全国伝統野菜サミットが山形国際ホテルで開催された。山形県では初めての試みである。当初200名規模と見込んでいたものの350名の参加となり、盛況だった。山形県では78品目を認定しており、有名ブランドとして、だだちゃ豆や食用菊の「もってのほか」、ウコギ、赤ねぎ、赤カブなどがある。
伝統野菜とは何か。県としては、昭和20年代を基準に古くから各地で栽培されてきた野菜の在来品種で、主に農家の自家用として残っていたマイナーな野菜の事である。大量生産にそぐわず流通、販売のコストや独特の味などから、量販店の大消費地向けとしては消滅したものの、スローフードの回帰や地域おこしの戦略として、見直されて来ている。
「あなたの作ったズイキ、ほくほくして旨かったノ。私の作った赤ねぎも甘くて旨かったから、食べてみれ」と野菜自慢の物々交換や、親戚や隣近所に裾分けする楽しみから、栽培し続けられたもので、そもそも販売の意志などはなかった。農家の密な楽しみである。
野菜ではないが、酒田にもち米で献上米であった超一級品種「女鶴」がある。長い間、一軒の農家が自家用に作り続けていた。収穫量が極端にすくなく、倒伏で機械で栽培出来ない。酒田市バイオセンターで、品種改良して「酒田女鶴」を普及させたが「女鶴」のロマンは伝わらない。
伝統野菜は適地適作が原則で、ネットを使った販売がなじむのかは疑問の残る所である。農家がこっそりおいしい野菜を栽培して喜び合うのが原点で、都会の人が食べたければ、現地に足を運ぶか、3倍の値段でいいから、おすそ分けが筋と思える。
いずれにせよ、量販店で売られる野菜は、規格に合わせ大量に安価で、しかも、時無しが求められている。
それとは反対にある伝統野菜が注目されることは、消費者の質の向上であり、農家の現場発信が今度は求められる。