赤ちゃんポストに関連しそうなニュースがあった。
5年前泊まった者です…ペンションに乳児と手紙
11日午後4時45分頃、福島県双葉町のペンションの男性経営者から「へその緒がついた男の子の赤ちゃんが事務所に置かれていた」と双葉署浪江分庁舎に通報があった。乳児は無事で、相馬市内の病院に搬送された。同署は保護責任者遺棄容疑で調べている。
同署の発表やペンションによると、乳児は生まれて間もない男児で、縦約40センチ、横約30センチの白い菓子折りの箱にバスタオルにくるまれた状態で入れられていた。箱はペンション1階の事務所の机の上に置かれていたといい、男性が同日午後4時30分頃、外出先からペンションに戻った際に見つけた。
箱の中には「5年前に泊まったことがある者です。私1人では育てることができないので、おかみさんに育てていただきたいと思います。4月10日生まれ」などと書かれた手紙が入っていた。差出人の名前はなかった。男性は鍵をかけずに同日午前10時頃に出掛けたという。
「おかみさん」からすれば大変困った話だ。捨てた親からすれば、なんて勝手な言い分だ、とは思うが、「私1人では」というところがとても気になった。ここに出てくる「私」が男性か女性かは分からないが、おそらく片親であろう。もう一方は、いないか、離婚/別居のいずれかであろう。
この捨てた親がどこに住んでいる人かは分からない。都内の人かもしれないし、西日本の人かもしれないし、はたまた地元の人かもしれない。不明だ。
僕のテーマである「赤ちゃんポスト」、「片親/離婚家庭」の両方が該当する事例だけに、興味深いニュースだった。突き詰めれば、児童福祉や社会福祉の問題にもなるし、子どもの側からすれば養護の問題になる。
おそらく、この赤ちゃんは児童相談所を経由して、乳児院に入るだろう。捨てた親が名乗りでない限りは、親を突きとめることはできない。結果としては、この国では乳児院に入れられるだろうが、このように事件になると、ますます捨てた親は引き取りに行きにくくなる。赤ちゃんポストは3カ月間預かる匿名の臨時機関なので、引き取りに行きやすいが、赤ちゃんポストのないこの国では、こうやってニュースにされ、おおごとにされ、晒されものになる。
赤ちゃんポストがあればいいってわけじゃないけど、ないことで、こうやってニュースにされ、大々的に報じられ、捨てた親は引き取りに行けなくなる。捨てたのが自分だとばれると、捕まるかもしれないし、報道で顔が晒されるかもしれない。そう思えば、事態が改善されても、引き取りにはこないだろう。
赤ちゃんポストのねらいは、「匿名の臨時預かり」である。3カ月間の猶予が親に与えられる。その間に、だいたいの親は問題を自ら解決している、と聞く。赤ちゃんポストなき日本では、選択肢は「遺棄」しかないのだ。もちろん助けてくれる人がいれば問題はない。けれど、助けの手をさしのべてもらえない人は、この事件のように、どこかに遺棄するしかない。
この事件も忘れてはならない事件だと思う。