周平の『コトノハノハコ』

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小説第2弾『上京テトラロジー』~10、エピローグ~

2012年03月07日 | 小説
東京の某所にとても人手に困っているコンビニエンスストアがあった。
それまで学生のアルバイトがたくさんにいたのだが、たまたまそのほとんどが大学4年生など卒業を控えた人たちで、みんな就職も決まり、この春に一気に何人も辞めてしまったのだ。

そんなコンビ二のアルバイトの募集に2人の若者が応募してきた。
この春から俳優の養成所に通うレンと、美容の専門学校に通うアオイだ。

でもレンとアオイがそのコンビ二で働ける時間は限られている。
それぞれ養成所や専門学校に通いながらなのだから当然だ。
まだまだ人手は足りない。

2人はよくシフトも重なり、歳が同じな事もあり、大きな夢を追いかける者同士すぐに仲良くなった。
そして、恋人と遠距離恋愛中のレンと、親たちと離れて暮らし始めて心細いアオイが互いに惹かれ合ってしまうのには、そんなに時間はかからなかった。

「やっぱり私たち、付き合い続けるのは難しいのかな?」
「うーん… 大丈夫だと思ってたけど、やっぱり難しいのかもなぁ…」
「友達に戻った方が良いのかな? 私たち。」
「うん…」

九州に住むマイと東京に住むレンが電話でそんな会話を交わしたのは梅雨入りの頃だった。


それから1ヶ月半が経ち、未だ人手不足のコンビニに、梅雨明けと共に1人の救世主がやって来た!!

上京してから4ヶ月経つというのに、まだアルバイトが決まらず、結局母親からの仕送りで生活していたカズだ。

カズは特に学校などに通っているわけではないので、24時間いつでも働けるのだ。
それでもこの4ヶ月の間で10回以上も他の所の面接で不採用になったというのだから不思議だ。

店長はカズを即採用した。

カズは翌日からさっそく働き始め、カズの母と同じくらいの歳だと思われる女性に仕事を一から教えてもらうことになった。

「よろしくね。"原"といいます。」

その女性から先に挨拶してくれた。

「よ、よろしくお願いします! 僕… "二瓶"と申します!」

"カズ"こと"二瓶一之"は慌てて挨拶を返した。

<完>

(※ カズだけは小説第1弾『草食系貧乏』へ続く)