CM「キューサイ青汁」
「まずい! もう一杯!」の青汁のコマーシャルで知られる悪役俳優・八名信夫さん。現在84歳,サングラスを外すとすっかり好々爺の面持ちだが,80歳を過ぎてから映画監督に挑戦。東日本大震災の被災地で出会った少年の言葉に衝撃を受け,「自分にも何かできないか」と考えたのが,映画を作って支援をすることだった。60年の俳優生活で蓄えた私財を投げ打ち作った映画の収益は,義捐金に当てているという。
八名さんのボランティア活動は,昨日今日始まった付け焼き刃の思いつきではない。年期が入っている。1983年春,悪役商会結成と同時に,ボランティア活動を始めていというから,今年で38年目の地道な取り組みである。また,熊本県山鹿市の国重要文化財「八千代座」で舞台を披露するなど,地域振興にも尽力している。この間の事情は,著書『こんにちは八名信夫です』(データハウス発行)に書かれているので,後述する。
先頃,ラジオの文化放送「大竹ゴールディンワイド」に出演の際には,車も売り払い映画作りを通じてボランティア活動に取り組む八名さんの思いに感激の番組女性スタッフ号泣・・・・。女泣かせの八名さんでもある。
八名さんは,今年が俳優人生60年目の節目とし,「自分が体験・蓄積してきてできるものは映画で、被災地を助ける少しでも力になる」と思いを語る。
私生活では30年ほど前に離婚。一人でスーパーに買い物に行き,料理も作っているという。
・・・・・・・・・・・・・・・・・ 八名語録 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
悪役商会のボランティア
出典:『こんにちは八名信夫です』 八名信夫著 p166~P169
「本当に来てくれるんですか」 と,よく事務所に電話が入る。
時間の許す限り,でかけて,唄ったり,立ち回りをしたり,お年寄りや障害者の方々に楽しんでもらう。
「俺達,悪いことぽっかりやってきたから,この辺で,良いこともしなきゃ。罪ほろぼし」
昭和五十八年春,悪役商会を結成した時,ボランティア活動も始めた。
刑務所は,全国全てのところから断られた。
「あんた達が来ると刺激が強すぎて,更生中の者に悪い影響を与える」
十五年前は,俺たちも,悪のイメージが強かったから,断られても仕方なかった。
それならばと,老人ホームを訪ねることにした。
そこでも,
「すいません,急に皆さんがいらしたら,お年寄りがびっくりしますから,まず,窓ふきから」
四階建てのピル,十二人で手分けして,水道流して窓ふきをした。
汗びっしょり。
水もかかるから,みんなパンツ一丁。
家でもこんなことしたことない。
それでも初めてのボランティアだから,一生懸命窓をふいていると,
部屋の中のお年寄り達が手をふっている。
「エツ?」
どこの部屋でも手をふっている。
窓をふいている姿が,手をふっているように見えたんだ。
「それでは,もう皆さん,お年寄りになじまれたので,中に入って下さい」
そして,食堂で,唄やおしゃべり,お年寄りの好きな芝居の寸劇。
一緒に悪役を体験(?)してもらう悪役教室。
四十分位のステージをする。
お年寄り達が,また来て下さいネと,見送って下さるから,
「今度は歯ブラシもって来ますよ」
などと笑って別れる。
帰り道,
「オィ,何だか,いいもんダナ」
「良い気分だ」
「良いことをするって,こんなことなんだ」
とか口々に言って別れた。
それから,折あるごとに,重症心身障害児の集いや,老人ホームの訪問を続けている。
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