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育児休業給付金の計算

2023-03-09 13:49:54 | 育児介護

よく見かける質問に育児休業や介護休業の給付金受けられますか、受けられるならいくらもらえますか、というのがあります。雇用保険から出るのですが、被保険者資格期間の確認と、受給額計算の要領がよく似ていているので、質問内容が混乱しがちなのでしょう。そこで整理して説明してみます。

※:11日ない月は月80時間以上就労した月を含む(以下同じ)
資格期間 受給額計算
育休開始前日より応当日ごとに区切った月 育休開始前日より賃金締日ごとに区切った月
区切った各月に賃金受けた日11日以上ある月が※
最新2年のうち12月以上あること 最新6カ月が対象

なお、下記の説明は簡略化した事例にしています。個々の事案にあたっては、いろいろ制約がつく場合があります。詳しくは厚労省サイト 育児休業給付金について 同パンフQ&A介護休業給付金Q&Aをご覧ください。

期間確認

被保険者資格期間の確認は、雇用保険の失業給付(正確には基本手当)と同一です。過去2年間に賃金を受けた基礎日数11日(80時間)以上ある月が12カ月以上あることです。被保険者期間は前職と通算しますが、職につくまでに1年以上合間が空いたり、ハロワーで求職の申し込みをしていた場合、その時点の過去の期間は消滅します。会社都合退職による場合の救済措置(過去1年間に6カ月)はないですが、その2年間に産休、育休等賃金を受けない期間30日以上ある場合は、その期間分さかのぼって延長されます(最大通算4年)。

そのスタートとなる日は、育休(産休ではない)に入る前日(産休最終日)となります。次の節で説明する賃金締日ではありません。産休を経ない場合も同様に、育休入る前日からひと月ごと区切ってのカウントとなります。

育休開始 10/2 賃金支払
基礎日数
備考
その前日 10/1
- 9/2 10/1 0日 (産休中)
- 8/2 9/1 0日 (産休中)
- 7/2 8/1 0日 (産休中)
- 6/2 7/1 10日 (産休開始)
5/2 6/1 20日  
4/2 5/1 21日  
- 3/2 4/1 9日 (欠勤あり)
2/2 3/1 20日  
1/2 2/1 18日  
12/2 1/1 19日  
…(中略)
7/2 8/1 21日  
6/2 7/1 20日  
5/2 6/1 21日  

欠勤がかさんだ月をとばしても、2年内に12個月あることが確認できました。上記で確認できない場合は、産休開始前日から起算しての過去2年間(延長およびカウント方法同じ)での確認となります。

給付額の計算

賃金日額は、賃金締日からさかのぼること同11日(80時間)以上ある月6か月の賃金総額を180で除した額です。被保険者資格期間との違いは、賃金締日を含む完全月ですので、育休に入る前日が締日でない限り、入った月の賃金はカウントしません。20日締めの会社を例にしてここでは説明してみます。

- 9/21 10/1 0日 (産休中※)
- 8/21 9/20 0日 (産休中)
- 7/21 8/20 0日 (産休中)
- 6/21 7/20 2日 (産休開始)
5/21 6/20 19日  
4/21 5/20 21日  
- 3/21 4/20 6日 (欠勤あり)
2/21 3/20 18日  
1/21 2/20 19日  
12/21 1/20 18日  
11/21 12/20 21日  

月ごとの基礎日数は例です。前表との整合性をとっていません。

※産休を経てない場合は、この月は締日を含んでいませんので、この期間の賃金は対象外です。

当月払いかの違い

最後に、対象となる6か月の総支給額には、基本給、残業代、各種手当、通勤交通費(複数月定期券の場合は月割り)を含み、賞与は含みません。ただ対象となる賃金手当がそのまま、計算に乗るとは限りません。月ごとに残業多かったり少なかったりして支給額が激しく増減を繰り返している場合は、受給額がいくらになるのか気になるところです。

例1:20日締め翌月15日払いといった締めた同月の基本給と残業代が、同一支払日に支払われる場合は、そのまま計算してよろしいでしょう。

  基本給 残業代 合計
283,200 0 283,200
283,200 0 283,200
283,200 0 283,200
283,200 9,009 292,209
283,200 53,847 337,047
283,200 61,293 344,493

計算:6カ月の賃金総額(税引前)1,823,374円÷180日=10,130円

180日まで 10130円×67%=6787円(月換算:約204千円)
181日以降 10130円×50%=5065円(同:約151千円)

例2:上の例1どおりの支払を受けていても、20日締め翌月15日払いは残業代だけで、当月の基本給が当月15日に先支いする場合、例1第⑥月に払われる残業代は前月締めの賃金として計算から除外されます。その他の月の残業代等も繰り下げられます。

  基本給 残業代 合計
283,200 0 283,200
283,200 0 283,200
283,200 0 283,200
283,200 0 283,200
283,200 9,009 292,209
283,200 53,847 337,047

支給日基準でなく締日基準の賃金という理屈ですが、ただ担当者がよくわかっていなくて、例1の記載のしかたで、申請してしまう場合もあります。

計算:6カ月の賃金総額(税引前)1,762,119円÷180日=9,790円

180日まで 9790円×67%=6559円(月換算:約197千円)
181日以降 9790円×50%=4895円(同:約147千円)

単純に例1と例2の比較をしますと、最古の残業代約6万円が計算からはずれたので6カ月平均約1万円減、その67%、50%相当が減となりました。

(2023年3月9日投稿、2023年6月6日投稿)

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