ドイツやオーストリアでは、時折、駅の看板等で、営利目的ではない社会福祉的な看板を見かけます。
でも、日本でも、注意してよく見ると、社会支援的な看板や宣伝もあるんですね。
「あなたを大切に思う人は、すぐそばにいます」
JR東日本が行う「いのちのホットライン」。
しかし、3月21日、22日のみで、しかも時間は16時~22時。。。汗
キャンペーンでこういうことを「啓蒙的」にやることはいいことだと思います。
でも、二日間だけのホットラインで、実際に、どれだけの効果や影響があるのか。。。
しかも、時間帯も…汗
決して、これ自体を否定しようとは思いません。
でも、これが「日本の現状」なんですよね。
24時間ホットライン+専門職員+相談・同伴を常設で行っている組織がこういう看板を常に出し続けられるかどうか。
しかも、日本のホットラインでは、「相談」が主で、同伴まで行ってくれる組織はほとんど認知されていない。
(というか、同伴までやってくれる組織がどれだけあるか)
日本は世界的にも「自殺大国」と呼ばれていますし、自殺対策は喫緊の課題です。
もし、ドイツで、本気でこの問題に取り組むとすれば、24時間ホットライン+相談+同伴は絶対にセットで実施されると思います。
電話で話すことができたら、まず「コンタクト」を取るために、尽力すると思います。
そして、どこかに来てもらうのではなく、その人と一番会えそうな場所に向かいます。
とにかく会うと思います。そして、相談に応じます。もちろん「傾聴」に留まらず、どうしたらいいのかを一緒に考えます。
「あなたを大切に思う人は、すぐそばにいます」
言葉はとてもきれいですが、本当に「すぐそば」にいてくれるなら、すぐに駆けつけてくれると思います。
しかし、そうはなりません。
こういう言葉で、さらに苦しんでいる人は、絶望を感じるかもしれません。
それに、そばにいないからこそ苦しんでいるわけです。電話で話してはいおしまい、ではダメなはずです。
小さいことかもしれませんが、こうしたところに、「支援のホンキ度」が出ていると思います。
こちらは、ウィーン市内のあちこちで長期間にわたって掲げられ続けている看板です。
ホームページのURLがどかんとのっています。
電話番号もあります。
見出しは、「望まない妊婦?」です。
ダイレクトですよね。
こういう看板や宣伝を行うなら、これくらいの準備と覚悟が必要だと思います。
そのためには、JRや私鉄各線の理解が必要になってくると思います。
支援団体にはお金がありません。宣伝しても、それで売り上げがあがる、というものでもありません。
公共交通機関も、こういう「社会的な宣伝」のために、是非とも協力していただかなければ、どうにもならない。
まず、知ってもらうためには、「駅」や「電車」だと思います。
自殺しようと思い悩んでいる人も、自分の妊娠を隠そうとする妊婦も、また虐待してしまう親も、「誰にも相談できない」、「誰も頼れない」、ということに苦しんでいます。相談できる人は、自殺もしませんし、児童遺棄をすることもありませんし、虐待もしないはずです。「声をあげる」ことができれば、人間は立ち上がれるのです。
声をあげられないからこそ、苦しむわけです。その「声なき声」を、僕らはどうやってキャッチして、どう支援していくのか。
僕らのホンキ度が本当に試されていると思います。
駅に自殺防止のガードをつけるのもいいでしょう。けれど、それで根本的な解決にはなりません。駅でダメなら、別の所で自らの命を断つでしょう。
電車の中に、こういう「告知」を行うことは望ましい。
けれど、そこに満足していてはダメで、もっと真剣に、多くの人が動かないといけない。
中国の赤ちゃんポストのことを呆れる人は多いと思う。けれど、この国だって、年間何万の人が、叫ぶ声を失い、絶望し、命を落としているんだ、ということを忘れてはいけないと思います。
僕にとっては、愛国心云々なんて話よりも、この国で苦しんでいる人に、誰にも相談できずに行き場をなくしている人に、何をどうしたらいいのかを考えることの方が重要です。
僕は、相談できない人に、相談して!とはやっぱり言えません。
相談できないことに苦しんでいるのだから…。