アイザック「(首を傾げる。)全く不思議な・・・夢とも現実とも分か
らない・・・。きっとおまえにこんな話しをしたところで、
笑い話しにも聞いてはもらえないだろうが・・・。もう随
分、昔に亡くなった・・・ジュディに出会ったんだ・・・。」
スティーブ「え・・・母さんに・・・?」
アイザック「スティーブ・・・亡くなった者を追い求めることを美化
するんじゃないぞ・・・。我々はいつも歩いているんだ
・・・。決して後ろを振り返るなと言っている訳ではな
い・・・。ただ歩き続けることは必要なことなんだ・・・。
たとえ一歩も進めない時期があろうとも、その場でも
いい、足踏みをして歩けるようになる努力をすること
は大切なことなんだよ・・・。足踏みすら忘れてしまっ
たら、もうお仕舞いだ・・・。もっと大きくなれる・・・。お
まえならもっと素晴らしい絵が描ける・・・。誤解させ
たことは悪かった・・・」
スティーブ「・・・父さん・・・」
アイザック「いつもおまえのことを気にかけていた・・・。ただ私が
世間に知られ過ぎていたが故に、おまえは選択の余
地なくこの道に進み・・・そしていつも私と比べられ・・・
辛い思いを強要させてきたかも知れない・・・。私が
おまえのところに頻繁に顔を出していれば、それこそ
世間はおまえを“親の七光り”だと見ただろう・・・。私
は私なりに考えて、敢えておまえを一人にしたのだ
・・・それだけは分かって欲しい・・・」
アイザック、下手方へ行こうとする。
スティーブ「父さん・・・!」
アイザック、振り返る。
スティーブ「・・・僕は・・・絵を描くことが好きですよ・・・とても・・・
。こんな楽しみを仕事に持てたきっかけは父さん・・・
あなたがいたからです・・・。僕はいつも父さんの影に
隠れ・・・いつまでも父さんを追い越すことが出来ず・・
・自分自身、萎縮していたのです・・・。こんな駄作の
絵を見ても、有名画家である父さんの息子の僕が描
いたこの作品達を、訳も分からず絶賛する人々がい
る・・・。それが僕にはどうしても耐えられなかった・・・
でも・・・今ここで父さんと話すことが出来て・・・何か
吹っ切れたような気がします・・・。僕は一人の芸術
家として、いつか必ずあなたを追い越すことを約束し
ますよ。もう迷わない・・・」
アイザック「(嬉しそうに微笑む。)ああ・・・楽しみにしている・・・」
アイザック、行きかける。
スティーブ「・・・父さん!母さんは・・・優しい人でしたね・・・。亡
くなった今も、僕達をずっと見守ってくれている・・・」
アイザック「ああ・・・」
スティーブ「父さん・・・僕も不思議な森で、風になった母さんと
出会いましたよ・・・」
アイザック「・・・スティーブ・・・」
スティーブ「今度、ゆっくり食事にでも行きましょう・・・」
アイザック「ああ・・・そうだな・・・」
アイザック下手へ去る。
いつの間にか一人の娘が絵を見ている。
アイザックと入れ代わり、上手よりマーク
登場。娘に近寄る。
マーク「あの、もう閉館時間過ぎてるんで、申し訳ないですけど
・・・」
娘「(マークに気付き。)あ、ごめんなさい。」
スティーブ「ああ・・・マーク、構わないさ、少しくらいなら・・・」
マーク「珍しいですね、先生。豪く優しいじゃないですか。(笑う。
)」
スティーブ「馬鹿野郎・・・。まえも、もう帰っていいぞ。」
マーク「えー、本当ですか!?」
スティーブ「ああ・・・」
マーク「それじゃあ、お言葉に甘えて・・・!お先です!」
マーク、頭を下げ下手へ去る。
スティーブ「(マークに手を上げる。)」
娘「私、あなたの絵がとても好きなんです・・・。嫌なことがあって
も、あなたの明るいタッチの絵を見ていると、元気になれるわ
・・・。」
スティーブ「ありがとう・・・」
娘「サインして頂けますか?」
スティーブ「どうぞ・・・」
娘「(ペンをスティーブに差し出す。)」
スティーブ「(ペンを受け取り、驚いた面持ちをする。)・・・この・・・
ペン・・・」
娘「素敵なペンでしょ?私の宝物なんです。でも、いつから私の
元にあるものなのか分からないの・・・。気が付けば、いつも
私の側にあったもので・・・」
スティーブ「・・・この傷・・・まさか・・・」
娘「ここにお願いします。(手帳を渡す。)」
スティーブ、サインする。
娘「ありがとうございます!」
スティーブ「・・・あの・・・!」
娘「はい・・・」
スティーブ「・・・名前は・・・」
娘「アリス・ジョー・・・」
スティーブ「アリス・・・(嬉しそうに微笑んで。)それでは、レディ・
アリス・・・ご一緒にお茶でもいかがですか?」
娘「本当に?・・・ええ、喜んで・・・!」
スティーブ「直ぐに支度するので、入り口で待ってて下さい。」
娘「ええ。」
娘、下手へ去る。
スティーブ、椅子の上から上着を取り、羽織る。
音楽流れ、スティーブ歌う。
“忘れていた時は・・・
誰もが心に持つ
優しい思い出・・・
風が運んでくる
温かな香りと共に
満たされる思い出・・・”
スティーブ、母親の絵を外し、三脚に
ポケットから取り出した絵(ミニ・レディ・アリスの絵)
を貼り付ける。
外した絵を提げて下手方へ。
電気のスイッチを切ると、舞台暗くなる。
音楽大きくなり。
――――― 幕 ―――――
さて、それでは次回からの掲載作品について、お話し
しておきたいと思います(^_^)
以前、「1作品だけしかありません」と言ってご紹介したこと
のある日本物の脚本でしたが、今回の作品と同じころに
多分書いたんだと思いますが、下書き状態のまま、放って
あった日本物の作品が1本見つかりました(^.^)
次回はそちらをご覧頂こうかと思います(^_^)v
次回作も、夢とも現実とも分からない・・・と言った感じの
お話しで、日本物作品ではありますが思いっきりミュージカル
的な書き方をした“藤川信次”、お楽しみに♪
― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪
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スティーブ「ああ・・・父さんを壁のように感じ・・・追い越そうとす
る前から、追い越せないと思い込んでいた・・・。何も
かも否定していたんだ・・・。一緒に頑張ってみない
か・・・君とは住む世界は違うが、お互い同じところを
目指す者同士として・・・。」
トリーズ「同じところを・・・目指す者同士・・・」
音楽流れ、スティーブ歌う。
“先ず前を向いてみよう・・・
顔を上げて
すると自然と目に入る
本当に目指すもの・・・
先ず可能性に賭けてみよう・・・
ほんの少しでも
チャンスがあるなら
一歩を踏み出してみよう
諦めるなんて馬鹿げてる
後ろを向いても仕方ない
行動すれば
