高齢期の備え

高齢期の備えを考えます

高齢期の備え55:高齢期の生活の張り(6)

2019年11月04日 | 高齢期の備え
(前回からの続き)
・現状では高齢者の交流の代表的な場として「老人クラブ」、「いきいきサロン」があります。

・老人クラブは、会員数は全国のクラブの合計で500万人ですが60歳以上人口が増えているなかで年々減少しています。老人クラブは、60歳、65歳といったある年齢以上ということだけで集まるのですから様々な価値観を持つ方の集合体としてはあまり魅力がないことかもしれません。

・サロンは、約20年前から社会福祉協議会の活動の一環として始まったもので既存のものが沢山ありますが、参加しにくいという声もありますし、当事者からは次の世代が入ってこないという声を聞きます。サロンは長く参加している人間関係が出来上がっていて入りにくいことかもしれません。サロンは既存のものは自然消滅し、新たに立ち上げる、かつ消えかつ結びという形をとることが望ましいかもしれません。

・いずれにしろ、地域での人間関係が全くない場合には地域の交流の場に入ることは敷居が高く感じられ、諦めてしまうこともあります。そのため地域での人間関係は、高齢期に住むことを予定している地域で現役時代から友達作りをしておくことが望ましいでしょう。

・最も簡単なのが自治会活動に参加して地域の人間関係を作ることです。また、いきいきサロンにボランティアのお手伝いとして参加し、ご自分が高齢になり行動範囲が狭くなったときにご自身でサロンを立ち上げることも考えられます。

・さらに外出が難しくなったり介護が必要となったりしたときの生活の張りとしては、家族がいる場合は洗濯したタオルと畳む、一人暮らしの場合は介護サービスの一つであるデイサービスを利用する、ベッドにいる時間が長い場合インターネット上での会話を楽しむといったことが考えられます。ただし、インターネットの利用は現役時代に覚えておかないと難しいかもしれませんが。

高齢期の備え54:高齢期の生活の張り(5)

2019年11月03日 | 高齢期の備え
・歳を重ねるごとに心身の衰えを感じるようになります。生活の張りの視点で最も影響があるのは、行動範囲が狭くなることです。80歳代前半で数百メートル歩くことを難しいと感じる方は、平均的にみると男性は10人に2人、女性は10人に4人となります。

・そのため、行動範囲が住まいのある地域に限られてくることで生活の張りも変わり、また変えざるを得なくなります。介助を受けて旅行などを楽しむことができますが、それまでと違って制約を受けることになります。

・このように心身が衰えたときの生活の張りをどうするかです。もちろん個人の性格によるところも大きく、そうなったときには家の中でテレビを見ていれば十分生活の張りがあるという方もおられるでしょう。

・そんな先の話を今考える必要はないと思う方も多いでしょう。しかし心身が衰えた後では新しく生活の張りを考えることは難しくなります。さらに心身が衰えて外出が難しくなったり介護が必要となったりすると、住まいから外出する機会が減ります。一人暮らしになっている場合には、他者との会話も少なくなり孤独の不安が募る一方で生活の張りもなくなってきます。

・歩くことが難しくなっても外出が可能な場合には、住んでいる地域の高齢者の交流の場に参加するという生活の張りが考えられます。たとえば住まいの近くの高齢者が集まってお茶や会話を楽しむといったことが挙げられます。
(続く)

高齢期の備え53:高齢期の生活の張り(4) 仕事

2019年11月02日 | 高齢期の備え
・高齢期に無償の仕事をされている方は2~3割です。将来、無償の仕事を考えるとすると次のような選択肢が挙げられます。

・町内会などの自治組織の活動:比較的容易なのが町内会などの自治会組織への参加です。自治会は多くの場合、班長などは輪番制であることが多く参加する機会が何年かに一回はあります。そうした機会を利用して積極的に参加し、さらに役員を引き受ければ自治会の中での交流がさらに深まります。将来、自治会で生まれた人間関係を利用して後述するサロンのようなグループ活動を立ち上げることも容易になります。

