三味線の伴奏で節と啖呵(たんか)を繰り出し,「泣き」や「笑い」の物語を進める浪曲(浪花節)が人気を盛り返している。戦後,浪曲は衰退したが,いま,中堅や若手による斬新でユニークな語りに,若い世代のファンもつき始めた。
落語,女性講釈師や新スターの台頭で注目が集まる講談に負けじと,浪曲も長らくの低迷を脱する気配である。
進境著しい玉川太福(だいふく)(39)は二月,落語芸術協会(芸協)の準会員となり寄席に出られるようになった。浪曲界では一九六四年に死去した二代目広沢菊春以来,五十五年ぶりの芸協入りという。太福は,「寄席はトリまでのチームプレー。和を乱さず,(持ち時間の)十五分で『浪曲って面白い』と思ってもらえるようにしたい」と自身の位置と役割を自任する。
楽天ブックス |
三月一日夜,東京・新宿末広亭。注目株の玉川太福(だいふく)(39)が,中入り後に登場すると満員の客席から「待ってました!」の掛け声。寄席では見慣れない浪曲独特のテーブル掛けがかかった演台につくと,「今日の関東地方のお天気は~」と意表を突いたまくらでつかんだ。そして新作「地べたの二人~湯船の二人」を小気味よい節回しで八分にまとめ,「ちょうど時間となりました~」と締めた。
楽天ブックス |
楽天ブックス |