怒りたくなるのは、
淋しいから。
失恋で落ち込むのは
仕方がないこと。
思う存分引きずった
あとは、朝ごはんを
きちんと食べたり、
夜更かしせずに寝たり、
生活リズムを整えてみ
るのもひとつ。
いま、穏やかな毎日を
過ごしていれば、過去
の失恋はいつか懐かしい
思い出になるはずです。
怒りたくなるのは、
淋しいから。
失恋で落ち込むのは
仕方がないこと。
思う存分引きずった
あとは、朝ごはんを
きちんと食べたり、
夜更かしせずに寝たり、
生活リズムを整えてみ
るのもひとつ。
いま、穏やかな毎日を
過ごしていれば、過去
の失恋はいつか懐かしい
思い出になるはずです。
本当の愛を求めて、自分の
意思で別れを告げる恋もあ
れば、やわらかな慈愛に満
ちたやさしい恋もある。
ある時は不器用に、ある時
はおだやかに・・・。
愛(いと)しいあのひとを
想い、女はいつも心を揺ら
し続ける。
*
耐えるということをこの恋
で覚えた
この恋を忘れるために
この苦しさに耐えなければ
むくわれない恋を
なぜしてしまったのだろう
この恋が どんな意味をもつ
というのだ
忘れたい 忘れなければ
忘れられない とても
マティーニというカクテルが
ある。
ジンとベルモットで作るのだが、
通ほどこのベルモットの量に
こだわる。
つまり少なければ少ないほど、
”ドライ”。
粋というわけだ。
老舗のバーでは、大ぶりの
氷をベルモットで洗い、
そのベルモットの香りのする
氷をシェイカーにぶち込み、
ジンを注ぎ入れ素早くシェイ
クする。
きりっと冷えたものをグラスに
注ぐ。
うっとりとした工程だ。
マティーニに入れるベル
モットの分量というのは、
女の人がつける香水の
ようなもの。
香水の香りも少なければ
少ないほど粋なのだ。
耳の後、首、胸元、乳首、
手首、膝の裏と、
その日、自分が一番感じる
ところ一か所につける。
脈打ってなくても、カレが
口づけする箇所が基本。
全部点々と香水をつけたら
つけすぎ(笑)
強い香りの香水は、
部屋の中に香水をシュシュと
吹いておいて、その霧の中を
通りぬける。
そんなにはかなげにつけても、
ふとした拍子やすれ違いぎわ
に、微かに香るものだのだ。
そのはかなげな微かな残り
香りこそ、異性を弾きつける
のである。
なぜならそれは必ず終わるから。
たったひとりの例外もなく、終わって
しまう寸劇を、終わりに向かって、
人は生きている。
あとには何も残らない。
いいえ、そこに残るものがある。
私たちが死んだあとには
物語が残る。
見えるもの
見えないもの
遠いもの
すれ違う苦しさも
やさしさも今はもう
痛いほど知っている
痛いほど知っている
泣かない勇気があれば チャンスを
ください
恋人に出会うまで
ひとりでも平気
いたずらに傷つけ合う
そのほうが不思議
あの胸に帰りたい
あの胸に帰りたい
夢みる勇気があればチャンスを
ください
たえまなく落ちてくる
星くずになりたい
眠れないこの訳を
大切にするから
愛する勇気があればチャンスをください
生まれた時から持っている、誰
からも愛されるよい面を、生まれ
た時にはすべての人がひとりの
例外もなく持っている、
澄みきった、愛(うつく)しい
心を、損なうことになっても、
失うことになっても、それを承
知で、麻里子みたいな聡明な
女の子が、不毛な恋に踏み込ん
でいくのは、なぜ。
そんなわたしの想いを知ってか、
知らずか、しんみりとした口調
になって、麻里子は言った、
「不思議なの。桃李さんと、会
ってない時の方が、彼のこと、
身近に感じるの。
一緒にいる時の方がうんと淋し
いの。すぐにそばにいる時、た
とえば抱き合っている時なんか
にね、
ああ、この人はあたしから、
何億光年も離れたところにい
るのかもしれない、なんて思
ってしまう。だからすごく淋
しいの。変でしょう?」
どう答えたらのかわからなく
て、わたしは静かに、自分の
お酒を飲み干した。
その時、ピアニストがゆっくり
と、ジャズのバラードを弾き始め
た。
わたしは胸の中で、諳んじてい
る英語の歌詞をなぞっていた。
ひとつの物語を語り終えるよう
に、ピアニストがその曲を弾き
終えた時、
「このままでいることなんて、
あたしにはできない」と麻里子
は言い、そのあとに、呟くよ
うに言ったのだった。
「あたし、もう、だめにな
っちいそう」