りとるぱいんわーるど

ミュージカル人形劇団“リトルパイン”の脚本の数々です。

“スティーブ・ドガー” ―全10場― 完結編

2012年04月07日 22時58分28秒 | 未発表脚本

   

    ――――― 第 8 場 ―――――

         紗幕開く。
         フェード・インする。と、アナベルの家。
         下手よりアヴェリー登場。

  アヴェリー「アナベル!アナベル!(首を傾げる。)」

         アヴェリー、アナベルを捜しながら上手へ去る。
         一時置いて、下手よりアナベル、スティーブの
         ジャケットを手に登場。

  アナベル「(ジャケットを見て。)よかった。血の跡も綺麗に落ちて
        る・・・。(アナベル、思わずジャケットを胸に抱く。)ステ
        ィーブ・・・(呟く。)」

         上手よりアヴェリー、そっと登場し、その様子を
         見ている。

  アヴェリー「・・・アナベル・・・」

         そこへ下手よりクラウニー登場。
         アヴェリー上手へ去る。

  クラウニー「ただいま。」
  アナベル「(驚いたように、ジャケットを離す。)あ・・・おかえりな
        さい。如何でした?村の様子は・・・。」
  クラウニー「ああ。スティーブが離れ難くなるのが分かるよ・・・。
         とても綺麗な所だね。」
  アナベル「座って休んでて下さいね。スティーブの上着を繕った
        ら、お茶入れますから・・・。」
  クラウニー「・・・銃の跡・・・?」
  アナベル「(微笑んで。)聞くなと言われてますから・・・。」
  クラウニー「へえ・・・。あいつらしいね、全く・・・。少しでも危険が
         あるかも知れないと思ったら、絶対誰もそこへは近付
         けない・・・。況してや、それが大切な人なら尚更・・・
         か・・・。」

         アナベル、椅子に腰を下ろし、ジャケットを
         触っている。

  アナベル「(何かに気付いたように。)・・・あら・・・?何かしら・・・
        ここに・・・」
  クラウニー「如何した?」
  アナベル「・・・中に何か縫い付けてあるみたい・・・」
  クラウニー「何だって!?ちょっと見せてくれないか?(アナベル
         から、奪うようにジャケットを取り上げる。)」
  アナベル「あの・・・」
  クラウニー「(ジャケットを触って、顔色が変わる。)見つけた・・・
         !!やったぞ!!畜生!!(声を上げて笑う。)」
  アナベル「・・・見つけたって・・・?」
  クラウニー「(ジャケットを破く。)これさえあれば!!」
  アナベル「何するの!?止めて下さい!!(ジャケットをクラウニ
        ーから取り上げる。)スティーブの上着を、勝手に破くな
        んて・・・!!」

         上手より、ただならぬ気配に気付いて、
         アヴェリー登場。

  アヴェリー「アナベル・・・?」
  クラウニー「何するんだ!!それを此方へ貸せ!!」
  アナベル「(ジャケットを胸に抱き締めて、クラウニーを見据える。
        )嫌です!!」
  クラウニー「(上着の内ポケットから、銃を取り出しアナベルの方
         へ向ける。)大人しく渡した方が、身の為だ・・・。」
  アヴェリー「(驚いて、腰を抜かしたように座り込む。)ピ・・・ピス
         トル・・・?」
  アナベル「(強く首を振る。)」
  クラウニー「(天井に向けて、銃を一発撃つ。)命が惜しくないの
         か!!」

         アヴェリー、這うように上手へ去る。

  アナベル「これはスティーブのものよ・・・!!」
  クラウニー「(アナベルに近寄り、無理矢理ジャケットを奪おうと
         する。)貸せって言ってるんだ!!」
  アナベル「嫌・・・!!」

         2人、ジャケットを奪い合う。一時の取り合い
         の後、クラウニー、アナベルを思わず殴り付ける。

  アナベル「キャアッ!!(倒れる。)」
  クラウニー「(溜め息を吐き、ジャケットを拾う。)大人しく渡せば、
         痛い目を見ずに済んだものを・・・!!(ジャケットを
         破いて、中から書類を取り出す。)やった・・・!!こ
         れさえあれば・・・!!」

         クラウニー、ジャケットを放し、書類を持って
         下手へ走り去る。
         一時置いて、上手よりスティーブ走り登場。
         倒れているアナベルを認め、慌てて駆け寄る。

  スティーブ「アナベル!!(アナベルを抱き起こす。)アナベル!
         !確りしろ!!」

         アナベル気付く。

  スティーブ「アナベル・・・?」
  アナベル「・・・スティーブ・・・(涙が溢れるように。)・・・ごめんな
        さい・・・。あなたの大切な・・・」
  スティーブ「いいんだ・・・!!いいんだ・・・君が無事でよかった
         ・・・。(アナベルを力強く抱き締める。)」
  アナベル「スティーブ・・・!!」

         音楽で紗幕閉まる。
  
    ――――― 第 9 場 ―――――

         紗幕前。
         下手よりクラウニー、後ろを気にしながら、
         息を切らせながら走り登場。

  クラウニー「(書類を見て、安堵したように溜め息を吐く。ゆっくり
         上手方へ。)」

         その時、上手よりスティーブ、クラウニーを
         見据えながらゆっくり登場。
         クラウニー、立ち止まる。

  スティーブ「(ゆっくり、クラウニーに近寄りながら。)・・・まさか・・・
         おまえが裏切り者だったとはな・・・。」
  クラウニー「・・・そうさ・・・。がっかりしたか・・・?」
  スティーブ「(クラウニーを思い切り殴る。)馬鹿野郎!!」

