ラーメンに関する面白い本を発見! といっても、この本は、2000年に発行されたものなので、新しい本ではない。たまたま見つけられたので、ラッキーだったかな、と。
『ラーメンの文化経済学』 奥山忠政、芙蓉書房出版、2000.
僕自身、ラーメンの学術的研究を目指しているので、こういう「硬派な本」は大歓迎。この奥山さんという方は、実はもともと知っていた。彼は、『文化麺類学・ラーメン篇』という本を2003年に出版しており、ラーメンマニアなら誰でも読んでいる(はずの)定番の本となっている。
ラーメンと学術研究となると、この奥山忠政さんの本がずば抜けて卓越している。一般的には石神師匠や大崎さんの名前が挙がるが、「研究」となると、奥山さんがぴか一かな、と思われる。また、歴史的研究としては、小菅桂子さんの『にっぽんラーメン物語』が古典中の古典(この二人の著書を読んでいないフリークは真のフリークではない!)。
ラーメンの雑誌や情報誌やリポートや感想的なものは、実に数多く出版されているが、学問として耐えられるような著書はほとんど皆無である。学者として確固たる地位を確保している佐々木晶さんもラーメンに関する著書を書いているが、これは学問とは切り離して書かれている本であり、ラーメン学の書とはならない。ラーメンを学問的に捉えようとしている人はほとんどいないのである。国民的人気は高いのに、その学的解釈/反省はほとんどない。
したがって、奥山さんはラーメン界においてとても重要な人物である。彼は、ラーメンと経済学との関連について、次のように述べている。
小麦食文化の一つの展開として日本列島で生まれたラーメンが、多面的に文化を吸収し、さらに新たな食文化を生み出し、それを世界に発信しつつあるという事態について、われわれはあらためて真摯な関心をもたなければならないであろう。ことにそれが社会経済に大きな影響を及ぼしている事実を思うとき、「ラーメン」は文化経済学にとって重要なテーマとなる。(p.112)
この指摘は、2008年現在、ますます妥当性を増してきているように思う。ここ数年で、日本ブームの流れと共に、世界各国にラーメン店が登場しているし、日本のラーメン店の海外進出もますます増えてきている。また、ラーメン業界全体の経済活動はとんでもない規模になるだろう。経済的にラーメンが注目されるのも、いわれのないことではない。また、北海道、旭川大学の亀山朋子さんという方の卒論「旭川ラーメン業界の探訪と若干の考察」も、なかなか骨のある論文で、経営学的な視点で、旭川ラーメンの現状を細かく分析している(例えば、ラーメン店を、「ブランドが確立したイメージリーダー系」、「顧客を選ばないファミレス系」、「知る人ぞ知るオンリーワン系」、「地域に密着した街の食堂系」の四つに分類して、独自の戦略類型を示している)。
この奥山さんの本は、ラーメン文化の誕生前史、ラーメン地域史、ラーメンの語源、ラーメンの分類、世界の麺料理(ラーメンに類するもの)、ラーメンの魅力の分析(第四章)、ラーメンの経営論、ラーメンによる町おこし(第六章・第七章)、ラーメン文化の独自性、といった様々な観点からラーメンについて論じている。
彼の本の特徴だが、とても広域的に、そしてライト(ラフ)に書かれている。ツッコミどころは満載だが、ラーメン学の礎となる本だけに、あまり批判することに意味はない。小菅さんと奥山さんは、一般ではあまり知られていないかもしれないが、ラーメン学のビッグ2だと思う。この本は、大学の一般教養で使われるテキスト用の本のようなので、大人だったらするするっと読めちゃうと思う。
ラーメンを食べて、ラーメンのウンチクを語り、みんなをあっと驚かせちゃいましょう!