鹿児島県の愚かな浪費… 人口減少は行政の変わり目
過疎化や人口減少の中で、住民の貴重な移動手段を守るために自治体が、金と知恵を出すのは使命ともいえるだろう。が、需要をつくり出すために無理をして自治体職員が利用者になり、その費用を公費から支出するとなると、どうだろう。先月10日から鹿児島県が順次、職員300人を派遣している上海研修がそれである。
研修は、鹿児島空港の上海直行便を維持するために計画された。同便は14年8月に就航し、週4往復が運航されていた。しかし、昨年夏の反日暴動後、搭乗率が5割を切ったため、今年3月からは週2往復に減便された。定期便が消える危機感を抱いた同県が発案したのが、前代未聞の職員1000人派遣の研修利用だった。3泊4日で1人当たりの経費、すなわち支出公費は11万8000円。県民らの批判を浴びて派遣規模は300人に修正されたが、計画は順次、実施されている。
航空便は地元には大切な機関である。なくなれば、さらなる人口減少を生み、税収も減って住民サービスが低下する。だから、公費投入は地域社会を守る必要な投資ということだが、人口減少はすでに日本の自然現象だ。自然の流れに逆らうにはとてつもない労力と費用が要る。それでもあえてやる価値と、将来への見通しを、それぞれの自治体が見いだしているのかを問いたい。
日本の人口は20年の1億2800万人をピークに減少基調に入っている。32年には全都道府県で人口が減り、52年には全国の7割の市区町村で人口減少率が20%を超える。人口は慣性で動く。日本ほど少子化が続けば、将来の親になる数が決まっているため、増加基調に戻ることは至難に近い。人口減少を前提とした国や社会の形を考えることが避けられないわけで、地方政治や行政はすでに、この大枠の中で政策を考える時代に入っている。
これからの日本に必要なことは縮小を恐れず、屈せず、効率第一の国づくりを進めることだ。この時代の変わり目が理解できず、目先の利益に目を奪われて小手先の政策を行えば、鹿児島県のような愚かな浪費になる。全国の自治体には、他山の石にしてほしい。
出典:「産経新聞 電子版」2013/08/19 08:46 http://www.iza.ne.jp/news/newsarticle/politics/localpolicy/677745/
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