         クラウニー、倒れる。

  スティーブ「何故おまえは!!(クラウニーの胸元を掴む。)」
  クラウニー「何故・・・?愚問だな・・・。出世したいからさ!!お
         まえのように、エリート街道に乗りたかったのさ!!」
  スティーブ「・・・出世したい・・・?こんなことをして、バレたら出世
         どころじゃなくなるんだぞ!!何故、実力で上がろう
         としない!!」
  クラウニー「・・・笑わせるな・・・!!昔から何をやらせても一番
         のおまえは、進学校に進み、超エリート大学を出て、
         サークル活動や討論会で雄弁を奮い・・・超大物政治
         家の目に留まり、贔屓を受けて30にしてもう議員様
         だ!!将来は何か?大統領か?ふん!!そんなお
         まえに、俺の気持ちなんて分かるものか!!何が実
         力で上がってこいだ!!良く出来るおまえと一緒に
         されちゃ、堪らないんだよ!!」
  スティーブ「(クラウニーの胸元を離す。)心底・・・捻くれた野郎に
         成り下がったんだな・・・。」
  クラウニー「・・・何とでも言え・・・。(立ち上がって、服を払う。)
         あの夜・・・おまえをやり損なったのは、この俺だ・・・
         !!」  
  スティーブ「(クラウニーを睨み付ける。)・・・如何やら俺の方が
         馬鹿だったようだな・・・。人の善悪を見抜く力もなく
         て、何が議員だ・・・。笑わせるな・・・!!」
  クラウニー「・・・馬鹿野郎同士が、友達ごっこをしてたって訳だ
         ・・・。」
  スティーブ「・・・ごっこか・・・。あの夜・・・やろうと思えば本当に
         やれた筈だ・・・。何も態々、腕なんて狙わずに(胸
         を押さえて。)ここへ、おまえなら一発命中の筈だ・・・
         。」
  クラウニー「・・・何・・・?」
  スティーブ「本当の悪にもなり切れない・・・中途半端な奴め・・・。
         」
  クラウニー「何だと!!(スティーブに思わず殴り掛かる。)」
  スティーブ「(さっと避けて。)俺に敵うものか!!」
  クラウニー「くそう!!」

         クラウニー、スティーブに殴り掛かるが、
         スティーブ、さっと避けながら反対にクラウニー
         を殴り倒す。

  クラウニー「(倒れたまま、悔し涙を堪えるように、握り拳で地面
         を叩く。)畜生・・・!!畜生!!」
  スティーブ「・・・やったことの償いをしてこい・・・。出てきたらまた、
         何時でも相手になってやるよ・・・。」
  クラウニー「・・・畜生・・・」
  スティーブ「・・・そうだ・・・俺式の出世の仕方を、教えといてやろ
         う・・・。ひたすら自分を押し殺し、頭を下げることだ・・
         ・。」
  クラウニー「(顔を上げ、スティーブを見る。)・・・頭を下げる・・・?
         」
  スティーブ「・・・おまえは結果ばかりを見て、羨ましがる前に、も
         っと途中経過を知るべきだな・・・。誰でも努力はして
         るのさ・・・。」
  
         その時、パトカーのサイレンが響く。
         クラウニー、ゆっくり立ち上がる。クラウニー、
         上手の一点を見詰め、諦めたように目を伏せる。
       
  アイザックの声「残念だ、クラウニー・・・。」

         フェード・アウト。
         パトカーのサイレン、段々遠くへ。

    ――――― 第 10 場 ―――――

         紗幕開く。(フェード・インする。)と、村の風景。
         静かな音楽流れる。
         中央、佇むアナベルとアヴェリー。

  アヴェリー「・・・分かっていたよ・・・。こうなることは・・・。」
  アナベル「・・・ごめんなさい・・・。」
  アヴェリー「・・・謝るのは・・・僕の方だよ・・・。君のことを守るだ
         なんて言っておきながら・・・。ピストルを目の前にし
         て僕は・・・情けないよ・・・。」
  アナベル「・・・(微笑んで。)いい人ね・・・。黙ってたら、あの時、
        あなたがあそこに居たなんて知らなかったわ・・・。そし
        たら何も・・・別れはあったかも知れないけど・・・。」
  アヴェリー「嘘は吐きたくないんだ・・・。特に、一番大切な人に、
         嘘を吐いたなんて一生苦しむことになるじゃないか
         ・・・。それなら本当のことを正直に言って、今恥をか
         く方が僕は余程気が楽だな・・・。」
  アナベル「ありがとう・・・。」
  アヴェリー「如何するの・・・?あいつ帰っちゃうんだろ・・・?」
  アナベル「・・・いいの・・・。短い間だったけど、思い出は沢山ここ
        に(胸を押さえる。)あるから・・・。一人でも大丈夫・・・。
        」
  アヴェリー「付いて行っちゃえよ・・・。」
  アナベル「(首を振る。)・・・彼には彼の生活が待ってるのに、私
        なんかが付いて行ける筈ないじゃない・・・。」
  アヴェリー「アナベル・・・。僕でよかったら、何時でも力になるよ
         ・・・。僕はずっとこの村にいるから・・・。あ・・・、別に
         またチャンスを狙っている訳じゃなくって・・・。そりゃ、
         多少そう言う気持ちもあるにはあるけど・・・。いや・・・
         だから・・・」
  アナベル「・・・分かってる、アヴェリー・・・。あなたは幼い頃から
        いつも私の側にいてくれたもの・・・。」
  アヴェリー「じゃあ僕は行くよ・・・。諦めはついてるけど、矢張り
         君とあいつが2人仲良くしているのを見るのは辛いか
         ら・・・。女々しいよな・・・。」
  アナベル「ううん・・・。」
  アヴェリー「じゃあ、また・・・。」

