周平の『コトノハノハコ』

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小説第2弾『上京テトラロジー』~4、アオイ前編~

2012年01月25日 | 小説
「はい… でも私…」

「うん? どうしたの?」
何かを言いたそうなアオイに、担任は優しく訊いた。

「自分の夢を叶えられるのか不安で… 美容師を目指している子なんて、きっと山ほどいますよね?」
「そうね。きっと山ほどなんてもんじゃないでしょうね。」
アオイの担任はまだ30代前半だが、冷静でサバサバした性格だ。

「美容師になる夢を追いかけて… 数年後に後悔したりしないかなぁって… 
私、後悔するような道は選びたくないんです。」
アオイはそう言うと、さっきまで担任の目をしっかり見ていた目を下に下げてしまった。

「うーん…」
担任は頭の中で言葉を整理してから丁寧に話し始めた。

「あのね、アオイ。後悔ってね、その字の如く後でしかできないものなの。
だからハッキリ言ってしまうと、将来絶対に後悔しない道を今のアオイが選ぶなんて絶対にできないの。」
「は、はい…」

担任はさらに続けた。
「担任の私がこんな事を言っちゃいけないのかもしれないけど、仮にアオイが美容師を目指して、10年後にもそれが叶えられてなかったとしましょう。
その時、10年後のアオイが、美容師を目指す決心をした勇気のある18歳のアオイを責めたりはしないわ。努力が足りなかった上京してからの10年間の自分を責めることはあってもね。」

「はい…」
アオイは担任の言っている言葉の意味もちゃんと理解できたし、その通りだとも思ったが、少しポカンとした表情で再び顔をあげた。

「不安を消す材料は努力でしかないわ。あとは… ある程度無神経な性格の方が大きな夢を追いかけるのには向いてるのかもね。まぁ、アオイには無理な話かぁ。」
担任は冗談のつもりは全くなかったが最後だけは笑いながら言った。

するとアオイの表情もさっきより柔らかくなった。

(第5章へ続く)

2 コメント

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一気読み (まーうさ)
2012-01-26 22:01:16
周平さん こんばんは!

なかなか来れなかったので、またまた2週間分一気読みしました(汗
アオイさんの担任の先生、イイ事いうなぁ~。
それぞれの時間がどう絡んでいくのか、あるいは絡まる事なく進むのか、気になるところです。←とか言いながらまたご無沙汰したらすいません…
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>まーうささん (周平)
2012-01-26 22:28:06
まとめ読み大歓迎ですよ!
意外な結末が待ってます!
お楽しみに!!
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