・・・。何故
      だか分からないけれど、ここ数日はすっかり病気が良くな
      ったかのように、調子がいいの。」
  クララ「でも・・・もし、また以前のようにお倒れになられたら・・・
      (心配そうに。)」
  リーザ「ありがとう・・・。そうね・・・、じゃあベットに戻ります。」

         リーザ、ベットに横になる。クララ、ベットの
         横の台の上から、薬とコップを手に取り、
         リーザへ差し出す。

  クララ「さ、お薬を飲んで下さい・・・。」

         リーザ、クララから薬とコップを受け取り、
         それを飲み、コップを再びクララへ手渡す。

  クララ「それでは、ちゃんとお休みになってて下さいましね。」

         クララ、扉の方へ進む。

  リーザ「クララ・・・」
  クララ「はい?(振り向く。)」
  リーザ「・・・お父様・・・お母様や・・・エリザベート達は、如何して
      いらっしゃる?」
  クララ「あの・・・(困ったような面持ちで。)ご主人様と奥様は、ま
      だ・・・ご旅行中です・・・。エリザベート様達は・・・その・・・
      リーザお嬢様のご心配をしていらってしゃいました・・・。あ
      の・・・ご心配を・・・(言葉に詰まる。)」
  リーザ「クララ・・・、いいのよ。分かってるわ・・・。ごめんなさいね。
      あなたを困らせるようなことを聞いてしまって・・・。」
  クララ「お嬢様・・・すみません!!(頭を下げて、素早く去る。)」

         一時置いて、鳥の羽ばたく音が聞こえる。
         リーザ、一瞬テラスの方へ顔を向けるが、
         直ぐ横の台の上から一冊の本を取り、膝の
         上へ置き目を遣る。
         そこへテラスより、アンソニー登場。

  アンソニー「(微笑みながら、リーザの方へ近寄る。)こんにちは
         。」
  リーザ「(アンソニーを認めて、嬉しそうに微笑む。)アンソニー
      !!何処から来られたの!?」
  アンソニー「空から・・・。」
  リーザ「(クスクス笑って。)あなたって変わった所から、いらっ
      しゃるのね。」
  アンソニー「何せ秘密の訪問だからね。(笑う。)」
  リーザ「ごめんなさい・・・」
  アンソニー「何も謝ることはない・・・。僕が自分で来たいと思っ
         たから来たんだから・・・。あ、プレゼントがあるんだ。
         (手に持っていた小さな花束を、リーザの方へ差し出
         す。)」
  リーザ「(花を受け取って、溜め息を吐く。)・・・まぁ・・・何て綺麗
      な花なの・・・?ありがとう、アンソニー・・・。(嬉しそうに、
      花を愛でる。)」
  アンソニー「(そのリーザの様子を微笑ましく見詰めながら、ベッ
         トの傍らへ腰を下ろす。)今は春・・・外にはこんな美
         しい花々が、山のように咲いているんだ。」
  リーザ「そう・・・。屹度素敵でしょうね・・・。」
  アンソニー「ああ、素敵だよ!!(思わずリーザの手を握る。)一
         緒に行こう!!」
  リーザ「・・・一緒に行ける・・・?」
  アンソニー「ああ、行けるよ!!」
  リーザ「本当に・・・?」
  アンソニー「ああ、本当だとも!!」
  リーザ「(微笑んで。)あなたに言われると、どんなことも叶えら
      れるような気がするから不思議ね・・・。」
  アンソニー「必ず叶うんだ。不思議じゃないさ!そうだ!その証
         拠に、先ずは今度の日曜日にエドモン邸で行われる
         舞踏会に、君を連れて行ってあげよう!」
  リーザ「(呆然と。)・・・舞踏会・・・?」
  アンソニー「そう、我々の歓迎パーティを開いてくれるそうだ。そ
         こには村中の連中が集まることだろう。」
  リーザ「・・・でも・・・!」
  アンソニー「どうした?体のことなら、心配する必要はない。」
  リーザ「私・・・今まで一度も舞踏会なんて・・・(俯く。)」
  アンソニー「僕が一緒なんだ。大丈夫・・・君をエスコートするか
         ら・・・。」
  リーザ「(ゆっくり顔を上げて、アンソニーを見詰める。)ずっと・・・
      側にいてくれる・・・?」
  アンソニー「(微笑んで。)ああ・・・」
  リーザ「(嬉しそうに頷く。)」
  アンソニー「決まりだ!!」
  リーザ「舞踏会なんて本で読んだことしかなくって・・・。今まで私
      には御伽の国の話しだった・・・。まさか、その舞踏会に、
      私も行けるなんて・・・。(溜め息を吐く。)夢みたいだわ・・・
      。」
  アンソニー「舞踏会では、男性は紳士然と、その日ばかりは美
         しく着飾ったご婦人方をエスコートするんだ・・・。それ
         は何時の世も変わりはしない・・・。豪華な音楽と煌び
         やかな人々・・・。」
  リーザ「美しく・・・着飾ったご婦人方・・・?」
  アンソニー「ああ・・・。(笑って。)それはそれは皆、普段とは全く
         別人のような変わりようさ。」
  リーザ「・・・私・・・(下を向く。)」
  アンソニー「何だい?」
  リーザ「・・・折角のお気持は嬉しいけれど・・・私・・・やっぱり行
      けない・・・。」
  アンソニー「(驚いて。)如何して!?」
  リーザ「(悲しそうに微笑む。)あなたもご存じでしょう?私は一
      度もこの部屋から出たことがない・・・って・・・。
  アンソニー「・・・ああ・・・」
  リーザ「他のご婦人方のように、美しく着飾れるようなものは、何
      も持っていないんです・・・。(自分の身に着けている、ナイ
      トウエアを見て。)こんな格好で・・・貴公子のあなたにエス
      コートされるなんて出来ないでしょう・・・。」
  アンソニー「(ホッとしたように微笑む。)・・・何だ・・・そんなこと・・
         ・。」
  リーザ「そんなことじゃないわ・・・。あなたにとっては些細なこと
      でも、私には・・・!」
  アンソニー「すまない・・・そんなつもりで言ったんじゃないんだ。
         君は何も心配しないで、日曜日を楽しみにしておい
         で・・・。」
  リーザ「・・・アンソニー・・・」
  アンソニー「僕に任せて・・・」