必ず結果は付いて来る・・・
勇気だけを持てばいい!!” ※
トリーズ歌う。
“行動すれば・・・
必ず結果は付いて来る・・・
勇気だけを持てばいい・・・”
スティーブ「ああ・・・そうだ。」
トリーズ「(今までと顔付きが変わり、希望に溢れた瞳でスティ
ーブを見る。)分かりました・・・僕は壁を乗り越えてみま
す・・・自分自身の壁を・・・!!」
スティーブ「よし・・・その意気だ!!頑張れよ、次期王様!!(
トリーズの肩に手を掛ける。)」
トリーズ「・・・はい・・・!!」
スティーブ「・・・じゃあな!」
スティーブ、手を上げて上手へ走り去る。
トリーズ「ありがとう・・・ありがとう!!(手を振る。)」
トリーズ、呟くように歌う。
“勇気だけを持てばいい・・・”
一時置いてツリー、下手より走りながら登場。
ツリー「大変だ!!トリーズ!!」
トリーズ「(振り返ってツリーを認める。)どうしたんだい?」
ツリー「またリーフ達が・・・どうしよう!!今度こそ、あいつら皆、
フォーレストのところへ引っ張って・・・」
トリーズ「(堂々とした口調で。)その必要はない。僕が行こう。」
ツリー「・・・トリーズ・・・?」
トリーズ「態々父さんに森林裁判で裁いてもらうこともないだろう
。僕が行って皆を治める。僕がこの国の次期国王だか
らね・・・!!」
ツリー「トリーズ・・・(嬉しそうに大きく頷く。)」
2人、下手へ去る。
音楽で暗転。
――――― 第 7 場 ―――――
上手よりスティーブ、ゆっくり登場。
(静かな音楽流れ、優しい風が戦ぐ。)
下手より少年登場し、スティーブの様子を
じっと見詰めている。
スティーブ「何だろう・・・とても心が落ち着く感じだ・・・。丸で何
かに守られているような・・・。心が優しい思いで満ち
溢れていく・・・。訳もなく懐かしいようで・・・ここが・・・
やすらぎの国・・・?(視線に気付き振り返る。)・・・
スティーブ・・・君はスティーブだろ?」
少年「漸く、迷いが吹っ切れたようだね。」
スティーブ「え・・・?」
少年「あなたの瞳から陰りが消えたよ。もう大丈夫だね。」
スティーブ「・・・どう言うことなんだ・・・君は一体・・・」
少年「もう分かっている筈だよ。」
スティーブ「分かる・・・って・・・何を・・・」
少年「あなたは僕だってこと・・・(微笑む。)」
スティーブ「君が・・・俺・・・?」
少年「(頷く。)今まで見て来た色々な国は、あなたの心の中の
世界・・・。ギルバート先生に友達のランディ・・・フォーレスト
は父さんの影・・・トリーズはあなたの分身・・・それに僕・・・
」
スティーブ「アリスは・・・?アリスなんて少女、知らないぞ・・・?」
少年「さぁ・・・それは僕にも分からない・・・。でもここへ迷い込ん
だのは、あなたの心が迷っていたから・・・。あなたが自分
自身の存在の意味を見失って、現実の世界から逃避しよう
とした時、迷いの国の扉は開かれる・・・。あなた自身を取り
戻す為に・・・。」
少年、静かに歌う。
“そして自分を見つけた今・・・
再び扉は開かれる・・・
優しい風に見送られ・・・
もう迷うことはない”
スティーブ、呼応するように歌う。
“自分自身を取り戻した今・・・
再び立ち向かう・・・
現実の山々を越え・・・
たとえ躓いても・・・”
2人、歌う。
“自分を見失うことはない・・・”
少年「僕は絵を描くことがとても好きだよ・・・。いつまでも好きな
絵を描き続けられるといいな・・・。」
スティーブ「ああ・・・そうだな・・・描き続けられるさ、きっと・・・」
少年「うん・・・」
その時、下手より一人の女性(ジュディ)登場。
(その姿は、1場の額の絵の女性。)
ジュディ「・・・スティーブ・・・何しているの・・・?早く帰っていらっ
しゃい・・・。」
少年「(振り返って嬉しそうに。)母さん!!」
スティーブ「・・・(呆然と。)・・・母さん・・・」
少年「この間描いた母さんの絵!コンクールで金賞を取ったん
だ!!」
ジュディ「まぁ・・・本当に?」
少年「でも・・・クラスメイトの奴らが言うんだ・・・僕が賞を取れた
のは、父さんのお陰だって・・・。父さんがいなきゃ、金賞な
んて取れなかったって・・・」
ジュディ「そうね・・・でも、それは違うわ・・・。あの絵は紛れもな
くあなた自身が描いたあなたの絵・・・。母さんはあの絵
が一番好きよ・・・。とても温かな感じがするもの・・・。お
父さんの絵とは全然違うわ・・・。あの絵はあなたが、あ
なたの心で描いた初めての絵・・・。だからとても嬉しい
わ・・・。そしてこれからも、もっとあなたが描きたいと思
ったものを、あなたの心で描き続けていって頂戴・・・。も
しまた迷うようなことがあったら・・・私はいつでもあなた
の風になってあげるわ・・・。あなたの心の雲を取り除く
風に・・・(呆然と佇み、2人の様子を見ていたスティーブ
を見て、優しく微笑む。)」
少年「うん!!」
スティーブ「・・・母さん・・・(言葉に詰まる。)」
ジュディ「さぁ、帰りましょう・・・」
少年、ジュディ、寄り添うようにゆっくり
下手へ去る。
スティーブ「・・・母さん・・・母さん!!」
その時、突風が吹き抜ける。
スティーブ「わあっ!!(風を避けるように身を屈める。)」
暗転。
ジュディの声「あなたはあなたよ・・・スティーブ・・・」
舞台明るくなる。と、中央にベンチの
置かれてある公園の風景。
ベンチに倒れていたスティーブ、気付いて
呆然と周りを見回し、ゆっくり立ち上がる。
スティーブ「・・・ここは・・・夢を・・・見ていたのかな・・・(フッと微
笑んで。)・・・いや・・・確かに迷い込んだ不思議な国
は、本当にあったんだ・・・」
音楽流れ、スティーブ歌う。
“そして自分を見つけた今・・・
再び扉は開かれる
優しい風に見送られ
もう迷うことはない・・・
自分自身を取り戻した今・・・
再び立ち向かう
現実の山々を越え・・・
たとえ躓いても
自分自身を見失うことはない・・・”
暗転。
――――― 第 8 場 ―――――
舞台明るくなる。と、1場の個展会場風景。
数人の客が熱心に絵に見入っている。
上手よりスティーブ登場。客に声をかけて
いる。
一時置いて、下手よりスティーブの父
(アイザック)登場。スティーブを認め、ゆっくり
近寄る。
アイザック「スティーブ・・・」
スティーブ「(アイザックを認め。)・・・父さん・・・」
アイザック「久しぶりだな・・・。どうだ?初日は盛況だったそうじ
ゃないか・・・。」
スティーブ「・・・ええ・・・」
アイザック「どうしたんだ、そんな気の抜けたような顔をして・・・」
スティーブ「・・・父さんこそ・・・。どうして態々こんなところへ・・・
?今までただの一度だって、僕の個展会場へ足を運
んでくれたことなどなかったのに・・・」
