寒河江市に本社がある後藤電子株式会社は、1963年に創業している。国内外の大手オーディオメーカー向けにスピーカーのボイスコイルの製造が出発点に今では、CDやブルーレィなど多彩な電子機器の先端技術部門を中心に世界相手にしたグローバル企業に成長している。ボイスコイルと言っても多様である。小さなものから大きなものまで、形状もさまざまで、想像を超えるものであり、音が出るもの全てに関わりを持つ。興味深いのは、電線は丸いものが効率的だという概念を破ったことだ。ボイスコイルを真四角線にすることでコイル断面を小さく出来、効率向上になると言う。いずれにしてもミクロの世界である。
私たちが訪問したのは、後藤電子(上海)有限公司である。20年前に上海に進出した日本では初めての企業である。世界でも2番目というから、その先見性には驚いた。今では日本企業が1200社も上海に進出している。後藤電子は上海のほかに香港、安徴、東莞黄江、カルフォニァに関連会社を立ち上げ、さらにベトナムやカンボジァ等も視野に入れていると言う。上海工場の最盛期には3000人の社員が働いていたが、今は機械化が進み1600人ですべて現地採用だ。日本人が3人でその管理にあたっている。
説明をしてくれた総経理の青柳茂彦さんは、後藤電子社長の実弟で単身赴任だと伺った。「3000人もの現地社員へのガバナンスは、どの様にされていますか」と質問したら「私の魅力でしょう」と笑った。そして「上海に30県もの事務所があるが、目的が分からない。役人的でない本気度が試される真剣勝負だ」と締めくくった。山形県の東アジア戦略の貴重な示唆に聞こえた。