         手を取り、見詰め合うアンソニーとリーザ。
         音楽で暗転。            
    

        
   








       ――――― “アンソニー”5へつづく ―――――










 ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪


     (どら余談^^;)

     今日は、グーグル版“ワールド”に、エリィちゃん2幕の
     途中動画を少し載せてみました(^^♪
     
     以前お話ししたと思いますが、とっても歌うのが苦しかった
     この場面、今現在もっと高度になっている歌なので・・・今、
     歌えば、もう少しマシに歌えるかもしれません^_^;









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“チュー吉くんの君は友だち・・・” ―全7場― 完結編

2012年01月17日 19時56分11秒 | 新作(人形劇用)


  ネリー「さぁ、涙のご対面は終わりだよ。」
  大人ネズミ「誰かいるのか・・・?(ネリーは見えない風に。)」
  ネリー「あんた達を道案内して、この部屋まで連れて来てやった
      。私の仕事は終わりだよ。次はあんた達が、私に礼をす
      る番だからね・・・。」
  大人ネズミ「(ネリーに気付いて。)イタチじゃないか!!チュー
         介!!早く友達と逃げるんだ!!」
  チュー介「父ちゃん・・・?」
  大人ネズミ「イタチはそんな小さい体をしているが、凶暴な肉食
         獣だぞ!!」
  チュー吉「肉食・・・?」
  大人ネズミ「俺達みたいなネズミは、ひとたまりもないんだ!!
         だから早く・・・!!」
  ネリー「あーら・・・そんなカゴの中から、この子達に余計な忠告
      をありがとう。けど、約束だからね!!“それなりのお礼”
      !!私は危険を冒してここまで付いて来てやったんだ!
      !だから、あんた達も私の為に、私のこの空腹を満たして
      頂戴!!」
  チュー吉「え・・・?」
  おとなネズミ「早く逃げろ!!」

         緊迫した音楽流れる。
         ネリー、チュー吉とチュー介を追い掛ける。
         チュー吉、チュー介悲鳴を上げて逃げ回る。

  チュー吉「わあーっ!!」
  チュー介「助けてーっ!!」
  チュー吉「助けてーっ!!」
  大人ネズミ「チュー介!!チュー介ーっ!!」

         大人ネズミ、カゴを両手でガタガタ揺らす。
         と、その時上手よりジ―クとカーク登場。

  カーク「何だか騒がしいなぁ・・・」
  ジーク「えらくカゴの中の奴、暴れてるみたいだけど・・・。」
  カーク「え・・・?」
  ジーク「父さんに見つかったら大変だぞ。」
  カーク「うん。(カゴを見て。)おい!おまえ、何を騒いでんだよ。
      ガタガタ揺らして大きな音出してたら、父さんに見つかっ
      てしまうだろ!?」
  ジーク「おい、カーク・・・(走り回っているネリーと子ネズミに気
      付く。)あ・・・!!イタチとネズミ・・・!!」
  カーク「え・・・?あ・・・こいつ!!僕のネズミを襲いに来たんだ
      な!!」
  ジーク「カーク!!そっちから回れ!!」
  カーク「うん!!」

         ジークとカーク、両方から挟むようにネリー
         を、横にあったカゴで捕まえる。

  ジーク「やった!!」

  ネリー「あっ!!キャーッ!!何すんのよ!!出して・・・出して
      よーっ!!」

  カーク「捕まえたぞっ!!」
          
  チュー吉「ああー・・・助かった・・・」
  チュー介「よかった・・・」
  チュー吉「命拾いしたな・・・。」
  大人ネズミ「チュー介・・・(ホッとしたように座り込む。)」

         その時、上手より、ジークとカークの父親登場。

  父親「おい、ジ―ク、カーク!何を騒いでいるんだ?ルークとル
     ータが起きるだろ?」
  ジ―ク「あ・・・父さん、それが・・・」
  カーク「イタチが部屋に・・・」
  父親「イタチ・・・!?」
  カーク「うん。」
  父親「どうしてイタチが・・・(カゴの中のネズミに気付く。)・・・こ
     のネズミ・・・カーク!!おまえ、この間父さんに、このネズ
     ミは逃げたって言ったんじゃないか!?どうして、それが
     ここにいるんだ!!」
  カーク「それは・・・」
  父親「おまえは父さんに嘘を吐いて、自分の部屋でネズミを飼っ
     てたのか!?だからそのネズミを狙って、イタチが入り込ん
     だんだな!!何て奴だ!!父さんに嘘を吐いた罰は大き
     いぞ!!」
  カーク「ごめんなさい、父さん・・・」
  父親「このネズミは、今直ぐに処分だ!!いいな!!」
  カーク「えーん・・・!!(泣く。)」
  ジ―ク「(チュー吉、チュー介に気付いて。)待って、父さん!!」
  父親「ん?何だ、ジ―ク。」
  ジ―ク「このネズミは、逃がしてあげて!!」
  父親「逃がす・・・!?」
  ジ―ク「お願いだよ、父さん!!」
  父親「何を言ってるんだ!!このネズミは蔵の米を・・・」
  ジ―ク「違うよ!!屹度、蔵の米袋を破いてたのは、このイタチ
       だよ!!」

  ネリー「え・・・!?え・・・!!ち・・・違うわ!!」

  ジ―ク「だから父さん!!このネズミは逃がしてあげて!!屹
       度、このネズミは・・・あそこにいる子ネズミ達の父さん
       なんだよ・・・。」
  父親「何だと?」

         (父親、カーク、下手端で、恐々様子を見ていた
         チュー吉、チュー介を認める。)

