前作「極彩」は、kei的にはあまりピンとこなかった。前々作の「鵬翼」が(全体的に)素晴らしかっただけに、少し散漫な感じというか、ややアルバム全体のまとまりに欠けていたように思えた。もちろん一曲一曲のオリジナリティーはあるんだけど、それが一つにまとまっていない感じだった。
今回リリースされた「志恩」は、これまでのムックの音楽観をはるかに越え出たユニークでユニバーサルで強烈で全体的に統一感のある一枚になっていた。もちろん「これぞムック!」というような曲ばかりなのだが、(おそらく)欧州のリスナーをかなり意識した楽曲になっている。民族音楽的なテイストもふんだんに盛り込まれているし、どの民族音楽にもないような不思議な旋律もあったりする。ポピュラリティーもこれまで以上に強くなった。
*今回のブックレットにはすべての歌詞に英語訳が記載されている。海外のリスナーに対する配慮が見られる! ちなみに、本作はいわゆる通常のアルバムとは別扱いの作品で、かつての「6」の続編というか、そういう企画モノというか、別物らしい。こういうアプローチもやはりムックならでは、というか・・・
ソリッドな曲はよりソリッドになり、聴かせる曲はさらに聴かせる曲になっている。メリハリというか、ワビサビというか、そういう明暗が音にしっかりと現れていて、最初のSEから最後の一曲まで、リスナーの心をとらえて離さないタイトな音に仕上がっていた。欧州のリスナーもきっとこの作品に心を奪われるだろう。
01 水恩
文字通り、水の音が響くSE。どかんとくるのかと思いきや、最後まで同じテンションというか・・・ この淡々さがまた何ともいえない魅力になっている・・・かも。でも、徐々にエレクトリックビートのようなサウンドになっていく。不気味さと心地よさが重なり合った奇妙な曲。
02 梟の揺り篭
シタールのような音が突然鳴り出す。エスニックな音で始まる重い曲。Aメロもかなり民族音楽っぽい。ベース音がかなり心地よいぞ。早速、ムックの実験が始まった、って感じかな。もともとムックは無国籍な雰囲気をもっていたけど、さらに無国籍感が増した感じだ。サビはなんかストロベリーフィールズみたい(汗) 声もどこか福井さんみたいで・・・(ストロベリーも後期はこういう曲をよくやっていたなぁ~)
03 塗り潰すなら臙脂
本作のキラーチューンだ。超激しい曲だ。「臙脂(えんじ)」って漢字読める人いるのかな。これもまた民族音楽っぽいメロディーで始まる。ボーカルメロディーが二つ重なり合っていて、不気味さとかっこよさが交じり合っている。Bメロのシャウトもさすがムック! サビはこれぞムックという泣きのメロディー。カッコイイ!の一言に尽きる。聴きどころはなんといっても、サビ後の超ハイテンポのギターソロ~ハイスピードドラムだろう。X Japanを彷彿させる超ハイスピードなビートが怒涛のようにうねりを上げる。
04 ファズ
これはシングル曲なので、解説不要?! やっぱりいい曲はいい曲です。
05 ゲーム
何気に聴きどころ満載の一曲。仮タイトルが「ゲーム」だったらしく、そのままこのタイトルが採用されたようだ。最初の重々しいイントロはかつてのムックを彷彿とさせるが、Aメロの妖しげな旋律はまさに今のムックそのもの。実験的要素も強い曲かも。変拍子を何気なく多用しているところも注目。この曲はなんといっても、クールなサビのメロディーにあると言っていいだろう。なんかDie in criesを思い浮かべた曲だった。これ、Die in criesがやったらカッコイイだろうなぁ、と。なんとムックのメンバーも、デランジェとの共演を通じて、この曲の歌詞が出来たんだとか・・・ 本作でもオススメのナンバーだ。暗くて、切なくて、カッコイイ。サビ後のベースの淡々としたフレーズが印象的。
06 フライト-Album ver.-
なんとも、全テイク取り直したんだとか。そういうところがホント素敵だなぁ。ムックは本当にいいバンド! それに尽きる。
07 アンジャベル
本アルバムで一番聴く価値のある曲かも。なんかちょっと昔のユーロビートのようなイントロ。そして、レトロで泣きのAメロ~Bメロ。そして、摩訶不思議なサビのメロディー。イントロとサビのメロディー(同じメロ)は、ホントすごい不思議な音になっている。これ、歌メロとして成立するんだろうか?!と思うほど。本人達も「階段」という比喩で説明していたが、本当に不思議な曲。初めて聴く旋律。和風テイストの欧州メロディー?! まさに実験CDにふさわしい一曲だ。ギターソロ後のラップも変な感じだ。本当に「変な曲」だ。ちなみにアンジャベルとは、カーネーションという意味らしい。
08 小さな窓
本作で一番気に入った曲の一つ。超切ない、超物憂げ。とてつもなく暗~い曲。やっぱりこういう暗い曲は大好きだ。そこまでやるかというほどに暗いのだ。キーボードの入れ方も暗いし、ドラムもどんよりとしているし、救いようがないような一曲と言えるだろう。途中から、オーケストラっぽいシンセが鳴り響くし、アコギのギターソロが出てくるし、なんか音楽の幕の内弁当みたい。また、ちょっとムード歌謡って気もしなくもないが、ムックが演奏すれば、ちゃんとしたロックサウンドになるところはさすが・・・
09 蝉時雨
来るぞ来るぞ・・・と思いきや、超重い曲。重くて暗いロックだ。これもまたなんだかんだ言ってムックらしい。途中から8ビートのかっこいいロックに変容するところも憎らしい。ライブではすでに何度も演奏されているらしい。
10 志恩
これまた民族音楽のテイストをふんだんに取り入れた実験曲。アラビアンというかコスモポリタンというか・・・ ボーカルのトラックがたくさん使われていて、達郎の声がかなり重なっている。恐らく本作品で一番凝った曲というか、最もこのアルバムらしい曲という感じがした。途中のパーカッションソロは何ともいえない緊張感を織りなしている。重いけど、その重さを感じさせない一曲だ。ムックマニアが喜びそうなマニア向けの一曲。サビは結構おセンチな感じ。アウトロのギターのリフがすごいカッコイイ。
11 空忘れ
この曲もDie in criesというか、デランジェというか、そういう感じのする曲。「柘榴」に近いような・・・ ちょっとアンニュイな感じもするが、何ともいえない世界観をかもし出している。退廃的なAメロ~Bメロは聴きどころかも。それでいながら、サビはとことん突き抜けている。80年代ニューミュージックの香りがプンプンとするあか抜けたポップス。ムックのキャパシティーの広さにはただただ驚くばかり。
12 シヴァ
これまたムックとしては新鮮な感じのする一曲。聴きやすい曲といえば聴きやすい。洋楽っぽいハードな一曲と言っていいのかな。サビのツーバスドコドコがとても心地よくて、カッコイイ。ギターソロ前の達郎のシャウトがとてつもなくクールだ。この曲もやっぱり変な曲。ムックの「変さ」がたっぷり詰まった曲、、、といいたい。
13 リブラ-Album ver.-
これもシングル曲ってことで省略。僕的には微妙・・・かな。すんません。
ムックオフィシャルブログはこちら
こちらでアルバムのダイジェストが聴けます!
オーストリアでも全曲聴けるんですね~。すごいなぁ。