農業は、命を預かる職業である。それは人類が求めてきた歴史と重なる根源的な事実である。国際化が加速する現代、それが揺らいでいる。国内で完結できれば一番いいのだが、簡単な事ではない。
農業は、国土保全の役割も果たしている。心が和む田園風景は、わが祖先が営々と築き上げた血と汗の結晶である。里山が果たす機能の多元性は、調査が進むほど自然循環の偉大さが分かってきた。近代社会が求めてきた合理性は、それを超える事は無理である。
農業は、地域社会を形成してきた。農耕の歴史はムラを作り、水を分け合い、手間を出し合い、災害からムラを守ってきた。水路や農道保全もムラの役割である。閉鎖的と言われようともムラ社会は続いてきた。「ムラ八分」は、掟を破っても火事と葬祭を残して、ムラの一員とした智恵である。
1月26日、遊佐の鳥海文化ホールで「地域農業と日本の食料を守り、持続可能な社会と地域を発展させる共同宣言」の締結式があった。
遊佐町、生活クラブ事業生活協同組合連合会、庄内みどり農業協同組合の3者が、単なる米や農産物の販売チャンネルの供給先にとどまらず、消費者の求める安全安心な作物を作り続け、産地を守り、自然を守り、担い手育成を連携して進めようとの宣言である。
田園生活を守る運動が広がろうとしている。それを踏み出した締結式の意義は大きい。マスコミに一行の記事も無いのは不思議だ。