         アヴェリー、下手へ去る。
         一時置いて、キティ上手より登場。
         アナベルの側へ。

  キティ「お姉さん!スティーブがそろそろ行くって・・・。」
  アナベル「そう・・・。」

         そこへ上手よりスティーブ登場。ゆっくり
         アナベルの側へ。キティ一寸離れる。

  スティーブ「・・・やぁ・・・」
  アナベル「・・・もう・・・行くのね・・・。」
  スティーブ「ああ・・・。裁判が始まるからね・・・。」
  アナベル「そう・・・。」
  スティーブ「・・・短い間だったけど、君達姉妹には本当に感謝し
         ているよ・・・。」
  アナベル「(俯いて首を振る。)いいえ・・・。」
  スティーブ「・・・そう・・・君は・・・これから・・・結婚して・・・」
  アナベル「(微笑んで。)・・・何も変わりはなしよ・・・。今まで通り
        キティと2人で、薬草を売って暮らして行くわ・・・。」
  スティーブ「・・・結婚するって・・・」
  アナベル「止めたの・・・。」
  スティーブ「・・・え・・・?」
  アナベル「だって・・・本当に好きな人とでなきゃ、結婚なんて意
        味がないもの・・・。」
  スティーブ「・・・アナベル・・・本当に・・・?」
  アナベル「ええ・・・。」
  スティーブ「よかった!」
  アナベル「え・・・?」
  スティーブ「これで心置きなく、暫く会えなくなる前に、自分の気
         持ちを君に伝えておける・・・。」
  アナベル「スティーブ・・・」
  スティーブ「これから僕は戻って、裁判の証言台に立ってくるよ
         ・・・。それで、ジェラルド・マクレーニに罪の償いをさ
         せる・・・。そうして僕はもう一度・・・本当に自分のや
         りたいことを・・・幸せを探そうと思う・・・。君が言って
         た・・・やりたいことを見つけるんだ。ここへ戻ってくる
         よ・・・。それまで・・・待っていてくれないか・・・?」
  アナベル「・・・嘘・・・」
  スティーブ「本当さ・・・。何もかも一からやり直す・・・。君に側に    
         いてもらいたいんだ・・・。愛している・・・アナベル・・・
         。」
  アナベル「スティーブ・・・(涙が溢れる。)」
  スティーブ「この歳になって、柄にもなく一目惚れするなんて・・・
         。我ながら可笑しくなるよ・・・。今まで恋愛なんて、ゲ
         ームだと思っていたのに・・・。まさか、こんなに誰か
         を愛しいと思うなんて・・・。」
  アナベル「私も・・・愛しているわ・・・。傷を負ったあなたを一目
        見た時から・・・。例え叶わない恋でも、この思いを一生
        秘めていくつもりでいた・・・。」
  スティーブ「アナベル・・・!(アナベルを力強く胸に抱き締める。)
         」

         キティ、嬉しそうに2人に駆け寄る。

  キティ「上手くいったのね!?」
  アナベル「キティ・・・」
  スティーブ「そうだよ。」
  キティ「全く、最近の大人ときたら世話が焼けるんだから!(嬉し
      そうに笑う。)おめでとう!!」

         スティーブ、アナベル顔を見合わせて、
         微笑み合う。

  スティーブ「2人で・・・幸せを見つけよう・・・。」

         スティーブ、アナベルの手を取り、優しく歌う。
         キティ、そっと上手へ去る。

         “今・・・新たに始まりの時・・・
         昨日までとは全く違う
         幸せへと続く永遠の道へ
         一歩を踏み出す時・・・
         優しさと・・・安らぎと・・・
         愛しさと・・・恋しい思い・・・
         温かな温もりを肌で感じ・・・
         共にいたいと願う
         君だけがいればいい・・・
         君だけが側にいればいい・・・
         例え全てが満ち足りていても
         君がいなければそれは全く
         無意味なもの・・・
         共にいよう何時までも・・・
         君が同じように願うなら
         僕はここにいる何時も君の側に・・・
         新たな出発へ2人一緒に
         踏み出そう・・・”

         2人、寄り添い合いながら、彼方を見遣る。





            ――――― 幕 ―――――








    では、ここで次回掲載作品の紹介をしておきたいと思い
    ます(^^)
    次回はとってもラブストーリーな作品で、ダンサー達を
    主人公に書いたお話しで、“ジェフリー”をご覧頂こうかと
    思っています(^^)vお楽しみに♥



                                どら。








 ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪


      (おまけフォト^^;)

     
   
    昨日の“おまけフォト”のぷっちくんの頭が、こうなり
    ました(^^)v























http://milky.geocities.jp/little_pine2012/performance.html

         http://ritorupain.blogspot.com/

     http://blogs.yahoo.co.jp/dorapontaaponta
 










“ライアン” ―全8場―

2012年04月03日 22時32分37秒 | 未発表脚本


  これは、グーグル版“ワールド”で先にご覧頂いてた作品ですが、
  そちらで、そろそろラストを迎える頃となりましたので、グー版
  “ワールド”でも紹介させて頂こうと、引っ張って参りました^^;

  この本編の不自然な行間は、引っ張ってきたが故・・・とお考え
  下さい^^;



 ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪

 

   〈 主な登場人物 〉

   ライアン  ・・・  本編の主人公。 未来に住む少年。

   マイク  ・・・  ライアンのひいひいお祖父さん。

   ジェシカ  ・・・  マイクの妻。       ※     

 

