ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー 無料お試し版 | |
新潮社発行 AMAZON ブレイディみかこ著 |
ヤフーニュースと本屋大賞が連携して選ぶ「2019年ノンフィクション本大賞」に英国在住のライター、ブレイディみかこさんの『ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー』(新潮社)が選ばれた。ノンフィクション本大賞は昨年創設され、今年で2回目。大賞作品はノミネート6作品の中から、書店員有志による投票で選ばれた。
第16回 新潮ドキュメント賞 ブレイディみかこ『子どもたちの階級闘争 ブロークン・ブリテンの無料託児所から』
受賞者のブレイディさんは福岡県出身で、アイルランド人の男性と結婚。英国で保育士として働き、同国で起きている社会の分断を浮き彫りにしたノンフィクション『子どもたちの階級闘争 ブロークン・ブリテンの無料託児所から』で新潮ドキュメント賞を受賞している。
ブレイディさんは「色物というか、従来のノンフィクションの王道ではない作品を選んでいただいた。感無量です」と語る。「投票した書店員さんの、『ノンフィクションの幅を広げていきたい』という攻めた気持ちの表れだと思う。私も『ノンフィクションはこういう書き方をする』という固定概念に安住せずに書いていきたい」と抱負を述べた。
◆普遍へと開かれた窓 三浦しをん
出典」「波」2019年7月号 p8-新潮社発行-
何度も笑い、何度もこみあげる涙をこらえっつ読み進めた。
プレイディみかこさんの『ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー【電子書籍】[ ブレイディみかこ ]』は、英国の「元底辺中学校」に通う息子さんの日々を記したエッセイだ。「じゃあ、子育てエッセイなのかな」と思われるかもしれないが、まったくちがう。
元底辺中学校に通っているのは、白人の労働者階級の子たちが大半だ。そのなかには貧困層の子もいる。移民の子も少数ながらいるが、やはり大半は白人だ。「白人」と一言で言っても、家庭環境や生活レベルには当然ながらグラデーションがあるし、そこへさらに「移民か否か」「白人か非白人か」といった分類項も加わってくるから、校内はものすどく複雑かつ繊細な様相を呈している。
著者の息子さんは英国で生まれ育ったが、お父さんはアイルランド人、お母さんである著者は日本人なので、この学校では「少数派」と言える。もちろん、こういった「分類」はすべてアホらしいものなのだが、実際にをの街で暮らし、学校に通っていれば、さまざまな乱轢や差別に直面することもあるし、相手の立場やルーツを慮らねばならない局面も多い。
現に息子さんは、実によく考え、感じ、相手を思いやった行動を選び取るひとなのである。友人たちとのかかわりや、周囲の大人たちの振る舞いを通し、息子さんは思考と感情を豊かに育んでいる。著者もまた、そういう息子さんと楽しく真撃に会話したり、次々に起きる騒動にさりげなく一緒に向きあったりすることで、英国のみならず、日本も含めた世界中が直面している複雑さについて、誠実に考察を深めていく。
『ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー』」は、ブレイディさんの息子が名門カトリック小学校から地元の「底辺中学校」に入学したことをきっかけに、アイデンティティーや経済格差、人種差別などさまざまな問題に直面した日々を振り返る内容。世界の縮図のような難しい問題を、悩みながらもしなやかに乗り越えていく息子の成長を軽やかにつづった。同作は今年の毎日出版文化賞特別賞も受賞した。
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┃★┃ 『ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー』 ブレイディみかこ著 p25~26
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これがその宿題だったのか、と思いながら見ていると、ふと、右上の隅に、息子が落書きしているのが目に入った。青い色のペンで、ノートの端に小さく体をすぼめて息を潜めているような筆跡だった。
ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー。
胸の奥で何かがことりと音をたてて倒れたような気がした。
何かこんなことを書きたくなるような経験をしたのだろうか。
わたしはノートを閉じ、散らばっていた鉛筆や消しゴムをペンケースの中にいれてその上に置いた。
ふと、この落書きを書いたとき、彼はブルーの正しい意味を知っていたのだろうか、それとも知る前だったのだろうか、と思った。そう思うとそれが無性に気になった。
だけどそのことをわたしはまだ息子に聞き出せずにいる。
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