・ボランティア:たとえば子供の登下校を見守るような若い世代との交流の機会は元気をもらえると思います。ボランティアを考えておられる方、自分より年下の方の指示に従えますか。ボランティアだから嫌になったら辞めればいいと思っていませんか。ボランティアは生きがいにつながるという意見がありますが、もともと積極的な性格、肯定的な見方のできる人がボランティアに参加しているのかもしれません。

・趣味の団体の役:一人だけで趣味を続けるのはその趣味がかなり強いものでなければなりません。その趣味が好き程度では続けることが難しい場合もあります。そんな場合には同好会などの団体に参加していればより続けやすくなりますし、その団体での何らかの役割を引き受ければ「しなければならないこと」がより多くなります。できれば現役を引退する前から参加しておくことが望ましいでしょう。歳を重ねるほど新しい環境への適応力がなくなってきます。

・家事:たとえば現役時代に生活費を稼ぐのは男性、家事は女性として均衡をとっている場合、男性が仕事を離れれば均衡が破れます。そこで男性も「家事」を分担して均衡を取ることも考えられえます。しなければならないことができる一方で家事が公平となり家庭内での不満が減るという効果も期待できます。

高齢期の備え52:高齢期の生活の張り(3) 仕事

2019年11月01日 | 高齢期の備え
・高齢期に働くという意味を考えてみました。

・現役時代に働く目的は、自分や家族の生活の糧を得る、自分のやりたいことや希望を実現(自己実現)する、子供の教育費を得ることなどでしょう。

・高齢期になると、子供の教育費を得るという目的はなくなり、自己実現の目的も薄くなります。また生活の糧の目的は、高齢になったときの収入や貯蓄によって一人ひとり重要性が違うでしょう。一方で高齢期では新たに「生活の張り」という目的が加わります。

・働く目的は一人ひとり異なりますが、有償の仕事と無償の仕事に分けて考えるとよいと思います。

・有償の仕事の場合、お金をもらうことになりますから義務ができます。新たに仕事を見つけ続けることの難易の順と考えられる起業、再就職、シルバーセンターへの加入、再雇用についてみます。
○起業:今までの経験を活かして個人経営をしたり、社会貢献、たとえば高齢者のための配車サービスのためのNPOなどを立ち上げたりすることが考えられます。起業や運営のための資金、必要な知識や資格の獲得といった事前準備が必要であり、また経営に失敗するかもしれないというリスクもあります。
○再就職:高齢になると希望する職種、特に事務職などは見つけることが難しくなります。自身の希望と現実の折り合いをつけることが必要であることは念頭に置いておいたほうがよいでしょう。希望にこだわり過ぎるといたずらに時間が過ぎ再就職をあきらめざるを得なくなるおそれもあります。
○シルバー人材センターの会員になる:同センターは「会員の生きがいの充実や生活の安定、また、地域社会の発展や現役世代の下支えなどを推進すること」を目的とする都道府県知事の指定を受けた法人です。希望者(原則60歳以上)は同センターの会員となってセンターから請負、委任、または派遣の形で提供される業務を行うことになります。この他職業紹介もしています。センターの従業員ではないので、業務の対価は派遣の場合を除き分配金という形で受け取ることになります。業務は、月10日程度以内の業務(臨時的・短期的業務)か目安として週20時間を超えない業務(軽易な業務)となっています(出典:シルバー人材センターの適正就業ガイドライン 2016)。収入は保証されていませんが月8~10日働いて3~5万円程度、会員数は約70万人(ここ10年は減少傾向)となっています(出典:全国シルバー人材センター事業協会)。
○再雇用:会社員の場合、再雇用の形で同じ会社に勤めることができることもあります。問題は給与などの待遇が変わることもさることながら、特に管理職などから外れ以前の部下の指揮下に入る場合などは複雑な感情になることも覚悟しておく必要があります。

(続く)