アイザック「・・・近くまで来たついでだ・・・。忙しくしているようじ
ゃないか・・・。」
スティーブ「ええ・・・お陰様で・・・」
アイザック「(絵を見ながら。)・・・何か迷いでもあるのか・・・?」
スティーブ「・・・え?」
アイザック「作品は嘘を吐かないぞ・・・。話してみないか・・・?」
スティーブ「・・・一体何を話すんですか・・・今まで散々放って置
いたくせに・・・今更・・・」
アイザック「何だ、何か拗ねているのか?」
スティーブ「ばっ・・・!!馬鹿言わないで下さい!!」
アイザック「私がおまえを一人にしたのは、おまえの為になるこ
とだと、確信していたからだ・・・。」
スティーブ「・・・僕の為・・・?」
アイザック「もしおまえがいつまでも私の影に隠れ、守られたま
まこの道に進んだとしても、今程の作品を本当にお
まえが描けるようになったと思うか・・・?」
スティーブ「・・・ええ・・・」
アイザック「違うな・・・。仕上がりは同じように描けても、おまえ
はもっと小さな芸術家にしかなれなかっただろう。今
のおまえは、なんと言われようと私がいたから有名
になったのでもなんでもない・・・。この作品達は、迷
いを持ちながらも嘘偽りない、おまえの分身達だ・・・。
その証拠に・・・そこに飾ってある絵・・・」
スティーブ「それは・・・!」
アイザック「母さんだ・・・。おまえがまだ小さい頃に書いた・・・。
何故おまえが今も、その絵を飾り続けているのか分
からないが・・・その絵の中の母さんは、生きている
とは言えないな・・・。自分でもよく分かっているだろ
う・・・?確かに書いた頃は、コンクールで賞をもらっ
た絵だ・・・。悪くはない・・・。だが、今のおまえなら、
そんな風な絵は描かない筈だ・・・。私の元を離れ・・・
おまえは成長したんだよ、確実に・・・。人気があるの
は今のおまえの絵で、その昔の母さんの絵じゃない
・・・。」
スティーブ「父さん・・・」
アイザック「・・・昨夜・・・奇妙な体験をしたんだ・・・」
スティーブ「奇妙な体験・・・?」
――――― “風になる・・・”5へつづく ――――――
9月15日(土)
すみませ~ん(>_<)
スティーブのお母さんの名前が、コロコロ変わっていた
ことに、今、気付きました~(-_-;)
正解は“ジュディ”さんです^^;
一応、書き直したのですが・・・もしまだ直ってない箇所
があれば、お許し下さい<(_ _)>
・・・にしても・・・
シンディさんとは・・・どこから出てきたのでしょう・・・^_^;
※ この“歌詞”・・・今の私自身に贈りたいです・・・(>_<)
訳は・・・ここでは言えないですけど・・・^^;
“ヤフー版”には少し・・・イロイロと書いていますので、
興味がおありでしたら、またそちらもどうぞ・・・(^_^;)
― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪
(どら余談^^;)
去年、呼んで頂いた区役所のお祭り公演に、今年もお声掛け
して頂きました"^_^"
作品は・・・何で行こう・・・と、今考え中でありますが、
こうやってまた呼んで頂けると言うのは、嬉しいことですね♪
9月14日(金)
今日は夏休み後、初めての人形劇練習日でした(^_^)
まだ正直、殆ど準備は手付かずで、これから始動し始める・・・
と言った具合ではありますが、後1ヶ月半で全ての公演準備
を滞りなく済ますことができるように、団員一同頑張って進ん
で行こうと思っています^_^;
(おまけフォト^^;)
夏休みにお邪魔した小学校で、可愛いお知らせポスターを
作って下さってたみたいで、今日、団員を通じて頂くことが
出来ました(*^_^*)
可愛く作って頂いてたポスター、折角なので皆さんも
ご覧下さい♪
色々な部分で、沢山の方達の協力を得て・・・これからも
その協力者が増えそうな、まだまだ未熟で発展途上の
リトルパイン・・・
正直、何の為に続けているのか、その意味を見失いかけた
今夏ではありましたが、今またその答えを見つけたようで、
また続け様の3公演に向け、頑張って行こうと、心新たにした
今日の練習日でありました^_^;
引き続き・・・まだまだこれからも歩き続けるリトルパインを・・・
そしてドラを・・・ヨロシクお願い致します。
どら。
時々、思い出したようなこんなご挨拶・・・^_^;
あまり気になさらず、読み流して下さいね
http://milky.geocities.jp/little_pine2012/index.html
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http://blogs.yahoo.co.jp/dorapontaaponta
ゲルダ「(顔を上げてフロルを認める。)」
フロル「どうして泣いているの?何か悲しいことがあるの?(ゲ
ルダの涙を拭うように。)僕に話してみない?力になれる
かも知れないよ。」
ゲルダ「・・・誰・・・?」
フロル「僕はフロル。人々を幸せにして歩くのが、僕の仕事なん
だ。泣いてる君を放っておけないよ。」
トロル「(ボソッと。)お節介な奴め・・・」
ゲルダ「・・・私の恋人が急に冷たい人になってしまったの・・・」
フロル「(驚いたように。)・・・冷たい人・・・って・・・?」
ゲルダ「(頷く。)ほんの今さっきまでは、彼程、心温かで優しい
人は、この世にいないと思えるくらい、愛情溢れる人だ
ったのに・・・。それなのに急にカイは・・・私を傷付ける
言葉を残して何処かへ消えたの・・・(涙ぐむ。)」
フロル「・・・鏡の破片が心に刺さったんだ・・・」
ゲルダ「・・・鏡の破片・・・?」
フロル「そのカイが消える時、何か言ってなかったかい?何処
かへ行くとか・・・」
ゲルダ「・・・(一時考えるように。)・・・雪の・・・女王・・・僕はあな
たに付いて行く・・・そう言ってたわ・・・。」
フロル「雪の女王・・・?彼女に気に入られたのか・・・早く行かな
きゃ大変だ・・・」
ゲルダ「・・・大変・・・?」
フロル「うん。雪の女王に気に入られた者は皆、彼女の城へ連
れて行かれ、その内、体全部が氷に閉じ込められ、心ま
でもなくなった人形のようになり、二度と感情は戻らない
・・・」
ゲルダ「そんな・・・」
フロル「大丈夫!僕達がカイを見つけ出して、鏡の破片を取り
出せば、カイの心は温かさを取り戻す。そうすれば氷に
閉じ込められても、早いうちなら心が氷を溶かしてくれる
んだ。カイは助かるよ!」
フロル、ゲルダの手を取って歌う。
トロル、ゴロンと横になり、気だるそうに
見ている。
“心配しないで
君のその涙を無駄にはしない
温かな心を取り戻す
優しい思いが
きっと全てを救い出す
安心おしよ
僕は幸せに導く天使さ!
