Dr.keiの研究室2-Contemplation of the B.L.U.E-

家族をみつめて-親密圏・ゲマインシャフト・家庭の民主化-

家庭支援論のメモ、です。

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●家庭は、基本的に「親密圏」と呼ばれる領域であり、外の世界と切り離された空間となっている。家にはドアがあり、カギがかかっている。他人がそこに入れば、「住居侵入罪」で「逮捕」される。他人が入り込めない場所、それが、家庭である。その家庭を支援する、というのは、ある意味では、「犯罪行為」になりかねない(象徴的な意味で)。

●家庭は、ドイツ語的には、「ゲマインシャフト(Gemeinschaft)と呼ばれ、「ゲゼルシャフト(Gemeinschaft)」と区別される(Ferdinant Tännies,1855-1936)。どちらも「人間集団」に当てはめる言葉だが、その質的な違いを表わしている。(調べてみよう)。家庭支援は、ある意味で、家庭のコンサルタントと呼んでもよいかもしれない。企業のコンサルタントと同様、家庭で起こる様々な問題をコンサルタントすることである。ゆえに、家庭がどういう場所であり、どうすると健全化するのかを知っておかなければならない。そして、「助言」という形で、関わっていくのが、いわゆる一般的な意味での「家庭支援」であろう。ラーメン店の経営が行き詰まった時に、コンサルタントに依頼するように、家庭の営みが行き詰まった時に、依頼されるのが、「家庭支援」と考えてもよいかもしれない。

●健全な家庭とは何か。おそらくそれこそが最も考えるべきことだろう。そして、その健全な家庭に向けて、助言や支援を行っていくことが、家庭支援論の向かうべき道であろう。コンサルタントたちも、経営の健全化・安定化・向上を目指している。同じように、家庭支援においても、家庭の健全化、安定化、向上(innovation)こそが目指される。

●家庭には、必ずその構成員が複数いる。教育や保育で家庭支援を考える際には、子どもと親(父、母、祖父、祖母等)が、その構成員となる。家庭は、小さなコミュニティーであり、そこには必ず「権力関係」が潜んでいる。そのパワーバランス(権力関係)を捉えることは、家庭を考える上で重要な視点であろう。父と母の関係、父と祖母の関係、嫁姑の関係などにおいて、一般的には、かならず「上下関係」が存在する。姑の目を気にして、日々我慢している嫁を想像してほしい。DVは、暴徒化した権力関係そのものでしかない。

●ゲゼルシャフトには、第三者の目が常に入っており、「不正」や「犯罪」の抑制が強く働いている。「内部告発」もあるし、「監査」も常に行われている。「行政指導」が入ることもあるし、そもそも、「法の遵守」が何よりも求められている。それに、社長や会長が暴走しないために、理事がいたり、理事会があったり、相談役がいたりする。

●だが、ゲマインシャフトには、そういう「第三者の目」が入りにくい。しかも、そのゲマインシャフトが壊れてしまえば、「失業」などという話ではなく、「棲み家」を失ってしまうことになる。生活自体が破たんすると言っても過言ではない。ゆえに、企業や公益団体と比べても、家庭内の問題が外部に漏れだすことはほぼない。ラーメン店主がコンサルタントを依頼するのとは違い、家庭の構成員は、まず相談を外部の人間に相談することはない。(家庭の内部が丸裸にされてしまうことは、自分をも丸裸にするようなものである)

●そういう意味で、家庭支援は、第三者となる人間の目を通して、家庭をみつめること、と考えてよいかもしれない。教師や保育士は、そういう「家庭をみつめる第三者」であり、また、必要に応じて、コンサルタントを行う存在者となるのかもしれない。少なくとも、それが今、期待されているのである(ゆえに、こういう科目があるのだろう)。

●では、家庭の健全化・安定化・向上をどう果たしていくべきか。

●その一つが、「家庭内の民主化」であろう。上述したように、家庭内には、構成員間の権力関係が常にすでに存在している。それを顕在化・可視化していく必要がある。「私は誰の顔色をうかがっているか」「誰が家庭の支配者か」「誰が問題なのか」「どんな犯罪と関連しているか」「支配者と非支配者の関係はどうなっているか」…。更には、家庭内の政策?決定のメカニズム、あるいは、家計(Haushalt)を取り仕切っているのは誰か。

●子どもは、こうした家庭という権力関係の社会を生きている。独裁政治(Dictator)化・専制政治(Autocracy)化した家庭はどれほど多いことか。子どもも、意識的・無意識的に、家庭内の権力関係を知っている。ゆえに、家庭の健全化・安定化・向上は、まずもって、この権力のパターンを知ることから始まる。そのためにも、第三者として、個々の家庭をみつめ、専心し、関心をもつことが求められる。そして、某独裁政権国家のように孤立し、外部との接触が断たれた家庭と「つながっていくこと」が、求められると言えるだろう。

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