高齢期の備え

高齢期の備えを考えます

高齢期の備え25:私的年金(1)

2019年09月30日 | 高齢期の備え
・公的年金だけでは「生活費など」が賄えない場合は、私的年金での備えも考えましょう。

・私的年金は積立方式です(当ブログ9月27日 高齢期の備え23 参照)。

・私的な保険の必要な額は一人ひとり違いますが、つつましい生活を前提とした生活費などに対して公的年金での不足額を賄う額が目安です。先ずは年金事務所で公的年金の見込みを確認しましょう。

・私的な年金保険の受取額は、加入年齢が若いほど多く、女性は平均寿命が長いため男性に比べて少なくなります。毎月の掛け金が1万円の場合の受取額を投稿者が推算した結果を示します。推算条件は、保険金支払いは加入年齢から60歳、運用利率年1%、受給開始年齢は65歳、受取額は保険料総計を65歳から加入年齢時の平均余命までの期間で除した額としています(百円単位を四捨五入)。
【男性】
加入年齢20歳:受取月額3万2,000円
加入年齢30歳:受取月額2万2,000円
加入年齢40歳:受取月額1万4,000円
加入年齢50歳:受取月額  6,000円
【女性】
加入年齢20歳:受取月額2万5,000円
加入年齢30歳:受取月額1万7,000円
加入年齢40歳:受取月額1万1,000円
加入年齢50歳:受取月額  5,000円

・この推算結果から、たとえば男性が20歳から毎月1万円の保険掛金を支払えば、国民年金(満額)と合わせて年金受取額は月額9万7,000万円となり、つつましい生活を前提とした「生活費など」を生涯にわたってほぼ賄うことができます。

・私的な年金の加入に当たっては現役世代の収入とのバランスを考えることが大切です。無理をすると掛金が払えなくなることもありますから、掛金を払い続ける見通しがある範囲の契約とすることです。掛金を続けて支払うことに不安がある場合は、貯蓄によって備えることを検討しましょう。

高齢期の備え24:2030年以降の年金は少なくともいくら必要か

2019年09月29日 | 高齢期の備え
・年金(保険)は長生きに備えるためですから、寿命に比例して必要額が大きくなる生活費など(生活費、住居費、通院費、保険料)の費用を賄うのには適しています。

・つつましい生活を前提とした生活費などの年間必要額は、男性単身世帯120万円、女性単身世帯117万円、夫婦世帯(夫婦時代)193万円と見積もりました(9月20日ブログ参照)。

・おおまかにいえば、単身世帯では年金月額10万円、夫婦世帯では年金月額16万円あればつつましい生活を送ることができ、貯蓄は不要です。ただし、入院や介護の費用、交際費や趣味などの費用は含まれていません。これらは後日のブログで述べます。

・国民保険(基礎年金)の場合、満額でも1人月額6.5万円ですから、単身で3.5万円、夫婦世帯で3万円不足します。

・厚生年金の場合、2050年頃の「所得代替率」が50%(前回のブログ参照)とすれば、生涯の平均給与が、単身の場合20万円、夫婦の場合32万円であれば、つつましい生活を前提とすれば生活費などのための貯蓄は不要となります。

・生活費などを賄うための年金が不足する場合は、貯蓄するか私的年金を掛けておくほうが安心です。

・つつましい生活を前提とした生活費を貯蓄で賄う場合は、寿命の見込み(当ブログの9月10日高齢期の備え9)によって貯蓄額が変わります。以下に国民年金(満額)だけなので不足分を貯蓄で備えようとする場合について、70歳時点で必要な貯蓄額を推算します(10万円単位を四捨五入)。

・70歳10人が「1人」になる年齢まで自分は生きるとすれば、寿命は、男性97歳、女性101歳となります。70歳時点で必要な貯蓄額は、男性3.5万円×12ヶ月×(97‐69)≒1,200万円、女性は同様に1,300万円となります。夫婦世帯では、夫婦ともに長生きの場合、1,200万円となります。

・70歳10人が「3人」になる年齢まで自分は生きるとすれば、寿命は、男性91歳、女性96歳となります。70歳時点で必要な貯蓄額は、男性3.5万円×12ヶ月×(91‐69)≒900万円、女性は同様に1,100万円となります。夫婦世帯では、夫婦ともに3人まで生きる場合、1,000万円となります。

・70歳10人が「5人」になる年齢まで自分は生きるとすれば、寿命は、男性87歳、女性92歳となります。70歳時点で必要な貯蓄額は、男性3.5万円×12ヶ月×(87‐69)≒800万円、女性は同様に1,000万円となります。夫婦世帯では、夫婦ともに3人まで生きる場合、900万円となります。

・このように生活費などを貯蓄で賄う場合は、寿命の見込みによって必要額が変わります。年金だけでは不足する生活費などは、できるだけ私的年金で賄うことが上策です。

高齢期の備え23:2030年以降の年金(2)

2019年09月28日 | 高齢期の備え
・前回のブログでは、現在の年金制度と人口構成変化だけから2030年以降の年金の受給開始年齢と受給額を推計しました。

・今年の8月27日、厚生労働省は公的年金の「2019年財政検証」を公表しました。これは法律に基づいて少なくとも5年毎に公的年金の現況と見通しを示すものです。

・財政検証では様々な将来の人口構成や経済状況などに対応して「所得代替率」で年金の将来見込みを示しています。

・「所得代替率」は、現役男子の平均手取り収入に対する年金額の比率です。2019年度の場合、現役男子の平均手取り収入額を35.7万円としています。一方年金は、月額で夫婦二人の基礎年金13.0万円と夫の厚生年金9.0万円の合計21.0万円としています。この21.0万円を35.7万で割って「所得代替率」を61.7%としています。

