「もういいよ!!」
レンはそう怒鳴ると2階にある自分の部屋へ行ってしまった。
その翌日の夜。
「ねぇ、母さん…」
「何?」
レンの呼びかけに母は夕飯で使った食器を洗いながら答えた。
「俺… 卒業したら… 東京の俳優の養成所に行って良い?」
「もしダメって言ったらレンはどうするの?」
レンは母から意外な言葉が返ってきて戸惑った。
しかも近くにいるのに、わざわざリビングルーム中に聞こえるような大きめの声だ。
親父はリビングルームのソファーに深く腰をかけ、今夜もテレビの野球中継に夢中だ。
「いや… 親父はダメだって言うからさ… とりあえず母さんの意見も聞こうと思って…」
テレビの前に父が居る事もあって、レンは小さな声でボソリと言った。
「誰かにダメとかやめろって言われた位で諦めてしまうようなら東京には行かない方が良いんじゃないの?」
母は変わらず大きめの声だ。
「…」
「そんなに甘いもんじゃないと思うわよ。そういうのは。
本当に叶えたい夢なら、私たち家族と縁を切っても良いぐらいの覚悟じゃないとやっていけないんじゃないの?」
「……」
「お父さんにもう一回相談してみなさい。」
母は今度はそれほど大きくない声でレンに言った。
そして、それ以上は何も言わなかった。
「うん… 分かった。」
レンはボソッと言って、リビングルームから出て行ってしまった。
父には声をかけずに。
テレビの野球中継は試合終了を待たずに終わってしまい、父には全く興味の無いような化粧品や洗剤のコマーシャルが流れているだけだが、ソファーに座っている父はテレビから全く目を離さず、2人の会話が聞こえてないフリを貫き通した。
母は食器を洗いながら、父が何かを深く考え込んでいる事に気付かないフリを貫き通した。
(第3章へ続く)
レンはそう怒鳴ると2階にある自分の部屋へ行ってしまった。
その翌日の夜。
「ねぇ、母さん…」
「何?」
レンの呼びかけに母は夕飯で使った食器を洗いながら答えた。
「俺… 卒業したら… 東京の俳優の養成所に行って良い?」
「もしダメって言ったらレンはどうするの?」
レンは母から意外な言葉が返ってきて戸惑った。
しかも近くにいるのに、わざわざリビングルーム中に聞こえるような大きめの声だ。
親父はリビングルームのソファーに深く腰をかけ、今夜もテレビの野球中継に夢中だ。
「いや… 親父はダメだって言うからさ… とりあえず母さんの意見も聞こうと思って…」
テレビの前に父が居る事もあって、レンは小さな声でボソリと言った。
「誰かにダメとかやめろって言われた位で諦めてしまうようなら東京には行かない方が良いんじゃないの?」
母は変わらず大きめの声だ。
「…」
「そんなに甘いもんじゃないと思うわよ。そういうのは。
本当に叶えたい夢なら、私たち家族と縁を切っても良いぐらいの覚悟じゃないとやっていけないんじゃないの?」
「……」
「お父さんにもう一回相談してみなさい。」
母は今度はそれほど大きくない声でレンに言った。
そして、それ以上は何も言わなかった。
「うん… 分かった。」
レンはボソッと言って、リビングルームから出て行ってしまった。
父には声をかけずに。
テレビの野球中継は試合終了を待たずに終わってしまい、父には全く興味の無いような化粧品や洗剤のコマーシャルが流れているだけだが、ソファーに座っている父はテレビから全く目を離さず、2人の会話が聞こえてないフリを貫き通した。
母は食器を洗いながら、父が何かを深く考え込んでいる事に気付かないフリを貫き通した。
(第3章へ続く)