   その他  

                   

 

 ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪

 
      

     ――――― 第 1 場 ―――――

 

          幕が上がる。と、街の路地裏。

          薄明かりの中、辺りを静寂の時が包む。

          そこへ上手より、後ろを気にしながら、

          慌てた様子で腕を押さえ、一人の青年

          (マイク)、走り登場。

 

  マイク「(息を切らせて。)いってぇ・・・(中央に積み重ねてあった

      木箱の後ろに身を潜める。)」

 

          そこへ上手より、銃を片手に数人の警官、

          誰かを追い掛けるように、走り登場。

 

  警官1「待てーっ!!」

  警官2「何処へ行った!?(キョロキョロする。)」

  警官3「全く、逃げ足の早い・・・」

  

          その時、下手より声が聞こえる。

 

  声「わあーっ!!この人、怪我してるんじゃないかーっ!!」

 

          警官達、その声に顔を見合わせる。

 

  警官1「おい!!」

 

          警官、その声に引き寄せられるように、下手

          へ走り去る。警官去るのを見計らってマイク、

          物陰から登場。

 

  マイク「そろそろヤバいかな・・・。まだ顔は知れてないだろうけど

      ・・・。足が付くのも時間の問題だな・・・。(座り込む。)」

 

          一時置いて、下手より後ろを気にしながら、

          一人の少年(ライアン)楽しそうな様子で登場。

          マイクに近寄る。

 

  ライアン「お巡りさん行ったよ。(マイクを覗き込んで。)あらら・・・一杯

       血が出てるね・・・。痛そうだ・・・。」

  マイク「・・・誰だ・・・」

  ライアン「僕はライアン。ねぇ、痛い?」

  マイク「(ライアンの言葉は無視するように、辛そうにゆっくり立ち上が

      り、上手方へ足を引き摺り、少しずつ進む。)」

  ライアン「もうお巡りさん、来ないよ。」

  マイク「(怪訝そうにライアンを見る。が、知らん顔して上手方へ行き

      かける。)」

  ライアン「そんな傷で何処行くの?死んじゃうよ。(笑う。)」

  マイク「煩いな・・・。俺が死のうが生きようが、おまえには関係ない

      だろ。さっさとママの待つお家へ帰って、ぬくぬくしてろ!!」

  ライアン「冷たいなぁ・・・。(笑う。)あなたが死んだら、困るんだ僕。」

  マイク「ふん・・・」

  ライアン「ねぇ、その傷・・・治してあげようか?」

  マイク「あのな・・・そんなつまんない冗談言ってないで・・・」

  

          ライアン、マイクの腕を掴む。と、みるみる傷が

          治ったように。

 

  マイク「・・・(驚いて傷を見詰める。)おまえ・・・」

  ライアン「血、止まったね。」

  マイク「一体どうやって・・・」

  ライアン「じゃあね、お兄さん!また会いに来るよ!(手を振り、上手

       へ走り去る。)」

  マイク「あ・・・おい!!」

 

          マイク、スポットに浮かび上がり歌う。

          (紗幕閉まる。)

          紗幕前。

 

          “誰だあいつ・・・

          青く澄んだ瞳で俺を見る・・・

          どこかで会ったか

          魔法使いかマジシャンか・・・

          はたまた天使か分からない・・・

          やたら慣れ慣れしく

          妙に懐かしい・・・

          何故だか変な感覚だ・・・”

 

          暗転。

 

     ――――― 第 2 場 ――――― A

 

          音楽流れ、紗幕開く。と、未来の風景。

          上手より、ライアン登場。元気良く歌う。

 

          “楽しいことが大好き

          愉快なことが大好き

          面白いこと冗談だって

          大笑いするようなことが

          大好きさ

          冒険が大好き

          ワクワクが大好き

          ドキドキすること興味津々

          僕は気になることには

          何でも挑戦するんだ!”

 

     ――――― 第 2 場 ――――― B

 

  声「ライアーン!!」

 

  ライアン「やばい!!」

 

          ライアン、下手へ走り去る。

          入れ代るように、下手より車椅子に乗った

          一人の老人(マイク)、ゆっくり登場。

          上手より、ライアンの母登場。

 

  母「ライアーン!!宿題は済んだのー!?ライアーン!!あ、おじい

    さん、ライアンを見なかったかしら!?」

  マイク「わしは知らんのぉ・・・」

  母「もう本当に、逃げ足だけは早いんだから!おじいさん!ライアン

    を見かけたら、私が捜していたと伝えて下さいね!!」

  マイク「ああ・・・分かったよ・・・。」

  母「(溜め息を吐く。)もう全く・・・。あの子ったら・・・親の言うことなん

    て、どこ吹く風ね!自分が興味のあることなら、誰が何も言わな

    くても、サッサと行動する・・・悪いことは見過ごせない正義感・・・

    一体誰に似たのかしら・・・。」

 

          母親、ブツブツ言いながら、上手へ去る。

 

  マイク「ライアンは、わしの妻、ジェシカの子どもの頃にそっくりじゃよ

      ・・・。(笑う。)」

 

          ライアン、母親が去るのを見計らって、

          ゆっくり下手より登場。

 

  ライアン「ふう・・・」

  マイク「(ライアンを認め。)ライアン・・・、お母さんがえらく探し回って

      おったぞ。」

  ライアン「ふん!いいんだ!母さんなんか、宿題しろだの勉強しろだ

       のお使い行けだの・・・煩くって!」

  マイク「おいおい・・・。母さんをそんな風に言っちゃいかんな・・・。」

  ライアン「いいんだよ!おじいさん!!もしまた母さんに僕のことを

       聞かれても知らないって言っといてよ!」

  

          その時、マイクが手に持っていた小型テレビ

          の音声が流れてくる。

 

  声「・・・臨時気象ニュースです。太平洋沖で発生した大型のハリケ

    ーンが、明日、本土へ最接近、その後上陸する模様です・・・。」

 

  ライアン「ハリケーンだって!今夜、遊びに出られないや!ちぇっ!