・「所得代替率」の将来見通しは前提によって様々な結果が示されています。これらの結果からみて投稿者は2050年頃の「所得代替率」がおよそ50%(額にして35.7万円×50%≒18万円)になると考えています。つまり、現在の年金月額21万円が18万円(21万円の80%)になるというイメージになります。厚生年金は給与と加入年数によって一人ひとり違いますが、2050年頃には生涯賃金を平均した額の半分くらいを受け取るとして高齢期に備えればよいと思います。

・なお、前回のブログでは、受給開始年齢を70歳に引き上げたとして2050年の基礎年金の受給額は現在の80%と推算しています。

高齢期の備え22:2030年以降の年金(1)

2019年09月27日 | 高齢期の備え
・65歳以上の人で構成する世帯の中で51.1%は収入が年金のみとなっています(平成30年国民生活基礎調査)。

・2030年以降の年金がどうなるかを推算してみます。現在の制度が続いていると仮定します。

・年金には「賦課方式」と「積立方式」があります。

・公的年金と呼ばれる国民年金と厚生年金は「賦課方式」です。現在の現役世代から保険料を集め、現在の65歳以上の方に年金として分配します。公的年金では、財源の保険料の負担が決められていて、財源の範囲内で給付がされることが基本となっています。

・私的年金と呼ばれる確定拠出年金や国民年金基金は「積立方式」です。現在の自分が保険料を預け、将来の自分が年金として受け取ります。

・2030年以降の基礎年金(国民年金及び厚生年金から報酬比例部分を除いた部分)を大雑把に推算します。現在のところ国民年金は20歳から59歳まで保険料を支払うことになっています。保険料は、2019年度以降月額1万7,000円をベースに物価や賃金の変動で調整して決められます。2020年の20~59歳の推計人口は約6,100万人です。これに保険料の月額1万7,000円を乗じ、年額にすると約12兆円です。

・この保険料にこれと同額の国の負担分12兆円を合わせて約24兆円を基礎年金の財源と仮定します。

・この24兆円を65歳以上の2020年の推計人口約3,600万人で除すと、基礎年年金は年額69万円になります。なお、この69万円という数字は人口構成からみて公的年金が将来どの程度厳しくなるかをみるためだけのものです。実際の基礎年金は、保険料を40年納めると現在のところ年額78万円となっています。

・20~59歳の人口は、2030年5,500万人、2050年4,300万人と推計されています。65歳以上の人口は2030年3,700万人、2050年3,800万人と推計されています。

・同様な計算をすると基礎年金は、2030年61万円(2020年比88%)、2050年45万円(2020年比65%)になります。

・仮に受給開始年齢が70歳に引き上げられると、2030年76万円(2020年比110%)、2050年55万円(80%)になります。

・年金を減らさないためには、保険料を上げる、保険料支払い年齢を引き上げる、年金受給額を減らす、年金受給開始年齢を引き上げる(受給人口を減らす)などが考えられます。このうち現役世代の負担を増やさないようにするため受給開始年齢の引き上げの可能性が高いと思います。現在40歳代の方は、年金受給の開始年齢が70歳になり、年金額も2割程度引き下げられるという悲観的な見込みで高齢期の家計への備えをしたほうが安心だと思います。

高齢期の備え21:保険と貯蓄

2019年09月26日 | 高齢期の備え
・最初に強調しておきたいことは、高齢期の支出の備えとしては保険や貯蓄だけでないことです。現役時代から不適切な生活習慣や少ない運動習慣を修正しておくことで介護費や医療費が減る可能性が高くなります。ご自分の住まいに住み続ける可能性も大きくなり、高齢者向け施設・住宅に住み替えた場合に比べて支出が少なくてすみます。

・保険と貯蓄のもつ特徴は次のようになります。
○保険は、掛金総額以上の額を受け取れる場合もあり、掛金総額よりも少ない額しか受け取れない場合もある。たとえば、年金保険では平均より長生きをすれば受け取る年金総額は掛金総額より多くなるが、平均より早く人生を終えれば掛金総額よりも受け取る年金総額は少なくなる。介護保険は、介護状態になれば保険金を受け取れるが、元気なまま人生を終えることができれば掛金を払っていても保険金を受け取れない。一方、貯蓄は、預けた分を受け取れる。
○保険は掛金を払い続けなければならないことが多いが、貯蓄は預けることを中断できる。また、保険は途中で引き出すことができないことが多いことが多いが、貯蓄は途中で引き出すことができる。

・「生活費など」は生涯にわたって一定の額が確実に必要であり貯蓄で備えようとすると想定を超えて長生きした場合には貯蓄が底をつくおそれがあるのでできる限り終身年金保険で賄うのが合理的です。

・入院費と介護費への備えは一人ひとりの将来の心身の想定にかかっています。小さな可能性にも備えておきたい方、たとえば「その時点で同年齢10人のうち1人でも介護を必要とすれば自分も必要になる」とされる方の場合、将来の自己負担割合が増える可能性も考え、安心度を増すためには介護保険などを活用しましょう。一方、平均的な可能性を前提に備えておきたい方、たとえば「その時点で同年齢10人のうち5人が介護を必要とすれば自分も必要になる」とされる方の場合、90歳頃までは入院や介護を必要としない可能性が高い、つまり保険金を受け取れない可能性が高いため貯蓄を基本として備えるほうが合理的です。どの程度の可能性に備えるかは自分で決めるしかありません。。

・現役時代の生活と高齢期のバランスを考えましょう。現役時代を楽しく過ごせればよいとした場合、アリとキリギリスの寓話が浮かんできます。一方、高齢期に備えるために現役時代を生きてわけでもありません。保険貧乏という言葉が浮かんできます。要は無理のない範囲、または我慢できる範囲で高齢期に備えることです。