心配はいらない
君が流した涙の分だけ
優しさ溢れる心に出会う
思いは全て
誰にも正直で嘘はない
不安は無用
僕は幸せを運ぶ天使さ!”
フロル「だから安心おし!(トロルの方を向いて。)おい!!また
一つ破片の行方が分かったよ!!雪の女王のとこだ!!
」
トロル「(起き上がって。)聞こえてるさ・・・そんな大声で叫ばなく
ても・・・。雪の女王っていやぁ、この鏡の本家本元・・・み
たいなもんだから、ちょっとばかし手強いかもしんねぇなぁ
・・・。(笑う。)」
フロル「笑ってる場合じゃないよ!さぁ、ラップランドへ出発だ!
」
フロル元気よく、トロル溜め息を吐きながら、
上手へ行こうとする。
ゲルダ「・・・待って!!」
フロル「(立ち止まり振り返る。)どうしたの・・・?」
ゲルダ「私も連れて行って!!」
フロル「連れてって・・・って・・・僕達が今から向かうのはラップ
ランドだよ!?あそこは一年中、雪と氷に覆われた場所
なんだ!ここの冬より、何十倍も寒いところなんだよ!!
」
トロル「人間には無理無理・・・」
ゲルダ「そんなに辛いところなら尚更よ!!カイはそこにいるん
でしょ!?そんなところで雪の女王に捕まって、どんな
に心細いでしょう・・・。私はそんなカイを一人放って、何
もしないであなた達の帰りを待つなんて出来ないもの!
!お願い連れて行って!!カイのところへ!!」
トロル「おい、分かってんのか、おまえ?自分の言ってること、よ
おく考えてみなよ。北極だぜ、北極!そんなところに・・・」
フロル「・・・分かったよ・・・」
トロル「(驚いたように、フロルを見る。)・・・えっ?」
フロル「一緒に行こう!!君のその温かな気持ちが、僕達が行
くよりずっと簡単にカイを救えるかも知れないからね!」
トロル「おい、フロル!!おまえ、何言って・・・」
フロル「いいじゃないか!どうしても行きたいって言ってるんだ
から!」
トロル「オイラ知らねぇぜ・・・」
フロル「行こう!!ラップランド!!」
ゲルダ「(嬉しそうに頷く。)」
トロル「(呆れたように。)・・・ヤレヤレ・・・」
暗転。
――――― 第 3 場 ―――――
ガラスの割れる音が聞こえ、人が叫ぶ。
人の声「こらーっ!!誰だ、一体!!」
明るくなる。
上手より一人の少年(クラウス)、走りながら
登場。
クラウス「(上手方を見て。)へへーんだ!!ざまあ見ろってん
だ!!・・・ふん・・・畜生!!なんかむしゃくしゃする!!
なんか無性に暴れ回りたい気分なんだ!!」
音楽流れ、クラウス歌う。
“何故だかイライラする!
何故だか腹が立つ!
どうしても我慢できないんだ
無性に暴れたいんだ
悪戯したら皆があたふたする
悪戯したら皆の堪忍袋の緒が切れる
愉快じゃないか
こんな楽しいことはない!”
クラウス「あああ・・・何か悪戯はないかなぁ・・・。お次はどんな
ことをやって、皆を怒らせてやろう!そうだなぁ・・・昨日
はシスターの洋服のポケットに、冬眠中のカエルを入れ
てやったんだ!!(楽しそうに。)あの時のシスターの驚
いた顔ったら・・・(笑う。)傑作だな!それからその後、
昼食用のじゃがいものスープの中に、胡椒を丸ごと一
瓶、打ち込んでやったんだ!!それから・・・」
その時、下手よりシスター、困ったような
面持ちで登場。クラウスを認め、ゆっくり
近寄る。
シスター「(溜め息を吐いて。)・・・クラウス・・・こんなところにい
たのですね・・・。何故あなたは近頃、直ぐに乱暴を働
くのかしら・・・。この間までホームの子ども達の、いい
お兄さんだった筈よ・・・?昨日もゾラが、あなたに髪の
毛を木に結び付けられたって泣いてたわ・・・。本当に
いけない子・・・」
クラウス「煩いなぁ!!あいつ泣き虫だから、見ててイライラす
るんだよ!!悪戯ならもっと一杯やったぜ!!さぁ、お
仕置きでも何でもすればいいさ!!鞭で打つなり、食事
を抜くなり!!その代わり、その鞭はその辺の木屑み
たいにバラバラに・・・腹が減ったらパン屋へ行ってパン
を頂戴するまでだ!!(笑う。)」
シスター「クラウス・・・!困ったわね・・・。(溜め息を吐く。)・・・
痛っ・・・(胸を押さえる。)・・・何かしら・・・(段々と表情
がなくなる。)」
クラウス「さぁ、早いとこお仕置きしろよ!!」
シスター「・・・そうねぇ・・・そんなに悪い子は・・・台所の大釜で
煮てしまおうかしら・・・。それとも冬の寒空の下、一晩
中、木に縛り付けておきましょうか・・・(クスッと笑う。)」
クラウス「ばっ・・・馬鹿野郎!!そんなことしたら死んじまうだろ
!!」
シスター「そうかも知れないわねぇ・・・。でもあなたは早くお仕
置きして欲しいんでしょう?」
クラウス「それは・・・そう言ったけど!!」
シスター「どちらがいいかしら?どちらでも好きな方を選んでい
いのよ。(微笑む。)」
クラウス「どっちもご免だ!!」
シスター「そう・・・どっちも嫌なの・・・。でも、それじゃあ、あなた
は反省しないものね・・・。そうね・・・私と1対1の勝負
をする・・・?」
クラウス「1対1・・・?」
シスター「丁度いいものを持っているわ・・・(ポケットから折り畳
みナイフを2本取り出し、1本をクラウスの方へ投げる
。)」
クラウス「(ニヤリと笑ってナイフを拾う。)・・・OK・・・!」
2人、其々構えて斬り付け合う。
その時、上手より登場したフロル、ゲルダ、
2人のただならぬ様子に驚いて駆け寄る。
フロル「ちょっ・・・ちょっと!!何やってるんだい!?」
フロル、シスターとクラウスの間に割って
入るように。
シスター「邪魔だ!!」
フロル「邪魔・・・って・・・その格好から、あなたは確かに神様に
お仕えする方・・・」
クラウス「早く退けよ!!」
ゲルダ「どうしてそんな風に戦っているの!?」
シスター「この子が心ない悪戯ばかりするもので、ちょっとばか
しお仕置きをね!!」
クラウス「シスターこそ、俺を殺そうとしたんだ!!やられる前に
やるだけだ!!」
ゲルダ「フロル、この人達の言ってること可笑しいわ!!」
フロル「(何かに気付いたように。)・・・ちょっと失礼!(シスター
の左胸元に手を翳す。)」
シスター「(凄い形相で。)何するんだ!!やめろ!!やめ・・・
(気を失う。)」
ゲルダ「(驚いて駆け寄る。)どうしちゃったの!?この人・・・!!
