“さるかに合戦”  臼蔵 と 蜂助・栗坊 の呟き

震災や原発の情報が少なくなりつつあることを感じながら被災地東北から自分達が思っていることを発信していきます。

改憲反対なかにし礼氏 「安倍首相は岸信介教の熱狂的信徒」

2014年05月04日 12時05分19秒 | 臼蔵の呟き

 

坂口安吾の言葉

<人に無理強いされた憲法だと云うが、拙者は戦争はいたしません、というのはこの一条に限って全く世界一の憲法さ。戦争はキ印かバカがするものにきまっているのだ> 

<日刊ゲンダイ>

 2月の都知事選の際、雪の中、安倍政権批判を叫んだ直木賞作家のなかにし礼さん(75)は最新作「天皇と日本国憲法」で、憲法改正の動きに真っ向から反論を繰り広げている。終戦後、8歳の時に旧満州から家族で命からがら引き揚げてきた。戦争の悲惨さを、身をもって知っている作家に「安倍とは何者?」と問うと、「」と言下に答えた。

――新刊は随分、骨太、ストレートなタイトルですね。

 本当に大事なことを、ぼやかさずに言おうと思ってこのタイトルにしました。

――帯には「日本国憲法は世界に誇る芸術作品である」と書かれている。本の冒頭に出てくる坂口安吾の言葉も強烈ですね。<人に無理強いされた憲法だと云うが、拙者は戦争はいたしません、というのはこの一条に限って全く世界一の憲法さ。戦争はキ印かバカがするものにきまっているのだ>という文章です。

 昭和27年に書かれた「もう軍備はいらない」の一節です。無頼派作家の坂口は戦争中、文壇中央から距離を置き、ほとんど沈黙していた。戦場に派遣されて、積極的に書いていた林芙美子とは対照的ですが、だからこそ、戦後になって、堂々とこういう発言ができたのだと思います。

――改憲論者は現行憲法は米国の押し付けであると叫んでいますが、当時の国民は坂口の言葉でよくわかるように大歓迎していたわけですね。

 みんな涙を流さんばかりに感激したんですよ。自由を象徴する民主主義が入ってきて、婦人参政権が導入され、表現の自由を得た。戦前、戦中の暗黒時代を考えれば、夢のようなことばかりで、みんなが新憲法には大賛成。これは歴史の本にはっきり書いてあります。なぜ、こんな立派な憲法を変える必要があるのか? 「米国から押し付けられた」と言うのも違いますよ。「占領軍に強制された」という白洲次郎の言葉の一部分が独り歩きしているのです。白洲は「新憲法のプリンシプル(原則)は実に立派である」と評価している。「戦争放棄の条項などは圧巻で、押し付けられようが、そうでなかろうが、いいものはいいと率直に受けいれるべきだ」とまで言っている。9条を絶賛していたんです。

――本にも出てきますが、白洲は「巣鴨プリズンに入ったような人は最も戦争責任が重いのだから、気をつけろ」とも言っているんですね。

岸信介のように、追放解除されて平然と再登板する政治家たちの厚顔、無反省に呆れていたのです。

――その岸信介の孫である安倍首相が「日本を取り戻す」といって、解釈改憲で9条を骨抜きにしようとしている。

 安倍首相の口からは、父・晋太郎氏の名前が出てくることはほとんどない。祖父の岸信介のことばかりです。それだけ大きな影響を受けているのでしょうし、実際、やり口が似ていますね。岸首相は戦後、治安維持法の復活である予防拘禁制度を導入しようとして失敗した。その結果、安保闘争では何十万人というデモ隊が国会に押し寄せて、「革命前夜」と言われた。暴徒に殺されるかもしれないという恐怖感を幼い安倍首相も味わったはずです。その原体験がトラウマになっているのか、改革派の芽は周到に摘まなければいけないと必死になっているんじゃないか? それで秘密保護法みたいな悪法を作り、国民を監視、統制する方向に走っているように見えます。

 ――集団的自衛権の行使容認を解釈改憲で決めて、民主主義、立憲主義を踏みにじろうとする姿勢は信じられませんが、その目的は何なのでしょうか? 