  ジ―ク「屹度・・・捕まった父さんネズミを捜しに来たんだよ・・・。
      だから・・・だから逃がしてあげようよ!!」
  父親「しかし・・・」
  ジ―ク「それに、イタチを捕まえたじゃない!!イタチなら、その
      うち毛皮を売って、お金にもなるし!!ネズミを飼ってたっ
      て・・・勿論、殺して皮を剥いだって1円の得にもならない
      じゃないか!!だから・・・な!!カークもネズミは諦めろ
      !!その変わり、父さんにイタチを飼いたいって頼むんだ
      !!ほら!!(カークの頭を押さえる。)お願いします、父
      さん!!」
  カーク「(泣き声で。)お願いします・・・父さん・・・」
  父親「・・・(溜め息を吐いて。)仕方ない・・・。そんなに言うなら、
     あの子ネズミ達に父親は返してやれ・・・。」
  ジ―ク「父さん!!ありがとう!!」
  カーク「ありがとう・・・」

         ジ―ク、カゴの扉の柵を開けてやる。と、
         大人ネズミ、大急ぎでカゴの中から走り出、
         チュー介の側へ。

  チュー介「父ちゃん!!」
  大人ネズミ「チュー介!!」
  チュー吉「よかったね。」
  チュー介「うん!!ありがとう、チュー吉くん!!」
  大人ネズミ「さぁ、帰ろう!!」

         大人ネズミ、チュー介下手へ走り去る。
         チュー吉、続いて行こうとするが、ふと振り返り
         ジ―クを見詰める。
         (一瞬の間、ジ―ク、チュー吉見詰め合う。)
         チュー吉、下手へ走り去る。

  ネリー「ちょ・・・ちょっと、待ってよ!!私はどうなるのよーっ!
      !」

  父親「(カゴの中に捕まっていたネリーを見る。)いい毛皮だな
     ぁ・・・。思わぬ収穫だ。(笑う。)」

  ネリー「助けてーっ!!」

         紗幕閉まる。

    ――――― 第 7 場 ―――――

         紗幕前。
  
  チュー介の声「父さーん!!行って来まーす!!」

         下手より、チュー介登場。

  チュー吉の声「母さーん!!行って来まーす!!」

         上手より、チュー吉登場。
         チュー吉、チュー介お互いを認め、駆け寄る。

  チュー吉「おはよう!!」
  チュー介「おはよう!!」
  チュー吉「行こう!!(笑う。)」
  チュー介「うん!!(笑う。)」

         2人、楽しそうに上手へ走り去る。
         音楽流れ、鐘の音が響く。(“キーンコーン”
         “カーンコーン”)
         紗幕開く。と、学校の教室。
         沢山の子ネズミ達、元気に歌っている。

         “ここは僕達ネズミの学校
         みんなが仲良く みんなが友達
         誰も悪いことしない
         みんなで楽しく暮らしてる
         ここは僕達ネズミだけの国
         みんな仲間で気心知れてる
         だから安心ここにいれば
         何も危険なことなんてない!!”

         その時、上手よりチュー吉、チュー介
         走り登場。

  チュー吉、チュー介「おはようございまーす!!」
  チュー子先生「これ、チュー吉くん!!チュー介くん!!2人揃っ
           て今日も遅刻ですよ!!いくら仲がいいからって、
           悪いところまで真似することないでしょう。(溜め息
           を吐く。)」
  チュー吉、チュー介「ごめんなさい。(笑う。)」

         “ここは僕達ネズミの大国
         たとえ何があっても仲間なんだ
         力を合わせて立ち向かえば
         乗り越えられない壁はない
         ここは僕達ネズミだけの国
         君と僕との出会いの場所
         みんなが誰かの為を思う
         そんな小さな大切な心
         そんな心の輪を広げよう”

         チュー介、他の子ネズミ達と楽しそうに
         ふざけ合っている。
         それを嬉しそうに見詰めるチュー吉。

  チュー吉「これがチュー介と僕が友達になれた経緯なんだ。今
        では無二の親友のチュー介と僕は、学校でも沢山の
        友達と一緒に、楽しく学校生活を送っている・・・筈だ
        ったんだけれど・・・そんなある時、楽しい筈の学校で、
        大変な事件が起きたんだ・・・!!ま、その話しはまた
        何れ・・・。どんな時も、友達は掛け替えのない宝物だ
        から・・・みんなも友達を大切にしてね!!さよなら!!
        」







           ――――― 幕 ―――――










     
     それでは次回掲載作品ですが、ここいらで少し息抜きを
    させて頂いて・・・^^;

    ずっと前に、まだ“リトルパイン”の影も形もない頃・・・一度
    だけ、訳あって今現在住んでいる地域外で、2年間程生活し
    ていたことがります(^.^)その時に、そこで出会った仲間達
    と一緒に、ある小学校の子ども達の為に、人形劇を一回、
    したことがあったのですが、初めて“人形劇用”として書いて
    公演した作品で、リトルパインの「未来への贈り物」の原作
    にもなった作品、タイトルは同じ「未来への贈り物」ですが、
    少しずつ設定が変わっている、私が“リトルパイン”を立ち
    上げようと考える切っ掛けになった作品、と言っても過言で
    はない、「未来への贈り物(“短編”と、付けさせて頂きます。
    )」をご紹介したいと思います(^^)v
    
   
    登場人物達の名前から、その私が住んでいた地域を知る
    ことができるのですが・・・みなさん、お分かりになりますで
    しょうか・・・^^;
    私の心の故郷と・・・勝手に呼んでいる、大好きな場所で
    あります♥
 

     
                                  どら。
  




 ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ 


   (どら余談^^;)

   グーグル版“ワールド”に、エリオットくんの動画を載せて
   みました(^.^)
   男の子の声は、最初難しいと感じていましたが、次回春公演
   のクリフくん辺りから、意外と男の子も向いているかも・・・と♥
   性格的に、熱いエリオットくんですが、動かし方の激しさと
   相俟って、なんとも元気な男の子です^^;



