福島第1,第2の両原発の原子力緊急事態宣言は,“世の中に“絶対”はない,ということを再認識させる出来事である。しょして,3・11東日本大震災は,企業や行政に「確率的には極めて低いはずの、想定外の大災害にどう立ち向かうべきか」という難題を突きつけた。
経営や業務を脅かす想定外の事態は,地震,風水害といった自然現象にと止まらず,情報システムのシステムダウン,企業不祥事,個人情報漏洩,さらには新型インフルエンザ流行と,多分野におよび枚挙を問わない。
◆想定の仕方
「想定」に関しては,「歴史上の出来事を時間を追って調査分析し,どのような災害が起こったか,それに先人はどのように対処してきたかを参考にすべき」との研究者の提言もある。
産業技術総合研究所http://www.aist.go.jp/)の寒川(さんがわ)旭(あきら)・招聘(しょうへい)研究員(地震考古学)の研究によると,東日本大震災規模とされる平安時代の貞観(じょうがん)地震(869年)や関東直下型地震,東海・東南海・南海地震の3連動とみられる仁和(にんな)地震など9世紀に起きた地震が,阪神大震災(平成7年)以降の地震の状況と酷似している。
こうしたことから,近い将来に首都圏直下型や3連動型地震が起きる可能性が高いと分析し,「千年に一度の巨大地震の世紀になるかもしれない」と注意を促している。
また、システムに対する要求を漏れなく聞き出す技法は、リスクを洗い出す調査にも応用できるだろう。「シナリオプランニング」という戦略策定手法を用いて未来の不確実性に対処しようと取り組む事例もある。
⇒関連ホームページ
・ 福島第1,第2原子力発電所 貞観津波再来を想定を…産総研,09年に見直し迫っていた
http://kobayashi.clever.mepage.jp/cha/cha_2/fukushima/fukushima-atomic.html
⇒⇒関連ブログ
・ 「千年に一度の巨大地震の世紀」- 首都圏直下型や3連動型の可能性も(産総研研究員の見解)
http://blog.goo.ne.jp/rk_kobayashi/e/83f693b16500d926ae436d53e0ab7fc9
・震度5クラスの地震続発 -専門家「M7級,数年は警戒を」 震災で地盤への力が一変
http://blog.goo.ne.jp/rk_kobayashi/e/ed032ba0a9d6395f12c6734f1ebe1409
⇒⇒「 集中講義を終えてーマーケティング論・5」は,2011-09-02 11:30に掲載します。
◆『未曾有と想定外』 畑村洋太郎著 (講談社現代新書・720円)
▼3・11後の日本を考えるヒント
「未曾有」と「想定外」,二つの言葉に隠れてしまった本質的な問題とは? 3月11日から原発事故調査委員会・委員長に就任するまでに,失敗学の視点から考えた大津波と原発事故。3・11後の日本を考えるヒント。
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東日本大震災の際には,防潮堤があるという安心感や,高齢者を置いていけないという情が避難の遅れにつながる例もあった。「失敗学」で知られ原発事故調査・検証委員会の委員長に就任した著者が,あの日,どんな判断が生死を分けたのかを振り返りつつ今後の防災のあり方を考える。
畑村氏は,「六つの視点」,「三現」と「三ナイ」,災害の記憶に関する「三日,三年,三十年,三百年」説,文明が進むが故に危険が高まるという考え方(ジェラルド・J・S・ワイルド教授の「リスク・ホメオスタシス論」を引きながら),内部基準・外部基準論,災難を成長の糧にする考え方を紹介している。
未曾有と想定外─東日本大震災に学ぶ (講談社現代新書) | |
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講談社 |
⇒⇒「 集中講義を終えてーマーケティング論・5」は,2011-09-02 11:30に掲載します。