       地下シェルターで休まなけりゃいけないなんて最悪だ!!

       ジョニーん家はいいよなぁ。父さんが瞬間移動民族だから、

       隠れなくていいんだもんな。シュッと忽ち、海外だって何処

       へだって行けちゃうんだから・・・。」

  マイク「これこれライアン、人を羨むな。それに今は何処の家にも

      地下シェルターなんてもんがあるから、いいではないか。・・・

      わしらが若い頃には、ハリケーンが来たって、逃げる場所な

      どなかったんじゃぞ。」

  ライアン「じゃあ、ハリケーンが来たら如何したの?」

  マイク「避けて行ってくれるのを願うだけじゃよ。」

  ライアン「まさか・・・。(笑う。)」

  マイク「走って逃げた所で、追い付いかれて巻き込まれてしまうのが

      目に見えておるじゃろう・・・。」

  ライアン「そんなこと・・・嘘だ・・・。」

  マイク「・・・嘘なものか・・・。ライアン、こっちへ来ておくれ・・・。」

  ライアン「何?ひいひいおじいさん・・・。」

  マイク「・・・わしは、もう長くは生きられん・・・。そこで、おまえに一つ

      だけ頼みがあるんじゃ・・・。」

  ライアン「頼み・・・?どんなこと・・・?」

  マイク「わしは、若い頃の過ちから・・・一つだけ後悔しておる出来ごと

      があるんじゃ・・・。」

  ライアン「後悔していること・・・?」

  マイク「ああ、そうじゃ・・・。(写真を取り出し、ライアンへ差し出す。)」

  ライアン「何・・・?」

  マイク「そこに、女の人が写っておるじゃろう?」

  ライアン「うん・・・。とても綺麗な人だね。」

  マイク「おまえのひいひいおばあさん・・・わしの妻だった人じゃよ。」

  ライアン「ひいひいおばあさん・・・?」

  マイク「おまえの瞳の色は、そのジェシカに瓜二つじゃよ・・・。おまえ

      を見ていると、ジェシカを思い出す・・・。わしらは子どもの頃

      からの、幼馴染だったんじゃ・・・。ジェシカは、子どもの頃は

      男の子と間違えられる程、元気でお転婆な女の子だったよ

      ・・・。丸で今のライアンのように・・・。(笑う。)」

  ライアン「そのジェシカおばあさんは、若くして亡くなったんでしょ?」

  マイク「・・・ああ・・・。わしのせいで・・・な・・・。」

  ライアン「おじいさんのせい・・・?おじいさんのせいって・・・」

  マイク「ライアン・・・タイムマシンで過去のわしの過ちを正して来て

      くれないか・・・。そして、ジェシカの命を救っておくれ・・・。この

      年寄りの最後の頼みじゃ・・・。」

  ライアン「おじいさん・・・けど、命を救うって・・・どうやって・・・」

  マイク「わしがまだ若かりし頃・・・ジェシカとジャック、3人で幸せに暮

      らす一方で、ジェシカには内緒でわしは・・・良からぬ奴らと手

      を組み、悪事に加担しておったのじゃ・・・。そして、130年前

      の5月10日・・・わしはその日もまた、そんな奴らの誘いに乗

      って、ジェシカが止めるのも聞かず、家を出て行ったのじゃ。

      金さえあれば・・・家族が幸せに暮せると信じて・・・。しかし、

      その日は・・・今なお語り継がれておる、国を壊滅状態に陥れ

      ることになった、あの巨大ハリケーンが本土を襲った日・・・。

      ジェシカはそのハリケーンに・・・」          ※1

  ライアン「ハリケーンに・・・?(手に持っていた写真を見る。)」

 

          ライアン、マイク、セリ下がる。

 

     ――――― 第 3 場 ――――― A

 

          音楽流れ、入れ代るように、前方ジェシカ、

          セリ上がる。(紗幕閉まる。)

          紗幕前。ジェシカ歌う。

 

          “今日になれば昨日より

          明日になれば今日この時より

          少しでも良くなると信じて

          歩いているけれど・・・

          何故だか少しの不安が

          心を過るの・・・

          大切な時間のこの時を・・・”

 

  ジェシカ「一体、あの人は何時もどこで何をしているのかしら・・・。

       フラッと出て行ったかと思えば、お金を持って帰って来る・・・。

       そしてまた・・・。あの人の後ろに見え隠れする良くない影が、

       とても気になるの・・・。いい儲け話しの仕事が見つかったか

       らと、突然会社を辞めて、あの人達と、付き合うようになって、

       急に羽振りが良くなったような気がするわ。いい儲け話しって

       一体・・・」

 

 

 

   

   

    

 

           ――――― “ライアン”2へつづく ―――――

 

 

 

 

 

 

 

 

    ※ この“マイク”と“ジェシカ”と言う名前、よーく覚えておいて

      下さい(^^)v人形劇での今年発表4作品の中の一作で、

      とても重要な人物として登場します(^.^)

 

 

    ※1 130年以上も生きるか!・・・と、言われるかも知れま

       せんが、後で、ライアンくん、ちゃんと「未来では寿命が

       延びて・・・云々・・・」と、説明しておりますので、ご安心

       を・・・^_^;

 

 

 

