高齢期の備え

高齢期の備えを考えます

高齢期リテラシー ━高齢者住宅の選び方(大尾)━

2021年01月14日 | 高齢期の備え
・高齢者住宅・施設を自分で決めるという視点で投稿してきましたが、自宅では介護ができなくなって、家族が住み替えを決めるケースも多いようです。

・住まいは人生を決める大きな要因の一つです。住む場所によって、家族との関係の濃淡が異なりますし、友人も異なるでしょう。できれば自分自身で住まいを決め、自分自身で人生を決めたいものです。

・高齢になってからでは現役時代と異なり、心身が衰え収入が減るなどして、自分自身で決めることができる事項が減ってきます。今からでも高齢期に備えておくことで自分自身で決めることも多くなります。

・住まいについていえば「住み続ける」ことです。そのためには健康です。当たり前のことのようですが、現役時代の積み重ねが高齢期の心身を決めます。現役時代は、そのときの心身が何時までも続くような錯覚を持ちます。周囲に高齢者がいたとしても自分も心身が衰えるとは思いません。不摂生は将来の自分にツケを回すことです。

・もし、将来、高齢者住宅・施設に住み替えることになりそうであれば、何はともかく費用を確保することです。住み替えの平均的な年齢は80歳代ですから、子や孫に大盤振る舞いをしたい気持ちを押さえ、今からでも少しでも住み替えのための蓄えをすることです。

・もし、読者が親の住み替えを考えている方であれば、住み替えの基本的な事項を押さえておくことをお勧めします。高齢者住宅・施設の新聞広告で、「利用権」、「前払金」、「解約」、「サービス付き高齢者向け住宅」などの用語が何を意味するのか程度は押さえておくことと、一度は実際の高齢者住宅・施設を見学しておくことを強くお勧めします。

高齢期リテラシー ━高齢者住宅の選び方(続続続続)━

2021年01月13日 | 高齢期の備え
・高齢者住宅に住み替えを考えるときの条件の一つに家族との距離があると思います。

・距離には物理的な距離の他、心理的な距離があります。

・物理的な距離として、多くの場合、家族の近くや今まで住んでいた地域の中を希望する場合が多いと思います。こうした場合、自分で決めるにしろ家族が決めるにしろ、事前に入居・入所の条件などを調べておかないと、費用や定員などの条件が合わずに希望に添えない場合がでてきます。

・家族との距離などに拘らなければ選択肢は非常に多くなります。しかし、それは本当に自分の望む人生でしょうか。以前、東京圏では高齢者住宅・施設が一杯になるので地方の住宅・施設を利用したらよいという趣旨の意見を出されたグループがありました。

・住まいは単に食事や睡眠をする場所でないはずです。たとえベッドの中で過ごす時間が多くなっても家族や友人との交流が人生の大きな部分であると思っています。とすればどの程度の物理的な距離の高齢者住宅・施設に住み替えるかは事前に自分で決めるなり家族と話しておくことが大切ではないでしょうか。

・もう一つは心理的な距離です。たとえ家族との物理的な距離は短くても、家族と会いたくない、または家族が会ってくれない、といったこともあり得ます。

・これは、それまでの人生の中で家族とどのような関係であったのかによるでしょう。もし好ましくない関係であったとすると、それが劇的に変わってハッピーエンドとなることは多くないと思います。そうだとすれば自分の最終章を思い浮かべて、家族との関係をもう一度見直しておくこともよいと思います。

高齢期リテラシー ━高齢者住宅の選び方(続続続)━

2021年01月12日 | 高齢期の備え
・前回のブログで高齢者住宅・施設は心身の状態に応じて選択する掲載しましたが、その選んだ住宅・施設に人生の終わりまで住み続けたい希望があるかどうかも大切な点です。

・特別養護老人ホーム(特養)や有料老人ホームなどでは「看取り」までしてもらえるかはそれぞれの住宅・施設によって異なります。

・ある調査によると、たとえば特養では看取りを行っている施設は全体の8割、認知症高齢者グループホームでは5割となっています。

・以前のブログに書いたように住宅・施設に入居・入所するのは契約によりますから、契約時点で十分確認しておく必要があります。

・とは言っても特養やグループホームに入居・入所するかを自分自身で決めるケースは稀だともいます。多くの場合、親族が入居・入所を決めています。

・それでも自分のことですから、事前に自分の希望を伝えておくのも良いかと思います。


高齢期リテラシー ━高齢者住宅の選び方(続続)━

2021年01月11日 | 高齢期の備え
・高齢者住宅・施設の費用が賄える目処と同じように大切なのが施設の種類の選択です。高齢者住宅・施設の種類は10種類以上ありますが、主なものとしては、特別養護老人ホーム、有料老人ホーム、サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)、認知症高齢者グループホームがあります。心身の状態に合った住宅・施設を選びます。