 改憲論者とは戦争をしたい人たちなんですよ。日本には米軍基地がまだある。だから、真の独立のために戦争するというのであれば、まだわかる。しかし、彼らは集団的自衛権を行使して米国と一緒に戦争をするために憲法を変えたいわけでしょう? 論理破綻しているし、美しくもなんともない話です。安倍さんはただ祖父、岸信介が活躍した戦前の軍国主義の世の中に戻したいのでしょう。これは極めて個人的な心情で、岸信介を神とする信仰のように見えます。

――国民の方を見ていない?

 国民の幸せを忘れてもらっちゃ困る。そもそも国家の主は国民であることを特にね。

――そんな安倍政権が5割を超える支持を集めています。世の中、左翼が力を失い、右へ右へと傾いている。いびつな世相も恐ろしくなります。

 こういう時代に大事なのは、アルベール・カミュの「正午の思想」だと思いますね。正午の思想とは、右にも左にもくみせず、狂おしいばかりに公正さを求め、中庸を守り抜くということです。カミュは「現代の熱狂的信徒は、中庸を軽蔑する」とも言っている。熱狂的信徒とは、まさしく安倍首相みたいな人のことですよ。「岸信介教」という個人的な信仰で驀進している。その手法は、統帥権を盾に、立憲政治を無視して、暴走した旧陸軍参謀本部にそっくりです。

――メディアも言いなりですね。

 NHKにお友達を送り込んだり、TV番組をチェックさせてメディアをコントロールしているのは由々しき問題です。メディアに非難されたくないのでしょうが、政治家は批判に耐えなければならない。公人とはそういうものです。選挙の洗礼を経て政権を取れば、世の批判にさらされるのは当たり前のことです。それが民主主義というものです。その自覚のない人が最高責任者? 自民党の憲法改正案では総司令官ですよ。そして、天皇は元首。まさに聖戦化の準備です。

――安倍首相はよく「自分は保守政治家だ」と言いますが、保守というより、戦前のファシズムに通じるものを感じます。

 国家という言葉を持ち出す人には用心しなければいけません。ファシストの特徴は歴史を直視しようとしないことです。だから、ファシスト政権になると、まず、歴史を書き換えようとする。さらに国民を監視しようとする。そうやって、いち早く反乱の芽を摘み、国民を同一化しようとする。そのうえで、平時に戦争心理を適用させようとするのです。国民に戦争心理を浸透させれば、法整備などの戦争準備ができる。それで国民の緊張を高めれば愛国心が高揚する。こうした愛国心が右傾化国家を築き上げる。そうすると、ますます戦争を始めやすくなる。しかし、ファシスト政権は必ず敗北する。それは歴史が証明しています。

――2月の東京都知事選で、脱原発を掲げた細川護熙元首相を応援したのも、

安倍政権への危機感からですか? 

老人2人が頑張っているのを見て、居ても立ってもいられなくなった。でも、細川さんと小泉さんが5月に立ち上げる自然エネルギー推進会議には参加していません。組織にくみするのは「正午の思想」に反するからです。僕は言論人というより芸術家だから、大事な時にモノを考えて、考えたことを言葉にして残すことが仕事です。文化芸術の力で世の中に働きかけていきたい。そのうち、言いたいことも言えない息苦しい時代が来るかもしれないので、なおさらです。


▼なかにし・れい 1938年、中国黒竜江省(旧満州)生まれ。立教大学在学中からシャンソンの訳詩を手がけ、その後、作詩家として活躍。00年、「長崎ぶらぶら節」で直木賞受賞。「赤い月」「戦場のニーナ」他、著書多数。佐藤しのぶさんが歌う「リメンバー」を作詩、こちらも大きな話題になっている。


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