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天才 田中角栄を見つめ直す⑮ 新幹線-2

2022-11-18 18:38:56 | 持続可能な社会づくり

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┗■ 日本列島改造論のバックボーンは、工業再配置と交通網の整備

  角栄は政治家として「日本じゅうの家庭に団らんの笑い声があふれ、年寄りが穏やかに余生を送り、青年の目に希望の光が輝く社会」をつくることを究極の目的としていた。
 国土開発こそ角栄が政治家を志した動機そのものだった。日本列島改造論はこの角栄の目標を形にするため、の具体的な戦略を指し示していた。

ではその具体的な戦略とは ー。
 煎じ詰めれば工業再配置と交通網の整備がその骨格だった。

   出典:  「田中角栄のふろしき」前野雅弥著 p95 日本経済新聞出版社:2019年発行

◆ 新幹線は国土開発のための戦略的な交通インフラ!! 
     「田中角栄のふろしき」前野雅弥著 p95-99 日本経済新聞出版社:2019年発行

 国土開発こそ角栄が政治家を志した動機そのものだった。日本列島改造論はこの角栄の目標を形にするための具体的な戦略を指し示していた。

 ではその具体的な戦略とは ー。
 煎じ詰めれば工業再配置と交通網の整備がその骨格だった。開発から取り残された農村への工場の再配置、都市機能の分散と、寂れてしまった農村を経由しながら中核都市をつなぐ交通網の整備だった。
 とりわけ新幹線の整備には並々ならぬ情熱を見せた。日本列島改造論のなかでもきっぱりとこうだ。
「新幹線鉄道のメリットについては、もはや多言を要しない」
 九〇〇〇キロメートルの新幹線の整備によって「日本列島の主要地域を一日行動圏にする」ことを提唱した。
        (略)

大切なのは新幹線を通すことで地方が過疎から抜け出せることだと考えた。
「むしろ人口の少ない地域に駅を計画的に作り、その駅を拠点にして地域開発を進めるようにしなければならない」
 新幹線を日本の均一的な国土開発のための戦略的な交通インフラと位置づけた。
 そしてもう一つ、角栄が重視したのが道路だった。
 角栄は道路には日本列島に背骨を通す一方で「面」を形成する力があると見ていた。特にインターチェンジは線と面の結節点で、ここを起点に街をつくりだそうと考えていた。インターチェンジができればそこに流通基地が集まり、工業団地ができる。人も増えていくと見たのだ。
       (略)
 もともとの『日本列島改造論』は地域間格差の問題に政治主導で向き合おうとする角栄の政治家としての気概が起点となっていた。これは事実だ。
 日本列島を俯瞰し、交通インフラという動脈を一気に走らせ日本列島を丸ごと起き上が
らせてしまうスケールの大きな発想は角栄が「宰相の大きな器であることの証拠でもあった」と(総理秘書官だった)小長啓一*、は言う。

*小長啓一(1930年- ):大臣官房長、産業政策局長を経て、通商産業事務次官。
退官後、アラビア石油役社長、石油鉱業連盟会長を歴任。旧日本経団連副会長も務めた。

 

 

        ・・・・・・新幹線サプライチェーン戦略・・・・・・・・・・・・・・

 1987年の分割民営化でJR九州の初代社長に就任の石井幸孝氏は、『国鉄ー「日本最大の企業」の栄光と崩壊』(2022年8月刊 中公新書)で、未来を見据えての新幹線のあり方について、次のように提言している。

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┗■ 新幹線物流を日本列島の大動脈に  p350-

 新幹線は、細長い日本列島という弱点を解消する最大の武器である。中長距離では、速達性において自動車をはるかに上回り、大量輸送において航空機をはるかに凌いでいる。これからの経済の安全保障には、サプライチェーンの強化とそのリーダー機能の保持が重要である。特に、食料自給率については現状の37%からの飛躍的向上が緊急性を有している。
 国際交流・国際貢献のため、基礎資源の乏しい我が国は、世界の交流拠点を目措きねばならない。そのためには、遅れている、「ハブ空港」と「ハブ港湾」を早急に整備しなければならない。新幹線をうまく使った「複合型ハブ空港」と「複合型ハブ港湾」を考えることである。(略)
 国鉄の分割民営化以降、鉄道にとって最大の変化は、鹿児島から函館、近い将来に札幌まで、新幹線による大動脈が完成することである。この30年間に、国内的にも国際的にも社会環境は大きく変わり、日本は、人口減少・高齢化社会に突入しつつある。自然災害やテロなども、ひとたび発生すれば、影響がはかりしれなくなった。今こそ、物流によって、列島ブロック間のきずな「絆」を構築しておかなければならない。人口が減少し、旅客需要が減少しているからこそ、人口増大時代に造った巨大インフラの新幹線を物流装置として活用できる。(略)

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┗■  新幹線全国網完成、最強のサプライチェーンに p369-
  新幹線は、なし崩しに消えていった赤字ローカル線とは違う。最強のッールとして国家は 「1R新幹線会社」 をつくり、守るべきだ (まずはコンソーシアムづくりから)。国家と国民がつくってきた鉄道遺産を再活性化し、次世代に活かしていかねばならない。
 北海道から九州まで、完成しっつある 「新幹線大動脈」 は、東京~大阪間を除いては、旅客だけでは投資効果がないことは明らかになりつつある。だが、旅客の乗らない区間こそ、物流のドル箱になる。しかも、やがては東京~大阪間にも3本の新幹線ができる。物流に使わねば需要の未来はないのである。

 

 

 

 

 

 

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