   (どら余談2^^;)

   今日は、グーグル版“ワールド”に、去年の区役所公演時の
   ドタバタビデオから、ラストの桜が舞う場面の動画を載せて
   みました^_^;
   公演日記でお話ししましたが、群がる子ども達・・・是非ご覧
   下さい(^_^;)焦る私達も、今なら笑って見ることができます^^;



    (おまけフォト^^;)
    

    今週末の小学校公演で、子ども達に配る“チラシ”
   を、初めて作ってみました^^;

   今まで、チラシ類の制作を一手に引き受けてくれて
   いた団員が、訳あって作る時間がなくなった為、
   必要に迫られて自分制作した訳ですが、最初こそ
   「難しい~!!」と叫びつつ、慣れてくると、色んな
   ことが段々と出来るようになるのが楽しくて・・・(^.^)
   
   人形制作や新作執筆、編集にプラスのお仕事に
   なりますが・・・頑張ります^_^;   










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“アンソニー” ―全16場― 3

2012年01月13日 20時21分47秒 | 未発表脚本


         エリザベート、オードリー、マルガリーテ座る。
         ステラ、クレナ側へ立つ。

  エリザベート「こちらは隣家のマルガリーテ小母様と・・・」
  オードリー「娘のオードリーですわ!」
  アンソニー「(微笑んで。)全くこの村のご婦人方は、皆さん素敵
         な方達ばかりだ・・・。あ・・・失礼・・・。僕はアンソニー
         ・ヴェルヌ・・・。この二人は友人のエドワードとルイ。
         ヨーロッパ全土を旅して回る途中で、今は皆さんご存
         じの、この通りですよ。」
  オードリー「(溜め息を吐いて。)本当に、お噂通りのお方ですの
         ね。」
  アンソニー「噂・・・?」
  オードリー「ええ、村中の噂ですのよ。シャンドール家に滞在為
         さってるお客人は、世にも稀な美男子だと・・・。」
  アンソニー「それは参ったなぁ・・・」
  エリザベート「元を辿れば、ステラとクレナが言い触らしたような
          ものですけど。」
  ステラ「あら、嫌だわお姉様。言い触らしただなんて。」
  クレナ「そうよ。ただ黙ってることが出来なかったのよ、嬉しくて。
      こんな素敵なお客様が、我が家にいることが!!」  
  オードリー「(アンソニーに近寄って、マジマジと見詰め。)けど、
         本当にクレナ達の気持ちが分かってよ・・・」
  マルガリーテ「これ、オードリー!はしたないですよ!!」
  オードリー「(ハッとして。)あら・・・ごめんなさい・・・。」
  アンソニー「(微笑んで。)構わないですよ。僕の方こそ、そんな
         風に思ってもらえて光栄です。」
  オードリー「(エドワードとルイを見て。)それにお友達の方も、
         何れ劣らぬ美男子・・・。本当に、家に来て下されば
         良かったのに!!」
  エリザベート「あら、駄目よ!!」
  エドワード「あの時は、一刻も早くアンソニーを休ませたかった
         もので、兎に角一番初めに目に付いた、この屋敷の
         ドアを叩いたのです。」
  アンソニー「本当に感謝していますよ、エリザベート・・・。本来な
         らば、楽しいだけの旅先で、怪我をするなどと、全く
         とんだ失態です。」
  エリザベート「でも回復が早くて、驚きましたわ。あの時は本当
          に今にも死にそうなご様子でしたから・・・」

         エドワード、ルイ、そっと顔を見合す。

  アンソニー「こう見えても僕は昔から、体力には自信がありまし
         たからね。(笑う。)」
  ルイ「(笑って。)そうそう!昔からこいつときたら、クラス中の奴
     らが風邪で休んだとしても、たった一人でピンピンしている
     ような男でしたよ。」
  マルガリーテ「学生時代からのお友達?大変仲がお宜しいのね
           。」
  アンソニー「ええ。腐れ縁と言う奴ですよ。」
  ルイ「酷いな。(笑う。)」
  アンソニー「(微笑んで)まぁ、冗談はさて置き、2人は僕にとって
         は大親友と言った所でしょうか・・・。(エリザベートと
         オードリーの方を向いて。)あなた方も?」
  エリザベート「私達は正しく腐れ縁・・・。即ち犬猿の間柄、あなた
          方のように、大親友だなんてとんでも・・・」
  オードリー「そもそも私達の仲の悪さは、お互いの両親から受け
         継いだみたいなものなんです。」
  マルガリーテ「まぁ、私達のせいにされちゃあ困るわ。」
  エリザベート「今日だって、呼びもしないのに、オードリーがどうし
          てもアンソニーに会いたいと無理矢理・・・」
  オードリー「無理矢理ですって!?見せびらかす為に呼んだの
         は誰よ!!」
  マルガリーテ「オードリー!」
  アンソニー「(微笑んで。)喧嘩をする程、仲が良いと言うでしょう
         。そう言う間柄程、お互い気付かないうちに、お互い
         を認め合っているものなんですよ。それで、知らず知
         らずのうちに、相手を必要としている・・・。良い関係
         だと思いますよ、とっても・・・。」
  エリザベート「今までオードリーのことは、そんな風に思ったこと
          ありませんけど、あなたに言われると、何だか本当
          にそんな気がしてきますわ・・・。」
  オードリー「本当・・・」
  ステラ「まぁ、アンソニーに言われると、意見まで合うのね。」
  アンソニー「(何か思いついたように。)そうだ!みんなで鬼ごっ
         こでもしましょう!」
  エドワード「アンソニー!!」
  アンソニー「(エドワードの声は耳に入っていないように。)じっと
         してばかりいると、体が鈍ってしまいそうですよ。」
  オードリー「でも傷は・・・」
  アンソニー「大丈夫!少しくらい運動した方が傷にもいいんです
         よ。さぁ、僕から鬼です!20数える間に、みんな逃
         げて下さいよ!!」

