「愛しかたよりも、別れかたの
ほうに、その人の本質が出るんだ
よね」。そういった友人がいた。
たしかに、そうかもしれない。
相手に夢中になっているときと
いうのは、誰もがみな、似たよ
うな状態だ。あばたもえくぼ、
だし、好きな人のためには、我
慢もすれば、努力も惜しまない。
別れは、ある意味で、その恋愛
の清算だ。プライドの高い人な
ら、そこでプライドを取り戻そ
うとするだろうし、意地悪な人
なら、思いきり意地悪になり、
逆に心優しい人なら、なるべく
相手を傷つけないようにと配慮
するだろう。別れの場面には、
その人の性格が、濃縮してあら
われる。
「たとふれば」という初句は
「今の心は限りなくあなたに
寄り添いながら、けれど体は
正反対の西の方向へ旅立つよ
うな感じ」—――
引き裂かれるような思いだが、
相手に負担をかけまい。
本当に悲しいとき、人は涙も
出ないという。それに似た乾
いた心の疼(うず)きが古典
的な言い回し。
「西」という一語が、心象風景
でそれは太陽の沈む方角であり、
浄土のある方角だ。また、地球
を一周すれば会える(逆に、地
球を一周しなくては会えない)
という遥かな思いを、表している。
たとえば、100か0かという激し
い恋愛。たとえば、なんらかの
ば、相手のために身をひく恋愛・
・・・・そんな厳しい状況下での
別れに、この歌は似合う。