 

    

 

 

 ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪

 

   
    ひょっとしたら、グー版を読んで下さっている皆さんは、
   グーグル版も見て頂いているかも知れませんね^_^;

   その方達には、知った作品ですみません<(_ _)>


                                    どら。








   

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“スティーブ・ドガー” ―全10場― 3

2012年04月01日 21時44分34秒 | 未発表脚本


  アナベル「・・・スティーブ・・・」
  スティーブ「(少し慌てたように手を離す。)君達のことを良く知り
         もしないで偉そうだな・・・全く・・・。(髪を掻き揚げる。
         )」
  アナベル「(首を振る。)・・・ありがとう・・・。」
  スティーブ「ここへ来て、君達に出会って・・・今まで本当の幸せ
         の意味を、自分自身、履き違えてたような気がした
         んだ・・・。本当は・・・自分に言いたかったのかな・・・
         ?其々が外側を向いた幸せなんか、本当の幸せじゃ
         ない・・・。」
  アナベル「・・・でも頑張ってきたことに違いはないわ・・・。たとえ
        ・・・意味が違っても・・・。」
  スティーブ「・・・そうだな・・・。君のやりたいことって何だい?聞い
         てもいいかな?」
  アナベル「やりたいことを見つけること・・・」
  スティーブ「(思わず吹き出す。)・・・変わってるな・・・。でも・・・
         そこが君の魅力なんだね・・・屹度・・・。(微笑む。)」
  アナベル「(恥ずかしそうに。)そんなこと・・・。ね・・・!お仕事は
        何・・・?(スティーブをマジマジ見て。)・・・会社員・・・
        ?教師・・・?お医者様・・・な訳ないわよね・・・。(笑う。
        )」
  
         そこへ下手より、クラウニー登場。

  クラウニー「(口を挟むように。)政治家だ・・・。」

         スティーブ、アナベル振り返り、クラウニーを
         認める。

  スティーブ「クラウニー・・・」
  クラウニー「よぉ!元気そうだな。」
  アナベル「(呟くように。)・・・政治家の先生・・・」

         そこへ下手よりシャロン、走り登場。

  シャロン「スティーブ!!(スティーブに駆け寄り、抱き付く。)捜し
       たのよ!!淋しかったわ!!」
  スティーブ「シャロン・・・?如何して君が・・・」
  シャロン「いいじゃない!!」
  クラウニー「すまない・・・。上手く撒くことが出来なくてね・・・。」
  スティーブ「(シャロンの腕を離して。)おい・・・離れろよ・・・。」
  シャロン「だって久ぶりで嬉しくって!!」
  クラウニー「(アナベルを見て。)彼女が命の恩人?」
  スティーブ「ああ。アナベルだ。(アナベルに向かって。)アナベ
         ル、こいつは刑事で親友のクラウニー。」
  クラウニー「初めまして。(アナベルをマジマジ見て。)へえ・・・。
         美人の恩人でよかったじゃないか。礼のし甲斐があ
         る。(笑う。)」
  アナベル「(下を向いて。)・・・初めまして・・・。」
  スティーブ「品のない奴だな!アナベル、こいつの言うことは気
         にしなくてもいいから。それでこっちはクラウニーとよ
         く行く店の女主人でシャロン・・・。」
  シャロン「(スティーブの腕にしがみついて、アナベルを見据える
        ように。)・・・よろしく・・・。」
  アナベル「・・・こんにちは・・・。」
  クラウニー「(回りを見回して。)それにしてもエライ田舎に逃げ
         込んだものだな。(笑う。)」
  スティーブ「(シャロンを離して。)田舎だからって馬鹿にしたもの
         じゃないぜ。・・・本当にここはいい所なんだから・・・。
         (アナベルを見る。)」
  クラウニー「おいおい、長閑な風景に囲まれて、心まで闘争心消
         え失せたのんびり気分に、浸ってんじゃないだろうな
         ?」
  スティーブ「いけないか?」
  クラウニー「まあ、元の生活に戻れば、おまえはまた、休みも取
         れない仕事漬け人生に引き戻されるんだ。精々、今
         の内だけでものんびり羽根を伸ばすがいいさ。事務
         所の奴らは、てんてこ舞いしてたがね。」
  スティーブ「だろうな・・・。(思い出したように笑う。)」
  アナベル「あの・・・」

         3人、アナベルの方を見る。

  アナベル「お友達の方と、こんな所で立ち話もなんでしょう?ど
        うぞ家へいらして下さいな。」
  スティーブ「ありがとう。じゃあ、折角だから・・・。」

         スティーブ、クラウニー話しながら上手方へ
         歩き掛ける。一寸離れて2人に続くアナベル
         の側へ、意地悪そうな顔付でシャロン近寄り、
         そっと耳打ちする。

  シャロン「スティーブは恥ずかしがって言わなかったけど、私、彼
       の婚約者なの!秋には結婚するのよ!」
  アナベル「(一瞬驚く。無理に微笑んで。)・・・それは・・・おめで
        とうございます・・・。私、知らなくて・・・。あの・・・ごめん
        なさい・・・。(動揺しながら。)スティーブ!」  