         オードリー、エリザベート、マルガリーテ、
         ステラ、クレナお互いの顔を見合わせる。

  エリザベート「それじゃあ・・・」

         5人、其々頷いて嬉しそうに声を上げて、
         散々に部屋から走り去る。

  アンソニー「(大きな声で。)1、2、3・・・さぁ、おまえ達も逃げろ
         よ!」
  エドワード「一体何考えてるんだ、おまえは・・・」
  アンソニー「こんな所に座って、うだうだ話すのは嫌なんだ。あ
         れこれ根掘り葉掘り自分のことを探られてるようで・・
         ・。学生時代からの腐れ縁とは、よく言ったな・・・。(
         笑う。)」
  エドワード「アンソニー・・・」
  アンソニー「19、20!!(エドワードに飛び掛かる。)摑まえた
         !!次はおまえが鬼だぞ!!来い、ルイ!!(部屋
         から走り去る。)」
  ルイ「OK!!(アンソニーに付いて、走り去る。大きな声で。)
     次はエドが鬼だ!!」
  エドワード「(呆然と2人が出て行ったドアを見ている。)・・・全く
         、仕方ないな・・・。けど、何で俺が・・・くそう!!」

         エドワード、ドアから走り去る。
         音楽でフェード・アウト。

    ――――― 第 7 場 ―――――

         フェード・インする。と、絵紗前。
         リーザの部屋。
         中央に設えたベットの上に、リーザ、腰を
         下ろしている。
         一寸離れてミシェル立つ。

  リーザ「それで、学校の方はどう・・・?」
  ミシェル「どうもこうも、姉さん。相変わらずベア先生ときたら、皆
       に受けないようなジョークばかり飛ばして、酷いもんさ!
       おまけに、笑わない者には、決まって他の奴より宿題が
       多いときたら、皆可笑しくなくても、笑うしかないだろ?
       全く、ベア先生の授業は、拷問にでもかけられてるみた
       いだよ。」
  リーザ「(楽しそうに笑う。)まぁ・・・それであなたは?」
  ミシェル「決まってるさ、皆より一番!!・・・宿題が多い生徒さ
       ・・・残念ながらね。」
  リーザ「あら、でも皆より沢山、勉強が出来るんだもの、先生に
      感謝しなくちゃね。」
  ミシェル「冗談言ってら。それより、体の調子はどう?発作は?」
  リーザ「ありがとう、心配してくれて・・・。最近はとても具合がい
      いの。今日みたいに、ベットから起き上がれたり・・・窓を
      思い切り開けて、外の空気を吸ってみたり・・・」
  ミシェル「(リーザの側へ寄って。)あまり無理しちゃ駄目だよ。ま
       た、いつ発作が起きるとも限らないんだ。僕が来てる時
       ならまだしも、一人の時には・・・」
  リーザ「分かってる。(微笑んで。)ミシェルは優しいのね・・・。」
  ミシェル「昔・・・僕が好奇心からこの部屋のドアを開かなかった
       ら、僕は姉さんの存在に気付くことはなかった・・・。あの
       時から子ども心に、この部屋に囲われていた姉さんの、
       僕はナイトにならなけりゃ・・・って、そう思ったんだ。」
  リーザ「ミシェル・・・私はあなたが時々訪ねて来てくれるのが、
      とても嬉しいわ・・・。あなたの話しを聞いて、あれこれ想
      像出来るのが、とても楽しくて・・・。ありがとう・・・。」
  ミシェル「そんな・・・。けど、最近は学校が忙しかったりして、中
       々会いに来れなくて・・・ごめんよ・・・。」
  リーザ「(首を振る。)あなたにはあなたの生活が一番大切よ・・・
       」
  ミシェル「姉さん・・・」

         外から、娘達の楽し気な笑い声が、遠くに
         聞こえてくる。
         リーザ、ミシェル、扉の方へ顔を遣る。

  ミシェル「まただ・・・」
  リーザ「旅の途中に、お怪我為さって立ち寄られたお客様?」
  ミシェル「(頷く。)全く、あんな大怪我をしておきながら、一週間
       やそこらで鬼ごっこが出来るまでに回復するなんて、
       本当、強靭な体力の持ち主だよ。おまけにご婦人方の
       持て成し方が、凄く上手いんだ。まぁ、それだけで姉さん
       達がキャーキャー騒いでる訳じゃないんだけど・・・。(思
       い出したように腕時計を見て。)あ・・・姉さん、ごめん!
       !今日は午後から授業があったんだ!!もう行かなけ
       りゃ・・・」
  リーザ「いいのよ。(微笑む。)」
  ミシェル「また来るよ!!(急いで、ドアの方へ。)余り無理しちゃ
       駄目だよ!!」

         ミシェル、そっと扉を少し開いて、外の
         様子を覗くように。誰もいないのを確認
         して、リーザに手を上げ、さっと出て行く。
         再び、外から笑い声。リーザ立ち上がって
         窓の側へゆっくりと進む。
         その時、突然扉が開き、息を弾ませた
         アンソニー飛び込んで来る。
         アンソニー、リーザ其々お互いを見詰め、
         驚いた面持ちで立ち尽くす。

