周平の『コトノハノハコ』

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『夢馬鹿』~第10話~(シューピー散文クッキング第1弾)

2022年01月19日 | シューピー散文クッキング
周平本人が目を瞑りながら国語辞典を適当なページで開いて適当な場所を指差し、目を開けた時に指が指している単語(1話につき5個)を全て文章のどこかに組み込まなければいけない「シューピー散文クッキング」の第1弾『夢馬鹿』の第10話です!

さて、今回の材料は…

「振る舞う」…小さじ3杯
「全部」…小さじ1杯
「知恵」…小さじ2杯
「グロテスク」…大さじ8杯
「国会議事堂」…大さじ6杯(ついに家内がゴジラになって襲来!?)

今回を含めていよいよ残り3話。そろそろ結末が見えてきて欲しい第10話スタート!!

『夢馬鹿』~第10話~

長く続いた沈黙を破ったのは意外にも家内だった。

「ちなみにお店を開くとして、場所はどの辺にされるんですか?」

家内が雪男の説得に応じるつもりかのような質問を初めて投げた。
これはひょっとしていけるのか?

「有楽町駅周辺で考えてます。有楽町駅から"国会議事堂"方面にちょっと行ったところに貸店舗がありまして、そこを借りられれば、そこで…。」

「なるほど、そうですか…。でもうちの主人には何の”知恵”も無いので、雪男さんにきっと迷惑をかけるかと…。」

私に何の”知恵”も無いだと!?と、ちょっとイラついたが、折角の良い流れを壊さない為にここはグッと堪えた。

「"全部"僕に任せてもらって大丈夫ですから!」

いや、そこは私に何の”知恵”も無い事を否定してくれよ!と、ちょっとイラついたが、折角の良い流れを壊さない為にここもグッと堪えた。

「はい…。でも"グロテスク"な置物とかが趣味の主人に飲食業なんて務まるんでしょうか?」

「そんなの関係ないですよ! それに"グロテスク"な置物を店内に飾ったりしませんから。それじゃお客さん来てくれませんからね。」
雪男は笑いながら答えた。

その後も、ひたすら私の悪口オンパレードになっていったが、折角の良い流れを壊さない為にグッと堪え続けた。

家内の強張った表情も少しずつ緩み始め、内心はどうか分からないが、雪男に対して笑顔で"振る舞う”ようになっていった。

「家内安全」のシールの真上に掛けられているリビングの時計の針は、まもなく24時を指そうとしていた。

そして、私がこの数ヶ月間、待ちに待った言葉をついに家内が発した。

「分かりました。でも、もし事業に失敗した時は、雪男さんが責任をもって主人の再就職に協力してくださいますか?」

「はい、もちろんです! 僕もこう見えて人脈だけはありますので大丈夫です。そもそも絶対に失敗しないように頑張りますので!」
雪男が答えた。

奇跡が起きた。ついに家内の承諾を得られた。

翌日、私は2ヵ月後に退職したい旨を会社に伝えた。

《第11話へ続く》