         スティーブ、クラウニー振り返る。

  アナベル「私、少し用を思い出したの!家にキティがいると思う
        から、あの子にお茶の用意をさせて下さいね・・・!じゃ
        あ・・・!」

         アナベル、下手へ走り去る。

  スティーブ「アナベル?」

         3人残して、紗幕閉まる。

    ――――― 第 6 場 ――――― B

  クラウニー「またシャロンの悪い病気が出た・・・。」
  スティーブ「・・・彼女に何か言ったのか・・・?」
  シャロン「さあ・・・。(白々しく。)」
  スティーブ「彼女に何を言ったんだ!!(思わずシャロンの腕を
         掴む。)」
  シャロン「如何したの・・・!?何時もなら、私があなたに言い寄
       ってくる女を追い払ったって、全然無関心だったじゃない
       !?」
  スティーブ「(手を離して横を向く。)」
  クラウニー「・・・おまえ・・・ひょっとして・・・惚れたか・・・?」
  シャロン「冗談でしょ!?まだ出会って数日じゃない!!それに
       彼女だって、あなたのこと好きだって言ったの!?」
  クラウニー「言わなくたって、今の態度を見りゃ分かるよ、誰だっ
         て・・・。またどうせ“私、スティーブの恋人なの”とか
         何とか言ったんだろ?」
  シャロン「秋に結婚するって言ったのよ!!」
  クラウニー「おいおい・・・。」
  
         スティーブ、下手へアナベルを追い掛けよう
         とする。

  クラウニー「スティーブ!!」

         スティーブ、振り返らずに立ち止まる。
 
  クラウニー「追い掛けてって如何するつもりなんだ?“君が好き
         だ!!”とでも言うつもりか?今のおまえの立場を
         よく考えてみろよ・・・。どんな汚い手でも使う、あの
         ジェラルド・マクレーニ氏に命を狙われてるんだろ?
         それに、こんなのんびりした田舎で暮らす彼女を、都
         会の雑踏の中へ放り込むなんて、俺には出来ないね
         ・・・。おまえのパートナーになる女性は、将来ファー
         スト・レディになるかもしれないんだぜ。」
  シャロン「私が?」
  クラウニー「(溜め息を吐いて。)残念だが、君も無理だよ、シャ
         ロン・・・。」
  シャロン「如何してよ!!」
  クラウニー「・・・それより・・・持って逃げた機密書類は、何処に
         あるんだ・・・?」

         スティーブ、ゆっくり振り返り、クラウニーを
         見る。音楽でフェード・アウト。

    ――――― 第 7 場 ――――― A

         紗幕開く。
         フェード・インする。と、1場の森の風景。
         中央アナベル、淋しそうに佇み歌う。

         “何故こんなに心が悲しいの・・・?
         今までと変わりはない
         朝陽が今日も昇り
         ただ何時もの一日が過ぎて行く・・・
         なのに何故こんなに締め付けられる
         思いが溢れ返るよう・・・
         儚い世の常と同じ
         ただ当たり前の日々の流れに
         一光の夢に似た
         憧れが降り注いだ・・・
         それに思いの丈を込めた
         今は通り過ぎた日々・・・
         なのに何故・・・
         こんなにも心が・・・
         囚われたままなの・・・?”

         アナベル、溜め息を吐いて、中央にあった岩の
         上へ腰を下ろす。

         “何故訳もなく涙が溢れるの・・・
         やっと巡り会えた愛しい人・・・
         叶うことのないこの思い・・・
         ただ戸惑いだけが心に広がるの・・・”

         そこへ下手より、そんなアナベルの様子を見て
         いたように、アヴェリー登場。
  
  アヴェリー「アナベル・・・」

         アナベル、振り返ってアヴェリーを認め、
         立ち上がる。

  アナベル「・・・アヴェリー・・・(横を向いて、涙を拭う仕種をする。
        無理に微笑んで。)何か用?ローズ小母さんの薬草
        なら、後で私が届け・・・」
  アヴェリー「(アナベルの言葉を遮るように。)アナベル!!あい
         つのことで・・・あいつのことでそんな悲しそうな顔を
         してるんだろ・・・!?」
  アナベル「・・・え・・・?」
  アヴェリー「・・・君は、ここにはいない都会の匂いのしたあいつ
         が、珍しかったんだ・・・。」
  アナベル「・・・珍しいなんて・・・」
  アヴェリー「・・・あいつのこと・・・好きになったんだろ・・・?」
  アナベル「(思わず顔を逸らす。)」
  アヴェリー「あいつが、この村へ来たせいで・・・君が涙を流さな
         けりゃならないなんて許せないよ!!」
  アナベル「・・・違うわ・・・。」
  アヴェリー「違うものか!!あんな奴、好きになったところで、所
         詮、都会に自分の暮らしがあって、そこへ帰ってしま
         うんだ・・・!!思うだけ無駄だよ!!・・・僕なら・・・
         僕なら君にそんな悲しい顔は絶対にさせない!!約
         束するよ!!君を必ず守っていく!!だから・・・」
  アナベル「・・・アヴェリー・・・」
  アヴェリー「・・・結婚しよう・・・!!何があっても、僕は君に涙だ
         けは流させない・・・!!だから、あんな奴のこと、忘
         れてしまえよ!!」
  アナベル「・・・。(暫く考えるように下を向く。)」
  アヴェリー「アナベル・・・僕なら君を置いて何処へも行かないよ
         ・・・。」
  アナベル「・・・。(一時置いて、アヴェリーを見詰め、ゆっくり頷く
        。)」
  アヴェリー「・・・(呆然とする。)・・・それは・・・イエス・・・ってこと
         ・・・?」
  アナベル「(心持ち淋しそうに微笑んで、頷く。)」
  アヴェリー「(アナベルの手を取る。)OKしてくれるんだね・・・?」
  アナベル「・・・ええ・・・。」
  アヴェリー「やっ・・・やったぁ!!(飛び上がる。)本当に!?本
         当に結婚してくれるんだね!?」
  アナベル「・・・私なんかでよければ・・・。」
  アヴェリー「当たり前じゃないか!!君でなけりゃ駄目なんだ!
         !君を愛しているんだから!!(思わずアナベルを
         抱き締めるが、ハッとして手を離す。)・・・ごめん!!
         だけど、今日は何て最高の日なんだ!!アナベル!
         !早速、皆に報告に行こう!!」