  アンソニー「あ・・・すまない!!」
  リーザ「(首を振る。)あ・・・(突然苦しそうに胸を押さえて座り込
      む。)」

         アンソニー、リーザのその様子に、ゆっくりと
         近付き、そっと自分の胸に抱き寄せる。
         暫くすると、リーザの発作は治まる。

  リーザ「(自分自身、体のその変化に驚いたように。)私・・・」
  アンソニー「大丈夫かい?」
  リーザ「(頷く。)」
  アンソニー「(リーザの手を取って立たせてやり、ベットの上へ腰
         を下ろさせる。)この部屋の扉は、決して開けてはい
         けない・・・そう言う風に言われていたけど・・・。」
  リーザ「(一瞬、悲しそうな面持ちになる。)・・・そう・・・」
  アンソニー「この家の人達は、こんなに美しい娘を、自分達以外
         の者の目に触れることを拒絶してたのかな・・・?」
  リーザ「・・・そんな・・・。(ゆっくりと。)この家の人達にとって、私
      は邪魔者以外の何者でもありません・・・。」
  アンソニー「如何してそんな風に・・・?よかったら話してみない
         か?あ・・・決して怪しい者じゃないんだ。僕はアンソ
         ニー・ヴェルヌ・・・一週間前・・・」
  リーザ「存じてますわ・・・。怪我を為さって、家で養生されてた
      お客様ですわね?」
  アンソニー「その通り・・・。君は・・・?」
  リーザ「私はこの家の娘で、リーザと申します・・・。」
  アンソニー「この家の娘・・・と言うことは、エリザベート達とは姉
         妹に?」
  リーザ「はい・・・。血はつながってませんけど・・・。」
  アンソニー「血はつながっていない・・・とは?」
  リーザ「私の本当の母は、私が小さい頃に亡くなりました・・・。
      エリザベート達は、今の母の連れ子だったんです・・・。」
  アンソニー「成る程・・・」
  リーザ「末のミシェルだけは、その後に生まれた子ですから、血
      のつながった姉弟と言うことになりますけど・・・。」
  アンソニー「それで、君は・・・みんなに疎まれていると・・・?」
  リーザ「(淋しそうに微笑む。)・・・さっき、あなたもご覧になった
      でしょう・・・私は生れつき体が弱くて、みんなに迷惑ばか
      りかけてきたんです・・・。」
  アンソニー「じゃあ、ずっとここで・・・?」
  リーザ「はい・・・。この部屋の中だけが私の世界・・・。この窓か
      ら見える風景だけが私の外の世界・・・。ミシェルが時々、
      みんなに隠れて、会いに来てくれるんです。それで色々
      自分が経験してきたことなんかを、私に話してくれるわ・・・
      。あの子の話すことが私の全て・・・。私・・・この家の者以
      外の人に会ったのは、あなたが初めて・・・。(嬉しそうに
      微笑む。)さっき、あなたが飛び込んで来た時、余りにも
      あなたが健康的で眩しくて・・・まるで、天使が舞い降りて
      来たようだった・・・。思わず息を飲んで、言葉も出なかっ
      たわ・・・。」
  アンソニー「・・・天使・・・?僕が・・・?」
  リーザ「ええ・・・天の国から舞い降りて来た、黒髪の天使・・・」
  アンソニー「・・・リーザ・・・。これからは、僕も出来る限り君に会
         いに来よう・・・。それで、僕が色々と見聞きしてきた
         ことを、君に教えてあげよう・・・。」
  リーザ「え・・・?」
  アンソニー「君の知らない世界の話しをしてあげよう・・・。屹度
         ミシェルよりもずっと沢山の話しをしてあげられると
         思うよ・・・。」
  リーザ「でも、家の者達に見つかると・・・」
  アンソニー「大丈夫。君も言っただろう?僕は天使だって・・・。
         羽根を持つ者は、何処からだってやってこれる・・・。
         そうだ。(窓から外を見て。)この森の奥に、とても素
         敵な場所がるんだ。辺り一面の花畑!ここへ来る途
         中、見つけた・・・。小鳥達が囀り・・・蝶達が舞う・・・。
         今度、連れて行ってあげよう!」
  リーザ「(悲しそうな顔付になる。)アンソニー・・・あなたのその
      お気持ちはとても嬉しいわ・・・。でも私は・・・外に出るこ
      とは・・・」
  アンソニー「(微笑んで。)大丈夫・・・僕の力を、君に分けてあげ
         るから・・・」
  リーザ「あなたの・・・力・・・?」
  アンソニー「そう、僕の力だ・・・」











       ――――― “アンソニー”4へつづく ―――――









― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪


     (どら余談^^;)

     可愛いテンプレートに変更致しました(^^)
     しっくりきて、やっと落ち着いた感じです(^_^;)




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     皆さんも、覗いてみて下さいね♥


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          http://blog.goo.ne.jp/axizgoo7227










“チュー吉くんの君は友だち・・・” ―全7場― 3

2012年01月11日 23時11分02秒 | 新作(人形劇用)


  カークの声「これから僕がのこ部屋で飼うんだ!」
  ジ―クの声「飼うだって?父さんに見つかったら、大目玉だよ。」
  カークの声「見つからないように、コッソリ飼うよ!」
  ジ―クの声「でも・・・こんな狭いカゴに閉じ込めてちゃ、可哀相
          じゃないか?」
  カークの声「いいんだ!!だから、兄ちゃんも父さんには内緒だ
          からね!!僕達の秘密だよ!!」

         その時、ジ―ク達の父親の声が聞こえる。

  父親の声「おーい、ジ―ク!!カーク!!どこにいるんだ!?
         母さんと買い物に行って来るから、ルークとルータ
         の面倒を見といてくれ。」
  ジ―クの声「はーい!!直ぐ行くよ!!」
  カークの声「ねぇ、兄ちゃん!!絶対に内緒だよ!!」
  ジ―クの声「うん、分かったよ。」

         2人の人間の足音、段々遠ざかる。
         大人ネズミ、再び歌う。

         “こんな風にいつまで怯えて
         生きて行くんだろう俺は・・・”

         カゴに入った大人ネズミ下がる。
         紗幕開く。

    ――――― 第 5 場 ――――― A
 
         人間の家の中。(壁の裏。)
         下手よりチュー吉、チュー介、回りを見回し
         ながら、恐る恐る一歩一歩確かめるように
         登場。

  チュー吉「ジ―クん家は、隅々まで知り尽くしているつもりだった
        けど・・・さすがに壁の裏なんて、あんまり来たことがな
        いよなぁ・・・。」
  チュー介「僕は地下の自分家から、出たことなんて殆どないか
        ら・・・」
  チュー吉「本当に?」
  チュー介「う・・・うん・・・。」