」
フロル「大丈夫!心にガラスの破片が刺さってたんだ!まだ入っ
て間もない破片はこうやって、簡単に取り除くことができる
んだよ。」
ゲルダ「・・・ガラスの破片の威力で・・・こんな風になっちゃうの
・・・?」
呆然と見ていたクラウス、何か悟ったように
ゆっくり下手方へ。
フロル「(クラウスに気付いて。)待つんだ!!」
クラウス、立ち止まる。
フロル「君の心の中も見せてもらおうかな?」
クラウス「・・・俺は何も!!」
フロル「それはどうだろう?(クラウスの方へ手を翳す。)」
クラウス「あ・・・!!やめてくれよ・・・!!ちょっ・・・」
クラウス苦しそうに跪き、身を丸める。
シスター「(気付く。)う・・・ん・・・(起き上がる。)・・・私・・・?(ク
ラウスを認め、その様子に驚いて駆け寄る。)クラウス
!!どうしたの!?クラウス!!」
クラウス「(シスターを認め。)・・・先生・・・?」
シスター「ああ、よかった!!(クラウスを抱く。)」
クラウス「(恥ずかしそうに。)苦しいよ、先生・・・」
シスター「驚いたわ・・・。心配かけないで・・・。」
クラウス「ごめんなさい・・・。でも・・・僕、どうしちゃったんだろう
・・・。なんだか頭がボーッとして・・・(周りを見回して。)
どうしてこんなところにいるのかな・・・?」
シスター「さぁ、ホームへ帰りましょう・・・。皆があなたの帰りを
待ってるわ・・・。」
クラウス「はい!!そうだ、僕、ゾラに紙人形を作ってあげるっ
て約束してたんだ!!」
シスター「そう・・・(微笑む。)」
シスター、クラウス、2人の様子を微笑ましく
見ているフロル、ゲルダのことは気にせず、
通り過ぎ下手へ去る。
ゲルダ「よかった・・・!!鏡の破片さえ取り除けば、元の優しい
人間に戻るのね!!」
フロル「うん、そうだよ!」
ゲルダ「じゃあ、カイもきっと大丈夫ね・・・!!」
フロル「勿論さ!」
ゲルダ、希望に瞳を輝かせ、遠くを
見遣る。
暗転。
――――― 第 4 場 ―――――
上手方、スポットに胡坐を掻き、手鏡を
持ったトロル、浮かび上がる。
トロル「チッ!!放っときゃあいいのに・・・。もう少しで面白い戦
いが見れたかもしれないんだぜ!オイラなら黙って見て
るがねぇ・・・」
下手方スポットに、フロル浮かび上がる。
フロル「放っとけないよ!!元は皆、優しくていい人達なんだ!」
トロル「元が優しい人間だなんて、どうして分かるのさ!」
フロル「分かるよ!!それを鏡の破片のせいで、あんなにいが
み合ったり傷付けあったりするなんて・・・。」
トロル「それが楽しいんじゃねぇか!(笑う。)考えただけで愉快
極まりないねぇ・・・!」
フロル「そんなことばっかり言ってると、また女王様の怒りに触
れることになっても知らないよ!」
音楽流れ、トロル歌う。
“そんなものにビクビクしてちゃ
悪いことなんて出来ないぜ”
フロル、呼応するように歌う。
“やっていいこと いけないことの
区別くらい出来るだろ?”
トロル「区別なんてつかねぇ!!」
呆れた表情のフロル、フェード・アウト。
トロル歌う。
“オイラにとっちゃ いけないことも
オイラが楽しきゃそれでいいのさ
誰に非難されようと
オイラはやりたいようにやる
オイラはトロル 小鬼なんだ
その呼び名の通り
オイラはオイラの道を行く!”
トロル「残る破片は、後一つ・・・(鏡を見る。)」
暗転。
――――― “ゲルダ”3へつづく ―――――
― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪
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アリス「彼女は、期待の国の住人ではあるけれど、彼女のお母
さんは期待外れの国の人なの・・・。それで彼女、時々嘘
を吐くのよ・・・。きっとスティーブのことも、本当は何も知
らなかったんだと思うわ・・・。ごめんなさい・・・。」
スティーブ「何も君が謝らなくてもいいさ。」
アリス「でも私が嬉しそうに、あの棒をバネッサに見せびらかし
たりしなければ・・・」
スティーブ「あんなもの、たいしたことないよ。俺は外では書くも
のに不自由したことがないくらい、いつもペンは山の
ように持ち歩いているからね。(ジャケットを広げて見
せる。と、内ポケットにペンがズラッと並んでいる。)」
アリス「まぁ、本当!!(クスクス笑う。)」
スティーブ「(その内の1本を取り出し、アリスの方へ差し出す。
)はい・・・」
アリス「・・・何・・・?」
スティーブ「・・・さっきの万年筆に比べると、随分安物だけど・・・
すごく書き易くて、いつも自分のカンバスにサインす
る時に使っているものなんだ・・・。これを君にあげる
よ・・・。」
アリス「でも・・・」
スティーブ「ほら!スティーブが“やすらぎの国”の住人だって、
君が教えてくれたんじゃないか。」
アリス「・・・本当にもらっていいの・・・?」
スティーブ「ああ・・・」
アリス「(そっとペンを受け取る。)わぁ・・・」
スティーブ「そこに薄っすら傷が残ってる・・・」
アリス「(ペンを見て。)・・・本当・・・」
スティーブ「思い出の傷だ・・・」
アリス「どんな?」
スティーブ「(微笑んで。)それは秘密だよ。」
アリス「もう!」
舞台、薄暗くなり、下手スポットに一人の
少年とその母親、浮かび上がる。
(スティーブの回想。)
母親「・・・どうしたの?」
少年「もう絵なんて描かない・・・描きたくない!!こんなペン、
いるもんか!!(握っていたペンを、床に叩き付ける。)」
母親「何故?あんなに描くことが大好きだったじゃない・・・」
少年「皆が言うんだ!!僕の絵は父さんのコピーだって!!」
母親「(ペンを拾う。)・・・違うわ、スティーブ・・・あなたの絵はコ
ピーなんかじゃない・・・。あなたの絵はあなた自身が描い
たもの・・・。誰が何と言っても、母さんはあなたの描く絵が
世界中のどんな名画家が描いた絵よりも大好きよ・・・。」
少年「・・・母さん・・・」
母親「書く物を粗末にしないでね・・・。ペンはあなたに命を吹き
込まれて、真っ白なカンバスに色々な絵を描けることを、と
ても喜んでいるのよ・・・。一番のお気に入りでしょ?このペ
ン・・・(ペンを差し出す。)」
少年「(ペンを受け取り見る。)・・・傷が・・・ごめんなさい・・・」