・特別養護老人ホームは、入所要件として要介護3以上があります。費用が介護費を合わせても10数万円と最も少なくて済みます。しかし、自治体によっては入所待ちが多く、希望しても直ぐに入所できるわけではありません。入所は所得や身辺状況などを勘案して決められるといわれています。

・有料老人ホームは、入浴・排泄・食事の介護、食事の提供、洗濯・掃除等の家事、健康管理のうち一つ以上を提供する住宅です。3つのタイプがありますが、主要なものは介護付有料老人ホームと住宅型有料老人ホームです。これらの違いは、介護のシステムです。「介護付」は有料老人ホームの職員が介護サービスを提供します。「住宅型」は、持ち家と同じように地域の訪問介護事業者から訪問介護サービスを受けます。入居者の平均年齢は80歳代半ばで、平均介護度は2強です。

・サ高住は、建前としては住むことに力点が置かれ、最低限「安否確認」と「生活相談」のサービスを提供することが義務付けられています。少しややこしいのですが、サ高住で食事などのサービスを提供すると有料老人ホームとしての扱いにもなります。有料老人ホームと比べて平均年齢はやや若く、平均介護度はやや低い傾向があります。

・認知症高齢者グループホームは、認知症高齢者が5~9人で一つのグループを作り、家庭的な生活の雰囲気の中で食事、入浴、排泄などの介護サービスを受ける住宅です。ただし、共同で生活できることが条件であることが多く、認知症の症状が重くなると医療機関へ入院することになる場合もあり、注意が必要です。

・なお、「介護老人保健施設」(老健)という施設をお聞きになったことがあると思いますが、これはリハビリテーションを目的とする施設で住宅ではありません。利用期間も数か月程度と限られていますが、特養の入居が難しいことから、一時しのぎの住宅として利用するケースもあるようです。




高齢期リテラシー ━高齢者住宅の選び方(続き)━

2021年01月10日 | 高齢期の備え
・高齢者住宅・施設を選ぶときの選択条件の優先順位として、二番目に「資金はどの程度用意できるのか」を挙げました。

・高齢者住宅・施設の費用としては、利用料や食費など施設設備の程度によって決まるお金(将来にわたって入居・入所時の金額とほぼ同じ。金額は1月7日ブログ参照)と医療や介護など心身の状態変化によって増えていくお金があります。

・問題は、この医療や介護費です。将来に重度の介護になって介護費が増えるかは可能性です。入居・入所するときには医療や介護費が少ないといっても将来もそのままなのか非常に高額になるかはわかりません。

・さらに、そう遠くない将来に介護費や医療費の自己負担割合が増える可能性が高くなっています。投稿者は、2030年頃には医療も介護も自己負担は現在の1割から3割に引き上げられると見込んでいます。(注)

・「70歳の10人が1人になるまで自分も生き、将来のある時点で同年齢10人のうち1人が要介護1になれば自分も要介護1になる」という相当悲観的な仮定で、かつ自己負担割合3割として、投稿者が推算した70歳から寿命までの医療・介護費の総額は、男性(推算寿命98歳)1,200万円、女性(推算寿命102歳)1,700万円となりました。なお、「1人」を「5人」にすれば男性(同88歳)0円、女性(同94歳)200万円となりました。(注)

・寿命は神のみぞ知るところですから、生活していく限り必要な利用料や食費を年金などの定期的に入ってくる金額の範囲で利用できる高齢者住宅・施設を選ぶのがよいとおもいます。年金に余裕がない場合、将来の医療・介護費としてある程度の貯蓄は必要で、男性1,000万円、女性1,500万円の貯蓄があればかなり安心です。

・資金が不足する場合、できる限り自宅に住み続けることが望ましいのですが、住み替えざるを得ない場合は生活保護などの公助を受けることも選択肢です。

(注)推算根拠に関心のある方は拙著「現役世代のための高齢期の備え読本」(キンドル版)をご覧ください。