         その時、見知らぬ声が聞こえる。

  声「あーら、お2人さん・・・」

  チュー吉「え・・・?」

  声「こんな壁の裏へ、一体何のご用かしら?」

  チュー吉「誰?」

         そこへ、後方の物陰から、一匹のイタチ(ネリー)
         しなやかな足取りで登場。

  チュー吉「あなたは・・・」
  ネリー「私はこの壁の裏で、ひっそり暮らすイタチのネリー・・・。
      お2人さんは・・・(チュー吉、チュー介を舐めるように見る
      。)子ネズミだね?(ニヤリと微笑む。)」
  チュー吉「うん。僕らもこの家に住んでるんだ。」
  ネリー「へぇ・・・同じ家の中に、こんなに美味しそうな子ネズミ
      が、2匹もいたなんて・・・(小声で。)」
  チュー吉「え・・・?」
  ネリー「(笑う。)何でもないわよ。ところであなた達は、何処へ行
      こうとしているのかしら?」
  チュー吉「僕達はこの壁の向こうに・・・」
  ネリー「壁の向こう!?この壁の向こうは、人間達の住む恐ろし
      い場所だよ!」
  チュー吉「その人間に用があるんだ、僕達。」
  ネリー「人間に用があるって・・・。向こうは私達にあるかも知れ
      ないけど、こっちから人間に用があるだなんて、変な奴ら
      だねぇ・・・。」
  チュー吉「ねぇ、ネリーさん!ネリーさんは、ずっとここに住んで
        るの?」
  ネリー「ああ、そうさ。」
  チュー吉「じゃあ、この家の人間のことは、よく知ってる?」
  ネリー「そりゃあ、人間とは壁一枚挟んだお隣さんだ。人間のこ
      とは、よおく知ってるるよ。」
  チュー吉「そしたら、少し前に僕らと同じネズミが、この家の人間
        に捕まって、連れて来られたと思うんだ。ネリーさんな
        らそのネズミのこと、知ってるんじゃないの?」
  ネリー「ああ・・・あのネズミ捕りに捕まった、ドン臭い奴のことな
      ら知ってるよ。」
  チュー介「本当!?」
  ネリー「(小声で。)何もあんなとこに入って、態々捕まらなくても
      、私の食事になってくれりゃあいいものを・・・。」
  チュー吉「今、そのネズミは何処で如何しているか分かる!?」
  ネリー「さぁ・・・。でも、ネズミ捕りに捕まったんだから、とっくの昔
      に殺されて・・・」
  チュー介「殺され・・・父ちゃん・・・」
  チュー吉「そんなことないよ!!屹度この家の何処かで生きて
        いる筈なんだ!!ねぇ、ネリーさん!!ネリーさんは
        この家の中のことに詳しいんでしょ!?僕らの仲間が
        何処に捕まっているか、捕まっていそうな場所を、一
        緒に考えてよ!!」
  ネリー「(チュー介を見て。)あんたの父さんなのかい?そのドン
      臭いネズミは・・・。」
  チュー介「・・・うん・・・」
  ネリー「ふうん・・・。」
  チュー吉「ねぇ、何か思い出さない?」
  ネリー「そんなこと言われたってねぇ・・・。そうそう、ここん家には
      子どもが4人いるんだけれど・・・」
  チュー吉「4人・・・?」
  ネリー「下の2人は、まだ赤ん坊だから悪戯なんて出来っこない
      けど・・・上のジ―クとカークは・・・」
  チュー吉「・・・ジ―ク?」
  ネリー「ええ。一番上の子どもの名前が、確かジ―ク・・・」
  チュー吉「・・・へぇ・・・ビスケットのジ―クが・・・一番上のお兄さ
        ん・・・」
  ネリー「ジ―クは兎も角、その二番目のカークが曲者だわね。」
  チュー吉「曲者・・・?」 
  ネリー「ええ、まだ学校も行かない小さな餓鬼の癖して、好奇心
      旺盛で怖いもの知らず、私は危うく尻尾をちょん切られそ
      うになったことがあるのよ!!」
  チュー吉「へぇ・・・」
  ネリー「もしまだ、あんた達の捜してるそのお父さんが、生かされ
      てるとしたら、そのカークが咬んでんじゃないかねぇ・・・。」
  チュー介「・・・カーク・・・」
  ネリー「あの悪餓鬼なら、カゴの中に閉じ込めたネズミを、玩具
      にしてたって不思議じゃないからさ。」
  チュー吉「ねぇ、ネリーさん!!僕達をそのカークのいる所へ案
        内してくれない!?」
  ネリー「え!?いやよ!!何で私が、態々そんな危険な所へ、
      何処の誰とも分からないあなた達の為に、行かなきゃな
      らないのよ!!」
  チュー吉「お願いだよ!!僕達だけでウロウロ人間の前へ出て
        行ったって、屹度チュー介の父さんみたいに、捕まって
        しまうのが目に見えてるよ!!」
  ネリー「・・・お礼は・・・?」
  チュー吉「え・・・?」
  ネリー「お礼はちゃんとしてくれるんだろうねぇ・・・」
  チュー吉「お礼・・・?」
  ネリー「ええ。」
  チュー吉「何をすればいいの・・・?」
  ネリー「ううんと・・・そうねぇ・・・。私も危険を承知で道案内する
      んだから、あんた達にもそれなりのことを頼むわ・・・。」
  チュー吉「それなりのこと・・・?」
  ネリー「そう・・・それなりの・・・。さ、そんなことは後で構わないか
      ら、行くならさっさと行きましょう!!」
  チュー吉「う・・・うん!!」
  ネリー「(小声で。)・・・お楽しみは後にとっとかなくっちゃ・・・。
      (舌舐めずりして、コッソリと笑う。)」

         (紗幕閉まる。)

    ――――― 第 5 場 ――――― B

         音楽流れ、3人歌う。

         “行ってみよう
         大切なものを捜しに
         ほんの少しでも
         望みがあるなら
         それを見逃す手はないさ
         だから行こう
         危険があっても3人なら
         屹度抜け出せる
         どんなピンチも
         ただの想像で
         色々よくない思いに溢れて
         下を向く
         そんなの何の意味もないだろ
         顔を上げるんだ!!”