2人フェード・アウト。
舞台明るくなる。
スティーブ「(一瞬、恥ずかしそうにフッと笑う。)・・・思い出の・・・
ペンなんだ・・・」
アリス「そんな大切なペン、私なんかが・・・」
スティーブ「いいんだ・・・。何故か君に持ってて欲しくて・・・」
アリス「ありがとう・・・あなたの代わりに、私が大切にするわ・・・」
音楽流れ、2人歌う。
“何故だか分からないけれど
何かを予感させる不思議な国
それが期待の国・・・
何の確信もない筈なのに
何故か未来が明るく輝くように
胸ときめく期待の国・・・”
アリス「・・・さよなら・・・」
スティーブ「さよなら、ミニ・レディ・アリス・・・」
スティーブ、スポットに浮かび上がり歌う。
“遠い昔の思い出は
忘れられない心の片隅に
今も微かに蘇る
優しい日が心を過ぎり
温かな思いで満たされる
自分の生きた証がそこにある・・・
生まれた意味を確信する
遠い昔の思い出に
今解き放たれる為
答えを探し出す為に
風になりたい・・・”
暗転。
――――― 第 6 場 ―――――
舞台明るくなる。
舞台中央に一本の大木(森の王“フォーレスト”)
眠っているように立っている。
下手前方に三角座りした一人の青年(トリーズ)
静かに歌う。
“この森は権力の森・・・
誰もが自分の権力を誇示する
それが当たり前かのように
自分のことだけ能弁ふるまく
忘れられた大切なこと
気付いていないだけかも知れない
何か大切なこと
誰もが自分中心のこの国で
自分のことだけを正当化する
強いものだけが勝ち残る
この国は誰もが認める
権力の国・・・”
その時、上手より一人の青年(ツリー)
走り登場。
ツリー「トリーズ!!大変だ!!リーフ達が・・・!!」
トリーズ「(立ち上がり。)どうしたんだい、ツリー・・・」
ツリー「リーフ達が、また喧嘩を始めたんだ!!何とかしてくれ
よ!!」
トリーズ「何とかって・・・今、父さんは眠ってるんだ・・・起こせな
いよ・・・。」
ツリー「何もあいつらをここへ引っ張って来て、森林裁判でフォ
ーレストに裁いてもらわなくても、君でいいんだ!!」
トリーズ「僕でいいって・・・」
ツリー「そうさ!君は次期この森の王じゃないか!!ちょっと僕
と一緒に来て、あいつらにパパッと説教してくれれば、そ
れで“はい、おしまい”!全て丸く治まる!」
トリーズ「そんな・・・僕にそんな説教なんて・・・出来ないよ・・・」
ツリー「何言ってるのさ!!フォーレストの息子である君には、
その力がある!!」
トリーズ「僕が行かなくても・・・君が仲裁に入れば・・・」
ツリー「僕じゃ駄目に決まってるだろ!?僕ら一般国民には、
権利の主張は出来ても、自らを裁くなんて出来ないんだ
!!だからトリーズ!!頼むよ!!」
トリーズ「僕はそんな力なんて・・・」
ツリー「気弱だなぁ!!そんな風にグズグズ言ってるうちに、リ
ーフ達の喧嘩が段々飛び火して、この森中、大火事だ!
!」
トリーズ「けど・・・」
フォーレスト「相変わらず、だらしのない奴だな・・・」
トリーズ、ツリー、フォーレストを見る。
トリーズ「・・・父さん・・・」
ツリー「フォーレスト!」
フォーレスト、目覚める。
フォーレスト「ツリー達がおまえに来て欲しいと言ってるんじゃな
いのか?何故そこで後込みするんだ。そんなこと
では、わしの後、この森を守ることなど到底出来な
いぞ。」
トリーズ「僕は・・・僕はこのままでいい・・・僕に森の王なんて無
理だ・・・」
フォーレスト「このままでいい・・・?」
トリーズ歌う。
“僕は・・・
何も望んでいない・・・
僕は・・・
今のまま何も変わらない・・・
この平穏な世界に浸って
静かに暮らしたい・・・
争いは嫌だ・・・
喧嘩なんて真っ平だ・・・”
フォーレスト、呼応するように歌う。
“情けない・・・
何て気弱なことを言う・・・
情けない・・・
そんなことでは落ち着けない・・・
好い加減一人で立派に生きてみろ
いつまで私に気を持たせる
いつまで私に言わせるんだ
しっかりしろと!!”
トリーズ「僕は・・・父さんのように力もないし・・・森林裁判で皆
を裁いたり・・・バラバラになった者達を纏めるなんて・・・
到底出来ないよ・・・」
フォーレスト「おまえがそんなことで、この国の将来はどうなるん
だ。そろそろおまえが根を張って、この大地に足を
つけ、新しいリーフ達を育てなければ、この国の未
来はないんだぞ?」
その時、下手よりスティーブ、走りながら
登場。
ツリー「誰だ!!」
スティーブ「(周りを見回す。)・・・っと・・・ここは・・・(フォーレスト
を認め。)古い大木の支配者・・・権力の国・・・」
フォーレスト「人間か・・・。何か用か・・・?」
スティーブ「いや・・・用って訳じゃないんです・・・(フォーレストの
顔をマジマジと見る。)」
フォーレスト「何だ・・・」
スティーブ「・・・父さん・・・?」
フォーレスト「父さん?」
スティーブ「あ・・・いや・・・すみません、あまりに父に似ていたも
ので・・・」
フォーレスト「それで、何の用もない人間が何故この国にやって
来たのだ。」
スティーブ「あ・・・直ぐ出て行きます。実は、やすらぎの国に住む
少年を捜してて・・・」
ツリー「迷い人か・・・」
スティーブ「・・・まぁ・・・」
フォーレスト「では早く出て行きたまえ・・・。我々は今、忙しいの
だ。」
スティーブ「・・・はい、お邪魔しました。」
スティーブ、ゆっくり上手方へ。
フォーレスト「それでトリーズ・・・」
スティーブ「(振り返り。)あの・・・!!」
ツリー「なんだ!?」
スティーブ「やすらぎの国と言うのは(上手を指して。)こっちで
・・・」
ツリー「ああ!!」
スティーブ「どうも・・・」
スティーブ、再び上手方へ行きかけるが、
立ち止まり3人の話しに耳を傾ける。
フォーレスト「おまえがしっかりと自分の立場を弁え、それに見
合った王にならなければ、この国の将来は真っ暗
闇になるのだ・・・。」
トリーズ「・・・そんなこと・・・言われても・・・」
フォーレスト「初めから分かり切っていることではないか。私の
息子であるおまえが、次期王であることは全国民
周知のこと。」
トリーズ「でも僕には・・・自信が・・・僕には無理です・・・。僕に
は出来ない・・・」
トリーズ、スティーブ、スポットに浮かび上がる。
トリーズ「僕には・・・」
スティーブ「何故、そんなに臆病風に吹かれるんだい・・・?」
