大分県日田市に大山町農業協同組合がある。とかくJAは農協自身の経営を考え、農家を置き去りにした経営方針が目立ち農家サイドから「商社みたいだ」と悪評が多い。集約化と合理化による拠点経営は農家離れを加速させ、組合員のJAではなく、JAのためのJAになりつつある。
正組合員数613戸の大山町農協は違っていた。大分県大山町は山間地で平均耕作面積が数十アールの貧しい村だった。昭和36年「梅栗を植えて ハワイへ行こう」をキャチフレーズにムラおこしが始まった。その時に目指した方針が、堆肥を全耕地に投入するオーガニック農業が基本で、消費者の求める安全・安心・健康な食品の生産を目指す事であった。今でも農協の役員会を午前で切り上げて、午後は役員が中心になって堆肥散布事業を続けている。キノコ廃オガを堆肥化した「オネスト250」を三十数年も散布し続けた有機栽培は、まさに時代の先取りである。その上に、時代に即応した直販所を含めた流通の開拓。他産地と一味違う「こだわりの産品」で高付加価値産品の開発は「感動が残るもの」を合言葉に、着実に実現している。老荘青のバランスのとれた「親子三代農業」をテーマに、週休三日の余暇で文化の創造も実現している。組合員全員がパスポートを持っているという、しゃれた農協である。
20年前に50人でスタートした農協直営の農産物直売所「木の花ガルデン」は、今では年間顧客数が240万人、売り上げ高約16億円に成長している。ムラおこしは見事に成功した。大山農協の先見性と行動力は手本になる。