         アヴェリー、アナベルの手を引っ張って、
         上手へ去る。
         音楽流れる。
         下手よりスティーブ、ゆっくり歌いながら
         登場。

         “何故こんなに心が痛むのか・・・
         久しく忘れていた自責の念・・・
         戻れば今までと何ら変わりのない
         ただ毎日が忙しく過ぎ去って行く・・・
         なのに何故こんなに締め付けられる
         思いが溢れかえるよう・・・
         人々の往来に自分自身も身を任せ・・・
         ただそれが当たり前の毎日と
         だけど触れた初めての
         温かな安らぎに・・・
         今は通り過ぎた日々・・・
         なのに何故
         こんなにも心が
         囚われたままなんだ・・・?”

         スティーブ、いない相手を思って、その胸に
         抱くように踊る。

         “何故訳もなくただ恋しい・・・
         やっと巡り会えた愛しい人・・・
         叶うことのないこの思い・・・
         ただ空しさだけが心に溢れる・・・”

         そこへ上手より、息を切らせたキティ、走り
         ながら登場。スティーブを認め、駆け寄る。

  キティ「いた!!スティーブ!!(息を整えるように。)」
  スティーブ「(振り返ってキティを認める。)・・・如何したんだい・・・
         ?そんなに慌てて・・・。」
  キティ「大変よ!!姉さんが、アヴェリーのプロポーズを受けた
      って!!」
  スティーブ「・・・え・・・?(平静を装いながら、動揺は隠せないよ
         うに。)」
  キティ「たった今、アヴェリーが舞い上がって村中、報告して回っ
      ていたのよ!!如何するの!?」
  スティーブ「・・・如何するって・・・」
  キティ「(興奮して。)姉さんも姉さんよ!!如何して今まで断わ
      り続けてたプロポーズを、今になって受けるだなんて!!
      ね!!アナベルのこと、好きなんでしょ!?」
  スティーブ「・・・キティ・・・」
  キティ「私にだって分かるわよ!!2人の様子見てたら、まだ知
      り合って少ししか経ってないけど、お互いが惹かれ合って
      るってことくらい!!」
  スティーブ「・・・確かに彼女は魅力的で・・・素敵な女性だと思っ
         ている・・・。」
  キティ「はっきりしないのね!!愛してるんでしょ!?だったら、
      如何してプロポーズしないの!?知り合った日数なんて
      関係ないじゃない!!姉さん、アヴェリーと結婚しちゃう
      かも知れないのよ!!それでもいいの!?」
  スティーブ「・・・君のように、好きな気持ちだけで行動に移せた
         ら・・・と・・・そう思うよ・・・。」
  キティ「・・・如何言う意味・・・?」
  スティーブ「・・・今はまだ駄目なんだ・・・。今は・・・まだ・・・」
  キティ「如何して駄目なの!?そんなこと言ってたら、手遅れに
      なるのよ!!ねぇ、スティーブ!!」
  スティーブ「・・・彼女を危険に巻き込むことになるんだ・・・。」
  キティ「危険に巻き込む・・・?如何言うこと・・・?」
  スティーブ「・・・こんなことなら・・・こんな風に苦しむなら、この村
         へ来るんじゃなかった・・・。いっそ出会わなかった方
         が・・・!!」
  キティ「・・・男らしくない・・・男らしくないわ!!あなたが現れて、
      焦って姉さんに我武者羅にアタックして、OKを勝ち得た
      アヴェリーの方が、余程男らしいわ!!」

         キティ、上手へ走り去る。

 スティーブ「キティ!!・・・男らしくない・・・か・・・。確かに自分でも
        そう思うよ・・・。」

         スティーブ、空しそうにポケットに両手を
         突っ込み、一寸前へ。
         紗幕閉まる。

    ――――― 第 7 場 ――――― B

         紗幕前。
         スティーブ、俯き加減で下手方へ行きかけると、
         電話のベルが鳴る。スティーブ、ズボンのポケット
         から携帯電話を取り出し話す。

  スティーブ「・・・はい・・・」

  アイザックの声「スティーブか?」

  スティーブ「・・・警部?」

  アイザックの声「ああ、そうだ。如何した、エラク落ち込んでるよ
            うな声だな?」

  スティーブ「・・・ちょっとね・・・。」

  アイザックの声「綺麗な村で、命の洗濯をしてるんじゃなかった
            のか?」

  スティーブ「それより電話は禁物じゃなかったのか・・・?」

  アイザックの声「・・・内通者が分かったんだ・・・。」
  
  スティーブ「え?」

  アイザックの声「・・・残念だが・・・」

  スティーブ「・・・まさか・・・?」

         驚きの表情のスティーブで、フェード・アウト。











    ――――― “スティーブ・ドガー”4へつづく ―――――













― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ 


   (おまけフォト^^;)

   

    春公演作品の登場人物(?)達の、生首状態です^_^;

   そろそろ、本格的に春公演の準備を進めないと、4月に入って
   しまいました・・・と言うことで、病院で作り貯めた“犬達”のお顔
   に、今日は昼から家に帰って来たので、綿を詰めてボンドを乾
   かしているところです(^^)v
   明日からは、このお顔に体を付けていきます♥

   因みに、中央の濃い黄色のお顔は、主人公ジュリーちゃんの
   愛犬“プッチくん”です(^^)
   














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