トリーズ「(スティーブを認める。)」
スティーブ「何故そんなに気弱なんだ・・・」
トリーズ「だって・・・僕には・・・」
スティーブ「だって・・・何だい?」
トリーズ「だって・・・父さんが・・・偉大過ぎるんです・・・。それに
僕は・・・父さんのように皆を纏める知恵も・・・皆を押さ
え込む力もない・・・僕に次期王なんて・・・到底無理な
んです・・・」
スティーブ「・・・違うな・・・」
トリーズ「・・・え・・・?」
スティーブ「・・・俺にも・・・君と同じような父親がいるんだ・・・」
トリーズ「・・・同じような・・・?」
スティーブ「だから君の気持ちはよく分かる・・・。君と同じように
いつも萎縮した生き方をしてきたからね・・・。世界が
認める偉大な画家である父親を持ち、それ故に画家
の道を余儀なくされ、自分でどんなに駄作だと思って
も、世間はその駄作を褒め称える・・・自分の意思な
どあってもなかったような人生を歩んできたんだ・・・。
」
トリーズ「・・・本当に・・・?」
スティーブ「君がそんな態度を続けたら・・・じゃあこの国はどうな
るんだい・・・?」
トリーズ「それは・・・」
スティーブ「どんな国でも、権力のある者が必ずしも力の強い者
だと限った訳ではない・・・。腕力では到底立ち向かう
ことが出来ないと思うなら、君は心の大きな権力者
になればいいじゃないか・・・。何も権力を笠に着て、
力任せに国民達を纏めなくても、心から信頼される
本当の王になることを考えてみたらどうなんだい・・・
?」
トリーズ「・・・僕には・・・出来ない・・・」
スティーブ「僕には出来ない・・・と後ろを向く前に、僕なら何が出
来るか・・・僕なら何を国民の為に出来るかを考えた
らどうなんだ・・・。折角、与えられた地位じゃないか、
皆が座りたくても・・・簡単に座れる王座じゃないだろ
う?」
トリーズ「・・・じゃあ、あなたはどうなんですか・・・?あなたも世
界に騒がれる自分に、なりたくてなった訳ではないんで
しょう・・・?」
スティーブ「・・・確かに・・・父親の恩恵を受ける身分を、疎ましい
と思ってきた・・・。自分一人の力でのし上がってみた
かった・・・。だけど、その望みがどうしても叶わないの
なら、今与えられたものを幸せと思い、その幸運を最
大限に生かしながら、自分に出来るベストのことを考
えてみることは、大切なことなんじゃないのか・・・?
それがたとえ・・・自分でない誰か他の人の為である
ことでも、自分がそれにかかわっていることで、その他
の誰かが幸せになれるのなら、それでいいじゃないか
・・・。」
トリーズ「僕にはあなたのような、自信がありません・・・」
スティーブ「自信なんてないさ・・・。俺だって・・・いつも目の前に
大きく立ち塞がる父親の壁を、追い越せるかなんて
・・・そんな自信はこれっぽっちもないんだ・・・。だけど
やってみなきゃ、出来るか出来ないかさえ分からな
いじゃないか・・・。・・・そうなんだ・・・出来るチャンス
を与えられたことを、ありがたいと思える心の大きさ
を持てた時こそ、自分自身が漸くスタートラインに立
てた時なんだ・・・。」
トリーズ「逃げ出そうと思ったことは・・・?」
スティーブ「・・・正直に教えてやるよ・・・。いつも思ってた・・・。」
トリーズ「・・・本当に・・・?」
スティーブ「ああ・・・ここへ来る前は、もう今度こそ全てを投げ出
して、山奥にでも逃避してしまおうかと考えてたんだ
・・・。(フッと笑って。)・・・逃げ出すことしか考えられ
なかった・・・。君に偉そうに言える身分じゃないな・・・
。・・・だけど・・・今やっと分かったんだ・・・。俺が追い
越せなかったのは父さんじゃない・・・自分自身の心
壁だったんだと・・・。」
トリーズ「心の・・・壁・・・?」
――――― “風になる・・・”4へつづく ―――――
― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪
(どら余談^^;)
少し文体に???があったので、書き直ししました^_^;
どこかお分かりでしょうか・・・?
正解→スティーブさんの台詞で、ペンを沢山持ってる云々
・・・の件でした"^_^"
9月10日(月)
今日は新作(来年夏公演)作品の、初台詞練習でした(^^)
夏休み中は台詞練習はお休みにしていたので、久しぶりだっ
たのですが、今度の私の役は“元気な男の子”・・・と言うこと
で、一杯大声を出して、スッキリしました~^_^;
今回も中々・・・自分で言うのもなんですが・・・面白い作品が
仕上がるんでないかと、今からその過程がとても楽しみです
(^.^)
でも・・・少し疲れました~(>_<)
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――――― 第 12 場 ―――――
下手よりジェイ、歌いながら登場。
“いつまでも来た道しか見れなかった・・・
いつまでたっても先へ進むことが出来なかった・・・
目に見えない何かに縛り付けられて・・・
昔にかえることも
新しく歩き出すことも出来ないまま
ただ時だけが黙って過ぎてゆく・・・
だけど・・・今・・・
導いてくれるものの到来を感じ
何故か心が解き放たれて自由を思う・・・
素晴らしい予感が手を差し出し微笑む・・・
たとえ・・・
叶わない予感だとしても・・・”
そこへ上手よりロバート、走り登場。
カーテン前。
ロバート、一瞬ジェイに声をかけるのを
躊躇ったように立ち止まる。
ロバート「(思い切ったように。)ジェイ!!」
ジェイ「(振り返る。)・・・ロバート・・・どうした、まだ何か言い足り
ないことでもあるのか・・・。」
ロバート「違うんだ・・・さっきは・・・すまなかった・・・」
ジェイ「ロバート・・・別にいいさ・・・俺も言い過ぎた・・・。それに
おまえの言ったことは正しいよ・・・。あんなフィルム1本
の為に・・・」
ロバート「もういいんだ!!おまえが・・・どんな気持ちであの写
真を使ったか、もっと考えるべきだったんだ・・・。ただ
俺は、あれを見て頭にカッと血が上ってしまって・・・。
ジェシーの死が無意味なことに変えられてしまったよう
で・・・。俺なんかより・・・ずっと辛い思いをしたのは、
おまえなんだもんな・・・。おまえのこと、分かってるつ