  ネリー「さぁ、こっちよ!!」
  チュー吉、チュー介「うん!!」

         3人上手へ去る。

    ――――― 第 6 場 ―――――

         紗幕開く。と、ジ―クの家の子ども部屋。
         上手より、ジ―ク登場。

  ジ―ク「おおい・・・ビスケットを持って来たよ・・・。僕のビスケット
      をいつも取りに来るのは、カークが飼ってるネズミじゃな
      いんだ。だってあれからも、必ず朝には、夜置いた筈の
      ビスケットの欠片がなくなってるから・・・。一体僕のビス
      ケットを持って行くのは、誰なんだろう・・・。」

         音楽流れ、ジ―ク歌う。

         “見たことはないけど
         屹度君は小さな小さな
         この家の住人・・・
         いつもいつもそっと伺い
         誰もいなくなったその時
         見つからないように
         出て来るんだ・・・
         そうして半分こしたビスケット
         そっと手にして帰るんだ・・・”

  ジ―ク「小さな君・・・またビスケットを置いておくよ・・・。(手に持
       っていたビスケットを部屋の隅に置く。)」

         ジ―ク、上手へ去る。
         (と、カゴ、上手前方へ上がる。)

  大人ネズミ「チュー介・・・みんな・・・」

         一時置いて、下手より抜き足差し足で、
         ネリー登場。続いてチュー吉、チュー介
         登場。

  ネリー「さぁ・・・ここが子ども部屋よ。」
  チュー介「ここが!?」
  ネリー「しっ!!見つかったら、あんた達も私も一巻の終わりよ
      !」
  チュー介「うん・・・」
  ネリー「(回りを見回して。)良かった・・・悪餓鬼どもはいないみ
      たいね。」
  チュー介「父さん・・・いるのかな・・・」
  チュー吉「捜してみようよ。」
  チュー介「うん・・・」
  チュー吉「チュー介くんのお父さーん・・・!!」
  チュー介「父さーん・・・!!」

         チュー吉、チュー介、暫く回りをキョロキョロと
         捜すように。(ネリー、下手方に座り込んで、2人
         の様子を見ている。)

  チュー介「父さんーん・・・」
  大人ネズミ「(チュー介の声に気付いたように、ビクッと顔を上げ
         る。)・・・チュー介・・・?チュー介じゃないか!!」
  チュー介「(大人ネズミに気付いて、カゴに駆け寄る。)父さん!
        !」
  大人ネズミ「チュー介!!如何してこんなとこに!!」
  チュー介「父さんを助けに来たんだよ!!」
  大人ネズミ「助け・・・って・・・、おまえ、如何してそんな危険なこ
         とを!!」
  チュー介「だって、父さんがいなくなって僕達・・・(涙声で。)」
  大人ネズミ「チュー介・・・すまない・・・。でも、どうやってここまで
         ・・・」
  チュー介「うん・・・。友達のチュー吉くんが・・・」
  チュー吉「こんにちは・・・」
  大人ネズミ「友達・・・?」
  チュー介「僕・・・ばあちゃんに言われて、学校に行き始めたんだ
        ・・・。そこで出来た友達のチュー吉くんが、父さんは屹
        度生きてるから、一緒に捜しに行こうって・・・。僕も一
        緒に捜してあげるから・・・そう言ってくれて・・・。それで
        僕・・・」
  大人ネズミ「そうか・・・学校に・・・。良かったな、チュー介・・・。友
         達まで出来て・・・。チュー吉くん、チュー介と一緒に
         こんな所まで・・・本当にありがとう・・・。」
  チュー吉「そんなこと・・・」
  ネリー「さぁ、涙の御対面は終わりだよ・・・。」
  チュー介「ネリーさん・・・」
  大人ネズミ「ネリーさん・・・?」

         ネリー、ゆっくりカゴの方へ。










    ――――― “チュー吉くんの君は友だち・・・”
                           4へつづく ―――――











 ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪



    グーグル版“ワールド”、遅ればせながら始動させました^^;
    脚本は変えようがありませんが、“余談”的なものは、また
    こちらとは違った形にしようと思っていますので、合わせて
    お楽しみ頂ければ嬉しいです♥

    たまには覗きにいらしてみて下さいm(__)m


          http://ritorupain.blogspot.com/



                                  どら。




     (お知らせ♥)

     グーグル版“ワールド”に、“キャシーの森”のラスト10分
     の動画を載せてみました(^.^)
     (ど~しても、ここでの動画の載せ方が分からなかった
     のです~・・・^^;)
     第4回春公演時のビデオからなので、まだまだ不味い所
     が一杯あるのですが、“私の声”や、お人形の動きなど、
     見て笑って頂けるのではないかと・・・(^_^;)
     今現在は、かれこれこのビデオから2年程経ちますが、
     随分“歌”にしても“動き”にしても成長したな・・・と感じる
     ビデオであります^^;
     よかったら見に行ってみて下さい(^^)



   

     (おまけフォト^^;)

     
 
     薄らと、“虹”・・・分かりますか・・・?

    今日、スタジオに行く途中、大きな川を渡る
    のですが、その橋の上から“虹”を見つけ、
    思わず写メしました♥
    雨がパラパラ降る中、風が冷たく・・・虹に
    向って携帯を翳している風景・・・(-_-;)
    想像下さい・・・^^;
    ハッと気付いて横を見ると、同じように携帯
    を翳す人が・・・(^_^;)
    
    とっても寒かったですが、すごく綺麗な虹
    でした♥










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          http://blog.goo.ne.jp/axizgoo7227