もりだったが・・・情けないよ・・・」
ジェイ「今まで俺は・・・ただ自分が許せなかった・・・何故あの時
、ジェシーを行かせたのか・・・何故ジェシーを守ることが
できなかったのか・・・その思いに雁字搦めにされて、一
歩も前へ進むことも・・・勿論過去へ戻ることもできなかっ
た・・・。あの写真は・・・ジェシーそのものなんだ・・・。彼
女が最後まで守って離さなかった・・・あの写真が・・・ジェ
シーが生きていた証なんだ・・・。ジェシーがここにいた・・・
(自分の両手の平を見詰める。)」
ロバート「ジェイ・・・」
ジェイ「(微笑んで。)愛していたよ、本当に心から・・・。おまえも
同じだな・・・」
ロバート「(微笑んで。)おまえには負けるよ・・・」
ジェイ「(思い出したように。)キャロルに謝らないと・・・。酷いこと
を言ってしまった・・・。」
ロバート「俺もだ・・・」
ジェイ「白状する・・・俺も彼女が好きだ・・・彼女自身が・・・」
ロバート「ジェイ・・・自由競争だぜ!」
ジェイ「勿論、望むところだ!」
2人、握手して笑い合う。
ジェイ「向日葵か・・・全くそのとおりだな・・・」
その時、上手よりシモン、駆け込んで来る。
シモン「(慌てて。)大変だーっ!!」
ジェイ「シモン・・・?」
ロバート「どうしたんだ、一体・・・」
シモン「(息を切らせて。)大変だよ、ジェイさん!!ホテルが・・・
ホテルが軍隊の攻撃を受けて火事に・・・!!」
ロバート「何だって!?」
ジェイ「・・・シモン!!それでキャロルは!?」
シモン「それが一旦は僕らと外に逃げ出して無事だったんだけど、
何か大事なものを部屋に忘れてきたからって飛び込んだ
まま出てこなくて・・・!!危ないから止めろって言ったん
だけど振り切られて・・・」
ジェイ「あの馬鹿・・・(思わず上手へ走る。)」
ロバート「(慌てて。)ジェイ!!どうするつもりだ!!」
ジェイ「勿論、助けに行く!!」
シモン「(絶望した声で。)もう無理だよ!!」
ジェイ「・・・俺はもう二度と大切な者を失いたくはないんだ!!」
ジェイ、上手へ走り去る。
ロバート「ジェイ!!」
シモン「ジェイさん!!」
暗転。
――――― 第 13 場 ―――――
カーテン開く。
ホテルの建物の前には、大勢の人々が
騒いでいる。建物は攻撃を受けた後らしく、
無惨に破壊され煙の流れる中、炎が見え
隠れする。
上手よりジェイ、走り登場。
ジェイ「(外にいたシバを見つけて駆け寄る。)シバ!!キャロ
ルは!?」
シバ「(オロオロと。)あ、ジェイさん!!それが奥様は中に入
られたきりまだ・・・」
ジェイ、建物の中に駆け入ろうとする。
シバ「無茶です!!(慌ててジェイを抱き止める。)」
ジェイ「離せ!!(力付くでシバを突き放し、建物の中に入る。)」
シバ「ジェイさん!!」
そこへ上手よりロバート、シモン走り登場。
シモン「(シモンに駆け寄り。)ジェイさんは!?」
シバ「それが中に・・・」
ロバート「あいつ!!」
シモン「ロバートさん!!このままじゃ2人共死んじゃうよ!!」
ロバート「糞う!!」
ロバート、ドアから入ろうとして開けると、
中から煙が流れ出る。
ロバート「うわっ!!ジェイ!!(中に向かって叫ぶ。)」
シバ「もう・・・駄目だ・・・(呆然と。)」
シモン「馬鹿野郎!!なんてこと言うんだよ!!」
ロバート「(再び中に向かって叫ぶ。)ジェイ!!キャロル!!」
ロバートの叫び声が木霊して、一瞬の
静けさが辺りを包む。
一時置いて、ジェイ、キャロルを抱き抱えて
出て来る。
ロバート「ジェイ!!キャロル!!(興奮して駆け寄る。)」
シモン「ジェイさん!!(ロバートに続く。)」
ジェイ「(キャロルを下ろして。)・・・大丈夫か・・・?」
キャロル「(頷く。)」
ジェイ「(少し照れたように。)・・・おまえに謝らないと・・・さっき
は・・・酷いことを言ってごめん・・・」
キャロル「・・・ジェイ・・・」
ジェイ「・・・心配かけやがって・・・」
キャロル「・・・ジェシーの写真が・・・(涙声になる。)ごめんなさ
い・・・」
ジェイ「何言ってるんだ!!」
キャロル「・・・だって・・・あなたの一番大切にしてた・・・ネガだ
ってもうないって、ロバートが・・・」
ジェイ「(キャロルの言葉を遮るように。)確かにあれは大切な
ものだった・・・。だけど今の俺には、あの写真よりもお
まえの方が大切なんだ!!」
ロバート、一瞬驚いた面持ちをするが、
直ぐに優しく微笑み、シモンの肩に手を
掛け、シバには目で合図して、2人から
そっと離れ下手へ去る。
いつの間にか舞台上、ジェイとキャロル
を残して皆立ち去る。
ジェイ「何よりもおまえを失ったら俺は・・・」
キャロル「私が・・・ジェシーに似ているからでしょう・・・」
ジェイ「馬鹿野郎!!俺はおまえがジェシーに似ていなくても、
おまえに惚れてたよ・・・おまえ自身に・・・。それにジェシ
ーの笑顔ならここに・・・(胸を押さえる。)」
キャロル「本当・・・に・・・?」
ジェイ「当たり前だ!!(恥ずかしそうに。)おまえはジェシーと
は全然違うよ・・・。ジェシーはもっと女らしかったからな
・・・。」
キャロル「酷い!!」
ジェイ「冗談だよ。(笑う。真面目な顔付きになって。)・・・愛し
ているよ・・・」
キャロル「・・・私もよ、ジェイ!!(抱き付く。)」
ジェイ、立ち上がってキャロルの手を取る。
キャロル、導かれるように立ち上がって、
2人、見詰め合い歌う。
ジェイ“いつからだろう・・・
歩くことを思い出したのは・・・
前を見詰めることが素晴らしいと
思い出したのは・・・
全てが君のお陰・・・
全ては君がいたから・・・
僕は進み出す・・・”
キャロル“いつからかしら・・・
あなたのことが特別になったのは・・・
きっと願いは叶うものと
心に誓っていたのは・・・”
2人“全てが君(あなた)のお陰・・・
全ては君(あなた)がいたから・・・
僕(私)は進み出す・・・”
ジェイ、キャロルの頬に触れる。
その時、ジェシーの声が微かに響く。
ジェシーの声「・・・おめでとう・・・」
ジェイ「(驚いたように見上げて。)・・・ジェシー・・・?」
キャロル「どうしたの?」
ジェイ「あ・・・いや、何でもないよ・・・(微笑む。)」
――――― 幕 ―――――
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